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ミッション10 子ども達の成長
376 ご覧ください
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リュブランやユリ達が、出席者の名をしっかりと確認し、二種類ある金と銀の腕輪を、腕に着けさせていく。
「バルトーラ・ラト・カールト侯爵様。こちらをお着けください」
そう言って、リサーナがバルトーラに銀に光る腕輪を手渡す。
「ああ……」
バルトーラには、ただの地味なメイドにしか見えないリサーナに一瞬目を丸くしてから、気付かなかった振りで受け取る。それに満足げに微笑み、リサーナは説明した。
「利き手とは反対の腕に嵌めてください。そして、小さな魔石がございますので、そちらに魔力をほんの少しだけ込めてください」
「これで良いだろうか?」
「はい。結構でございます。では、失礼いたします」
「ああ……」
綺麗な礼をして、隣へと移っていく。
カリュエルも、地味な青年にしか見えなかった。リュブラン達のその仕草には隙がなく、リサーナもだが、とても未成年の少年少女には見えない。もちろん、多少は化粧で作っているようだが、それにしても自然だ。
そんな様子を見て、バルトーラは小さく呟いた。
「……あの子達は何を目指しているんだ……?」
自国の王子と王女が、変装の達人になってきている様子に、バルトーラは驚きながらも、呆れるような顔を浮かべていた。
次に気になったのは、配られていく腕輪だ。金と銀があるのは分かる。しかし、爵位別でもないようだと、しばらく見ていて分かった。
斜め前に座っていたセクラ伯爵家の元にやって来たカリュエルは、彼に金の腕輪を嵌めさせた。
それを見て、バルトーラは目を細める。どうやら、金は今回の処罰対象者に配られているようだと静かに理解し、リゼンフィアの声に耳を傾けた。
『そろそろ、気になっている方も多いかと思いますので、先ずはスクリーンをご覧ください』
スクリーンに、広場に続々と人が集まり出す様子が映し出された。これは、城壁の上からの映像だ。
『今は、広場全体を映していますが、開始しましたら、舞台を広く、近く映したものになります』
「「「「「おお……」」」」」
その映像の鮮明さ、そして、微かに聞こえてくる喧騒の音に驚き、先ほどまでの冷ややかな空気が一変した。
『そして、この会議の映像もまた、ご夫人方がいらっしゃるホールの方で見られるようになっています』
「「「「「……っ!?」」」」」
「そ、それは今、この場所をということですか?」
『そうです。これになります』
「「「「「っ!!」」」」」
リゼンフィアは、映像を切り替えて、今のこの会議室内の撮影映像を見せる。
「っ、あ、あそこか?」
「あの辺……?」
「いや、今変わった……」
カメラの位置を確認しようとするが、その映像は移動していた。当然だ。ここでのカメラマンは、隠密ウサギなのだから。しかし、その姿を捉えられる者はいなかった。
『特定はする必要がありません。気になさらないことをオススメします』
「「「「「……」」」」」
なんだか嫌な予感でもしたのか、大半の貴族達は大人しく前を向いた。こうした感覚は、鋭い者が多い。
そうこうしている間に、腕輪を配り終え、リュブラン達が撤収していく。ユリが最後にリゼンフィアへと顔を向け、礼をして部屋を出て行った。
それを確認して、リゼンフィアはふうと息を吐く。これで、鎖は繋げた。ファスター王も、一番肝心な山を無事越えられたと、ほっとした様子で、リゼンフィアに顔を向けた。
「始めよう」
「っ……」
その言葉にリゼンフィアは頷くと、ファスター王は足下に視線を落とす。
「シャルテ」
《みっ》
呼ばれてシャルテが椅子の下から出てくると、ひと鳴きする。そして、大きくなると、その背中にあるマジックバッグから、ファスター王は『ぼんぼり』のような、可愛らしい灯具を取り出した。大きさは、フィルズ曰く、バスケットボールサイズ。高さは六十センチほどだ。柄は桜だった。
その上部の所に魔力を流す魔石がある。そこに魔力を少し流すと、淡い光が灯った。もうこの時には、シャルテは小さくなり、退屈そうにしていたライデンと共に、可愛らしくお座りしてその灯りを見上げていた。
思わず和みそうになりながらも、用意は整ったと、ファスター王とリゼンフィアが再び目を合わせて頷き合う。そして、リゼンフィアは告げた。
『これが何か、気になっているでしょうが、先に、着けていただいた腕輪の説明をいたします』
全員が、一度自分の腕にある腕輪を一瞥し、リゼンフィアを見た。
大半の者が絶望するまであと少し。リゼンフィアとファスター王は、この場が阿鼻叫喚と化すだろうと身構えた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「バルトーラ・ラト・カールト侯爵様。こちらをお着けください」
そう言って、リサーナがバルトーラに銀に光る腕輪を手渡す。
「ああ……」
バルトーラには、ただの地味なメイドにしか見えないリサーナに一瞬目を丸くしてから、気付かなかった振りで受け取る。それに満足げに微笑み、リサーナは説明した。
「利き手とは反対の腕に嵌めてください。そして、小さな魔石がございますので、そちらに魔力をほんの少しだけ込めてください」
「これで良いだろうか?」
「はい。結構でございます。では、失礼いたします」
「ああ……」
綺麗な礼をして、隣へと移っていく。
カリュエルも、地味な青年にしか見えなかった。リュブラン達のその仕草には隙がなく、リサーナもだが、とても未成年の少年少女には見えない。もちろん、多少は化粧で作っているようだが、それにしても自然だ。
そんな様子を見て、バルトーラは小さく呟いた。
「……あの子達は何を目指しているんだ……?」
自国の王子と王女が、変装の達人になってきている様子に、バルトーラは驚きながらも、呆れるような顔を浮かべていた。
次に気になったのは、配られていく腕輪だ。金と銀があるのは分かる。しかし、爵位別でもないようだと、しばらく見ていて分かった。
斜め前に座っていたセクラ伯爵家の元にやって来たカリュエルは、彼に金の腕輪を嵌めさせた。
それを見て、バルトーラは目を細める。どうやら、金は今回の処罰対象者に配られているようだと静かに理解し、リゼンフィアの声に耳を傾けた。
『そろそろ、気になっている方も多いかと思いますので、先ずはスクリーンをご覧ください』
スクリーンに、広場に続々と人が集まり出す様子が映し出された。これは、城壁の上からの映像だ。
『今は、広場全体を映していますが、開始しましたら、舞台を広く、近く映したものになります』
「「「「「おお……」」」」」
その映像の鮮明さ、そして、微かに聞こえてくる喧騒の音に驚き、先ほどまでの冷ややかな空気が一変した。
『そして、この会議の映像もまた、ご夫人方がいらっしゃるホールの方で見られるようになっています』
「「「「「……っ!?」」」」」
「そ、それは今、この場所をということですか?」
『そうです。これになります』
「「「「「っ!!」」」」」
リゼンフィアは、映像を切り替えて、今のこの会議室内の撮影映像を見せる。
「っ、あ、あそこか?」
「あの辺……?」
「いや、今変わった……」
カメラの位置を確認しようとするが、その映像は移動していた。当然だ。ここでのカメラマンは、隠密ウサギなのだから。しかし、その姿を捉えられる者はいなかった。
『特定はする必要がありません。気になさらないことをオススメします』
「「「「「……」」」」」
なんだか嫌な予感でもしたのか、大半の貴族達は大人しく前を向いた。こうした感覚は、鋭い者が多い。
そうこうしている間に、腕輪を配り終え、リュブラン達が撤収していく。ユリが最後にリゼンフィアへと顔を向け、礼をして部屋を出て行った。
それを確認して、リゼンフィアはふうと息を吐く。これで、鎖は繋げた。ファスター王も、一番肝心な山を無事越えられたと、ほっとした様子で、リゼンフィアに顔を向けた。
「始めよう」
「っ……」
その言葉にリゼンフィアは頷くと、ファスター王は足下に視線を落とす。
「シャルテ」
《みっ》
呼ばれてシャルテが椅子の下から出てくると、ひと鳴きする。そして、大きくなると、その背中にあるマジックバッグから、ファスター王は『ぼんぼり』のような、可愛らしい灯具を取り出した。大きさは、フィルズ曰く、バスケットボールサイズ。高さは六十センチほどだ。柄は桜だった。
その上部の所に魔力を流す魔石がある。そこに魔力を少し流すと、淡い光が灯った。もうこの時には、シャルテは小さくなり、退屈そうにしていたライデンと共に、可愛らしくお座りしてその灯りを見上げていた。
思わず和みそうになりながらも、用意は整ったと、ファスター王とリゼンフィアが再び目を合わせて頷き合う。そして、リゼンフィアは告げた。
『これが何か、気になっているでしょうが、先に、着けていただいた腕輪の説明をいたします』
全員が、一度自分の腕にある腕輪を一瞥し、リゼンフィアを見た。
大半の者が絶望するまであと少し。リゼンフィアとファスター王は、この場が阿鼻叫喚と化すだろうと身構えた。
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