上 下
165 / 181
15th ステージ

165 力押し推奨やでな!

しおりを挟む
教皇ソルマルトやヘルナ達年長組が、捕まえたブランシェレルの者達をしっかりとお説教してくれるということで、リンディエールはヒストリアと他の国のブランシェレルの根城を潰し回ることにした。

「名簿の回収も完了や。ほれ、あんたらも行ってこいっ」

ヒストリアが使い魔を使って、噂を流し、この国でも攻め込まれると焦らせ、急いで対策を練るべきではないかと集会を開かせる。そうして追い詰めた彼らを一網打尽にするのだ。

そして、ソルマルト達が待つ聖皇国の、綺麗になった迷宮内の広場へと転移門を繋げて、そこに人数と名を確認しながら放り込む。

名と人数の記録は、ソルマルトから教会の人員が派遣されていた。今の神官達は、ソルマルトやヘルナ達から指導を受けていてまともで真面目だ。彼らもブランシェレルには怒っているようだった。

「きちんと名乗りなさい。家名が嫌でもです! 当主への説教ができないでしょう!」
「家の方で生活していけないようならば、必ず力になります。ですが、テロ行為を行うような組織はダメですよ」
「あなたのご家族達には、あなたがどれほど心苦しい思いをしてきたか、しっかりと分からせます。その悔しさも後で話してくださいね」

本気で子ども達やこの組織に入らずにはいられなかった者達を諭していく。

一方で、リンディエール達実働部隊にも、その国ごとで協力者がいた。

「そっちで把握しとった子どもらは全員見つかっとるな?」
「はい。先日、連れ去られた第二王子も保護できました」
「さよか。けど、王子持ってかれとってどうすんねん! それでも暗部か!」
「っ、面目次第もございません……っ」

その国の暗部を使い、調べさせ、更に使い魔でも探らせて、メンバーを特定した。漏れがないよう、裏から包囲も抜かりなくさせている。

この間の王家の警護はエリクィールや、前剣聖が買って出た。その友人の拳王とも呼ばれる武闘術の天才なんかも、子どもを使って気に入らんという理由で手伝ってくれている。

どの国に行っても、たいてい、祖父のファルビーラや祖母のヘルナ達の知り合いや友人達が手を貸してくれる。そういった人たちは、王族と関係を持っているため、話も通してくれるので有り難い。

「王子も、一度説教はさせてもらうよって、返すんは、明日以降や伝えといてくれるか?」
「はい! 剣聖様や他の上位冒険者の方々に王や王妃がお説教を受けているので、寧ろ明日以降の方が有り難いです」

親の方にも言い聞かせる必要がある。年齢も実力も知名度も王族よりも上の剣聖や上位冒険者達ならば、王や王妃達も話を聞かざるを得ない。そもそも、話を聞かないような傲慢な王族は守らない。

「ほんなら、それでよろしゅう。ここも後は任せてええか?」
「もちろんです! ご協力に感謝いたします!」
「ええんよ。掃除は思い立った時にやるんが吉や」
「これを思い立ってすぐにやれる行動力には感服いたします」
「うちは力押し推奨やでな!」
「なるほど……日頃の鍛錬がものを言うのですね……勉強になります!」
「あんさんらも気張りやっ」
「「「はい!」」」

ふむふむと頷く者が多かった。しっかりとリンディエールの冗談混じりの言葉が、訳されて通じているのが面白いと、ヒストリアは彼らとのやり取りをずっと見て笑っていた。

「冗談で済まさずに真面目に聞くとは、やるなあ」
「ヒーちゃん。何感心しとんの? 次行こうや」
「そうだな」
「今日はあと二つ国を回んで」
「強行軍だな」
「もう王城に護衛の冒険者のおっちゃんらが待機し始める頃やもん。急がなあかんわ」
「はいはい」

そうして、十日とせずにほぼ大陸中の掃除が終わった。

「さあ~て。人材は有効に使わなあかんよなっ」
「……リンの言う力押しで、大氾濫も何とかなりそうに思えてきたよ……」

ブランシェレルのメンバーを鍛え直すと決めていた。






**********
読んでくださりありがとうございます◎
遅れがちで申し訳ありません。



しおりを挟む
感想 561

あなたにおすすめの小説

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです

シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」  卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?  娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。  しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。  婚約破棄されている令嬢のお母様視点。  サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。  過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?

時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。 どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、 その理由は今夜の夜会にて

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

処理中です...