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ミッション10 子ども達の成長
383 さっそく参りましょう
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会場は熱気に包まれていた。
人がこうして領外からも集まるというイベントは、国の行事くらいだ。それも、王位継承や王族の結婚の時で、数分だけバルコニーに出る王族の姿を見る時くらい。集まることに意味があるという時だけということ。だから、誰もが楽しそうに興奮していた。
貴族が取り仕切っているわけではないので、不敬罪などに気を付けなければといった、変な緊張もないようだ。
着々と屋台の方にも人が集まっているのも見えた。そんな様子を、シエルとレナは嬉しそうに見つめた。
神殿長シエルと、大聖女レナが、舞台の向かって右端に用意されている席に座ると、次に舞台に上がったのは、公爵領都の商業ギルドの長、ミラナだ。彼女に続いて、男性が三人、女性が一人上がってくる。
リーリルが注目させるように手を向けて紹介する。
『同席するのは、公爵領都で商業ギルド長をされているミラナ様』
頷くようにして返事をするミラナ。そして、次に男性三人。
『商業ギルド総本部より、統括マックス様。第一監査部長のエドナール様。第二監査部長のフルセ様。人事部長のカーナ様です』
統括のマックスは、鍛治師になろうとした経歴があり、今でも手ずから武器を作るらしい。そのため、とてもがっしりとした大男だ。どこぞの冒険者ギルドの長だと言われても納得してしまうだろう。見た目、寡黙で職人気質な人にも見える。
二人の監査部長の男達は、真面目そうな文官のように見える。統括の半分くらいの大きさに見えるが彼らが一般的にな大きさだ。年齢は総括もだが、六十代頃だろう。
そして、女性のカーナ。こちらは、四十後半に見える。落ち着いた様子の女性で、受け付けに居たら安心出来そうな雰囲気だ。
それぞれが頷くように応え、シエル達の居るのとは逆の左側端にある席についた。
フィルズからすれば、今からクイズ番組でも始まるんじゃないかという配置だった。
『では、さっそく参りましょう。こちらが、最初の方々の情報と犯歴となります』
スクリーンに映し出されたのは、罪の来歴。書き取り、映し出したものになる。
そして、舞台の中央ラインに五つの囲いが用意され、その中に下から人がそれぞれ競り上がって来た。囲いは、アクリルのような素材で、透明の板だ。高さは二メートルほどそれが四方を囲んでいる。とても狭い。
三人は男。二人が女だ。
『彼らは、王都商業ギルドの受付をしていました』
手には手錠がかかっており、薄い囚人服を着ている。しかし、男は髭などきちんと剃られており、女性達は化粧までしている。そして、髪も綺麗だ。誰もがあまり眠れなかったのか、目に力はないが、捕まる前の姿を保っている。
「っ、あいつ、知ってる!」
「あの女っ!」
そう言う者は多かった。見た目が変わって、誰か分からないということがない。本人も、間違いなく自分に向けられているというのが分かるだろう。きっと気付かないだろうと思うことができないのは、辛いはずだ。
『彼らは、見て分かりますように、詐欺、恐喝、人身売買にも関わっておりました』
調べ上げられたことをリーリルが具体的にどんなことをしていたかと一人一人のものを説明する。
『時に横柄に、商業ギルド職員としての立場を利用して、小さな商家や行商の方々への対応をしていました』
粗末な囚人服を着た彼は、囲いの中でカタカタと震えていた。狭いため、座り込むことさえ出来ず、立っていることしかできない。そして、向けられる大勢の視線。
『具体的に、どのような対応をしていたか、こちらをご覧ください。周りの方々や被害にあった方々の証言、そして、本人の自白を元に再現いたしました』
そうして、映像に映し出されたのは、再現映像。名札を付けてその人ですと分かるようにした者達が、その時の様子を再現する。リーリルやクラルスから演技指導がされているので、とてもリアルだった。
「酷いっ……」
「行商人達からの愚痴とか聞いてたけど……こんな酷いこと言われてたんだ……」
「最低っ!」
批難の視線が集まり、更に身を小さくする。
『さて、次に問題とすべきは、人身売買についてです。彼らには、被害にあった当事者達の声を聞いてもらいましょう』
ビクリと彼は体を大きく震わせた。そして、耳を塞ぎたそうに手を上げていく。しかし、左右の手首を合わせられるようにしてかけられている手錠のせいで、それを上げられない。耳を塞ぐことができなかった。
俯き、ただ耐えている。涙が流れる。その様子がスクリーンにも映されていた。
そこで、クラルスが手元のファイルをめくりながら口を開く。
『今、あの中には、人身売買の被害者家族や友人達の生の声が響いています。事件の内容など要約したものを読み上げます』
どれほど苦しかったか、悲痛な叫びがそこにあった。人々は許せないと声を上げ、手を振り翳しながら、囲いの中で震える彼を睨み付けていた。ある程度発散されたという所を見極め、クラルスが続ける。
『彼らはこの後、十年の労役が課せられます。ただ牢に入り、過ごすのではなく、荒廃した教会所有の土地にて自給自足の生活をしながら、様々な仕事が与えられます。自由な時間はなく、罪と向き合い生きていくことになるでしょう』
そして、リーリルがその後を続ける。
『あの犯歴は消えることはありません。心から悔い、考えを改め、償いの心を持たなければ、神は彼を許さないでしょう。許されないということは……死した後、次の生を得ることができません』
「「「「「っ……」」」」」
これには、誰もが驚いていた。咄嗟に、本当なのかと神殿長と大聖女に視線が集まるが、二人は平然として頷いていた。それを見て、多くの者達は溜飲を下げた。
そうして、次々と同じように捕えられた者達が晒され、真実を明らかにしていく。
とにかく人数が多いので、サクサクと進んだ。途中の休憩を挟み、後半へと入っていく。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
人がこうして領外からも集まるというイベントは、国の行事くらいだ。それも、王位継承や王族の結婚の時で、数分だけバルコニーに出る王族の姿を見る時くらい。集まることに意味があるという時だけということ。だから、誰もが楽しそうに興奮していた。
貴族が取り仕切っているわけではないので、不敬罪などに気を付けなければといった、変な緊張もないようだ。
着々と屋台の方にも人が集まっているのも見えた。そんな様子を、シエルとレナは嬉しそうに見つめた。
神殿長シエルと、大聖女レナが、舞台の向かって右端に用意されている席に座ると、次に舞台に上がったのは、公爵領都の商業ギルドの長、ミラナだ。彼女に続いて、男性が三人、女性が一人上がってくる。
リーリルが注目させるように手を向けて紹介する。
『同席するのは、公爵領都で商業ギルド長をされているミラナ様』
頷くようにして返事をするミラナ。そして、次に男性三人。
『商業ギルド総本部より、統括マックス様。第一監査部長のエドナール様。第二監査部長のフルセ様。人事部長のカーナ様です』
統括のマックスは、鍛治師になろうとした経歴があり、今でも手ずから武器を作るらしい。そのため、とてもがっしりとした大男だ。どこぞの冒険者ギルドの長だと言われても納得してしまうだろう。見た目、寡黙で職人気質な人にも見える。
二人の監査部長の男達は、真面目そうな文官のように見える。統括の半分くらいの大きさに見えるが彼らが一般的にな大きさだ。年齢は総括もだが、六十代頃だろう。
そして、女性のカーナ。こちらは、四十後半に見える。落ち着いた様子の女性で、受け付けに居たら安心出来そうな雰囲気だ。
それぞれが頷くように応え、シエル達の居るのとは逆の左側端にある席についた。
フィルズからすれば、今からクイズ番組でも始まるんじゃないかという配置だった。
『では、さっそく参りましょう。こちらが、最初の方々の情報と犯歴となります』
スクリーンに映し出されたのは、罪の来歴。書き取り、映し出したものになる。
そして、舞台の中央ラインに五つの囲いが用意され、その中に下から人がそれぞれ競り上がって来た。囲いは、アクリルのような素材で、透明の板だ。高さは二メートルほどそれが四方を囲んでいる。とても狭い。
三人は男。二人が女だ。
『彼らは、王都商業ギルドの受付をしていました』
手には手錠がかかっており、薄い囚人服を着ている。しかし、男は髭などきちんと剃られており、女性達は化粧までしている。そして、髪も綺麗だ。誰もがあまり眠れなかったのか、目に力はないが、捕まる前の姿を保っている。
「っ、あいつ、知ってる!」
「あの女っ!」
そう言う者は多かった。見た目が変わって、誰か分からないということがない。本人も、間違いなく自分に向けられているというのが分かるだろう。きっと気付かないだろうと思うことができないのは、辛いはずだ。
『彼らは、見て分かりますように、詐欺、恐喝、人身売買にも関わっておりました』
調べ上げられたことをリーリルが具体的にどんなことをしていたかと一人一人のものを説明する。
『時に横柄に、商業ギルド職員としての立場を利用して、小さな商家や行商の方々への対応をしていました』
粗末な囚人服を着た彼は、囲いの中でカタカタと震えていた。狭いため、座り込むことさえ出来ず、立っていることしかできない。そして、向けられる大勢の視線。
『具体的に、どのような対応をしていたか、こちらをご覧ください。周りの方々や被害にあった方々の証言、そして、本人の自白を元に再現いたしました』
そうして、映像に映し出されたのは、再現映像。名札を付けてその人ですと分かるようにした者達が、その時の様子を再現する。リーリルやクラルスから演技指導がされているので、とてもリアルだった。
「酷いっ……」
「行商人達からの愚痴とか聞いてたけど……こんな酷いこと言われてたんだ……」
「最低っ!」
批難の視線が集まり、更に身を小さくする。
『さて、次に問題とすべきは、人身売買についてです。彼らには、被害にあった当事者達の声を聞いてもらいましょう』
ビクリと彼は体を大きく震わせた。そして、耳を塞ぎたそうに手を上げていく。しかし、左右の手首を合わせられるようにしてかけられている手錠のせいで、それを上げられない。耳を塞ぐことができなかった。
俯き、ただ耐えている。涙が流れる。その様子がスクリーンにも映されていた。
そこで、クラルスが手元のファイルをめくりながら口を開く。
『今、あの中には、人身売買の被害者家族や友人達の生の声が響いています。事件の内容など要約したものを読み上げます』
どれほど苦しかったか、悲痛な叫びがそこにあった。人々は許せないと声を上げ、手を振り翳しながら、囲いの中で震える彼を睨み付けていた。ある程度発散されたという所を見極め、クラルスが続ける。
『彼らはこの後、十年の労役が課せられます。ただ牢に入り、過ごすのではなく、荒廃した教会所有の土地にて自給自足の生活をしながら、様々な仕事が与えられます。自由な時間はなく、罪と向き合い生きていくことになるでしょう』
そして、リーリルがその後を続ける。
『あの犯歴は消えることはありません。心から悔い、考えを改め、償いの心を持たなければ、神は彼を許さないでしょう。許されないということは……死した後、次の生を得ることができません』
「「「「「っ……」」」」」
これには、誰もが驚いていた。咄嗟に、本当なのかと神殿長と大聖女に視線が集まるが、二人は平然として頷いていた。それを見て、多くの者達は溜飲を下げた。
そうして、次々と同じように捕えられた者達が晒され、真実を明らかにしていく。
とにかく人数が多いので、サクサクと進んだ。途中の休憩を挟み、後半へと入っていく。
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