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10th ステージ
099 立て直し開始
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聖皇国の混乱は、時間が経つにつれて、様々な所に影響を及ぼした。悪い影響ではない。寧ろ、今まで見逃されてきた裏の事情が明かにされて行く変化だった。
その一つが、各国にあった特別な『修道院』。それは、監獄とは別に、問題を起こした女性やその子ども達が入れられる場所だ。
劣悪な環境と厳しい戒律。本来ならば、更生を促すべき場所だが、中は神官やシスター達のストレス発散の場だったらしい。目つきが気に入らないからと言っては、鞭を打ち、掃除や料理が出来ていないと言って、寒い地下の小部屋に閉じ込める。
確実な罪ある者なら、これも仕方がない。だが、その中には冤罪をかけられた者も多かった。調べが終わるまで、留め置かれる者もいたのだ。
これらの現状を知ったのは、第二王妃など退場した者たちを調べようと、リンディエールが王宮へ向かった数日後に発覚した。
そこには、元第二王妃とクイントの元妻も入っていたのだ。
「元第二王妃さんなんて、最早別人やんか……それでもお腹の子は無事みたいやな」
「……あ、ああ……」
今日は、ブラムレース王と宰相のクイントも連れて、修道院に確認に来た。そこで、明らかに弱っている元第二王妃を確認した。ブラムレースが近くに来ても、喋る気力もないらしい。
現状をリンディエールが確認して、教皇ソルマルトへ報告してから、すぐに妊娠している第二王妃は保護されていた。例え罪人の子であっても、お腹の子に罪はないという教えだけは、何とか守れたようだ。
同じように、クイントの元妻とその息子が居ることが分かった。
「で? 宰相さん。あの人が元妻と子どもか?」
「……そのようです……多分」
「そんな曖昧な……」
「私の知っている原形を留めていません。顔付きもそうですが、最後に見た時は、二人ともアレの二倍はありましたから」
「ダイエットできたんは良かったかもなあ……」
今回は、現状の確認と、本人確認のためにクイントも来てもらったのだが、あまりの見た目の変貌ぶりに、かなり戸惑っていた。決してヨリを戻そうと、心が揺れているわけではないらしい。
寧ろ、この場所での生活効果に感心しているようだ。
「これだけ効果があるとは……」
「いや……ダイエットのための施設やないで……」
違う意味の施設だと思えてならないようだ。
「ゲームやと、うちもここに来ることになったんかと思うと……感慨深いもんやなあ……」
舞台を退場した悪役令嬢がやって来る場所。それがこの修道院。まさに、その後を送ることになる場所だった。
「ということで悠ちゃん!」
「うっ、はい!」
「教皇さんの許可は取った。うちらで、ここを作り直すで!」
「了解!」
「外の見張りは、ヒーちゃんがやってくれるけど、日が暮れるまでに警備装置と警備体制を練り直すわ」
完全な犯罪者は居ないとはいえ、家から追放された者たちが入れられているのだ。逃すわけにはいかない。とはいえ、逃げる元気も現状ないだろう。
「なら、私はプリエラ師匠を筆頭に、シュラ先輩やセラビーシェル先輩と掃除しながら、動ける人たちに指導開始だねっ」
「頼んだで」
「任せてよ!」
悠はやる気満々だ。監査のようなものは入って環境改善はされてきているが、とっても汚い。先ずは掃除だと、悠は腕まくりする。
「それじゃあ、フリヴィアさんとその息子さんも、もう連れて行っていい?」
クイントの元妻と息子だ。悠は、ゲームでクイントのその妻の名前を知っていた。本人確認はもういいかと、クイントへ目を向けると、はっきりと頷かれた。
「どうぞ。きちんと指導をお願いします」
「任せてくださいよ。母子だけで生きていける自活力を付けてみせますからっ」
「頼もしいですね。さすがは、リンの選んだ人です」
「っ、リンちゃんへの信頼が高いんだね……」
「当然です。リンがアレは男だと言ったなら、私は迷わず男だと断言しますよ」
「……元妻が男なわけあるかい……」
どんな信頼だ。
「悠ちゃん、ええから、連れてってや」
「は~い」
クイントの元妻フリヴィアは、クイントに何か期待していたようだったが、リンディエールとのやり取りを見て、目を丸くした。恐らく、クイントの印象が彼女の中のものと一致しなかったのだろう。何が起きたのか理解できないという顔のまま、悠に引きずられて行った。
多分、何度思い出してもリンディエールとクイントの関係は理解できないことだろう。強く生きて欲しい。
「ほな、立て直し開始やな」
ここを正しい、あるべき状態に立て直す。そして、メイドブートキャンプの会場を作るのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
その一つが、各国にあった特別な『修道院』。それは、監獄とは別に、問題を起こした女性やその子ども達が入れられる場所だ。
劣悪な環境と厳しい戒律。本来ならば、更生を促すべき場所だが、中は神官やシスター達のストレス発散の場だったらしい。目つきが気に入らないからと言っては、鞭を打ち、掃除や料理が出来ていないと言って、寒い地下の小部屋に閉じ込める。
確実な罪ある者なら、これも仕方がない。だが、その中には冤罪をかけられた者も多かった。調べが終わるまで、留め置かれる者もいたのだ。
これらの現状を知ったのは、第二王妃など退場した者たちを調べようと、リンディエールが王宮へ向かった数日後に発覚した。
そこには、元第二王妃とクイントの元妻も入っていたのだ。
「元第二王妃さんなんて、最早別人やんか……それでもお腹の子は無事みたいやな」
「……あ、ああ……」
今日は、ブラムレース王と宰相のクイントも連れて、修道院に確認に来た。そこで、明らかに弱っている元第二王妃を確認した。ブラムレースが近くに来ても、喋る気力もないらしい。
現状をリンディエールが確認して、教皇ソルマルトへ報告してから、すぐに妊娠している第二王妃は保護されていた。例え罪人の子であっても、お腹の子に罪はないという教えだけは、何とか守れたようだ。
同じように、クイントの元妻とその息子が居ることが分かった。
「で? 宰相さん。あの人が元妻と子どもか?」
「……そのようです……多分」
「そんな曖昧な……」
「私の知っている原形を留めていません。顔付きもそうですが、最後に見た時は、二人ともアレの二倍はありましたから」
「ダイエットできたんは良かったかもなあ……」
今回は、現状の確認と、本人確認のためにクイントも来てもらったのだが、あまりの見た目の変貌ぶりに、かなり戸惑っていた。決してヨリを戻そうと、心が揺れているわけではないらしい。
寧ろ、この場所での生活効果に感心しているようだ。
「これだけ効果があるとは……」
「いや……ダイエットのための施設やないで……」
違う意味の施設だと思えてならないようだ。
「ゲームやと、うちもここに来ることになったんかと思うと……感慨深いもんやなあ……」
舞台を退場した悪役令嬢がやって来る場所。それがこの修道院。まさに、その後を送ることになる場所だった。
「ということで悠ちゃん!」
「うっ、はい!」
「教皇さんの許可は取った。うちらで、ここを作り直すで!」
「了解!」
「外の見張りは、ヒーちゃんがやってくれるけど、日が暮れるまでに警備装置と警備体制を練り直すわ」
完全な犯罪者は居ないとはいえ、家から追放された者たちが入れられているのだ。逃すわけにはいかない。とはいえ、逃げる元気も現状ないだろう。
「なら、私はプリエラ師匠を筆頭に、シュラ先輩やセラビーシェル先輩と掃除しながら、動ける人たちに指導開始だねっ」
「頼んだで」
「任せてよ!」
悠はやる気満々だ。監査のようなものは入って環境改善はされてきているが、とっても汚い。先ずは掃除だと、悠は腕まくりする。
「それじゃあ、フリヴィアさんとその息子さんも、もう連れて行っていい?」
クイントの元妻と息子だ。悠は、ゲームでクイントのその妻の名前を知っていた。本人確認はもういいかと、クイントへ目を向けると、はっきりと頷かれた。
「どうぞ。きちんと指導をお願いします」
「任せてくださいよ。母子だけで生きていける自活力を付けてみせますからっ」
「頼もしいですね。さすがは、リンの選んだ人です」
「っ、リンちゃんへの信頼が高いんだね……」
「当然です。リンがアレは男だと言ったなら、私は迷わず男だと断言しますよ」
「……元妻が男なわけあるかい……」
どんな信頼だ。
「悠ちゃん、ええから、連れてってや」
「は~い」
クイントの元妻フリヴィアは、クイントに何か期待していたようだったが、リンディエールとのやり取りを見て、目を丸くした。恐らく、クイントの印象が彼女の中のものと一致しなかったのだろう。何が起きたのか理解できないという顔のまま、悠に引きずられて行った。
多分、何度思い出してもリンディエールとクイントの関係は理解できないことだろう。強く生きて欲しい。
「ほな、立て直し開始やな」
ここを正しい、あるべき状態に立て直す。そして、メイドブートキャンプの会場を作るのだ。
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