エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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15th ステージ

167 腹時計か……

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ヘルナ達から、国際会議をやるとするならば、聖皇国の迷宮内で行ってはどうかという話が出た。彼女達がそう決めたのならば、ほぼ決定だ。

よって、この日は朝から、リンディエールとヒストリアで会場の場所の選定と設営のために、聖皇国の迷宮を見て回っていた。

「元々、この迷宮は氾濫で地上がどうにもならんくなった時の避難所やし、場所としては問題なさそうやんなあ」

地上に住めなくなった場合は、地下都市として使え、戦えない人たちの避難所としても利用できる。

女神は、そうした救済措置を用意していた。ただし、この迷宮を攻略できればの話だ。

「そうだな……ケフェラルで見た人型のゴーレムが襲ってきた時の様な場所は、ここにはないか?」

イメージとしては、大きなダンスホールにも使えそうな広さの場所が好ましい。

「あ~、そんなら、ケンタウロスの三兄弟が出た辺りが近いかもしれへんなあ。やっぱボス部屋やて」

この聖皇国の迷宮攻略には、ヒストリアは参加できなかった。だから、リンディエールの記憶が頼りだ。

「マッピングはしなかったのか?」
「ん? 頭には入っとるし、ソルじいちゃんと二人だけの攻略やってんもん。わざわざ紙に起こす必要あらへんやん?」

この迷宮は、ほぼリンディエールと教皇ソルマルトだけで攻略を終えた。神官達を連れて来て、訓練として参加させようとは試みたのだが、難易度が高過ぎて訓練にならなかったのだ。無駄に恐怖心を植え付けただけだったようだ。

「まあな……けど、珍しいな」

ヒストリアが意外そうに隣を歩くリンディエールを見下ろす。顔を上げたリンディエールは首を傾げながらも笑う。

「うちならやるう思っとった? 正解やで? 時間が出来たら後でやればええか~思っとってん。けど、せっかくなら神官さんらの仕事にしたらええやん? って」
「良い経験にはなるか……」
「やろ?」

マッピングの仕方を覚えるついでに、神官達に地図を作ってもらおうと思っていたのだ。最初から戦いながらでは難しいだろう。マッピングは、やり慣れなくては辛いものだ。

「魔物も出て来おへんもん。やりやすいやろ?」
「一応、進んではいるのか?」

これ以降、聖皇国の迷宮では、都市計画ではないが、ある程度ここでも生活が出来るように施設を整えるつもりでいる。マッピングは必須だろう。しかし、リンディエールはこれに関わっていない。ソルマルトに頑張れと言ってある。

「知らんねん。他の迷宮にかかりきりやったやろ? ソルじいちゃんに会ったんも、この前、ブランシェレルの人らにキレた時が久し振りやってん」
「ああ……相当キレていた、あの時か……」

ヒストリアとしても、使い魔の目でソルマルトが弱っている頃から見ている。穏やかで落ち着いた人柄の人だと認識していた。それが、ブチギレたのだ。三度見くらいした。

「話も出来ひんかったわ……」
「何人か、説教に加わっていた神官達の目元はヤバそうだったがな……」
「クマこしらえ過ぎやよなあ……」

神官職は、家に帰れば仕事と切り離される一般職とは違う。公私が分け難いものだ。そして、真面目な神官ほどキツくなる。

「今の神官さんら、真面目な人が多いんよ。だから、ノルマも作って、地図起こしとるんちゃうかなあ」
「迷宮内は一定の光量もあるしな……夜でも問題なく作業できるだろう。そうなると、寝不足になるのも当たり前だな」
「腹時計きちんとしとかな、うちでもまだ時間忘れるもん」
「腹時計か……」
「運動量と消費時間、調整するん好きなんよ。ピタっと昼の時間や夜の時間が合うと嬉しいんやで~」
「……そこまで気にした事なかったな……リンは、相変わらず、変な所に拘りがあるのな」
「うちとしては、変やないんやけど?」
「……そうか」

首を傾げて、おかしいかなと自問するリンディエール。答えは出ないだろう。

そうして一日かけて結局ボス部屋を改装することに決まった。

「いやあ~、飾り甲斐がありそうやなあっ」
「……何にもないもんな……」
「せやかて、あのゴーレム居った所みたいに、壁に顔の彫刻がいっぱいあるんも嫌やん?」
「っ、ない方がいいな!」

ヒストリアも張り切って装飾などの改装に着手した。







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読んでくださりありがとうございます◎

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