163 / 203
ミッション10 子ども達の成長
370 気合い入れて行くぞ!!
しおりを挟む
ついにその日がやって来た。
王都にはこの日を待っていた人々が溢れている。他領からも多くの者が訪れて来ており、建国祭の時よりも賑やかだというのが実際の所だ。
ここ一週間ほどで、国内はもちろん、国外にも闇ギルドが一つ壊滅したということが知れ渡り、裏側もかなり騒がしかったようだ。それに繋がりのあった商人達が次々に捕えられたということも知られ、国中が『悪が成敗された』とこの話題に湧き立っていた。これはリーリルとファリマス、二人の流民の技術が最大限に発揮された結果だ。
少し前まで、商人と闇ギルドが繋がり、商売敵や個人的な恨みを向けられた者達が潰されていたとの噂が広がっていた。これにより、大きな商会は全てその闇ギルドと繋がりを持っていたクズ商会だとの認識が出来上がってしまった。
勝手な正義感から、関係のない商会も、大きいからと、力のある商会だからと、裏の繋がりがあったと判断して、店にゴミを放り込んだり、不買運動を行ったりする者が多く出てしまった。
そこで、リーリルとファリマスが商業ギルドと手を組み、正しい情報を広げることにしたのだ。そしてこの日、その成果が実る。
その日の早朝。開店前のセイスフィア商会王都支部の舞台前では、クリーンリングの大半と屋台、店舗販売員の半数以上が集まっていた。更には、応援として公爵領都からも呼んでいた。
彼らの前に、商会長として立ったフィルズがマイクを手に口を開く。
「今日は城前広場にて、商業ギルドによる公開審判が行われる。先日の発表の通り、クリーンリングには、国の騎士達と連携して人の誘導と案内を頼む」
「「「「「はい!」」」」」
「次に屋台だ。スープ、ポップコーン、あげポテ、甘い焼き、ドリンクのセットで出す事になる」
小さなキッチンカーでの出店だ。スープ屋台だけが別で付随する。あげポテはいわゆるフライドポテト。そして、甘い焼きは人形焼きの小さなカステラだ。
「対応は繁忙期の特別対応になる。作り置きの対応だ。ある程度の客が減るまで、常に作ってもらうことになる。キツいとは思うが頑張ってくれ。ただし、体調に異変があればすぐに交代を。通常の交代は一時間毎だ」
この国では、お祭りで屋台が出るなんて常識はない。露天商はあっても、屋台はほぼなかった。よって、今回の広場に出る屋台はセイスフィアのものだけだ。客が殺到するのは目に見えていた。
「魔導具の説明は先日した通り。注文商品の札を買ってもらい、それを受け取って魔導具にセットすると、札に合わせて品物が出てくる。それを回収し、きちんとお客に渡してくれ。誘導に気を付けて」
「「「「「はい!」」」」」
キッチンカーからベルトコンベアーでそれぞれの出来上がった品物を流す。もちろん紙で包んだりした状態でだ。
その先に繋がったテーブルに、魔導具によって札で判断された扉が開いて一つずつ落ちてくる仕様。自販機を参考にしている。
それを改めて注文内容と確認して手渡すことになる。場所は取るが、これが一番早かった。至る所にメニュー表や商品紹介の看板を立てて、人の誘導路も確保している。
「居残り組も油断せずに頼むぞ。この舞台と、競技場でのリアルタイム上映は予定通り行う。恐らく、子連れが多くなるだろう。場所取りがこの後一時間後から始まる。事故に気を付けて対応するように」
「「「「「はい!」」」」」
この王都支部では、球技などができる競技場を解放する。そこで上映会による鑑賞が可能。それも、ピクニックシートを貸し出したり購入できるようにしてある。もちろん、屋台と同じものや、惣菜店、パン屋で買ったものなどを持ち込んでも良い。家から持って来るのもありだ。
今回の公開審判を完全にイベントにしてしまったのだ。イメージとしては、運動会か遠足の時の家族やお友達と食べるお昼と言う感じだろうか。
「公開審判は、怒りや負の感情が爆発しやすい。そこで、俺たちは楽しい祭りのような催し物という雰囲気を作ることを重視することになる。間違っても暴動を起こさせないよう、笑いや楽しい雰囲気を提供することを心がけてくれ」
「「「「「……」」」」」
「別に難しいことじゃない。いつものここでの雰囲気を思い出してくれ。それほど心配することもない。進行役はクーちゃんとリル様だ」
「「「「「っ……」」」」」
セイスフィア商会では、クラルスはクーちゃんと呼ばれているし、リーリルはリル様と呼ばれて親しまれている。この二人が前に立つならば安心だと思ってくれたようで、ほっとする様子が見られた。
「暴れる人がいれば、騎士やクマ達も対応する。いつものように、落ち着いて対応してくれれば良い。各々の通信具の確認を忘れないように。頼むぞ」
「「「「「はい!」」」」」
「では、それぞれ持ち場へ移動を開始してくれ。気合い入れて行くぞ!!」
「「「「「はい!!」」」」」
フィルズが舞台から下りると、この王都支部で最近ようやく、契約や事務全般を任せるようになったセラが駆け寄って来る。
「お疲れ様です会長。会場設備の確認と、王宮への機材搬入が完了いたしました。それと先ほど神殿長シエル様が来られまして、朝食を召し上がっておられます。後ほど執務室にご案内いたします」
「分かった。王宮には、カリュとリサはともかく、本当にリュブランやメルさんも行ったのか?」
今回、城の大会議室で、公開審判の映像を流すことになっていた。機材の搬入はそのためだ。そして、それと並行して闇ギルドと関わりのあった貴族達への罰も下すつもりだった。
貴族達からすれば、思ってもみない事だろう。今日はいつものように会議があると思って王宮に向かうことになるのだから。緊張感も何もなく、唐突に突き付けられるわけだ。
ファスター王やリゼンフィア達は表向きには平然と、淡々と闇ギルドに関わっていた貴族達の処分を決めていた。その決着が今日着くというわけだ。逃すつもりはなかった。それを、カリュエルとリサーナだけでなく、リュブランとフラメラまでもが見届けに行ったのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
王都にはこの日を待っていた人々が溢れている。他領からも多くの者が訪れて来ており、建国祭の時よりも賑やかだというのが実際の所だ。
ここ一週間ほどで、国内はもちろん、国外にも闇ギルドが一つ壊滅したということが知れ渡り、裏側もかなり騒がしかったようだ。それに繋がりのあった商人達が次々に捕えられたということも知られ、国中が『悪が成敗された』とこの話題に湧き立っていた。これはリーリルとファリマス、二人の流民の技術が最大限に発揮された結果だ。
少し前まで、商人と闇ギルドが繋がり、商売敵や個人的な恨みを向けられた者達が潰されていたとの噂が広がっていた。これにより、大きな商会は全てその闇ギルドと繋がりを持っていたクズ商会だとの認識が出来上がってしまった。
勝手な正義感から、関係のない商会も、大きいからと、力のある商会だからと、裏の繋がりがあったと判断して、店にゴミを放り込んだり、不買運動を行ったりする者が多く出てしまった。
そこで、リーリルとファリマスが商業ギルドと手を組み、正しい情報を広げることにしたのだ。そしてこの日、その成果が実る。
その日の早朝。開店前のセイスフィア商会王都支部の舞台前では、クリーンリングの大半と屋台、店舗販売員の半数以上が集まっていた。更には、応援として公爵領都からも呼んでいた。
彼らの前に、商会長として立ったフィルズがマイクを手に口を開く。
「今日は城前広場にて、商業ギルドによる公開審判が行われる。先日の発表の通り、クリーンリングには、国の騎士達と連携して人の誘導と案内を頼む」
「「「「「はい!」」」」」
「次に屋台だ。スープ、ポップコーン、あげポテ、甘い焼き、ドリンクのセットで出す事になる」
小さなキッチンカーでの出店だ。スープ屋台だけが別で付随する。あげポテはいわゆるフライドポテト。そして、甘い焼きは人形焼きの小さなカステラだ。
「対応は繁忙期の特別対応になる。作り置きの対応だ。ある程度の客が減るまで、常に作ってもらうことになる。キツいとは思うが頑張ってくれ。ただし、体調に異変があればすぐに交代を。通常の交代は一時間毎だ」
この国では、お祭りで屋台が出るなんて常識はない。露天商はあっても、屋台はほぼなかった。よって、今回の広場に出る屋台はセイスフィアのものだけだ。客が殺到するのは目に見えていた。
「魔導具の説明は先日した通り。注文商品の札を買ってもらい、それを受け取って魔導具にセットすると、札に合わせて品物が出てくる。それを回収し、きちんとお客に渡してくれ。誘導に気を付けて」
「「「「「はい!」」」」」
キッチンカーからベルトコンベアーでそれぞれの出来上がった品物を流す。もちろん紙で包んだりした状態でだ。
その先に繋がったテーブルに、魔導具によって札で判断された扉が開いて一つずつ落ちてくる仕様。自販機を参考にしている。
それを改めて注文内容と確認して手渡すことになる。場所は取るが、これが一番早かった。至る所にメニュー表や商品紹介の看板を立てて、人の誘導路も確保している。
「居残り組も油断せずに頼むぞ。この舞台と、競技場でのリアルタイム上映は予定通り行う。恐らく、子連れが多くなるだろう。場所取りがこの後一時間後から始まる。事故に気を付けて対応するように」
「「「「「はい!」」」」」
この王都支部では、球技などができる競技場を解放する。そこで上映会による鑑賞が可能。それも、ピクニックシートを貸し出したり購入できるようにしてある。もちろん、屋台と同じものや、惣菜店、パン屋で買ったものなどを持ち込んでも良い。家から持って来るのもありだ。
今回の公開審判を完全にイベントにしてしまったのだ。イメージとしては、運動会か遠足の時の家族やお友達と食べるお昼と言う感じだろうか。
「公開審判は、怒りや負の感情が爆発しやすい。そこで、俺たちは楽しい祭りのような催し物という雰囲気を作ることを重視することになる。間違っても暴動を起こさせないよう、笑いや楽しい雰囲気を提供することを心がけてくれ」
「「「「「……」」」」」
「別に難しいことじゃない。いつものここでの雰囲気を思い出してくれ。それほど心配することもない。進行役はクーちゃんとリル様だ」
「「「「「っ……」」」」」
セイスフィア商会では、クラルスはクーちゃんと呼ばれているし、リーリルはリル様と呼ばれて親しまれている。この二人が前に立つならば安心だと思ってくれたようで、ほっとする様子が見られた。
「暴れる人がいれば、騎士やクマ達も対応する。いつものように、落ち着いて対応してくれれば良い。各々の通信具の確認を忘れないように。頼むぞ」
「「「「「はい!」」」」」
「では、それぞれ持ち場へ移動を開始してくれ。気合い入れて行くぞ!!」
「「「「「はい!!」」」」」
フィルズが舞台から下りると、この王都支部で最近ようやく、契約や事務全般を任せるようになったセラが駆け寄って来る。
「お疲れ様です会長。会場設備の確認と、王宮への機材搬入が完了いたしました。それと先ほど神殿長シエル様が来られまして、朝食を召し上がっておられます。後ほど執務室にご案内いたします」
「分かった。王宮には、カリュとリサはともかく、本当にリュブランやメルさんも行ったのか?」
今回、城の大会議室で、公開審判の映像を流すことになっていた。機材の搬入はそのためだ。そして、それと並行して闇ギルドと関わりのあった貴族達への罰も下すつもりだった。
貴族達からすれば、思ってもみない事だろう。今日はいつものように会議があると思って王宮に向かうことになるのだから。緊張感も何もなく、唐突に突き付けられるわけだ。
ファスター王やリゼンフィア達は表向きには平然と、淡々と闇ギルドに関わっていた貴族達の処分を決めていた。その決着が今日着くというわけだ。逃すつもりはなかった。それを、カリュエルとリサーナだけでなく、リュブランとフラメラまでもが見届けに行ったのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
3,320
お気に入りに追加
14,459
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜
紫南
ファンタジー
◇◇◇異世界冒険、ギルド職員から人生相談までなんでもござれ!◇◇◇
『ふぁんたじーってやつか?』
定年し、仕事を退職してから十年と少し。
宗徳(むねのり)は妻、寿子(ひさこ)の提案でシルバー派遣の仕事をすると決めた。
しかし、その内容は怪しいものだった。
『かつての経験を生かし、異世界を救う仕事です!』
そんな胡散臭いチラシを見せられ、半信半疑で面接に向かう。
ファンタジーも知らない熟年夫婦が異世界で活躍!?
ーー勇者じゃないけど、もしかして最強!?
シルバー舐めんなよ!!
元気な老夫婦の異世界お仕事ファンタジー開幕!!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。