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ミッション10 子ども達の成長
380 最早あれは仮面よ
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メルナはガタガタと震えていた。これほど、マズいと思ったことはなく、血の気が引くという感覚を嫌でも味わっていた。
映し出されていたのは、メルナが部屋で楽しげに独白している姿。とてもではないが、清楚や可憐、病弱などという様子は見られない。
そこで、メイドが鼻で笑いながらメルナに近づいた。
「ふん。今更取り繕えるものじゃないわよ? 良かったじゃない。私くらいしか、あなたのこんな姿知らなかったのだし、これからは、ちゃんと自分を出せるわね」
「っ、あ、あなた……メイドが、一体何をっ」
メルナは、いつもよりも低い声を出し、キッと睨み付ける。そんな顔や声を見たことも、想像もしたこともなかった彼女の友人達が引いているのに気付かない。それをざまあないなとメイド姿の彼女は内心笑いながら続けた。
「その顔よ。私が舞踏会でダンスを褒められた時に、あなたが見せたやつだわ。本当に、取り繕うことが上手いわよね。あなたのその本性が丸見えな顔を、なんで周りは見ていないのかと……どれだけっ……何度苛立ったかっ」
「何を言って」
メイドがまた口を開く前に、カティルラが手を一度叩いて注目を促す。
「はいはい。落ち着きなさい。まだ説明があるわよ」
「っ……」
「ふんっ」
メイドは腕を組んで、睨みつけてくるメルナから視線を外していた。
そこで、映像が終わり、リゼンフィアが再び説明する。
『見ていただきたかったのは、メルナ妃の着けていた腕輪とネックレスです。あれが、魅了の魔導具である可能性が高い』
リゼンフィアは、メルナの本性を見て顔を引き攣らせている会議室に集まる男達へ、いけしゃあしゃあとそう告げる。『そんなもの目に入るかっ!』と一部は怒鳴り出しそうな顔をしていた。
レヴィリアは逆に噴き出すように笑う。
「ぷふっ。あんなのいきなり見せられて、そこを見てるわけないじゃないっ。ふふふっ。あれは、分かってて言ってるわねっ」
これに、映像の中のリゼンフィアを見ながら、メイドがしみじみと言う。
「ああした所を見ると、親子だなって思いますわね」
「やだっ。ふふふっ。それは公爵の前で言っちゃダメよ? 絶対に喜ぶわ」
「言いませんよ。ただでさえ最近、クーちゃんとリアちゃんと少し仲良くなったって、調子に乗ってましたからね」
「あら。それは羨ましいわね。もっと苦労すべきだわ」
「私もそう思います! 少なくとも、リアちゃんが片思いしていた年数の半分は、もだもだ、いじいじしてもらわなくてはっ」
「確かに!」
二人がリアちゃんと呼ぶのは、リゼンフィアの第一夫人のミリアリアのこと。クラルスはミリーと呼ぶが、商会の中ではリアで呼び名は固定されていた。
女性だからこそ、女として片思いする苦しさ、そんな人と結ばれたというのに、相手にされない辛さが分かる。だから、それが報われるように、ほんの少しでも歩み寄る苦労をリゼンフィアにして欲しいと思っていた。
会議室では、広場の映像を映し出したようだ。これで少し場を落ち着けたいのだろう。
『では、しばらく広場の様子をご覧ください。その間に資料を配らせていただきます』
指示された文官達がゆっくりと回って資料を配っていくのを確認し、カティルラが口を開いた。
「メルナ。座りなさい」
「っ……」
メルナは、言われてゆっくりと俯いたまま椅子に座った。
「あなたのそのネックレスと腕輪は回収します。外しなさい」
「っ……こ、これはっ、ミッ、んんっ、はっ」
自分に一体何が起きたのか分からないという様子で、メルナは目を丸くしていた。
「はっ、あははっ。あなた、この後に及んで嘘を吐こうとしたの? バカじゃないのっ?」
「メル。口が悪いわよ」
「っ、ごめんなさい、お義母さま……」
「まあ、分からないでもないけれど」
そう言って、カティルラが微笑みながら優雅に紅茶を一口。それを見て、カティルラをお義母様と呼んだメイドは新しいお茶を淹れ出す。
そんな様子を目に入れながらも、意味が分からないと、メルナはそれを口にする。
「……おかあさま……?」
「あら。まだ気付かれていなかったの?」
カティルラが、新しく交換された紅茶の入ったカップを受け取り、そのメイドへと視線を向ける。
「みたいですわね。やはり化粧が濃かったのがいけなかったのかと」
「そうですわねっ。メルのあの顔は、今よりかなり年上に見えていたし。最早あれは仮面よ」
「お姉様……仮面は言い過ぎです」
童顔なのを気にしていたのだから、年上に見えるのは成功していたということ。だが、仮面とまで言われてしまうと微妙だ。
「メル……?」
メルナが再び小さく問いかけるように口にする。これに、メイドは大きくため息を吐いて、腰に手を当てて告げた。
「まだ分からないの? 私よ。フラメラよ」
「「「「「フラメラさん!?」」」」」
カティルラやレヴィリアの友人達も含めて、ほぼ全員が驚いて目を丸くしていた。
************
読んでくださりありがとうございます◎
映し出されていたのは、メルナが部屋で楽しげに独白している姿。とてもではないが、清楚や可憐、病弱などという様子は見られない。
そこで、メイドが鼻で笑いながらメルナに近づいた。
「ふん。今更取り繕えるものじゃないわよ? 良かったじゃない。私くらいしか、あなたのこんな姿知らなかったのだし、これからは、ちゃんと自分を出せるわね」
「っ、あ、あなた……メイドが、一体何をっ」
メルナは、いつもよりも低い声を出し、キッと睨み付ける。そんな顔や声を見たことも、想像もしたこともなかった彼女の友人達が引いているのに気付かない。それをざまあないなとメイド姿の彼女は内心笑いながら続けた。
「その顔よ。私が舞踏会でダンスを褒められた時に、あなたが見せたやつだわ。本当に、取り繕うことが上手いわよね。あなたのその本性が丸見えな顔を、なんで周りは見ていないのかと……どれだけっ……何度苛立ったかっ」
「何を言って」
メイドがまた口を開く前に、カティルラが手を一度叩いて注目を促す。
「はいはい。落ち着きなさい。まだ説明があるわよ」
「っ……」
「ふんっ」
メイドは腕を組んで、睨みつけてくるメルナから視線を外していた。
そこで、映像が終わり、リゼンフィアが再び説明する。
『見ていただきたかったのは、メルナ妃の着けていた腕輪とネックレスです。あれが、魅了の魔導具である可能性が高い』
リゼンフィアは、メルナの本性を見て顔を引き攣らせている会議室に集まる男達へ、いけしゃあしゃあとそう告げる。『そんなもの目に入るかっ!』と一部は怒鳴り出しそうな顔をしていた。
レヴィリアは逆に噴き出すように笑う。
「ぷふっ。あんなのいきなり見せられて、そこを見てるわけないじゃないっ。ふふふっ。あれは、分かってて言ってるわねっ」
これに、映像の中のリゼンフィアを見ながら、メイドがしみじみと言う。
「ああした所を見ると、親子だなって思いますわね」
「やだっ。ふふふっ。それは公爵の前で言っちゃダメよ? 絶対に喜ぶわ」
「言いませんよ。ただでさえ最近、クーちゃんとリアちゃんと少し仲良くなったって、調子に乗ってましたからね」
「あら。それは羨ましいわね。もっと苦労すべきだわ」
「私もそう思います! 少なくとも、リアちゃんが片思いしていた年数の半分は、もだもだ、いじいじしてもらわなくてはっ」
「確かに!」
二人がリアちゃんと呼ぶのは、リゼンフィアの第一夫人のミリアリアのこと。クラルスはミリーと呼ぶが、商会の中ではリアで呼び名は固定されていた。
女性だからこそ、女として片思いする苦しさ、そんな人と結ばれたというのに、相手にされない辛さが分かる。だから、それが報われるように、ほんの少しでも歩み寄る苦労をリゼンフィアにして欲しいと思っていた。
会議室では、広場の映像を映し出したようだ。これで少し場を落ち着けたいのだろう。
『では、しばらく広場の様子をご覧ください。その間に資料を配らせていただきます』
指示された文官達がゆっくりと回って資料を配っていくのを確認し、カティルラが口を開いた。
「メルナ。座りなさい」
「っ……」
メルナは、言われてゆっくりと俯いたまま椅子に座った。
「あなたのそのネックレスと腕輪は回収します。外しなさい」
「っ……こ、これはっ、ミッ、んんっ、はっ」
自分に一体何が起きたのか分からないという様子で、メルナは目を丸くしていた。
「はっ、あははっ。あなた、この後に及んで嘘を吐こうとしたの? バカじゃないのっ?」
「メル。口が悪いわよ」
「っ、ごめんなさい、お義母さま……」
「まあ、分からないでもないけれど」
そう言って、カティルラが微笑みながら優雅に紅茶を一口。それを見て、カティルラをお義母様と呼んだメイドは新しいお茶を淹れ出す。
そんな様子を目に入れながらも、意味が分からないと、メルナはそれを口にする。
「……おかあさま……?」
「あら。まだ気付かれていなかったの?」
カティルラが、新しく交換された紅茶の入ったカップを受け取り、そのメイドへと視線を向ける。
「みたいですわね。やはり化粧が濃かったのがいけなかったのかと」
「そうですわねっ。メルのあの顔は、今よりかなり年上に見えていたし。最早あれは仮面よ」
「お姉様……仮面は言い過ぎです」
童顔なのを気にしていたのだから、年上に見えるのは成功していたということ。だが、仮面とまで言われてしまうと微妙だ。
「メル……?」
メルナが再び小さく問いかけるように口にする。これに、メイドは大きくため息を吐いて、腰に手を当てて告げた。
「まだ分からないの? 私よ。フラメラよ」
「「「「「フラメラさん!?」」」」」
カティルラやレヴィリアの友人達も含めて、ほぼ全員が驚いて目を丸くしていた。
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