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ミッション10 子ども達の成長

374 自国では王宮に?

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学園長がノリノリで貴族達の前に出た頃。リュブラン達はスクリーンなどの最終チェックを終えた所だった。

「角度も良さそうですね」

リュブランがそう口にして振り返ると、ユリが頷く。

「ええ。あとは、貴族達が席についてから、ファスター王に頼まれたことをやるだけです」
「はい」

用意したスクリーンは二つ。一つは、前方のファスター王とリゼンフィア、そして、大臣達が座る側の壁。高い位置に用意した。今回のここにあるスクリーンは、室内ということもあり、布製の巻き上げることもできるものにしてある。これは、これからも使用するということになっていた。

もう一つは、正面を見て右手側。角度を付けて設置してある。これは、ファスター王達の席から観るものだった。

映像の操作は、今回はリゼンフィアが行うことになっている。よって、操作パネルは宰相の席に設置済みだ。このパネルは持ち運びできるようになっているが、今日のところは必要ないだろう。

今回のこの機材の搬入と設置をする代表はユリ。本日学園が休みということもあり、売店は休みになり、こちらの手伝いに回っていた。機材を運び込んだのは、ペルタ達ペンギン部隊だ。機材の設置については専門であるタヌキ型の魔導人形が行った。しかし、どちらもさすがに王宮内を大きな顔して歩き回らせる訳にはいかないため、早朝から動いていた。

隠密ウサギによって、この時間に人に出会いにくい経路を選定し、そこを通っていたため、面倒な事態にはなっていない。

今は、運搬のために運転してきた魔導車に戻って待機している。魔導車にはモニターがあり、そこでは会議室と学園長の居るホール、そして、クラルス達の居る広場の様子が観えるようになっているので、今頃はのんびりそれを観ているだろう。

貴族の当主達が入って来たのを確認して、部屋の隅に居たリサーナとカリュエル達に合流する。

「朝早くからお疲れ様でした。もう間も無く始まるようですね。彼らが席につくまで、そちらの廊下に出ましょうか」

そっと部屋を抜け出す。こちらも、貴族達が出入りする通路側ではないので、人を避けられる。貴族達はリュブランどころか、リサーナやカリュエルが居ることさえ気付いていないはずだ。

何よりも今回、ユリも含めて、リュブラン達は一流の使用人と同じように存在感を薄くして行動することもできるようになっていた。ここで重要なのは、存在感を薄くするということ。決して消してはいけない。

「ふう……設置が間に合って良かったわ」

ユリが、ひとまずは与えられた仕事を何とか終えることが出来そうだと、ほっと息を吐く。これに、カリュエルは労いの言葉をかける。

「お疲れ様でした。仕方ないとはいえ、前もって準備出来ないというのが、これほど大変だとは思いませんでしたよ」
「王宮内の。それも、国の重鎮達が集う場所だもの。余計に気を遣うわ……王宮なんて、もう二度と縁がないと思っていたのだけれど」
「ユリさんは、自国では王宮に?」

ユリやセラ達、奴隷として使われていた者達は、あまり過去の話はしない。フィルズが、その人が話したくなった時に聞くスタイルのため、周りも無理に聞き出すことはなかった。

だが、話したならば、それをさり気なく聞くようにしている。リサーナも、これに慣れた様子で聞いていた。特に、ユリは売店を任されたことでよく喋るようになったが、最初の頃はほとんど喋らなかったのだ。ようやく自分を出し始めたユリには、こうしたさり気なく聞き出すということも、ある程度必要だろう。

「王宮の騎士の訓練場にね。元婚約者が騎士だったのよ。そんなに強くもない、自意識だけは高い奴でね」

普段からあまり表情が変わらないユリの顔には、はっきりとした嫌悪の色と眉間に深くシワが寄るのが見えた。

「見た目も大したことないのに、訓練中に見に来る令嬢達にきゃあきゃあ言われるのが当たり前だと思ってて。それに嫉妬して欲しかったのか……よく呼ばれたのよ。その上に、差し入れも持ってこいと言われてね」
「……私なら、木刀投げるか、扇子で殴りますわね」
「そうね。今ならヤってるわ」
「「……」」

リサーナとユリは、怖いほど真面目な顔で頷き合っていた。その目には、次出会ったら遠慮なく殺しにかかるという決意が見えたが、リュブランとカリュエルは、そっと目を逸らした。

そこで、リュブランが話題を変える。

「そ、そういえば、会場の方のマグナは大丈夫かな……」

それにすかさずユリが答える。

「あの学園長なら上手くやってるわよ。一週間前くらいから、クー様に特訓してもらっていたし」
「「え!?」」
「そういえば……?」

リュブランは、なぜ学園長が出入りしているかは知らなかったようだ。

「リサ達は知らなかった? 夕食とお風呂目当てでもあったと思うけど、学園が終わってから毎日通っていたわよ」
「「ズルいっ」」
「……学園長の前でも普通に言いそうね……」

抜け駆けしやがってと、学園長に恨めしげな目を遠慮なく向けそうなリサーナとカリュエルに、ユリは呆れたような目を向ける。きっと、この場にセルジュが居れば、二人と同じ事を言っただろう。

「まあ、あちらは大丈夫よ。さあ、そろそろかな?」

そうして、目を向けた廊下の端に、隠密ウサギが現れた。

《全員、席につきましたよ》
「分かりました。では、行きましょう。良いですか。渡す人の名を、必ず確認してください」
《一応、席の間違いはありませんが、確認はお願いします》
「「「はい」」」
《では、こちらを》
「ありがとうございます」

こちらと言われて振り返ると、そこに四台の台車があった。配膳用のカートのようなものだ。台の上には名簿と座席表、それと、籠が二つ。その籠には、金色と銀色の一センチ幅くらいの腕輪が並べられている。

少しドアを開けると、そこから、これから配る腕輪の説明をするリゼンフィアの声が聞こえてきた。








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読んでくださりありがとうございます◎


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