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043 お体に問題は?
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シルフィスカがもう三日も眠り続けていると聞いて、ジルナリスも気が気ではなかった。
ただ、レイルやベルタとは違い、ユキトがジルナリスだけは屋敷に入れてくれるので、様子は確認できる。
「……シルフィ……こんなに眠ることなんて今までなかったでしょうね……良いことなのかしら」
静かに部屋に控えるサクラに聞こえるように呟いた。目の前には、静かに呼吸をして目を閉じるシルフィスカがいる。
サクラはこれに答えることなく提案する。
「ジルナリス様。下へ参りましょう。本日はケルスト様をはじめ、お弟子様方が何人もいらしていますので、主様のことをお話致します」
「え……それって、眠っている理由ってことかしら」
「はい。ですので下へお願いいたします」
「分かったわ」
理由のある眠りならば、それを早く知りたい。ユキトやサクラに慌てた様子は見えない。ならば、悪いことではないのだろうと少し落ち着いた。
一階の広い一室。そこにケルスト、ビスラ、フラン、ミィアはもちろんのこと、ヘスライルから来たマーティウィンと『虫使い』と呼ばれるマリアナが居り、特級冒険者のヒリアリアとクルチスの二人が今し方到着したらしい。それを感じての提案だったようだ。
ジルナリスは彼らを見て誰にともなく尋ねる。
「これでシルフィの弟子は全てなのかしら?」
なぜか、この答えを知っていたのは、ジルナリスの後ろからティーセットを持ってやってきたユジアだった。その後ろにはもう半分のティーセットを持ったキリルがいる。
「違いますぞ。全部で十二人ですからな。後三人足りませんなあ」
「……なんでユジアが知ってるのよ」
「わたくしが連絡係だからですが?」
「……は?」
思わず素が出たジルナリスだ。いつもは、さすがに侯爵夫人として弁えている。だが、冒険者として過ごした日々は長い。そのため、こんな時に普通に素が出るのは仕方がないだろう。
「……どうゆうこと?」
十二人なら、後四人だろうとかまで頭が回らなかった。しかし、答えはすぐに出た。
「ですから、連絡係なのです。手紙で管理しておりましたが、今は直接。それにわたくしも弟子でして。あ、出会いは早いのですが、弟子となったのは他の方々よりも一番遅いので、十二番目です!」
物凄く情報量が多かった。ジルナリスは思わず頭を抱える。ユジアは構わず給仕を進めていた。
「……ユジアも……弟子ですって?」
「そうですぞ」
「……何の?」
「よくぞ聞いてくださいました奥様! ズバリ! 空間魔法です! 転移魔法で皆さまのところへスイスイっと移動いたします!」
「……」
空間魔法は最も素質が必要となる魔法。魔法師の中でも使える者と使えない者が多く、更に最高峰といわれる伝説にまでなる転移魔法は、適性云々よりも難しいものだ。
シルフィスカはずっと空間魔法の使い手を探していた。そこで、つい半年前に今までは手紙で連絡をお願いしていたユジアに、空間魔法の才能があることに気付いた。シルフィスカ自身、転移魔法にも慣れてきた所。ならばと弟子にしたのだ。
「わ、分かったわ。そうゆうものとしておくわね」
「それが良いですな!」
ジルナリスは考えることを放棄した。今思えば、ユジアは最近特に神出鬼没だったのだ。こんな所で答えが分かった。
ジルナリスが勧められて椅子に座ると、サクラに代わりユキトが部屋に入ってくる。
「皆さまお揃いですね。では、シルフィスカ様の状態をお話しさせていただきます」
これに誰もが息を詰めた。
「先ずは皆さまは『呪術王』をご存知ですね」
「呪術を教えに来るってやつでしょ?」
何を今更というように答えたのはクルチスだ。唇には艶やかな紅を差し、切れ長の瞳は容易く靡かないと主張している。肌はきちんと時間をかけて手入れをしているのが分かる美しさだ。今は冒険者としての軽装備を身につけているが、ドレスを着たら女王のようにも見えるだろう。
「創造神様の弟子であり、人から神になった者だと、古い文献にあったかと」
ヒリアリアが穏やかな貴公子然とした様子でそう後に続けた。
「はい。最高神様より、武術や魔法を、この世の真理を教えられた『神の弟子』です。お気付きになられませんか?」
「……」
誰もが思い当たった。
シルフィスカがあの様な環境で、それらを誰から教わったのか。それを誰も知らない。単に聞くタイミングを逃していただけとも言えるが、聞こうと思えなかったのだ。まるで何かの力が働いているように。
「……師匠が『神の弟子』?」
ケルストの言葉の正否を確認するように、全員の視線がユキトに向かっていた。ユキトは小さく、けれど確実に頷いて見せた。
「そうです」
「それと、お師様が目覚めないことと何の関係がある」
ミィアが誰もが聞きたかったことを尋ねる。
「シルフィ様は未だ人の身です。人は神界に行くことは叶いません。ですが、精神だけは行けるのだと言われています」
「それではお師匠様の精神は今神界にあるとゆうことですかな? その状態が何日も続いておるのでしょう? お体に問題は?」
マーティウィンが不安げにシルフィスカが眠る二階に意識を向けた。すると、ユキトは少しだけ目を伏せる。
「問題がないという確信はありません。ですが、わたくしとサクラでお身体の状態は常に確認しております。今の所は問題ありません」
今も、サクラがシルフィスカの部屋へと戻っていた。なるべく目を離さないようにしているのだと分かる。謎の多い古代兵器である彼らなら信用できた。
「シルフィ様はお部屋に入られる前に『呪術王』について確認してくると口にされました。恐らく、神に問われているのだと思います」
こちらへ帰ってきてから、シルフィスカは何かを考えている様子だったらしい。そして、その言葉だ。ユキトには確信があった。
ジルナリスもそうかもしれないと頷く。
「あの子、難しい顔でそろそろこの国から追い出せるとかなんとか言っていたものね」
「確かにそうでしたなあ」
ユジアも視線を上の方に投げながら同意する。
『……その名まで出るようになったのならば、そろそろこの国から追い出せそうですね』
呪術王の話を聞きにきた王達の前でそう呟いていたシルフィスカを思い出したのだ。
「ってえことは、師匠は今訓練中ってことか」
「そうなると……邪魔するわけにもいきませんしね?」
ビスラとフランが納得する。これにジルナリスが目を瞬かせた。
「あなた達、シルフィが『神の弟子』って聞いてそれだけ?」
これに、弟子達は揃って顔を見合わせる。
総意を口にしたのは、それまで静かに出されたお菓子を食べ続けていたマリアナだった。
ティーカップを半ばくわえながら、十四歳の物静かな少女は、当たり前のことだとして呟いた。
「師匠は師匠。師匠は偉大。それだけ分かっていれば問題ない」
うんうんと周りも頷いた。
「それよりさあ、師匠が居ないのに、明日の召集やっちまっていいんか? そっちのが気になるし」
「そうですよね? 王がベリスベリー家を断罪するとか言ってましたけど、師匠が不在の間にやるのはどうかと」
明日、王は貴族達を召集する。冒険者ギルドの撤退に関することと、ビスラとフランが辞めたこと。ゼスタート家が国から出ること。それと、王女誘拐についての詳細を説明するのだ。
ミィア達もシルフィスカが関わっている以上、犯人の証拠などを集めるのに協力していた。その甲斐あって、ようやくリンティスを糾弾できるほどの証拠を集められたのだ。
キリルが、これに心配ないと告げる。
「シルフィ様でしたら、国に糾弾された後でも、ご自身で追い落とされるかと。『寧ろ、絶望した後に、更に追い打ちをかけたいしな』とついこの間、いい笑顔で仰っておられました」
「あ、師匠ならやるわ」
「なるほど。でしたら、せめて今回のこと、我々で見届けておきましょう。行くの面倒だと思ってましたけど」
ビスラとフランは明日、城に呼ばれていた。辞めること。勲章も返したことをきっちり説明する必要があるらしい。ただの一騎士、魔法師ならば問題ないが、彼らはそれぞれ騎士団長と魔法師長の庶子。それが知られているため、家の方に責任が行きかねないのだ。
二人にしてみれば、父親の家がどうなろうがどうでもいい。だから、普通に無視してやろうと思ったのだが、ベリスベリー家の最後を見届けられるならば行っても良いと考えを改める。
ここでマーティウィンも元気に手を挙げた。
「それがいいですなあっ。私もヘスライルの代表として行きますぞっ!」
楽しそうだ。
ヘスライル国にとって大恩あるシルフィスカを傷付けたこと。それも、国の危機的状況の折に、冤罪で怪我を負わせた上に引き留めたことは許せるものではない。その犯人を裁くとなれば、立ち会うべきだろう。
「では、我々三人は冒険者ギルドの代表として参りましょうか」
「いいわねぇ、それ」
「……そうする……」
特級の冒険者は、各国の王族も礼を持って接するべき存在。関係者として立ち会うと言えば、許可は降りるだろう。当日でさえ問題ない。
「忍び込む」
「うむ。侵入経路を教えよう」
「ん。ありがと、ミィア兄」
虫を使っての諜報活動が得意なマリアナは、身体能力もそれに見合うだけのものを持っている。ミィアとは一瞬で分かり合ったらしい。
「私も何とかして入り込もうかしら。そうねえ…….シルフィの義母としてってダメかしら? きっちりそっち方面こらも抗議したいのよね」
ここは義母としてとジルナリスは意気込む。沢山のシルフィスカの義母、義父候補達の代表だ。
「旦那様と行かれればよろしいでしょう。この国を辞するならば、おかしなことではありますまい。その原因でもありますからな。それに、どうやら聞いた所によりますと、今までベリスベリーに迷惑を被った者たちも証言をするために登城するとか。なので問題ありません」
リンティスが貶めてきた令嬢達も、全員で訴えたれると聞いて勇ましく名乗りを上げているらしい。
「そうなの? それは楽しそうねえ♪ そうと決まれば、服を用意しなくちゃ。はったりの効くのがいいわね」
気合を入れるジルナリスに、ユキトが声をかける。
「ジルナリス様。万が一のため、侯爵様にも契約服をご利用ください。御子息様にも」
「分かったわ。ありがとう。ユジア、選ぶの手伝ってちょうだい」
「承知しました」
待ちに待った決戦は明日だ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、8日の予定です。
よろしくお願いします◎
ただ、レイルやベルタとは違い、ユキトがジルナリスだけは屋敷に入れてくれるので、様子は確認できる。
「……シルフィ……こんなに眠ることなんて今までなかったでしょうね……良いことなのかしら」
静かに部屋に控えるサクラに聞こえるように呟いた。目の前には、静かに呼吸をして目を閉じるシルフィスカがいる。
サクラはこれに答えることなく提案する。
「ジルナリス様。下へ参りましょう。本日はケルスト様をはじめ、お弟子様方が何人もいらしていますので、主様のことをお話致します」
「え……それって、眠っている理由ってことかしら」
「はい。ですので下へお願いいたします」
「分かったわ」
理由のある眠りならば、それを早く知りたい。ユキトやサクラに慌てた様子は見えない。ならば、悪いことではないのだろうと少し落ち着いた。
一階の広い一室。そこにケルスト、ビスラ、フラン、ミィアはもちろんのこと、ヘスライルから来たマーティウィンと『虫使い』と呼ばれるマリアナが居り、特級冒険者のヒリアリアとクルチスの二人が今し方到着したらしい。それを感じての提案だったようだ。
ジルナリスは彼らを見て誰にともなく尋ねる。
「これでシルフィの弟子は全てなのかしら?」
なぜか、この答えを知っていたのは、ジルナリスの後ろからティーセットを持ってやってきたユジアだった。その後ろにはもう半分のティーセットを持ったキリルがいる。
「違いますぞ。全部で十二人ですからな。後三人足りませんなあ」
「……なんでユジアが知ってるのよ」
「わたくしが連絡係だからですが?」
「……は?」
思わず素が出たジルナリスだ。いつもは、さすがに侯爵夫人として弁えている。だが、冒険者として過ごした日々は長い。そのため、こんな時に普通に素が出るのは仕方がないだろう。
「……どうゆうこと?」
十二人なら、後四人だろうとかまで頭が回らなかった。しかし、答えはすぐに出た。
「ですから、連絡係なのです。手紙で管理しておりましたが、今は直接。それにわたくしも弟子でして。あ、出会いは早いのですが、弟子となったのは他の方々よりも一番遅いので、十二番目です!」
物凄く情報量が多かった。ジルナリスは思わず頭を抱える。ユジアは構わず給仕を進めていた。
「……ユジアも……弟子ですって?」
「そうですぞ」
「……何の?」
「よくぞ聞いてくださいました奥様! ズバリ! 空間魔法です! 転移魔法で皆さまのところへスイスイっと移動いたします!」
「……」
空間魔法は最も素質が必要となる魔法。魔法師の中でも使える者と使えない者が多く、更に最高峰といわれる伝説にまでなる転移魔法は、適性云々よりも難しいものだ。
シルフィスカはずっと空間魔法の使い手を探していた。そこで、つい半年前に今までは手紙で連絡をお願いしていたユジアに、空間魔法の才能があることに気付いた。シルフィスカ自身、転移魔法にも慣れてきた所。ならばと弟子にしたのだ。
「わ、分かったわ。そうゆうものとしておくわね」
「それが良いですな!」
ジルナリスは考えることを放棄した。今思えば、ユジアは最近特に神出鬼没だったのだ。こんな所で答えが分かった。
ジルナリスが勧められて椅子に座ると、サクラに代わりユキトが部屋に入ってくる。
「皆さまお揃いですね。では、シルフィスカ様の状態をお話しさせていただきます」
これに誰もが息を詰めた。
「先ずは皆さまは『呪術王』をご存知ですね」
「呪術を教えに来るってやつでしょ?」
何を今更というように答えたのはクルチスだ。唇には艶やかな紅を差し、切れ長の瞳は容易く靡かないと主張している。肌はきちんと時間をかけて手入れをしているのが分かる美しさだ。今は冒険者としての軽装備を身につけているが、ドレスを着たら女王のようにも見えるだろう。
「創造神様の弟子であり、人から神になった者だと、古い文献にあったかと」
ヒリアリアが穏やかな貴公子然とした様子でそう後に続けた。
「はい。最高神様より、武術や魔法を、この世の真理を教えられた『神の弟子』です。お気付きになられませんか?」
「……」
誰もが思い当たった。
シルフィスカがあの様な環境で、それらを誰から教わったのか。それを誰も知らない。単に聞くタイミングを逃していただけとも言えるが、聞こうと思えなかったのだ。まるで何かの力が働いているように。
「……師匠が『神の弟子』?」
ケルストの言葉の正否を確認するように、全員の視線がユキトに向かっていた。ユキトは小さく、けれど確実に頷いて見せた。
「そうです」
「それと、お師様が目覚めないことと何の関係がある」
ミィアが誰もが聞きたかったことを尋ねる。
「シルフィ様は未だ人の身です。人は神界に行くことは叶いません。ですが、精神だけは行けるのだと言われています」
「それではお師匠様の精神は今神界にあるとゆうことですかな? その状態が何日も続いておるのでしょう? お体に問題は?」
マーティウィンが不安げにシルフィスカが眠る二階に意識を向けた。すると、ユキトは少しだけ目を伏せる。
「問題がないという確信はありません。ですが、わたくしとサクラでお身体の状態は常に確認しております。今の所は問題ありません」
今も、サクラがシルフィスカの部屋へと戻っていた。なるべく目を離さないようにしているのだと分かる。謎の多い古代兵器である彼らなら信用できた。
「シルフィ様はお部屋に入られる前に『呪術王』について確認してくると口にされました。恐らく、神に問われているのだと思います」
こちらへ帰ってきてから、シルフィスカは何かを考えている様子だったらしい。そして、その言葉だ。ユキトには確信があった。
ジルナリスもそうかもしれないと頷く。
「あの子、難しい顔でそろそろこの国から追い出せるとかなんとか言っていたものね」
「確かにそうでしたなあ」
ユジアも視線を上の方に投げながら同意する。
『……その名まで出るようになったのならば、そろそろこの国から追い出せそうですね』
呪術王の話を聞きにきた王達の前でそう呟いていたシルフィスカを思い出したのだ。
「ってえことは、師匠は今訓練中ってことか」
「そうなると……邪魔するわけにもいきませんしね?」
ビスラとフランが納得する。これにジルナリスが目を瞬かせた。
「あなた達、シルフィが『神の弟子』って聞いてそれだけ?」
これに、弟子達は揃って顔を見合わせる。
総意を口にしたのは、それまで静かに出されたお菓子を食べ続けていたマリアナだった。
ティーカップを半ばくわえながら、十四歳の物静かな少女は、当たり前のことだとして呟いた。
「師匠は師匠。師匠は偉大。それだけ分かっていれば問題ない」
うんうんと周りも頷いた。
「それよりさあ、師匠が居ないのに、明日の召集やっちまっていいんか? そっちのが気になるし」
「そうですよね? 王がベリスベリー家を断罪するとか言ってましたけど、師匠が不在の間にやるのはどうかと」
明日、王は貴族達を召集する。冒険者ギルドの撤退に関することと、ビスラとフランが辞めたこと。ゼスタート家が国から出ること。それと、王女誘拐についての詳細を説明するのだ。
ミィア達もシルフィスカが関わっている以上、犯人の証拠などを集めるのに協力していた。その甲斐あって、ようやくリンティスを糾弾できるほどの証拠を集められたのだ。
キリルが、これに心配ないと告げる。
「シルフィ様でしたら、国に糾弾された後でも、ご自身で追い落とされるかと。『寧ろ、絶望した後に、更に追い打ちをかけたいしな』とついこの間、いい笑顔で仰っておられました」
「あ、師匠ならやるわ」
「なるほど。でしたら、せめて今回のこと、我々で見届けておきましょう。行くの面倒だと思ってましたけど」
ビスラとフランは明日、城に呼ばれていた。辞めること。勲章も返したことをきっちり説明する必要があるらしい。ただの一騎士、魔法師ならば問題ないが、彼らはそれぞれ騎士団長と魔法師長の庶子。それが知られているため、家の方に責任が行きかねないのだ。
二人にしてみれば、父親の家がどうなろうがどうでもいい。だから、普通に無視してやろうと思ったのだが、ベリスベリー家の最後を見届けられるならば行っても良いと考えを改める。
ここでマーティウィンも元気に手を挙げた。
「それがいいですなあっ。私もヘスライルの代表として行きますぞっ!」
楽しそうだ。
ヘスライル国にとって大恩あるシルフィスカを傷付けたこと。それも、国の危機的状況の折に、冤罪で怪我を負わせた上に引き留めたことは許せるものではない。その犯人を裁くとなれば、立ち会うべきだろう。
「では、我々三人は冒険者ギルドの代表として参りましょうか」
「いいわねぇ、それ」
「……そうする……」
特級の冒険者は、各国の王族も礼を持って接するべき存在。関係者として立ち会うと言えば、許可は降りるだろう。当日でさえ問題ない。
「忍び込む」
「うむ。侵入経路を教えよう」
「ん。ありがと、ミィア兄」
虫を使っての諜報活動が得意なマリアナは、身体能力もそれに見合うだけのものを持っている。ミィアとは一瞬で分かり合ったらしい。
「私も何とかして入り込もうかしら。そうねえ…….シルフィの義母としてってダメかしら? きっちりそっち方面こらも抗議したいのよね」
ここは義母としてとジルナリスは意気込む。沢山のシルフィスカの義母、義父候補達の代表だ。
「旦那様と行かれればよろしいでしょう。この国を辞するならば、おかしなことではありますまい。その原因でもありますからな。それに、どうやら聞いた所によりますと、今までベリスベリーに迷惑を被った者たちも証言をするために登城するとか。なので問題ありません」
リンティスが貶めてきた令嬢達も、全員で訴えたれると聞いて勇ましく名乗りを上げているらしい。
「そうなの? それは楽しそうねえ♪ そうと決まれば、服を用意しなくちゃ。はったりの効くのがいいわね」
気合を入れるジルナリスに、ユキトが声をかける。
「ジルナリス様。万が一のため、侯爵様にも契約服をご利用ください。御子息様にも」
「分かったわ。ありがとう。ユジア、選ぶの手伝ってちょうだい」
「承知しました」
待ちに待った決戦は明日だ。
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