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ミッション10 子ども達の成長
385 いっちゃんさん
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顔にある薄い黒の布の右下の端には、セイスフィア商会の印が小さく描かれている。どこの所属かは隠す気がなかった。
寧ろ仕掛けてきたら良い。返り討ちにしてやると思っている。
顔は目も全て隠れているが、その布は特殊な加工をしているもので、裏表がある。これは、流民が受け継いできた古代の織り方で、魔力も込める加護織りの技法も使われている。
これにより、表側、外に向いている方からはしっかりした布に見えるが、裏側の内側に向けて使っている方からは、驚くほどはっきりと透けて見えるのだ。
とはいえ、それが観ている人たちに分かるはずもなく、ただ顔を黒い布で隠した、見たこともない服を着た人としか認識出来ない。
そして、なぜか喋るのは肩にとまっている小鳥だった。そこからは高めの幼い子どもの声が聞こえてくる。
《は~い》
その声と共に、クロコが手を振る。
《こちらは黒子ナンバー1番!》
指を一本立てるクロコ。
《いっちゃんです!》
立てた指をひと回しして頬の辺りに向けて可愛さアピールするクロコ。
《よろしくお願いします!》
二本指にしてチョリーッスと額にかける。
見て分かるように、クロコと呼ばれた人は、それに身振り手振りを付けるだけ。声は一切出さなかった。
クラルスは微笑みながら問いかける。
『はい。いっちゃんさん。早速ですが、そちらがどこなのか教えていただけますか?』
《はい。それでは、こちらをご覧ください》
ぐるっとゆっくりカメラが移動して周りの風景を映し出す。広い畑が見えるが、あまり実りは良くなさそうだ。反対側には、町並みも見える。あまり賑わっては見えない。人通りもまばらだ。
すると、客の中から声が聞こえてきた。
「うそだろ……ウチだ……」
「えっ、あれ! スーニア領都だわ!」
「間違いねえっ。あの冒険者ギルド! あの馬房に居る馬! 預けた俺のだ!」
黒子に衝撃を受けて、広場は静まり返っていたため、そんな声がとてもよく聞こえた。すると、次第にざわついてくる。
「え? じゃあ……待って……時計……今の時間だわ!」
「嘘だろっ。これ、今あそこに居るってことなのか!?」
前半で再現映像が流れたこともあり、映像として残されたものを視ることができるということは分かっていた。
しかし、この会場に集まった多くの人々は、リアルタイムの映像が可能だとは思わなかった。
確かに、舞台上の映像を拡大して見えてもいた。だが、それはこの場だから可能だと思っていたようだ。だから驚いた。そんな彼らに、黒子が返事をする。
《お客さん、素晴らしい! 正解です! ここはスーニア領都、スグルの町です!》
画面の端に映って、町の風景をバックに黒子が手を振って見せる。
《そして、お待ち兼ね!》
ジャンと手を広げて指し示すのは、領主邸だった。
《こちらは、スーニア伯爵家のお屋敷です! ご覧ください! 騎士達がたった今、屋敷に入っていく所です!》
スーニア領の騎士ではないのは、その制服で分かる人は分かるだろう。その騎士が数人、止めようとする使用人達を退けて、屋敷の中に入って行った。
《それでは、一緒に中を見てみましょう!》
おいでおいでと手招きして見せて、黒子は屋敷に向かって走り出した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
寧ろ仕掛けてきたら良い。返り討ちにしてやると思っている。
顔は目も全て隠れているが、その布は特殊な加工をしているもので、裏表がある。これは、流民が受け継いできた古代の織り方で、魔力も込める加護織りの技法も使われている。
これにより、表側、外に向いている方からはしっかりした布に見えるが、裏側の内側に向けて使っている方からは、驚くほどはっきりと透けて見えるのだ。
とはいえ、それが観ている人たちに分かるはずもなく、ただ顔を黒い布で隠した、見たこともない服を着た人としか認識出来ない。
そして、なぜか喋るのは肩にとまっている小鳥だった。そこからは高めの幼い子どもの声が聞こえてくる。
《は~い》
その声と共に、クロコが手を振る。
《こちらは黒子ナンバー1番!》
指を一本立てるクロコ。
《いっちゃんです!》
立てた指をひと回しして頬の辺りに向けて可愛さアピールするクロコ。
《よろしくお願いします!》
二本指にしてチョリーッスと額にかける。
見て分かるように、クロコと呼ばれた人は、それに身振り手振りを付けるだけ。声は一切出さなかった。
クラルスは微笑みながら問いかける。
『はい。いっちゃんさん。早速ですが、そちらがどこなのか教えていただけますか?』
《はい。それでは、こちらをご覧ください》
ぐるっとゆっくりカメラが移動して周りの風景を映し出す。広い畑が見えるが、あまり実りは良くなさそうだ。反対側には、町並みも見える。あまり賑わっては見えない。人通りもまばらだ。
すると、客の中から声が聞こえてきた。
「うそだろ……ウチだ……」
「えっ、あれ! スーニア領都だわ!」
「間違いねえっ。あの冒険者ギルド! あの馬房に居る馬! 預けた俺のだ!」
黒子に衝撃を受けて、広場は静まり返っていたため、そんな声がとてもよく聞こえた。すると、次第にざわついてくる。
「え? じゃあ……待って……時計……今の時間だわ!」
「嘘だろっ。これ、今あそこに居るってことなのか!?」
前半で再現映像が流れたこともあり、映像として残されたものを視ることができるということは分かっていた。
しかし、この会場に集まった多くの人々は、リアルタイムの映像が可能だとは思わなかった。
確かに、舞台上の映像を拡大して見えてもいた。だが、それはこの場だから可能だと思っていたようだ。だから驚いた。そんな彼らに、黒子が返事をする。
《お客さん、素晴らしい! 正解です! ここはスーニア領都、スグルの町です!》
画面の端に映って、町の風景をバックに黒子が手を振って見せる。
《そして、お待ち兼ね!》
ジャンと手を広げて指し示すのは、領主邸だった。
《こちらは、スーニア伯爵家のお屋敷です! ご覧ください! 騎士達がたった今、屋敷に入っていく所です!》
スーニア領の騎士ではないのは、その制服で分かる人は分かるだろう。その騎士が数人、止めようとする使用人達を退けて、屋敷の中に入って行った。
《それでは、一緒に中を見てみましょう!》
おいでおいでと手招きして見せて、黒子は屋敷に向かって走り出した。
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