趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション10 子ども達の成長

361 ただいま〜

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元暗部のスピークから、第一王子のユゼリアが第一王妃の子でさえないと知ってから二日後。

明日は学園が休みということもあり、授業が終わってすぐにセルジュ達がやって来る頃。フィルズは仕事をこなしながら、執務室で待っていた。

《主さま。ファシー様とリゼン様、ラスタ様、それとトールさんがいらっしゃいました》
「おお。通してくれ」
《はい》

ファスター王とリゼンフィア、護衛のラスタリュート、そして、少し前までセイスフィア商会で預かっていた近衛騎士のトールが部屋に入ってきた。

「悪いな。兄さん達がまだだ」
「構わんが……何かあったか?」

部屋にある時計を見て、ファスター王が心配する。セルジュと第二王子のカリュエル、双子の第一王女のリサーナは、週末の休みの前日は、授業が終わると、こんな所にはもう居たくないというように、学園を飛び出して来る。いつもならば、今頃の時間には、ここに来てお茶をしながらフィルズに一週間分の愚痴を言っているところだ。

「ああ。トマからの連絡はあった。第一王子とその側近も連れて来るらしい」

トマとは、カリュエルにつけている侍従と護衛を兼任するウサギ型の魔導人形だ。

「ん? アレらがなぜ……」
「第一王妃から手紙が来たらしくてな。けど、第一王子はやらかしたことが気まずくてウジウジとしている所で、エンリから相談されたようだ」
「エンリ……ああ、近衛のユーナル子爵家の子か。毎週、報告書をきちんと上げてくれるので助かっている。それも見やすい」

側近であり護衛であるエンリアント・ユーナル。彼は近衛騎士の子で、王や父親から第一王子の素行や近況を伝える役目を負っていた。

「あいつ、真面目だからな。けど、報告書の書き方ぐらい教えてやれよな~。最初困ってたみたいだぞ?」
「そうなのか? ん? フィルがそれを知っているということは、教えてくれたのか」
「ああ。そんで、ついでに隠密ウサギに弟子入りしてった」
「「「っ、はあ!?」」」

いずれ教えてやらないとなと思っていたことを、フィルズはここでぶっ込んだ。

「いやいやっ! え? 隠密ウサギに?」
「ちょっと、あの子は騎士になるんでしょう!? なんでウサギ様に弟子入りさせてるのよっ!」
「アレに弟子入り……子どもが……なんてことを……っ」

トールは知っていたため、うんうんと頷くだけだが、ファスター王は信じられないと驚き、ラスタリュートは何してくれてんだと怒り、リゼンフィアは恐ろしいと戦慄した。三者三様の反応が面白いと見ていれば、そこでセルジュ達が到着したようだ。

《坊ちゃん方がいらっしゃいました~。お聞きしていた方々もご一緒です》
「入ってくれ」
「フィル~、ただいま~っ」
「お帰り兄さん、カリュとリサもお疲れ」
「「ただいま~」」

カリュエルとリサーナも、ここに来たら一息吐けると、気が抜けた様子だ。だが、ファスター王の姿を見て少し顔を顰める。

「あ、父上もいらしていたのですね。ご無沙汰しております……」
「お父様……まさか日頃から何度もこちらにいらしているのでは……」

カリュエルとリサーナの顔には、迷惑そうなものが見えた。声も若干低い。二人からすれば、心のオアシスとなっているこの場所に、常日頃から来て抜け駆けしているということが許せないようだ。

「う、うむ……なんだろう……子ども達がちょっと冷たくない?」
「カリュ、リサ。あんまいじめてやるな。手洗いうがいはしたか? 新作のケーキを出してやるよ」

荷物は、セルジュもカリュエルとリサーナも侍従、侍女として付けているウサギに部屋へ持って行ってもらっているのだ。少し遅れたことと、ユゼリアが居ることでそのまま急いで来たと予想していた。

「「「新作のケーキ! すぐに!」」」

部屋を元気に飛び出して行くセルジュ達。残されたのは、呆然とするユゼリアと側近のワンザ、そして、エンリアントだ。いつもならば、セルジュ達も連れて来た者を置き去りにすることはないのだが、ユゼリア達を快く思っていないのだろう。ここに来ると、セルジュ達は建前がとか、態度を取り繕うのを止める。子どもらしく過ごせるようにということは良い事なのだが、時に切り替えが極端過ぎるようだ。

「兄さん達……取り繕うこともしないか……エンリ、手洗い場は分かるよな? その二人も連れて行ってくれ。荷物はそこに置いておけ。後で客間に移動しておく。お前達の外出届けはこっちで出しておく」

今日はユゼリア達を帰すつもりがないことをフィルズは伝える。その意図を測りながらエンリアントは答えた。

「……了解しました。ありがとうございます。ユゼリア様、参りましょう」
「あ、ああ……」
「……」

戸惑う様子のユゼリアと、随分と大人しくなったワンザを呼びながら、エンリアントも部屋を出て行った。

「はあ……兄さんやカリュ達があからさまに避けようとしてんだけど……どう思うよ」
「う、うむ……それより……」
「ケーキは用意する」
「っ、よし! で? なんだった?」
「……」

ファスター王のこの残念な姿も子ども達に見せてやりたいと思うのは悪くないはずだ。

「……広い所が良いから、隣の談話室に行くぞ」

ユゼリア達の荷物を運ぶように指示を出し、ファスター王達を引き連れて隣の部屋に入る頃には、セルジュ達も戻ってきた。

「好きな所に座ってくれ」

そうして、幾つかある手前のテーブルに分かれて座る。

「私は彼らと座りましょう」

トールは、状況が飲み込めていないユゼリア達のテーブルにつくようだ。

談話室は、入ってすぐ手前に四人がけのテーブル五つと、奥の大きな窓辺の壁に沿って並ぶ長いソファとローテーブル。向かいには一人がけの数個のソファーがある。中央にはオープンキッチンがあり、さながらホテルのラウンジのような創りになっていた。

それにほおと感心するユゼリアとワンザをエンリアントとトールが誘導していく。

セルジュ達と隣り合う二つのテーブルにつき、ファスター王達はフィルズと同じテーブルについた。

その中央にあるキッチンから、ケーキとお茶を載せたワゴンを押して来るのは、セルジュの侍従ウサギのクルフィと、カリュエル、リサーナのウサギのトマとユマ、そして、第三王子のリュブランとその母親の第三王妃フラメラだった。









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