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第四章 国を渡り歩く狐

092 驚きの眼力?

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戦場を見てみたいとマティアスが言ったのは、シェリスと出会ってしばらくした頃。

冒険者の登録もしたため、一般人とカウントされない。よって、戦場に紛れ込んだとしても問題はない。

この問題とは、殺されてもということだ。一般人だと、どの国の者か、誰が手にかけたのかなど調査され、最後の交渉時の手札とするらしい。

冒険者の場合は、冒険者ギルドに戦場の近くへ行くことを申請し、どちらの兵士にも手を出さないことを誓約する必要がある。

ただし、間者や暗殺者と間違われても文句は言えない。それなのに、こちらから手は出せないので、行きたがる冒険者はまずいないのが現状だ。



『関わらないに越したことはありません。あなたの回避能力があれば問題はないでしょう』



そんな面倒な場所へ行くというのに、シェリス  が言ったのはそれだけ。

この頃心配している日常の常識など、戦場では必要がないので、シェリスも注意しなくて良いと考えたようだ。

そしてその戦場で、マティアスは不思議な兵士に出会った。

獣のような気配。

けれど見た目は人だ。だから、マティアスは名乗る時に『マティアス。ディストレアだ』と言った。

自分のように人ではないものに育てられた者ではないかと思ったのだ。

そうして注意深く見ていると、尻尾や耳が見えてきた。その時点でようやくこういう種族がいることを思い出す。

それは、トヤから教えられた獣人族の話。



『お前に近いかもな』



そう言われて興味を持ったのを思い出したのだ。

これらの出来事は、シェリスには伝えていなかった。この頃、シェリスはなんでも知っているという思いが強かったため、獣人のことなど伝えても仕方がないと思ったのだ。

だから、その人との出会いをマティアス以外は知らなかった。


「やっと見つけた!」
「ん?」

声をかけられたのは、妖精王の元へと向かい、旅を始めて三日目のこと。

見てすぐに分かった。

「ああ。あの時の狐っ」
「ちょっ」
「ん?」

慌てるその人の様子にマティアスは首を傾げた。

「どなたです?」
「知り合いかい?」
「これはまた。別嬪さんだなあ」

シェリスは訝しげに。カルツォーネは興味深そうに。ダクストールは顎を撫でながらうんうんと頷く。

「確か……カグ……カグ?」
「あああっ、サ、サクヤよ! この姿の時はサクヤなの!」
「ん? そうか。で? サクヤはこんな所でどうした? もう兵士じゃないのか?」
「あの後、すぐに辞めたわ……あの人が居たからやってただけだし」
「ふ~ん」

改めてマティアスはじっとサクヤを見つめる。

「な、なに?」
「いや……もしかして、かなり年上か?」
「っ……そうだけど……」
「ん~?」
「な、なんなの?」

更に近付き、顎に手を添えながらマティアスは見つめ、分かったと手を叩いた。

「お前! 男か!」
「っ、なんで分かるの!?」
「「「……え?」」」

驚きに時間が止まった。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
また二週空きます。
よろしくお願いします◎
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