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10th ステージ
101 種類やろ?
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三百年程前、この国が建国されてしばらくした頃。当時、国に忠誠を誓ったフレッツリー家、リシャーナ家、フリュース家の三家を『盟約の御三家』と呼んだ。
フレッツリー家は文官を。リシャーナ家は武官を。フリュース家は使用人を育成し、より良い国のために人材を確保するというのが、盟約の内容だ。
守れば国は富み繁栄し、破れば災いを呼ぶと言われていた。古い誓いによる呪いだった。
しかし、百年と少し前、リシャーナ家とフリュース家は一つになり、リフス家となった。この頃にも貴身病の影響が出ており、家の存続が危うくなったためだ。
なんとか盟約だけは守らねばならないと、考えて結果だった。
そう、守られているはずだったのだ。だが、その盟約、実はもうかなり揺らいでいるというのは、リンディエールが調べた結果分かっている。
「この盟約、三つの家というか、三者存在するのが大事やってん……だから、ここで一つ確実に分けよか思うてな」
修道院の中庭にあるベンチに腰掛け、リンディエールは、悠に説明する。これに、悠が昔の記憶を思い出すように確認した。
「クイント宰相の家がフレッツリー侯爵家だよね? で、リフスって、ガルセルスのリフス?」
「ん? ガル……なんやて?」
「ガルセルス。フィリクスお兄さんと同学年で、脳筋担当」
「脳き……ベンちゃんとこの次男か」
ゲームとして見るなら、確かに脳筋担当という認識でも仕方がない。
「あそこはなあ……どうなるんかなあ……」
「なに? 何か問題? 脳筋は、直感で正解を勝ち取るスーパー君だよ?」
「それ、ゲームの設定やん。あかんて、現実はそうご都合主義もあらへんよ」
「……そうだった……」
リンディエールはどうしてもベンディと比べるため、それが正解というわけではないだろうが、長男も次男も不安要素しか感じられなかった。
「悠ちゃんには、ベンちゃんを紹介しとらんかったなあ。それに……ラビたんをバカにしとった兄やで?」
「え……ら、ラビ先輩が弟……バカにしてたって……それ……最低! ラビ先輩は凄いんだよ!? 女の子の気持ちも、男の子の気持ちも分かってくれるし、面倒見も良いしっ。何より仕事が出来る!!」
グッと拳を握り、先輩自慢をする悠。確かに、悠はセラビーシェルに懐いているようだった。
「せやろせやろ。最近は、グランと一緒になって、うちのドレスも作りおるからなあ」
「それっ。裁縫がめちゃくちゃ早くて正確なのっ。ミシンかっ! ってツッコミそうになったよ!」
裁縫が出来る同年代の男子というのが、悠にはとてもポイントが高いらしい。
「称号に『裁縫名人』あるらしいでなあ」
「へえっ。そっか、その称号が出るとかカッコいいよねっ。なんか、世界に認められましたって感じでさっ。あっ、私も称号増えたんだよ! 『異世界人』だけだったのに、『万能メイド(仮免)』って! 仮免だよっ、仮免っ。笑った」
免許取るものなんだと笑ったらしい。
「それ笑うわ……ってか、称号あんま無かったんやな?」
意外だと首を傾げた。すると、悠も首を傾げ返してくる。
「え? だって称号って、成人までに二つあったら凄いらしいって聞いたよ?」
「……二つ……二つ? 種類か? 種類やろ? 種類で数えるんやよな!?」
まさか違うだろうと、リンディエールは天に向かって吠えた。これに、悠がうろんげな目を向ける。
「……リンちゃんまさか……そこもチート?」
「いやいやっ。ほれ、シュラやラビたんも三つはあったて」
「だってあの二人は凄いって分かってるし。三つなら、うんって思うよ」
この時点で、リンディエールの目は泳ぎまくっていた。
「あ、あれや。グランも多分五つか六つ……」
「グランさんとか、プリエラ師匠は経験年数が違うよ。それに、この前聞いたらプリエラ師匠は六つだって。ねえ……リンちゃんいくつ持ってるの?」
「……」
真顔で口を閉じた。
「リンちゃ~ん。見て確認してよ~。親友でしょ?」
「ううっ……分かったわ……【ステータス】」
久し振りに確認するなと思いながらそれに目を通した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
個称 ▷リンディエール・デリエスタ
(ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)
年齢 ▷10
種族 ▷人族
称号 ▷家族に思い出してもらえた子ども、
家族愛を知りはじめた子、
使用人と祖父母達に愛される娘、
密かな愛され系女子(?)、
目覚め人、エセ関西人(爆笑)、
神竜王(仮)の親友、
*異世界人の悪友、
魔法バカ(特異)、
ゴブリンキングを倒した者、
辺境の小さな英雄、
忠誠の誓いを受けし者(2)、
レベリング馬鹿、
兄に溺愛される者、
年上キラー(!)、
迷宮の覇者(仮免)、
きらめき⭐︎あいどる、
*カレイに?怪盗?(笑)、
神竜王(仮)の加護(特大)、
神々の観劇対象(ニヤリ)
【固定】、
神々の加護(特大)、
神々と繋がる者(任命!)
レベル ▷295
体力 ▷6572000/6572000
魔力 ▷10350000
/10350000
魔力属性▷風(Max)、火(Max)、
土(Max)、水(Max)、
光(Max)、闇(Max)、
無(Max)、時(Max)、
空(Max)
ーーーーーーーーーーーーー
ぱっと見、また称号がバンバン増えているというわけではないので、少しだけホッとする。
しかし、数は異常であることに変わりはない。
「……か、数えるで?」
「うん」
期待する目を向けられ、それならばと素直に数えた。
「っ……に……」
「えっ、十二? 凄っ」
「いや……二十二……」
「……へ?」
綺麗な高めの『へ?』だった。これに、リンディエールは満足げに頷いた。意外性が示せるのは楽しいものだ。
「二十二や!」
「えぇぇぇっ!!」
この後、異常だろうという目を向けられたのは、不本意だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
フレッツリー家は文官を。リシャーナ家は武官を。フリュース家は使用人を育成し、より良い国のために人材を確保するというのが、盟約の内容だ。
守れば国は富み繁栄し、破れば災いを呼ぶと言われていた。古い誓いによる呪いだった。
しかし、百年と少し前、リシャーナ家とフリュース家は一つになり、リフス家となった。この頃にも貴身病の影響が出ており、家の存続が危うくなったためだ。
なんとか盟約だけは守らねばならないと、考えて結果だった。
そう、守られているはずだったのだ。だが、その盟約、実はもうかなり揺らいでいるというのは、リンディエールが調べた結果分かっている。
「この盟約、三つの家というか、三者存在するのが大事やってん……だから、ここで一つ確実に分けよか思うてな」
修道院の中庭にあるベンチに腰掛け、リンディエールは、悠に説明する。これに、悠が昔の記憶を思い出すように確認した。
「クイント宰相の家がフレッツリー侯爵家だよね? で、リフスって、ガルセルスのリフス?」
「ん? ガル……なんやて?」
「ガルセルス。フィリクスお兄さんと同学年で、脳筋担当」
「脳き……ベンちゃんとこの次男か」
ゲームとして見るなら、確かに脳筋担当という認識でも仕方がない。
「あそこはなあ……どうなるんかなあ……」
「なに? 何か問題? 脳筋は、直感で正解を勝ち取るスーパー君だよ?」
「それ、ゲームの設定やん。あかんて、現実はそうご都合主義もあらへんよ」
「……そうだった……」
リンディエールはどうしてもベンディと比べるため、それが正解というわけではないだろうが、長男も次男も不安要素しか感じられなかった。
「悠ちゃんには、ベンちゃんを紹介しとらんかったなあ。それに……ラビたんをバカにしとった兄やで?」
「え……ら、ラビ先輩が弟……バカにしてたって……それ……最低! ラビ先輩は凄いんだよ!? 女の子の気持ちも、男の子の気持ちも分かってくれるし、面倒見も良いしっ。何より仕事が出来る!!」
グッと拳を握り、先輩自慢をする悠。確かに、悠はセラビーシェルに懐いているようだった。
「せやろせやろ。最近は、グランと一緒になって、うちのドレスも作りおるからなあ」
「それっ。裁縫がめちゃくちゃ早くて正確なのっ。ミシンかっ! ってツッコミそうになったよ!」
裁縫が出来る同年代の男子というのが、悠にはとてもポイントが高いらしい。
「称号に『裁縫名人』あるらしいでなあ」
「へえっ。そっか、その称号が出るとかカッコいいよねっ。なんか、世界に認められましたって感じでさっ。あっ、私も称号増えたんだよ! 『異世界人』だけだったのに、『万能メイド(仮免)』って! 仮免だよっ、仮免っ。笑った」
免許取るものなんだと笑ったらしい。
「それ笑うわ……ってか、称号あんま無かったんやな?」
意外だと首を傾げた。すると、悠も首を傾げ返してくる。
「え? だって称号って、成人までに二つあったら凄いらしいって聞いたよ?」
「……二つ……二つ? 種類か? 種類やろ? 種類で数えるんやよな!?」
まさか違うだろうと、リンディエールは天に向かって吠えた。これに、悠がうろんげな目を向ける。
「……リンちゃんまさか……そこもチート?」
「いやいやっ。ほれ、シュラやラビたんも三つはあったて」
「だってあの二人は凄いって分かってるし。三つなら、うんって思うよ」
この時点で、リンディエールの目は泳ぎまくっていた。
「あ、あれや。グランも多分五つか六つ……」
「グランさんとか、プリエラ師匠は経験年数が違うよ。それに、この前聞いたらプリエラ師匠は六つだって。ねえ……リンちゃんいくつ持ってるの?」
「……」
真顔で口を閉じた。
「リンちゃ~ん。見て確認してよ~。親友でしょ?」
「ううっ……分かったわ……【ステータス】」
久し振りに確認するなと思いながらそれに目を通した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
個称 ▷リンディエール・デリエスタ
(ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)
年齢 ▷10
種族 ▷人族
称号 ▷家族に思い出してもらえた子ども、
家族愛を知りはじめた子、
使用人と祖父母達に愛される娘、
密かな愛され系女子(?)、
目覚め人、エセ関西人(爆笑)、
神竜王(仮)の親友、
*異世界人の悪友、
魔法バカ(特異)、
ゴブリンキングを倒した者、
辺境の小さな英雄、
忠誠の誓いを受けし者(2)、
レベリング馬鹿、
兄に溺愛される者、
年上キラー(!)、
迷宮の覇者(仮免)、
きらめき⭐︎あいどる、
*カレイに?怪盗?(笑)、
神竜王(仮)の加護(特大)、
神々の観劇対象(ニヤリ)
【固定】、
神々の加護(特大)、
神々と繋がる者(任命!)
レベル ▷295
体力 ▷6572000/6572000
魔力 ▷10350000
/10350000
魔力属性▷風(Max)、火(Max)、
土(Max)、水(Max)、
光(Max)、闇(Max)、
無(Max)、時(Max)、
空(Max)
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ぱっと見、また称号がバンバン増えているというわけではないので、少しだけホッとする。
しかし、数は異常であることに変わりはない。
「……か、数えるで?」
「うん」
期待する目を向けられ、それならばと素直に数えた。
「っ……に……」
「えっ、十二? 凄っ」
「いや……二十二……」
「……へ?」
綺麗な高めの『へ?』だった。これに、リンディエールは満足げに頷いた。意外性が示せるのは楽しいものだ。
「二十二や!」
「えぇぇぇっ!!」
この後、異常だろうという目を向けられたのは、不本意だった。
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