エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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16th ステージ

177 転ばすで

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泥沼がゆっくりと赤い椅子に座っていた子ども達に迫っているだが、誰も動かなかった。

「ん? なんや? ほれ、こっちに走らんと、泥んこになるで? ちなみに、首まで埋まる仕様やぞ?」
「……え?」
「は?」
「せやから、走らんとしらんで?」

ついに一番後ろの子ども達が、後五歩ほどの距離で泥に突っ込むというところで、ようやくノロノロと歩き出す。

床もゆっくりな速度なので、普通の歩きの速さでも距離は稼げる。

「なっ、なんでユカが……っ」
「なんであんなのが、とつぜんできるのよ!」

半数ほどは、泥沼がこんな屋内に唐突にできたことに戸惑っているようだ。そして、それも含めて、全員が、床が動くというのが理解できていなかった。

「どうなっているの!? ユカが動くなんておかしい!」
「なんかヘンなかんじ……」
「ね、ねえ……なんか、速くなってない……?」
「「「「「っ、なってる!!」」」」」

少しずつ、速度が速くなり、早足になった。

「ほれほれ、油断すなよ~」

そんな掛け声をかけた後、リンディエールは、後ろにいる青い椅子に座っていた子ども達の方を向く。

「さてと。ほんなら、あんたらの方な。あっちは必死さを出す必要があって、ああなっとるけど、あんたらはコレや」
「「「「「っ!?」」」」」

出て来たのは、横に長く繋がったランニングマシン。前にバーもあるので、少しは安心だろうか。

「こ、これは?」
「はい。横に並んで、前のバーに掴まってや」
「こ、こうでしょうか」
「ん。ええね。では、早足手前の散歩から」
「あ、う、動く」
「歩かないとっ」
「び、びっくりした……」

やはり、足下が動くというのは、初めてだと驚くようだ。やっている人を今日まで見た事もなかったのだ。仕方ないだろう。

「はーい。ちゅうもーく!」

全ての子ども達の前に、四角い画面が現れた。

「その目の前にある画面に向かってこれから出す問題の答えを言ってや? 周りの子の答えは聞こえんようにしとくでな? ズルはダメやで? ちょい試しな。例題①! あなたは一年何組ですか?」
「「「「「え……っ!! あ!」」」」」

画面に、問題が文字で現れた。それに驚くようだ。

「ほれほれ。早お答えな。もっと速おなるで?」
「「「「「っ!!」」」」」

足下がぐんと速くなったのだ。それに慌てて合わせて、答えを口にした。すると、少し遅くなって、早足手前の速さに戻った。それは、舞台の上にいる子ども達も同じだ。

泥沼に近付いてしまった子ども達は、慌てて舞台の近くまで上がってくる。

「ええな。全員が答えるまで段階を追って速おなるでな? 半数が答えられたら、速度は戻るが、答えられへんかったもんは、転ばすで」
「え……」
「……ころばす……」

半数が答えられたら終わりだと知って、中には、答えること、考えることを放棄しようとした者達がいたようだ。それに気付いて、リンディエールは目を細める。

「ズルはダメや言うたやん。ほんなら、例題②! うち、私の家名は?」
「「「「「っ!!」」」」」

半数が戸惑いながらもなんとか答えた。舞台の上の子ども達の方が人数もあり、落ち着くのが早いようだ。

そして、答えられなかった者達が、同時に転んだ。

「「「「「きゃぁっ!」」」」」
「「「「「うぐっ」」」」」

顔からいっているのがかなり居た。

「……転び方も知らんとは……難儀な生き物やなあ……」

だが、リンディエールは手加減する気はなかった。泥沼に足の先が入った子ども達が、泣きそうな顔で全速力しているのを見て、問題はなさそうだなと判断した。

「よーし。ほんなら、本番始めるで~。気張ってや! 先ずは簡単な足し算からな?」

勉強しながら鍛えるという無茶振りを子ども達は受け入れるしかなかった。まだまだ一時間目が始まったばかりだ。









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読んでくださりありがとうございます◎


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