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9th ステージ
096 自業自得だって
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上空に出した光の帯は、光で誤魔化した転移門。同じように、リンディエールと悠が通って帰ってきたのも転移門だった。
着いた先は王宮だ。それも、教皇を匿っている離宮の庭の中だった。
「ふい~。ようやっと終わったなあ、悠ちゃん」
「お疲れ~。リンちゃん」
悠が笑って労う。出会ってから時々、見つからないように手紙のやり取りはしていたのだ。たった数回ではあるが、既に『リンちゃん』、『悠ちゃん』と呼び合う仲だった。
迷路に入る手前。そこにある東屋に入り、とりあえず椅子に座った。
「まあ、座りい。待たせて悪かったなあ。退屈やったろ」
「そんなことないよ。だって、おもちゃあるもん」
「あ~……それな」
悠は左腕を見せる。そこには、外したはずの隷属の腕輪が再び嵌っていた。
「上手く誤魔化せたね~♪」
「せやな~♪」
ニヤリと笑い合う。リンディエールが住民に壊して見せたのは、偽装用のもの。本物は未だ悠が着けている。
「けど、悠ちゃんのお陰で、上手い具合にあのタヌキが先導していったんや。助かったで」
リンディエールがタヌキと呼ぶ司教。悠に隷属の腕輪を嵌めさせた人だ。効果を反転させたことで、対となる腕輪を着けていた司教は、悠の命令通りに動くようになった。
そこで、周りに怪しまれないよう、操作していたのだ。悠の身柄を管理する立場だったため、他の者に、悠に近付かないように命じさせたり、時に要り用の物を持ってくるように命じさせたりしていたらしい。
あの塔に閉じこもっている悠に、それらの様子を見せるため、使い魔を司教に付け、その映像を水晶に映すようにした。壁に映すことも出来るのに、わざわざ水晶にしたのは、悠に異世界っぽい雰囲気を楽しんでもらうためだった。二割ぐらいは、リンディエールの趣味だ。
「あはは。どの程度の命令が使えるのかって、探るのは、ちょっと楽しかったよ。倫理的に見ると、良くないんだろうけどね~。最後のは『大事な物を守りなさい』って、ちょっと曖昧になっちゃったけど、上手く行ったんだ。あ、水晶ありがとね」
学校指定のリュックだろう。持っていたその中から、水晶を取り出してリンディエールへ差し出した。
悠は最初、人を操るというのに、少し躊躇ったようだ。だが、リンディエールが来なければ、それが自分に適用されていたのだと考えると、あの司教限定なら心も痛まないと思うようになったという。
「焦り方が凄かったでっ」
「あ~、なんか曖昧にするほど、何とかしてそれを実行しなきゃって、焦るみたいでさ~。目、ぐるぐるしてなかった?」
「しとったな」
「ソレってことを明確にすると、機械的に実行するんだけど、曖昧にすると、そこまでのアプローチは本人が考えるみたいでさ」
だから、ずっと焦燥感が付きまとうのだろうということだった。
「でもさ、見てて思ったよ。これはあいつの自業自得だって」
寧ろ、隷属の腕輪で、制御すべき人だと思ったらしい。
「普通にしてる時もなるべく監視してたけど、あいつ、最低だった。なんか、突然キレる人っぽくて、ちょっとでも神官がミスすると、思いっ切り蹴ったりするんだよ。それもボディね。顔とかには手を出さないの」
「そりゃまた……ある意味、よお分かっとるな」
「うん。見えないところには鉄則だよね」
「やなあ」
バレないようにしていた理由は、恐らく外面は良く見せたかったのだろう。特定の部下たちにしか、その側面は見せなかったようだ。
「あの人、奥さんが居たみたいなんだけど、その人には、顔も殴ってた。なるべく、すぐに寝るようにさせたんだけどさ……その後は、自宅に帰らないように命令出しといた。あの奥さん、どうしてるかな……」
「あ~……そっち系の問題はデリケートやでなあ……けど、しばらくは命令がなくても、あのタヌキは帰れへんやろ。ほれ」
リンディエールは、現在の教会の様子を返してもらった水晶に映し出す。
司教は、住民達に引きずられていた。どうやら、隠し部屋を案内させているらしい。口の端が切れている所を見ると、殴られたのだろう。
「これは吊されるで」
「暴力への天罰は暴力か……やっぱり自業自得だ」
「せやな。やられて嫌な事はするなて、教えられて来んかったんやろか」
「多分、教えないといけない立場だよね? 痛い教訓になったね」
「いやいや、これが教訓やって自覚は、まだやろな……どう思う? 教皇はん」
「きょうこう……?」
リンディエールが目を向けた先。屋敷から出てきた教皇ソルマルトと、この国の大司教ダンドールが居た。彼らの部屋でも、ライブ中継しており、現在の様子も、ずっと全部見えていたのだ。
二人の顔を見て、リンディエールはニヤリと笑う。国を終わらせること。そして、立て直すことをしっかりと決めた顔だったのだ。これから闘いに赴く人の顔だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、来週です。
よろしくお願いします!
着いた先は王宮だ。それも、教皇を匿っている離宮の庭の中だった。
「ふい~。ようやっと終わったなあ、悠ちゃん」
「お疲れ~。リンちゃん」
悠が笑って労う。出会ってから時々、見つからないように手紙のやり取りはしていたのだ。たった数回ではあるが、既に『リンちゃん』、『悠ちゃん』と呼び合う仲だった。
迷路に入る手前。そこにある東屋に入り、とりあえず椅子に座った。
「まあ、座りい。待たせて悪かったなあ。退屈やったろ」
「そんなことないよ。だって、おもちゃあるもん」
「あ~……それな」
悠は左腕を見せる。そこには、外したはずの隷属の腕輪が再び嵌っていた。
「上手く誤魔化せたね~♪」
「せやな~♪」
ニヤリと笑い合う。リンディエールが住民に壊して見せたのは、偽装用のもの。本物は未だ悠が着けている。
「けど、悠ちゃんのお陰で、上手い具合にあのタヌキが先導していったんや。助かったで」
リンディエールがタヌキと呼ぶ司教。悠に隷属の腕輪を嵌めさせた人だ。効果を反転させたことで、対となる腕輪を着けていた司教は、悠の命令通りに動くようになった。
そこで、周りに怪しまれないよう、操作していたのだ。悠の身柄を管理する立場だったため、他の者に、悠に近付かないように命じさせたり、時に要り用の物を持ってくるように命じさせたりしていたらしい。
あの塔に閉じこもっている悠に、それらの様子を見せるため、使い魔を司教に付け、その映像を水晶に映すようにした。壁に映すことも出来るのに、わざわざ水晶にしたのは、悠に異世界っぽい雰囲気を楽しんでもらうためだった。二割ぐらいは、リンディエールの趣味だ。
「あはは。どの程度の命令が使えるのかって、探るのは、ちょっと楽しかったよ。倫理的に見ると、良くないんだろうけどね~。最後のは『大事な物を守りなさい』って、ちょっと曖昧になっちゃったけど、上手く行ったんだ。あ、水晶ありがとね」
学校指定のリュックだろう。持っていたその中から、水晶を取り出してリンディエールへ差し出した。
悠は最初、人を操るというのに、少し躊躇ったようだ。だが、リンディエールが来なければ、それが自分に適用されていたのだと考えると、あの司教限定なら心も痛まないと思うようになったという。
「焦り方が凄かったでっ」
「あ~、なんか曖昧にするほど、何とかしてそれを実行しなきゃって、焦るみたいでさ~。目、ぐるぐるしてなかった?」
「しとったな」
「ソレってことを明確にすると、機械的に実行するんだけど、曖昧にすると、そこまでのアプローチは本人が考えるみたいでさ」
だから、ずっと焦燥感が付きまとうのだろうということだった。
「でもさ、見てて思ったよ。これはあいつの自業自得だって」
寧ろ、隷属の腕輪で、制御すべき人だと思ったらしい。
「普通にしてる時もなるべく監視してたけど、あいつ、最低だった。なんか、突然キレる人っぽくて、ちょっとでも神官がミスすると、思いっ切り蹴ったりするんだよ。それもボディね。顔とかには手を出さないの」
「そりゃまた……ある意味、よお分かっとるな」
「うん。見えないところには鉄則だよね」
「やなあ」
バレないようにしていた理由は、恐らく外面は良く見せたかったのだろう。特定の部下たちにしか、その側面は見せなかったようだ。
「あの人、奥さんが居たみたいなんだけど、その人には、顔も殴ってた。なるべく、すぐに寝るようにさせたんだけどさ……その後は、自宅に帰らないように命令出しといた。あの奥さん、どうしてるかな……」
「あ~……そっち系の問題はデリケートやでなあ……けど、しばらくは命令がなくても、あのタヌキは帰れへんやろ。ほれ」
リンディエールは、現在の教会の様子を返してもらった水晶に映し出す。
司教は、住民達に引きずられていた。どうやら、隠し部屋を案内させているらしい。口の端が切れている所を見ると、殴られたのだろう。
「これは吊されるで」
「暴力への天罰は暴力か……やっぱり自業自得だ」
「せやな。やられて嫌な事はするなて、教えられて来んかったんやろか」
「多分、教えないといけない立場だよね? 痛い教訓になったね」
「いやいや、これが教訓やって自覚は、まだやろな……どう思う? 教皇はん」
「きょうこう……?」
リンディエールが目を向けた先。屋敷から出てきた教皇ソルマルトと、この国の大司教ダンドールが居た。彼らの部屋でも、ライブ中継しており、現在の様子も、ずっと全部見えていたのだ。
二人の顔を見て、リンディエールはニヤリと笑う。国を終わらせること。そして、立て直すことをしっかりと決めた顔だったのだ。これから闘いに赴く人の顔だった。
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