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第ニ章 王都見学と初めての師匠
047 新しいことにチャレンジしたい
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2019. 1. 18
**********
マティアスは精霊達に導かれるままに狭い路地へと入り込んでいく。
すると、突然拓けた場所に出た。
「おや、広場に出てしまったね。近道を教えてくれたのかな?」
何度もこの王都へ来ているカルツォーネからしてみると、広場に出るまでの道はかなりの近道だったようだ。
しかし、精霊達はまだ進んでいく。
「マティ、気をつけてくださいね」
「ん? あ、ああ。少し距離を取るからな」
シェリスが注意したのは、精霊達の存在を認識していると他人に知られないようにということだ。
広場には先ほどまで通ってきた路地とは違い、当然だが、周りには人がいる。何か見えないものを見ている様子や、同じように精霊が見える者にマティアスが精霊を見ているということを気付かれないようにしなくてはならない。
『少し距離を取る』とマティアスが伝えたのは精霊達にだ。こちらの事情を理解しているらしく、精霊達も何気ない様子を装って進んでいく。
「一体、どこに行くんだろうね」
「これだけ人がいる場所というのは厄介ですね」
何かの拍子に精霊を追っていることを悟られかねない。普段、あまり人と積極的に関わろうとしない精霊達が、こうして人のいる場所に呼ぶというのは予想外だ。
だが、しばらくすると、人の少ない場所へと来ていた。
「静かな所だね」
「この広場、かなり広いのですね。この辺りはバラ園ですか」
「そうだね。迷いそうだ」
バラの垣根が作られ、迷路のように道が出来ている。そこへと、精霊達は迷わず入っていったのだ。
「こんな所に一体何があるんでしょう……」
まさか、ここまで来て精霊のいたずらで、この中で迷わせる気ではないかと疑ってしまう。
マティアスは精霊を見失わないように真っ直ぐ見つめる。人の気配がなくなったので、気を使う必要もない。
そうして進むと、不意に前方で精霊達が固まっている場所があった。
「あ、着いたみたいだ」
「ここですか?」
「微妙な場所じゃないかい?」
中央でもなく、とても微妙な位置だ。まだ道は先に続いている。行き止まりになっているわけでもなかった。
《ここ~》
《した~》
《あ~け~て~》
精霊達が地面に集まり、訴えてきていた。
「下?」
「下ですか?」
「下って……あっ、なんか切れ込みがあるように見えないかい?」
「……確かにそうですね……」
一箇所。精霊達が集まっている場所に、人一人が納まるくらいの四角い切れ込みがあるように見えた。
「開けるって言ってるんだが」
マティアスがシェリスとカルツォーネに伝えると、二人でその場所を覗き込むようにして見つめる。
「……魔術で封印されているようですね……」
「随分古いよ。けど、解けなくはなさそうだね」
二人は楽しそうに笑い合う。どうやら、二人とも魔術関係のものが好きなようだ。
「鍵穴があれば開けるんだがなあ」
マティアスは役に立てないと思いながらも、どうやるのか観察する構えだ。
そこで、マティアスはふと公爵の屋敷を出る直前に鞄に入れた物のことを思い出す。
二人は魔術の封印を解くことに集中しているので気付かない。
取り出したのは、小さな鍵だった。それも、鉄ではなく、魔石で作られたらしい美しいクリスタルのように輝く鍵だ。
「どこの鍵だ?」
それをマジマジと観察している間に、シェリスとカルツォーネが解除に成功したようだ。これでまた先に進めるなと思いながら、マティアスは再びその鍵を鞄に入れた。
カタンと音を出し、そこにあの公爵の屋敷で見たような階段が現れた。その中へと精霊達が飛び込んで行く。
「この先に行くみたいだぞ」
「おかしな臭いもしませんから大丈夫だと思いますが、気を付けて進んでくださいね。万が一の為、周りに風の障壁を作って行きましょう」
「わかった」
「壁に当たらないようにね」
「あ~……こうか?」
なるべく自身の体の大きさに合わせて、薄い風の膜を張る。そうして、更にその先へと進んで行った。
三人が階段を降り切った所で、ゆっくりと入ってきた穴が塞がれる。
「閉ちまったぞ?」
「ええ。時間で閉まるようでしたからね」
シェリスとカルツォーネは分かっていたらしい。
「大丈夫だよ。もうあの解除式は覚えたから、何度だって開けられるよ。降りる時に確認したけど、こちら側からも同じ式で大丈夫みたいだった」
シェリスもカルツォーネも、こうした仕掛けのある遺跡やダンジョンと呼ばれる場所へ行ったことがある。そのため、帰りのことも考えて確認は怠らなかったのだ。
「へぇ……なあ、今度私にもああいうやつの解除の仕方教えてくれよ」
「いいですけど……」
「普通の鍵開けだけじゃ満足しないんだ?」
「だって、気になる」
拗ねたように口を尖らせるマティアスに、二人は顔を見合わせる。鍵開けもできるのに、更に魔術の解除の仕方まで知れたら、マティアスに開けられないものはなくなるのではないか。
「……色んな鍵を開けまくりそうだね……」
「罠が全て解除可能になりそうです……」
「言えてる」
マティアスに怖いものはなにもなくなりそうだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、一度お休みさせていただき
金曜1日です。
よろしくお願いします◎
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マティアスは精霊達に導かれるままに狭い路地へと入り込んでいく。
すると、突然拓けた場所に出た。
「おや、広場に出てしまったね。近道を教えてくれたのかな?」
何度もこの王都へ来ているカルツォーネからしてみると、広場に出るまでの道はかなりの近道だったようだ。
しかし、精霊達はまだ進んでいく。
「マティ、気をつけてくださいね」
「ん? あ、ああ。少し距離を取るからな」
シェリスが注意したのは、精霊達の存在を認識していると他人に知られないようにということだ。
広場には先ほどまで通ってきた路地とは違い、当然だが、周りには人がいる。何か見えないものを見ている様子や、同じように精霊が見える者にマティアスが精霊を見ているということを気付かれないようにしなくてはならない。
『少し距離を取る』とマティアスが伝えたのは精霊達にだ。こちらの事情を理解しているらしく、精霊達も何気ない様子を装って進んでいく。
「一体、どこに行くんだろうね」
「これだけ人がいる場所というのは厄介ですね」
何かの拍子に精霊を追っていることを悟られかねない。普段、あまり人と積極的に関わろうとしない精霊達が、こうして人のいる場所に呼ぶというのは予想外だ。
だが、しばらくすると、人の少ない場所へと来ていた。
「静かな所だね」
「この広場、かなり広いのですね。この辺りはバラ園ですか」
「そうだね。迷いそうだ」
バラの垣根が作られ、迷路のように道が出来ている。そこへと、精霊達は迷わず入っていったのだ。
「こんな所に一体何があるんでしょう……」
まさか、ここまで来て精霊のいたずらで、この中で迷わせる気ではないかと疑ってしまう。
マティアスは精霊を見失わないように真っ直ぐ見つめる。人の気配がなくなったので、気を使う必要もない。
そうして進むと、不意に前方で精霊達が固まっている場所があった。
「あ、着いたみたいだ」
「ここですか?」
「微妙な場所じゃないかい?」
中央でもなく、とても微妙な位置だ。まだ道は先に続いている。行き止まりになっているわけでもなかった。
《ここ~》
《した~》
《あ~け~て~》
精霊達が地面に集まり、訴えてきていた。
「下?」
「下ですか?」
「下って……あっ、なんか切れ込みがあるように見えないかい?」
「……確かにそうですね……」
一箇所。精霊達が集まっている場所に、人一人が納まるくらいの四角い切れ込みがあるように見えた。
「開けるって言ってるんだが」
マティアスがシェリスとカルツォーネに伝えると、二人でその場所を覗き込むようにして見つめる。
「……魔術で封印されているようですね……」
「随分古いよ。けど、解けなくはなさそうだね」
二人は楽しそうに笑い合う。どうやら、二人とも魔術関係のものが好きなようだ。
「鍵穴があれば開けるんだがなあ」
マティアスは役に立てないと思いながらも、どうやるのか観察する構えだ。
そこで、マティアスはふと公爵の屋敷を出る直前に鞄に入れた物のことを思い出す。
二人は魔術の封印を解くことに集中しているので気付かない。
取り出したのは、小さな鍵だった。それも、鉄ではなく、魔石で作られたらしい美しいクリスタルのように輝く鍵だ。
「どこの鍵だ?」
それをマジマジと観察している間に、シェリスとカルツォーネが解除に成功したようだ。これでまた先に進めるなと思いながら、マティアスは再びその鍵を鞄に入れた。
カタンと音を出し、そこにあの公爵の屋敷で見たような階段が現れた。その中へと精霊達が飛び込んで行く。
「この先に行くみたいだぞ」
「おかしな臭いもしませんから大丈夫だと思いますが、気を付けて進んでくださいね。万が一の為、周りに風の障壁を作って行きましょう」
「わかった」
「壁に当たらないようにね」
「あ~……こうか?」
なるべく自身の体の大きさに合わせて、薄い風の膜を張る。そうして、更にその先へと進んで行った。
三人が階段を降り切った所で、ゆっくりと入ってきた穴が塞がれる。
「閉ちまったぞ?」
「ええ。時間で閉まるようでしたからね」
シェリスとカルツォーネは分かっていたらしい。
「大丈夫だよ。もうあの解除式は覚えたから、何度だって開けられるよ。降りる時に確認したけど、こちら側からも同じ式で大丈夫みたいだった」
シェリスもカルツォーネも、こうした仕掛けのある遺跡やダンジョンと呼ばれる場所へ行ったことがある。そのため、帰りのことも考えて確認は怠らなかったのだ。
「へぇ……なあ、今度私にもああいうやつの解除の仕方教えてくれよ」
「いいですけど……」
「普通の鍵開けだけじゃ満足しないんだ?」
「だって、気になる」
拗ねたように口を尖らせるマティアスに、二人は顔を見合わせる。鍵開けもできるのに、更に魔術の解除の仕方まで知れたら、マティアスに開けられないものはなくなるのではないか。
「……色んな鍵を開けまくりそうだね……」
「罠が全て解除可能になりそうです……」
「言えてる」
マティアスに怖いものはなにもなくなりそうだった。
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