エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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14th ステージ

151 普通じゃないよな?

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グランギリアの作る夕食がそろそろ出来上がるという頃。リンディエールはついに屋敷を完成させていた。

「完成や!!」

ドヤと鼻息も荒く、腰に両手を当てて出来上がった屋敷を前に仁王立ちするリンディエール。それに気付き、フィリクス達の指導をしていたヒストリアが歩み寄る。

「リン……本当にこの短時間で造れてしまったのか?」
「なんや? ヒーちゃん信じとらんかったん? ウチはいつでも有言実行が信条やで?」
「いや、それは嫌と言うほど分かっているんだが……普通じゃないよな? 分かるだろう? これは普通じゃない」

ヒストリアは、なんとかリンディエールに普通・・を理解させようとしてみた。だが、リンディエールは笑うだけだ。それも鼻で笑い飛ばす。

「はんっ。普通なんて、平均やろ? 平均なんてアテにならへんやん。百人中百点が五十人で零点が五十人でも平均は五十点なんやで?」
「……いや、それは極端過ぎ……」
「ヒーちゃんっ! 真ん中のどっちつかずのどこが面白いねんっ」
「いや、だからな?」
「普通なんて、その他大勢に隠れるだけで、何もせんでも流されるままでええ、楽な道やんか! それでええと思っとるんか!?」
「っ、いや、だが……っ」
「安牌拾って眠そうな顔しとるより、ドキドキが欲しいのが人やろ! 人生何事も冒険や!」
「うん。もう分かったっ。普通じゃなくて大丈夫だっ」
「分かればええねん」
「……」

ヒストリアは遠い目をして項垂れた。何も映らない目でゆっくりと出来上がった屋敷を見上げた。

そう。見上げた。ゆっくりとそれを認識していく。

「……五階建ては……本当に冗談だったんだが……屋敷じゃなく、これはもう城だよな……」
「いや~あ。ヒーちゃん、外観はお任せやったやろ? 五階建ての屋敷はどう頑張っても、ウチじゃあ、四角張った校舎っぽくなりそうでなあ。ほんならいっそ、城かって」
「……そうか……」

ヒストリアが書いた設計図は、家の間取りだった。だから、外観はリンディエールのセンスにかかっていたのだ。

しかし、五階建ての屋敷というのは、想像しづらく、それならばと城っぽくなったというわけだ。

「あ、一番上の最上階なあ、天守閣風になっとるんよ。全方面見下ろせるで! 森が緑の絨毯みたいで感動すること間違いナシや!」
「……やっぱり突き抜けてるのか……」
「せやった。結界、上まで張り直してや」
「……分かった……」

ここは凶暴な魔獣が生息する森のど真ん中だ。ヒストリアの結界と気配によって、魔獣達は近付かないし近づけないだけ。

その結界の範囲を突き抜けてしまったので、その分を伸ばす必要があった。

ヒストリアはすぐに結界を上まで広げた。そこで、彼は気付く。

「っ、て、天守閣……?」
「せやで?」
「ま、まさか、あのっ、時代劇のっ! っ、この城っ、そうだよ! 城みたいじゃないか!」
「混乱しとるん? まあ、言いたいことは分かるで? ヒーちゃんの好きな暴れん坊な将軍さまが居るような日本の城をイメージして入れ込んだんやからな! 白が眩いやろ!」
「最高じゃないかっ!!」

城は城でも、上の方は日本の城のような感じにしたのだ。天守閣なんて、見た目そのまま。

時代劇好きなヒストリアには嬉しいはずだ。

「ふっふっふっ。三階は畳部屋。それも、襖で部屋を区切ってあるでなっ。アレが出来るで!」
「アレかっ!」

ヒストリアは、襖を開けても開けても突き当たりが見えないというのを体験したいと言っていたのだ。

「一階の方が広いで、そっちにとも思ったんやけど、ファンタジーな力がある言うても、建物の構造上、壁がないんは、不安でなあ」
「三階でも充分だ!」
「あとは、襖にこれぞって絵を描かんとなあ! やっぱ、墨絵で龍とかどうや!」
「虎も欲しい! 富士山も!」
「渋いなあっ! 是非それで!」
「うむ!」

キャッキャ、ワハハとはしゃぐリンディエールとヒストリアを見て、他の面々は首を横に振っていた。

「「「「「ないわ~……」」」」」
「……リン様のストッパーという認識は改めましょうか……」

ヒストリアも間違いなく一緒にとんでもない事をするだろうと、これにより確信できてしまった一同だった。

そこに、ヒストリアの解放の報を聴き、次々とこの場を訪れる者があった。







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