趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション10 子ども達の成長

370 気合い入れて行くぞ!!

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ついにその日がやって来た。

王都にはこの日を待っていた人々が溢れている。他領からも多くの者が訪れて来ており、建国祭の時よりも賑やかだというのが実際の所だ。

ここ一週間ほどで、国内はもちろん、国外にも闇ギルドが一つ壊滅したということが知れ渡り、裏側もかなり騒がしかったようだ。それに繋がりのあった商人達が次々に捕えられたということも知られ、国中が『悪が成敗された』とこの話題に湧き立っていた。これはリーリルとファリマス、二人の流民の技術が最大限に発揮された結果だ。

少し前まで、商人と闇ギルドが繋がり、商売敵や個人的な恨みを向けられた者達が潰されていたとの噂が広がっていた。これにより、大きな商会は全てその闇ギルドと繋がりを持っていたクズ商会だとの認識が出来上がってしまった。

勝手な正義感から、関係のない商会も、大きいからと、力のある商会だからと、裏の繋がりがあったと判断して、店にゴミを放り込んだり、不買運動を行ったりする者が多く出てしまった。

そこで、リーリルとファリマスが商業ギルドと手を組み、正しい情報を広げることにしたのだ。そしてこの日、その成果が実る。

その日の早朝。開店前のセイスフィア商会王都支部の舞台前では、クリーンリングの大半と屋台、店舗販売員の半数以上が集まっていた。更には、応援として公爵領都からも呼んでいた。

彼らの前に、商会長として立ったフィルズがマイクを手に口を開く。

「今日は城前広場にて、商業ギルドによる公開審判が行われる。先日の発表の通り、クリーンリングには、国の騎士達と連携して人の誘導と案内を頼む」
「「「「「はい!」」」」」
「次に屋台だ。スープ、ポップコーン、あげポテ、甘い焼き、ドリンクのセットで出す事になる」

小さなキッチンカーでの出店だ。スープ屋台だけが別で付随する。あげポテはいわゆるフライドポテト。そして、甘い焼きは人形焼きの小さなカステラだ。

「対応は繁忙期の特別対応になる。作り置きの対応だ。ある程度の客が減るまで、常に作ってもらうことになる。キツいとは思うが頑張ってくれ。ただし、体調に異変があればすぐに交代を。通常の交代は一時間毎だ」

この国では、お祭りで屋台が出るなんて常識はない。露天商はあっても、屋台はほぼなかった。よって、今回の広場に出る屋台はセイスフィアのものだけだ。客が殺到するのは目に見えていた。

「魔導具の説明は先日した通り。注文商品の札を買ってもらい、それを受け取って魔導具にセットすると、札に合わせて品物が出てくる。それを回収し、きちんとお客に渡してくれ。誘導に気を付けて」
「「「「「はい!」」」」」

キッチンカーからベルトコンベアーでそれぞれの出来上がった品物を流す。もちろん紙で包んだりした状態でだ。

その先に繋がったテーブルに、魔導具によって札で判断された扉が開いて一つずつ落ちてくる仕様。自販機を参考にしている。

それを改めて注文内容と確認して手渡すことになる。場所は取るが、これが一番早かった。至る所にメニュー表や商品紹介の看板を立てて、人の誘導路も確保している。

「居残り組も油断せずに頼むぞ。この舞台と、競技場でのリアルタイム上映は予定通り行う。恐らく、子連れが多くなるだろう。場所取りがこの後一時間後から始まる。事故に気を付けて対応するように」
「「「「「はい!」」」」」

この王都支部では、球技などができる競技場を解放する。そこで上映会による鑑賞が可能。それも、ピクニックシートを貸し出したり購入できるようにしてある。もちろん、屋台と同じものや、惣菜店、パン屋で買ったものなどを持ち込んでも良い。家から持って来るのもありだ。

今回の公開審判を完全にイベントにしてしまったのだ。イメージとしては、運動会か遠足の時の家族やお友達と食べるお昼と言う感じだろうか。

「公開審判は、怒りや負の感情が爆発しやすい。そこで、俺たちは楽しい祭りのような催し物という雰囲気を作ることを重視することになる。間違っても暴動を起こさせないよう、笑いや楽しい雰囲気を提供することを心がけてくれ」
「「「「「……」」」」」
「別に難しいことじゃない。いつものここでの雰囲気を思い出してくれ。それほど心配することもない。進行役はクーちゃんとリル様だ」
「「「「「っ……」」」」」

セイスフィア商会では、クラルスはクーちゃんと呼ばれているし、リーリルはリル様と呼ばれて親しまれている。この二人が前に立つならば安心だと思ってくれたようで、ほっとする様子が見られた。

「暴れる人がいれば、騎士やクマ達も対応する。いつものように、落ち着いて対応してくれれば良い。各々の通信具の確認を忘れないように。頼むぞ」
「「「「「はい!」」」」」
「では、それぞれ持ち場へ移動を開始してくれ。気合い入れて行くぞ!!」
「「「「「はい!!」」」」」

フィルズが舞台から下りると、この王都支部で最近ようやく、契約や事務全般を任せるようになったセラが駆け寄って来る。

「お疲れ様です会長。会場設備の確認と、王宮への機材搬入が完了いたしました。それと先ほど神殿長シエル様が来られまして、朝食を召し上がっておられます。後ほど執務室にご案内いたします」
「分かった。王宮には、カリュとリサはともかく、本当にリュブランやメルさんも行ったのか?」

今回、城の大会議室で、公開審判の映像を流すことになっていた。機材の搬入はそのためだ。そして、それと並行して闇ギルドと関わりのあった貴族達への罰も下すつもりだった。

貴族達からすれば、思ってもみない事だろう。今日はいつものように会議があると思って王宮に向かうことになるのだから。緊張感も何もなく、唐突に突き付けられるわけだ。

ファスター王やリゼンフィア達は表向きには平然と、淡々と闇ギルドに関わっていた貴族達の処分を決めていた。その決着が今日着くというわけだ。逃すつもりはなかった。それを、カリュエルとリサーナだけでなく、リュブランとフラメラまでもが見届けに行ったのだ。










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読んでくださりありがとうございます◎



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