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ミッション9 学園と文具用品
321 欲しいの?
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フィルズは姿を現したゴーレムに目を丸くしていた。
「え? あの辺のやつ、大き過ぎじゃね?」
《やはりですか?》
「一番後ろのなんて、這って出てきてんじゃん……奥ってまだ詰まってんの?」
《詰まっています。大まかに分けますと、小が三体、中が二体、大が三体です》
「ゴーレムって、大きさ違うんだ? 昔の資料には大きさのことなんて書いてなかったんだが……」
そんな事は知らないと想定外の事を目の当たりにし、下調べ不足を後悔した。
《悔しいのですか》
「……お前……よく分かってるじゃん」
《事前の知識は、十分過ぎるほど欲しがるのを知っておりますので。そのために我々を作られたのでしょう?》
「ははっ。まあな。気に入らないか?」
《いいえ。寧ろ喜ばしいことです。存在意義を考えずとも理解できるのですから》
そんな話をしていると、ゴーレム達をハナが結界でこちらに来ないように堰き止め、ギンが凍らせて地面や壁に接する部分で固定しようとしていた。
「お前……そういう所、人間臭いかも」
《……嫌ですか?》
「ん~、俺は別に。個性が出て来てて良いと思うけど、お前らは?」
《……個性……なるほど……嫌ではありません。他のものも、同意見のようです》
「そりゃあ、良かった」
《……》
エンやジュエルが坑道を崩壊させないようにと声をかけているのを、何となく聞きながら、そんな話をする。フラットが軽く考え込んでしまったので、フィルズはハナとギンで動きを止めたゴーレム達を、どうやって倒そうかとエンとジュエルで話し合っているのを微笑まし気に見つめて呟く。
「あんな大きいのは、捕獲出来そうにないな」
《捕獲指示した二体は、あの小さいものよりも更に少し小さめです》
問題なくフラットは再起動した。
「おっ。マジか」
《あの小さいものでも、拘束して運ぶのは無理がありますから》
「今回のは生捕りだし?」
《本当に無茶を言われます》
ため息を吐いているように見えるのは、気のせいではない。
「ええ~、だって、気にならねえ? お前らは俺が作ったけど、あのゴーレムは、自然発生だぜ? どうやったら自然発生するんだよっ。あの動き方もさあっ」
地面にギンの氷で縫い止められてしまったゴーレム達は、自分たちのその足の氷を、手で剥がそうとしているようだ。座り込んで、揃って指で足を掻いている様子が、なんだか哀愁を誘う。
「あれ、あの行動。可愛いくね?」
《……哀れだとは思います……》
「時々首傾げるんだけどっ」
取れないなあと思っているように見えた。そんな様子を指さして、フィルズは笑っている。フラットは同情的だ。
《可哀想です……》
「え~、欲しくね?」
《……なるほど……》
やっと取れたと立ち上がった小さな一体が、人であるフィルズの存在に近付こうと歩き出し、ハナの結界に顔をぶつけて、首を傾げた所を見て、フラットは頷いた。
《間抜けな感じは、確かに可愛いらしく、癒されそうです》
「だろ?」
《捕獲班に、無闇に傷付けないように指示を徹底します》
「おう。よろしく~」
《はい》
フラットは、捕獲というより、保護しようと意識を変えたようだ。可愛さを理解したらしい。
「さてと。倒すか」
《……可愛いのではなかったのですか……》
可愛いと、欲しいと散々言っておきながら、次の瞬間には、倒すと言う。この切り替えの速さに、フラットは戸惑ったようだ。
「ん? だって、大きいじゃん」
《……外まで誘き出して、結界で閉じ込めたり……》
「え? 欲しいの?」
《……ほ……》
「ほ?」
ニヤニヤとフィルズが笑ってフラットを見下ろす。それに気まずさを感じたように、目を逸らしながらも、感じた気持ちには嘘は付けなかったようだ。そんなフラットの変化をフィルズは楽しげに見つめていた。
《壊すのは可哀想です……捕まえたもので研究し、そのまま活用してはどうでしょう。主様ならば可能では?》
「まあな。いいぜ? 外に出して、閉じ込めるか」
《はい》
「なら。ハナ、ギン、解放してやれ。ちょい外まで行ってくるから、細かい魔物とかの処理は引き続き頼むぞ」
《ワフっ!》
《クゥン!》
《キュン!》
《クキュ!》
「フラットはここでこいつら見ててくれ」
《……はい》
「頼んだぞ」
《はい》
フラットは、少しばかりフィルズに悪いなと思う様子を見せていたが、フィルズが笑って伝えれば、気にしなくて良いのかと察したようだ。
フィルズは満足げに笑いながら外に向かって歩き出す。ゴーレムを引き連れてだ。
「そんじゃあ、すぐ戻ってくるから、それまでよろしく」
そうして、坑道のゴーレム退治から、やる事が坑道内の掃除へと切り替わった。魔物退治も、エン達が嬉々として行ったため、三日とせずに全ての坑道内の掃除が終了した。
その掃除だが、その間にもフィルズはゴーレムの研究に取り掛かっていた。ゴーレムの脅威は無くなったため、隠密ウサギとエンやジュエル達が、応援に来た冒険者や騎士達を連れて、楽しそうに一緒に回ってくれたようだ。
「うぉぉぉっ。ハナちゃん最強じゃんっ」
「可愛いっ、可愛いっ、何だよ、あの丸い乗り物っ」
「エンくんの技すごっ。ってか怖っ」
「ジュエルちゃんのサポートが神ってる!」
「ギンくん……これ、やばいわ。冷えるわ……」
「う、ウサギさまっ。それ……俺らに向けないでくださいね?」
《さすがに首は飛ばしませんよ……》
「ですよね……」
それぞれに交流したようだ。
「「「「「また一緒に仕事しようね!」」」」」
そんな約束もするほどだった。そして、ゴーレムを捕獲して三日後。フィルズはゴーレムの命令権を獲得した頃。
山の裏側に侵入している者達を数名を、隠密ウサギが捕えることに成功した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「え? あの辺のやつ、大き過ぎじゃね?」
《やはりですか?》
「一番後ろのなんて、這って出てきてんじゃん……奥ってまだ詰まってんの?」
《詰まっています。大まかに分けますと、小が三体、中が二体、大が三体です》
「ゴーレムって、大きさ違うんだ? 昔の資料には大きさのことなんて書いてなかったんだが……」
そんな事は知らないと想定外の事を目の当たりにし、下調べ不足を後悔した。
《悔しいのですか》
「……お前……よく分かってるじゃん」
《事前の知識は、十分過ぎるほど欲しがるのを知っておりますので。そのために我々を作られたのでしょう?》
「ははっ。まあな。気に入らないか?」
《いいえ。寧ろ喜ばしいことです。存在意義を考えずとも理解できるのですから》
そんな話をしていると、ゴーレム達をハナが結界でこちらに来ないように堰き止め、ギンが凍らせて地面や壁に接する部分で固定しようとしていた。
「お前……そういう所、人間臭いかも」
《……嫌ですか?》
「ん~、俺は別に。個性が出て来てて良いと思うけど、お前らは?」
《……個性……なるほど……嫌ではありません。他のものも、同意見のようです》
「そりゃあ、良かった」
《……》
エンやジュエルが坑道を崩壊させないようにと声をかけているのを、何となく聞きながら、そんな話をする。フラットが軽く考え込んでしまったので、フィルズはハナとギンで動きを止めたゴーレム達を、どうやって倒そうかとエンとジュエルで話し合っているのを微笑まし気に見つめて呟く。
「あんな大きいのは、捕獲出来そうにないな」
《捕獲指示した二体は、あの小さいものよりも更に少し小さめです》
問題なくフラットは再起動した。
「おっ。マジか」
《あの小さいものでも、拘束して運ぶのは無理がありますから》
「今回のは生捕りだし?」
《本当に無茶を言われます》
ため息を吐いているように見えるのは、気のせいではない。
「ええ~、だって、気にならねえ? お前らは俺が作ったけど、あのゴーレムは、自然発生だぜ? どうやったら自然発生するんだよっ。あの動き方もさあっ」
地面にギンの氷で縫い止められてしまったゴーレム達は、自分たちのその足の氷を、手で剥がそうとしているようだ。座り込んで、揃って指で足を掻いている様子が、なんだか哀愁を誘う。
「あれ、あの行動。可愛いくね?」
《……哀れだとは思います……》
「時々首傾げるんだけどっ」
取れないなあと思っているように見えた。そんな様子を指さして、フィルズは笑っている。フラットは同情的だ。
《可哀想です……》
「え~、欲しくね?」
《……なるほど……》
やっと取れたと立ち上がった小さな一体が、人であるフィルズの存在に近付こうと歩き出し、ハナの結界に顔をぶつけて、首を傾げた所を見て、フラットは頷いた。
《間抜けな感じは、確かに可愛いらしく、癒されそうです》
「だろ?」
《捕獲班に、無闇に傷付けないように指示を徹底します》
「おう。よろしく~」
《はい》
フラットは、捕獲というより、保護しようと意識を変えたようだ。可愛さを理解したらしい。
「さてと。倒すか」
《……可愛いのではなかったのですか……》
可愛いと、欲しいと散々言っておきながら、次の瞬間には、倒すと言う。この切り替えの速さに、フラットは戸惑ったようだ。
「ん? だって、大きいじゃん」
《……外まで誘き出して、結界で閉じ込めたり……》
「え? 欲しいの?」
《……ほ……》
「ほ?」
ニヤニヤとフィルズが笑ってフラットを見下ろす。それに気まずさを感じたように、目を逸らしながらも、感じた気持ちには嘘は付けなかったようだ。そんなフラットの変化をフィルズは楽しげに見つめていた。
《壊すのは可哀想です……捕まえたもので研究し、そのまま活用してはどうでしょう。主様ならば可能では?》
「まあな。いいぜ? 外に出して、閉じ込めるか」
《はい》
「なら。ハナ、ギン、解放してやれ。ちょい外まで行ってくるから、細かい魔物とかの処理は引き続き頼むぞ」
《ワフっ!》
《クゥン!》
《キュン!》
《クキュ!》
「フラットはここでこいつら見ててくれ」
《……はい》
「頼んだぞ」
《はい》
フラットは、少しばかりフィルズに悪いなと思う様子を見せていたが、フィルズが笑って伝えれば、気にしなくて良いのかと察したようだ。
フィルズは満足げに笑いながら外に向かって歩き出す。ゴーレムを引き連れてだ。
「そんじゃあ、すぐ戻ってくるから、それまでよろしく」
そうして、坑道のゴーレム退治から、やる事が坑道内の掃除へと切り替わった。魔物退治も、エン達が嬉々として行ったため、三日とせずに全ての坑道内の掃除が終了した。
その掃除だが、その間にもフィルズはゴーレムの研究に取り掛かっていた。ゴーレムの脅威は無くなったため、隠密ウサギとエンやジュエル達が、応援に来た冒険者や騎士達を連れて、楽しそうに一緒に回ってくれたようだ。
「うぉぉぉっ。ハナちゃん最強じゃんっ」
「可愛いっ、可愛いっ、何だよ、あの丸い乗り物っ」
「エンくんの技すごっ。ってか怖っ」
「ジュエルちゃんのサポートが神ってる!」
「ギンくん……これ、やばいわ。冷えるわ……」
「う、ウサギさまっ。それ……俺らに向けないでくださいね?」
《さすがに首は飛ばしませんよ……》
「ですよね……」
それぞれに交流したようだ。
「「「「「また一緒に仕事しようね!」」」」」
そんな約束もするほどだった。そして、ゴーレムを捕獲して三日後。フィルズはゴーレムの命令権を獲得した頃。
山の裏側に侵入している者達を数名を、隠密ウサギが捕えることに成功した。
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