エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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13th ステージ

138 入れ替えるか

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リンディエールとしては、これはお茶会。メンバーが間違いなく首脳陣であっても、リンディエールにとってはお友達だ。

質問や話題が、国家間ですべきものであっても、リンディエールが率先して解決した問題なので、お友達同士で楽しむ会話の一つという認識になる。

「貴身病とは、よく言ったものよ。この名を付けた時点で、原因は分かっていたのだろう」

シーシェの女王アーネストが、グランギリアに淹れられたお茶を飲みながら目を伏せた。

「よかれと思った事が仇となるとはなあ。思いもよらんわな」

ケフェラルの王、バーグナーが腕を組んでうんうんと頷いた。

「読めぬだけで、解決法はすでにあったというから驚きだ」

ブラムレース王は、苦笑を浮かべながらカップを手に取って、その香りに心を落ち着けようとしていた。

「ふふっ。さすがはリンだな。こちらでも、古代の……」
「『ベナクト医学大全』です」

すかさず息子のアリスレアが補足する。

「うむ。それを探して読み解かせたのだが、ほとんど読み解けないと言われてなあ」
「えらいでたらめなもんが写本として出回っとったらしいでなあ。王家の方の蔵書も怪しいてなると……今後困るやんなあ……」

リンディエールは、新たに知った問題に、考え込む。

「せめて王家の方の蔵書は正しいの入れといてもらわんとなあ……」
「それは、リンがチェックするしかなくなりますよ?」
「やよなあ……どないしよか……」

クイントの言葉に、リンディエールは行儀悪くテーブルに肘をついて、更に考え込む。

「う~ん……よし!」
「リン?」

決めたというように顔を上げるリンディエールに、クイントは目を瞬かせる。

こういう時。リンディエールは、とんでもない答えを出す。その予想は外れず、自信満々で言った。

「全部入れ替えるか」
「「っ、いやいやいやっ」」

クイントとブラムレース王が慌てた。入れ替える量を知っているため、それが無茶なことだと分かったのだ。

「ええやん。写本の魔法の練習にもなるし。ヒーちゃんの蔵書と比べたらそう量もあらへんやん」
「……リア様の蔵書の量を知りません……」
「半端な量じゃないんだろうが……王宮の蔵書もかなりのものだろう?」

知らなくても当然だ。クイントもブラムレース王も、ヒストリアの足下にいつも積み上がっている本の量はすごいと思っているが、本当の量を知らない。

ヒストリアもリンディエールも、その時に必要ないものは亜空間に放り込んでいる。よって、本当の蔵書の量を知り得なかった。

「この前、王宮の蔵書一覧をケンじいちゃんに見せてもろおてん。ヒーちゃんが、ほぼ全部原書を持っとる言うたんよ」
「……そうなりますと、王宮にある原書が原書でない可能性が……」
「あるんやない? 多分、どっかの国でも原書やって主張する同じもんが出てきたり」

これに、静かに聞いていたアーネスト女王が口を挟む。

「確かに。かつて、隣国とそのような言い合いの末に戦争になったという記録があったぞ」
「ありそうやな~。こっちのが原書で、正当な持ち主とかってやったんや?」
「そのようだ。ただ、最終的にその原因となった本を、二つとも焼いたらしい。それで決着を付けたと」
「うちでもやるわ。本一冊のことで戦争されては堪らんからなあ」
「私もだ」

アーネスト女王がその当時の王だったならば、間違いなくバカバカしいと言って、反対派を無視して焼いて見せるだろう。

それに笑いながら、バーグナー王も口を開く。

「ほお。こっちでも同じような話が残っていたぞ。まあ、その時は氾濫が起きて、うやむやになったらしいがな」

どの国でも、同じような問題が起きたことがあるようだ。貴重な原書は、財宝よりも価値があったのだろう。

「因みになんて名前の本やの?」

確認すると、アーネスト女王とバーグナー王が考え込む。答えたのは、それぞれの王子だった。

「『コルマの魔術原論』です」
「それだな」
「『マーラントの転移魔術考察集』だったかと」
「そんな名前だったなあ」

どちらの王子も優秀そうだ。

そして、リンディエールは視線を宙に投げ、苦笑する。

「それ……どっちも原書はヒーちゃんが持っとるわ……」
「「あ~……」」

クイントとブラムレース王も苦笑い。そして、他は意味不明だとお手上げ状態になっていた。

「「「「……」」」」

ここで恐る恐る手を上げたのはクロウだ。

「あの~……その『ひーちゃん』? というのはどなたですか?」
「せやった!」

説明してなかったとはっとしたリンディエール。

「会ってみるか?」
「「えっ」」
「……はあ……それ、会って大丈夫な人ですか……?」

クイントとブラムレース王が腰を浮かせるのを見て、クロウは言うんじゃなかったと、とても不安そうにしていた。








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