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ミッション9 学園と文具用品
323 巡回させます
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フィルズは、冒険者を坑道の入り口が見える場所に集めていた。
「そんじゃあ、ジュエル。囲いを作ってくれ」
《クキュゥ ♪ クッ、キュゥゥゥ!》
パタパタと小さな翼を動かして、地面から三メートルほど上に上がると、場所を確認して力を行使する。
ゴゴゴゴゴッ
地面が隆起し、一メートルほどの高さで、件の坑道の入り口から一本道を作り、現在フィルズ達が居る、拓けた場所を丸く円形に囲った。
「「「「「おおっ~」」」」」
冒険者達と少し離れて見ていた騎士達も、囲われたこの場所を見回して距離感を把握しているようだ。
「これだけ広ければ……」
「鉱山が稼働していたら、これだけの場所は取れなかっただろうな……」
「なんとか訓練場の倍はあるか……」
魔獣との戦いとなると、それなりに広い場所が必要だ。数も予想できない。とはいえ、一本道で撃ち漏らしたものを相手にする場所だ。それほど酷い乱戦にはならないだろう。
「騎士の兄ちゃん達は、あそこから外に出て、万が一にも外に飛び出す奴がいた場合、対処を頼む」
人一人出入りできる割れ目を指差して、この場からの退場を願う。
「えっ! 私たちも戦うが?」
「あんたらは、対人戦が主だろ? ちょい耳貸して」
「ん?」
不満そうな騎士達を集めて、フィルズは小さな声で伝える。
「町の方の見回りをして欲しいんだよ。今回のトンネルを貫通させた奴らは、どうもセクラ伯爵領から来ているみたいでな……」
「っ、セッ……二つ隣の領ですよね?」
「ああ。ここの元男爵とは折り合いが悪かったと聞いている。そこから、盗んだ鉱石をガーネルに卸しているらしい」
「ガーネルというと……あの、坊ちゃんの所で引き取った……」
ガーネルは、この国の隣国の一つ。王妹のレヴィリアが一度はその国の王家に嫁いだ。そして、国への不満から、民の一部が盗賊となって、この国にやって来ていた。国を乱したレヴィリアが悪いと思い込み、復讐するために行動に移した彼らは現在、この鉱山から少し離れた集落で、作物の品種改良や土壌改良の研究をしている。
「あいつらは関係してねえが、もしかしたら、あの国の土地の荒廃は関係があるかもしれん」
「……なんか大事になりそうな予感がするんですが……」
騎士達が不安そうな顔を向けた。これにフィルズは自信を持って頷く。
「そうだな。多分、面倒臭いことになる」
「坊ちゃん……」
「そんな情けない顔すんじゃねえよ。でだ。頼みたいのは、対人の部分だ。コソコソ盗みを働いて、それもこんな騒ぎにしてくれた相手だ。他にも何か仕掛けてくるかもしれん」
「……ここで魔獣の相手をしている間に、町で何かするかもしれない……と?」
混乱の最中に、町でも騒ぎを起こすということもあり得そうなのだ。
「そういうこと。他国の間者が入ってる可能性もあるんだ。それも、この国に良い感情を持ってない。あり得るだろ?」
「確かに……団長の方には」
「連絡済みだ。あちらでも警戒してもらう」
「分かりました。巡回させます」
「頼んだ」
「はっ!」
すぐに三人ほどでグループを組んでいく。それを見て、感心しながら、フィルズは言い忘れた事を思い出す。
「あっ。ウチの集落への見回りはナシで良い」
「あの国の間者が入るならば、あそこが一番危険では? 言っては何ですが……彼らは国を裏切った者と見られているはずです」
国を見限って、この国へやって来たとあちらの国では判断する可能性は高い。彼らは家族ごと来ているのだ。そう見られても仕方がないだろう。
「だからだよ。接触してくるなら、確実に捕まえられるだろ」
「……囮ですか……」
ニヤリと笑うフィルズ。その顔を呆れた様子で騎士達は見る。
「あそこに手を出すなら、あの国が本当に仕掛けて来るって証拠にもなるだろうが」
「……まあ、そうですね……分かりました。巡回ルートからは外します」
他国の、盗賊となってこの国に被害をもたらした犯罪者と見て、騎士が守らないこともあり得ると思わせられる。だから、不思議には思われないだろう。自然に、罠を張れる。
「おう。心配すんな。隠密ウサギの配置は完了してるからなっ」
「……敵の方が心配になりましたよ……」
微妙な顔をされた。心配無用なのは充分に伝わったようだ。
「よし。じゃあ、そろそろだ。冒険者のおっちゃん達も、準備は良いか?」
「いつでも良いぜ!」
「やったるぜ!」
「あっ。そう言ってる間に……来たみたいよ?」
坑道の奥から、何かがやって来る気配を感じ、一同は戦闘体勢を取った。
「戦闘開始だな」
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「そんじゃあ、ジュエル。囲いを作ってくれ」
《クキュゥ ♪ クッ、キュゥゥゥ!》
パタパタと小さな翼を動かして、地面から三メートルほど上に上がると、場所を確認して力を行使する。
ゴゴゴゴゴッ
地面が隆起し、一メートルほどの高さで、件の坑道の入り口から一本道を作り、現在フィルズ達が居る、拓けた場所を丸く円形に囲った。
「「「「「おおっ~」」」」」
冒険者達と少し離れて見ていた騎士達も、囲われたこの場所を見回して距離感を把握しているようだ。
「これだけ広ければ……」
「鉱山が稼働していたら、これだけの場所は取れなかっただろうな……」
「なんとか訓練場の倍はあるか……」
魔獣との戦いとなると、それなりに広い場所が必要だ。数も予想できない。とはいえ、一本道で撃ち漏らしたものを相手にする場所だ。それほど酷い乱戦にはならないだろう。
「騎士の兄ちゃん達は、あそこから外に出て、万が一にも外に飛び出す奴がいた場合、対処を頼む」
人一人出入りできる割れ目を指差して、この場からの退場を願う。
「えっ! 私たちも戦うが?」
「あんたらは、対人戦が主だろ? ちょい耳貸して」
「ん?」
不満そうな騎士達を集めて、フィルズは小さな声で伝える。
「町の方の見回りをして欲しいんだよ。今回のトンネルを貫通させた奴らは、どうもセクラ伯爵領から来ているみたいでな……」
「っ、セッ……二つ隣の領ですよね?」
「ああ。ここの元男爵とは折り合いが悪かったと聞いている。そこから、盗んだ鉱石をガーネルに卸しているらしい」
「ガーネルというと……あの、坊ちゃんの所で引き取った……」
ガーネルは、この国の隣国の一つ。王妹のレヴィリアが一度はその国の王家に嫁いだ。そして、国への不満から、民の一部が盗賊となって、この国にやって来ていた。国を乱したレヴィリアが悪いと思い込み、復讐するために行動に移した彼らは現在、この鉱山から少し離れた集落で、作物の品種改良や土壌改良の研究をしている。
「あいつらは関係してねえが、もしかしたら、あの国の土地の荒廃は関係があるかもしれん」
「……なんか大事になりそうな予感がするんですが……」
騎士達が不安そうな顔を向けた。これにフィルズは自信を持って頷く。
「そうだな。多分、面倒臭いことになる」
「坊ちゃん……」
「そんな情けない顔すんじゃねえよ。でだ。頼みたいのは、対人の部分だ。コソコソ盗みを働いて、それもこんな騒ぎにしてくれた相手だ。他にも何か仕掛けてくるかもしれん」
「……ここで魔獣の相手をしている間に、町で何かするかもしれない……と?」
混乱の最中に、町でも騒ぎを起こすということもあり得そうなのだ。
「そういうこと。他国の間者が入ってる可能性もあるんだ。それも、この国に良い感情を持ってない。あり得るだろ?」
「確かに……団長の方には」
「連絡済みだ。あちらでも警戒してもらう」
「分かりました。巡回させます」
「頼んだ」
「はっ!」
すぐに三人ほどでグループを組んでいく。それを見て、感心しながら、フィルズは言い忘れた事を思い出す。
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「あの国の間者が入るならば、あそこが一番危険では? 言っては何ですが……彼らは国を裏切った者と見られているはずです」
国を見限って、この国へやって来たとあちらの国では判断する可能性は高い。彼らは家族ごと来ているのだ。そう見られても仕方がないだろう。
「だからだよ。接触してくるなら、確実に捕まえられるだろ」
「……囮ですか……」
ニヤリと笑うフィルズ。その顔を呆れた様子で騎士達は見る。
「あそこに手を出すなら、あの国が本当に仕掛けて来るって証拠にもなるだろうが」
「……まあ、そうですね……分かりました。巡回ルートからは外します」
他国の、盗賊となってこの国に被害をもたらした犯罪者と見て、騎士が守らないこともあり得ると思わせられる。だから、不思議には思われないだろう。自然に、罠を張れる。
「おう。心配すんな。隠密ウサギの配置は完了してるからなっ」
「……敵の方が心配になりましたよ……」
微妙な顔をされた。心配無用なのは充分に伝わったようだ。
「よし。じゃあ、そろそろだ。冒険者のおっちゃん達も、準備は良いか?」
「いつでも良いぜ!」
「やったるぜ!」
「あっ。そう言ってる間に……来たみたいよ?」
坑道の奥から、何かがやって来る気配を感じ、一同は戦闘体勢を取った。
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