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8th ステージ

080 怪盗用だぞ

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終わった、終わったと喜ぶリンディエール。

「これはもう、一生の宝やな! 財産やな!」

細かく、緻密に書かれた大きな地図を、改めて上から見下ろしてうんうんと満足げに頷く。

《お疲れさん》

リンディエールが作業していたのは、ヒストリアの前に用意してある大きなテーブルの上。大勢で食事も出来る場所。この場所は、雨が降っても大丈夫なようにしっかり外に張り出した屋根も付いているし、椅子の座面の高さより少し上の高さの壁で囲んでいる。

風が吹き込まないよう、結界も張れるようになっており、転移門のある家からは、渡り廊下で繋いであるため、嵐の日でも来られるようになっていた。お陰で、デリエスタの屋敷から、いつでも誰でもヒストリアに会いに来られる。

因みに、この仕様にしたのは、アイドルブームが始まった頃だ。

こうしたものから分かるように、凝り性な所のあるリンディエールは、地図の大きさもそれなりにしたかった。大雑把な、この辺という丸ばかりで出来るものなど論外だ。

《こっちはもう少しだ》
「ん? また衣装か?」

リンディエールがペンを動かしている間、ヒストリアは針を動かしていた。

《ああ。言っていなかったか? 俺の称号にもおかしなのが出てな。『衣装製作』というものだが、その後ろに『あいどる』と『怪盗』が括弧書きであるんだ》
「……まさか……今作っとるん……」
《怪盗用だぞ。仮面付きな》
「マジかいっ」

ヒラヒラしたものついているようだし、色は赤。いつものように、アイドル用の衣装を作っているものだとばかり思っていた。

「……派手やない?」
《何言ってるんだ。怪盗だぞ? 怪盗。泥棒は闇に紛れて姿を見せないようにして盗むが、怪盗は違うだろ?》
「あ、そうや! 怪盗ってっ、そうやん! 予告状も要るやつやん!」

今更気付いたと愕然とする。

「マジやん! 予告っ……カリグラフィでいくか……?」
《ははっ。カードも色をつけてみるか?》

チクチクと針を動かし、手元に視線を固定しながら、冗談で言うヒストリア。しかし、今のリンディエールには冗談は通じない。

「いっそ赤か!? いや、なんや、リボンが多そうな衣装やし……赤いリボンの絵で装飾枠を……ふむ」
《……ん? 本気か? 本気……だな》

もうリンディエールは、手作りのスケッチブックを出して、カードのデザインを始めていた。

「あ~、盗ってくるもん何やったか……」

そう口にして、ステータス画面を出す。

「ステータス」


ーーーーーーーーーーーーーーー
個称  ▷リンディエール・デリエスタ
 (ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)
年齢  ▷10
種族  ▷人族
称号  ◀︎【ステータスチャット】

                (ガタガタっ!)
     ん? な、なあに?( ̄▽ ̄;)


レベル ◀︎
体力  ◀︎
魔力  ◀︎100%

魔力属性◀︎

ーーーーーーーーーーーーー

どうも、目を離していたらしい。

「……あ、すんまへん。なあ、履歴とか見えんの? 正式名称とか、覚えてられんくてなあ」

見ればコレだと思い出せるが、数もあるので覚えきれていなかった。

ーーーーーーーーーー

ちょっと待って~
あ~、私も覚えてないのよね~
(チラチラ)

----------

「明らかにカンニングしとるやんっ」

まあ、多いのは多いので、仕方ないと思っておく。

----------

お待たせ~♪

①幸運転化の宝玉
②穢れた王冠
③召喚の杖
④隷属の香石
⑤召喚された異世界人一人

だったわ!
コレ、回収するまで表示するように
固定するわ。

----------

「それは有り難いなあ」

そして、ステータス画面には、このように表示された。

ーーーーーーーーーーーーーーー
個称  ▷リンディエール・デリエスタ
 (ウィストラ国、デリエスタ辺境伯の長女)
年齢  ▷10
種族  ▷人族
称号  ◀︎【ステータスチャット】

『目標メモ(表示固定)
①幸運転化の宝玉
②穢れた王冠
③召喚の杖
④隷属の香石
⑤召喚された異世界人一人』


                    これで固定したから~♪
                    じゃあ、よろ~(^з^)-☆

     【チャットを終了しました】

  

レベル ◀︎
体力  ◀︎
魔力  ◀︎98%

魔力属性◀︎

ーーーーーーーーーーーーー

終了の表示を見て、もう一度ステータス画面を開き直すと、きちんとそこだけは消えずにあった。

「よっしゃ! ほんなら、これをきっちり書き出さんとなあ♪」
《……あまり凝りすぎるなよ?》
「分かっとるって! どんな額縁で飾っても、見劣りせん物にせんとな!」
《あ~……読める字にしろよ~》
「任せえ!」
《……》

本当かなとヒストリアは小さく呟きながら、集中しだしたリンディエールを見て、自分も作業を続ける。

他の誰かが居たなら、きっと『あんたも変わんないよ』と言っただろう。

とにかく二人は、この世界初の『怪盗』をお披露目するため、全力を注ぐのだった。

そして、翌日。

盗ってくる物の最終確認を行っていたリンディエールは、ついに召喚された聖女の姿を確認したのだ。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、来週……のつもりで頑張ります!
よろしくお願いします◎
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