エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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4th ステージ

030 ウチもソレ言いたいわ

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オババ、ファシードの所から帰ってきて一旦眠り、昼食だと言われて目を覚ました。

「二時間は寝られたか……?」

頭を使ったからだろうか。とにかく眠い。

「学生の頃は、一日、二日徹夜しても平気やったんけどなあ……今は子どもやゆうこと忘れとったわ……」

もそもそと起き出して、食堂へ向かう。既に祖父母が食事を始めていた。使用人達の食堂だ。食べる時間は人によって違うので、待っているということはしない。

「お、起きてきたか。どっか行っていたのか?」

ファルビーラが顔を上げて手招く。

「ん~、オババんところ。そうや、じいちゃん達、コロイモは好きか?」
「ころいも……コロイモか!? 好きに決まってんだろ! 寧ろ、子どもの頃に食べたアレが食べたくて冒険者始めたようなもんだっ」
「なんやそれ……っ、なんちゅう可愛らしい動機やねん! ウチもソレ言いたいわ」

子どもがこんなこと言って冒険者になったら、絶対に可愛がられるだろう。是非とも可愛がられたい。

「すぐ食べる用にゆうて、焼いてもろたのがあるんよ。ばあちゃんも食べるやろ? ん? ばあちゃん? どないしたん?」

ヘルナは目を丸くしてこちらを見つめたまま動きを止めていた。衝撃を受けるような格好でもしていただろうかと、思わず自身を見下ろした。

「え、あ、ち、違うのよっ。コロイモ……あるの? アレがある迷宮って、結構な難度の……あ、リンちゃんは高レベルだったわね……」

そんな話をしている間に、目端の利く有能なメイドさんが、リンディエールへ食事を届けてくれた。

それに礼を言ってファルビーラの隣に座った。

「せやね。ばあちゃんも好きなん? 一つずつやとここのは大きゅうてな。三分の一っコしよ」

取り出したのは大人の掌になんとか乗るくらいの大玉のコロイモだ。相変わらずでかいタマゴにしか見えない。石焼きにしてもらったので、少し焦げた所は模様のようだ。それをリンディエールは風の魔法で三等分した。魔法の使い方がおかしい。

「あ~、これでも量あるなあ。あの爺ちゃん、マジで育てんのうまいわ」
「「…….こっ……」」
「コロイモやで? 食べてみい。いただきま~す」

二人の食事の乗ったトレーにひと欠片ずつ置き、自分の分もトレーの隅に置いて、これはデザートとし、食事を始める。

「おっ、また腕上げたか。ほんま、あのハゲは勤勉やなあ」

料理長はヒストリアの為にリンディエールが料理したあの日から、それはもう生き生きと新たな料理に挑戦したらしい。

ハンバーグもソース違いで出せるようになっていた。

「あとは、カロリー計算も教えるか……感覚がええで、メインとのバランスもよお出来とるが……知っとって損はないやろ」

こういう感じで、リンディエールはやる事が沢山ある。それを思うと、これまで徹夜をあまりして来なかったのが不思議なくらいだ。

「ッ、ほ、本当にコロイモだ……っ、旨っ、甘っ……うっ、っ、生きててよかった……っ」
「美味しいっ、美味しいっ、こんな、こんな量を食べられるなんてっ……夢? 夢なの?」

気付けばなんだか、祖父母が面白いことになっていた。

「泣くほどかいっ」
「当たり前だ! 普通に幻の食材だぞ!」
「当たり前でしょうっ。最近はほとんど出回らないのよ!?」
「ん? そうなん? コレ知ってから普通に食べとったで、それほどとは思わんかったわ」

コロイモは魔力を回復させると言っても、満タンならば変わらずただの食べ物だ。その贅沢さが良い。ただし、魔力循環を助ける効能があるので、美容にも良いと言われていた。

「食べるだけで魔力異常にも効くで、兄ちゃんの食事には混ぜさしとったけどな」
「……コロイモをか?」
「せやで? 薬みたいなもんやん。それに、食が細おなっとる人には食べやすいやろ?」
「……リンちゃん、あなた……」

リンディエールが、貴重なコロイモを分け与えるほど、兄を気遣っていたという事実に、祖父母は驚いているようだった。

まったくそんな気はない。なんとなくだ。死なれたら困るという理由だけ。絶対に両親がウザくなる予感がしたからだ。アレ以上、ウジウジされたら鬱陶しい。

「あとは、知り合いの薬師に渡して、王家とか上位貴族の子どもに裏ルートで回してもらうようにしたりとかな~」
「……裏ルート……なんでだ? 明らかにおかしいのに、リンが言うと納得しそうになる……」
「それ……貴身病の子にってこと? そんなことまで考えていたの? あ、でも確か、コロイモが良いって噂になってから、特に市場に流れなくなったのよね……」
「噂流させたでなあ。貴族が買い占めとるんやろ。まあ、ええゆうても、食事で改善されんのは、たかが知れとるで。高確率で回復傾向に向かうってだけや」

あまり動けないことから、食事の量が減り、その分栄養が足らずに更に弱っていく。貴身病になった子どもの半数は、これで保たなくなるというのが、リンディエールが数年、貴身病について調べて出した答えだった。

「あんまこのコロイモは表に出したくないんよ。コレ作っとる爺ちゃんらにも悪いでな。兄ちゃんと王子とか、宰相さんの所とかまで回れば御の字や思おてたわ」
「……リンちゃん……ありがとう。あなたにこの国は救われているわ」
「リンは凄いなっ」

誇らしそうに見つめられて、リンディエールは違う違うと手を振る。

「そんな大袈裟やな。コレで儲けさせてもろおてんで、恩に着せる気はないわ」
「そう……」
「まあ、リンらしいな……」

リンディエールとしては、治療法を確立させるまでの繋ぎのような感覚だった。保てば良いなという希望的観測の上での行動だ。

とはいえ、リンディエールはもう忘れかけているが、ここは乙女ゲームの内容に酷似した世界だ。攻略対象になる王子や兄が死ぬなんてことはあり得ない。

だが、それでも物語のご都合さんに任せておけるものでもなく、この世界に生きる者として、やれることはやっておくのがリンディエールだ。

因みにリンディエールにとっては、随分前からここは恋愛脳を鍛える乙女ゲームではなく、レベルあり、ガッツリ戦闘ありの別のゲーム世界感覚に変わってしまっているので、本当に他意はなかったりする。

「リン……フィリクスに会いたい?」
「ん? 誰や? 聞いたことあるような……」
「……あなたの兄よ……」
「あ~……知っとる、知っとる……」
「……」

自分の口で呼んで、顔と一致させないと名前を覚えないのがリンディエールだ。前世からそうなので、改善する兆しはない。する気もない。

普通に兄の名前なんて覚える機会もなかった。

「別にあっちも会いたないやろ。両親に疎まれとるような妹やで? 邪魔なだけやん」
「……それ、本気で言って……」
「マジか……お、おい、聞かれてないよな……?」

なぜか二人揃ってキョロキョロしだした。

そして、ヘルナか口元に手を当て、小さな声で続ける。

「リンは、嫌われてるって思ってるの?」
「嫌うもなにも、無関心やないの? 関心があるなら、同じ屋敷におるんやし、部屋から出られんくても手紙でやり取りとかも出来るやん。それせえへんちゅうことは、意識もせん相手なんやろ思うで?」
「「……」」

ようやくコロイモにたどり着く。甘みも強く、焼いただけでも絶品だ。

「んんっ。ほんま美味いな~。スイートポテトでも作ってヒーちゃんに食べさしたろ。宰相さん送ったらやるか」
「「……」」

二人が深刻な顔をしているのには気付かないリンディエールだった。

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読んでくださりありがとうございます◎
一日空きます。
よろしくお願いします◎
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