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第ニ章 王都見学と初めての師匠
036 屋敷探険は楽しいです
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2018. 10. 12
**********
シェリスに勧められて地下へと向かうマティアスは、軽い足取りで屋敷を見て回っていた。
「凄えなぁ……宿屋も凄かったけど、これで家なんだもんなぁ……」
ひたすら感心してしまう。これが個人の家だというのだから、マティアスにしてみれば信じられない。
村にあった家は、先程の部屋よりも少しだけ広いだけの範囲に全てがあった。村長の家なんかには、壁を隔てて何部屋かあったが、外から見た外観の記憶では、おそらく、今マティアスが泊まっている宿の部屋一つ分くらいの大きさだろう。
それなのに、個人の家が宿屋よりも広いなんて、信じられないことだったのだ。
「そんで地下? 洞窟じゃねぇんだよな……?」
キョロキョロと散々見回したマティアスだったが、これまで誰一人として出会えていない。
前を通り過ぎた部屋には幾人かいたのだが、出てくることはなかった。
「シェリーが普通ならもっとたくさん人がいるって言ってたし、やっぱおかしいんかな?」
宿屋でも、従業員に廊下ですれ違うことはあった。それよりも多くの人がこの屋敷にいるべきということは広さからして分かった。やはり異常だ。
「下に……結構な人数いるよなぁ……何してんだ?」
近付くにつれて人数がわかりやすくなってくる。その数、ざっと五十人。
「えっと……空洞な……通路っぽい感じがすんのがこの辺……壁だよな……?」
ペタペタとその辺りを触る。
「扉は壊して良いってことだったが……これは扉ってことにして良いのかが分からんな」
マティアスは基本的にシェリスの言いつけは守る。
そうして、不意に壁に手がトンと当たる。その音が、空洞になっている木と同じな気がして、間違いなくここで合っていると確信する。
コンコンと叩きながらその範囲を特定すると、気になる突起を見つけた。
「う~ん……とりあえず、押してダメなら引っ掛ければいいんだったな。面白いなぁ……これは仕掛け箱と同じか」
手加減を覚えるために、時折遠出して盗賊なんかを倒していたマティアスは、盗品の中にあった仕掛けのある宝箱なんかを玩具にしていた。
体の大きなディストレアには難しいので、そういった物を開けるのはマティアスだ。こうした仕掛けも同じならばと色々試してみることにした。
カツンと引っ掛けたそれが上に少しだけ動くのを感じ、更にネジのように回してみる。すると、ドアの取っ手らしきものが飛び出てきた。
「よし、これだな」
当たったと機嫌よく笑みを浮かべると、躊躇いなくそれを引き開ける。その先には暗い通路が続いていた。
「凝ってんなぁ」
マティアスは暗闇の中、今までと変わらぬ足取りで進んでいく。元々夜目が利くので、こういった暗い場所も問題ない。
角をいくつか曲がる。その先の方に揺らぐ微かな灯りが見えた。
「この先だな……」
気配を数えると、やはり五十余名。何か違和感を感じながらも、奥へと進んでいく。
そこには、広い部屋があった。
見えたのは鉄の柵。男の太い腕が通るくらいの間隔で天井から足下まできっちりと突き立つ鉄の棒。
その先にあるのは質素な部屋だ。五十人ほど入っていてもそれほど狭くは感じない。広さはあるらしい。
明かりは松明だった。炎の揺れ具合から、換気はできているようではある。だが、油の匂いと、何日もここに閉じ込められていたらしい人の体臭がマティアスの顔を歪めさせた。
「臭い……」
マティアスは瞬時に自身を風の膜で包む。
「ん?」
いつもならば、指を振るくらい容易く発動するはずのそれは、少し抵抗されるような感覚があった。それに首を傾げながらも発動した風によって散らされる臭いは、幾分かマシという程度に薄れた。
改めて中を見ると、柵の前にしか明かりがないので、そこは真っ暗だ。マティアスのように夜目が利かなければ人がいることすら気付けないかもしれない。
見たところかなり弱っている者もいるらしく、硬い床に寝転んだまま動かない者も数名いる。
マティアスは、唯一の出入り口らしき場所へ近付く。幾重にも鎖によって絡め、塞いでいるその鉄の扉を思いっきり引っ張って外し取った。
鎖と鍵が弾け飛び、カシャンっと音が響く。
すると、それを狙っていたのだろう。ギラギラと光る瞳には気付いていた。入り口が開いたと同時に、数人が飛びかかってきたのだ。
「おいおい、別に敵じゃなっ……」
敵じゃないんだけどなと呟きながら、マティアスは彼らを迎撃する。
「お? なんか手応えが……」
少し寝てもらおうと下ろした手の感覚が、少し違う。それを不思議に思っていれば、反撃が来た。
「おおっ」
頑丈なのだろうかと首を傾げる。そこで向かってきている者たちが人族でないことに気づく。
「なぁるほど。獣人族か」
人族よりも、身体能力が高い彼らならば、確かに頑丈だ。ならば手加減無用だとマティアスは笑みを深めて構え直した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
お遊びみたいです。
次回、金曜19日0時です。
よろしくお願いします◎
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シェリスに勧められて地下へと向かうマティアスは、軽い足取りで屋敷を見て回っていた。
「凄えなぁ……宿屋も凄かったけど、これで家なんだもんなぁ……」
ひたすら感心してしまう。これが個人の家だというのだから、マティアスにしてみれば信じられない。
村にあった家は、先程の部屋よりも少しだけ広いだけの範囲に全てがあった。村長の家なんかには、壁を隔てて何部屋かあったが、外から見た外観の記憶では、おそらく、今マティアスが泊まっている宿の部屋一つ分くらいの大きさだろう。
それなのに、個人の家が宿屋よりも広いなんて、信じられないことだったのだ。
「そんで地下? 洞窟じゃねぇんだよな……?」
キョロキョロと散々見回したマティアスだったが、これまで誰一人として出会えていない。
前を通り過ぎた部屋には幾人かいたのだが、出てくることはなかった。
「シェリーが普通ならもっとたくさん人がいるって言ってたし、やっぱおかしいんかな?」
宿屋でも、従業員に廊下ですれ違うことはあった。それよりも多くの人がこの屋敷にいるべきということは広さからして分かった。やはり異常だ。
「下に……結構な人数いるよなぁ……何してんだ?」
近付くにつれて人数がわかりやすくなってくる。その数、ざっと五十人。
「えっと……空洞な……通路っぽい感じがすんのがこの辺……壁だよな……?」
ペタペタとその辺りを触る。
「扉は壊して良いってことだったが……これは扉ってことにして良いのかが分からんな」
マティアスは基本的にシェリスの言いつけは守る。
そうして、不意に壁に手がトンと当たる。その音が、空洞になっている木と同じな気がして、間違いなくここで合っていると確信する。
コンコンと叩きながらその範囲を特定すると、気になる突起を見つけた。
「う~ん……とりあえず、押してダメなら引っ掛ければいいんだったな。面白いなぁ……これは仕掛け箱と同じか」
手加減を覚えるために、時折遠出して盗賊なんかを倒していたマティアスは、盗品の中にあった仕掛けのある宝箱なんかを玩具にしていた。
体の大きなディストレアには難しいので、そういった物を開けるのはマティアスだ。こうした仕掛けも同じならばと色々試してみることにした。
カツンと引っ掛けたそれが上に少しだけ動くのを感じ、更にネジのように回してみる。すると、ドアの取っ手らしきものが飛び出てきた。
「よし、これだな」
当たったと機嫌よく笑みを浮かべると、躊躇いなくそれを引き開ける。その先には暗い通路が続いていた。
「凝ってんなぁ」
マティアスは暗闇の中、今までと変わらぬ足取りで進んでいく。元々夜目が利くので、こういった暗い場所も問題ない。
角をいくつか曲がる。その先の方に揺らぐ微かな灯りが見えた。
「この先だな……」
気配を数えると、やはり五十余名。何か違和感を感じながらも、奥へと進んでいく。
そこには、広い部屋があった。
見えたのは鉄の柵。男の太い腕が通るくらいの間隔で天井から足下まできっちりと突き立つ鉄の棒。
その先にあるのは質素な部屋だ。五十人ほど入っていてもそれほど狭くは感じない。広さはあるらしい。
明かりは松明だった。炎の揺れ具合から、換気はできているようではある。だが、油の匂いと、何日もここに閉じ込められていたらしい人の体臭がマティアスの顔を歪めさせた。
「臭い……」
マティアスは瞬時に自身を風の膜で包む。
「ん?」
いつもならば、指を振るくらい容易く発動するはずのそれは、少し抵抗されるような感覚があった。それに首を傾げながらも発動した風によって散らされる臭いは、幾分かマシという程度に薄れた。
改めて中を見ると、柵の前にしか明かりがないので、そこは真っ暗だ。マティアスのように夜目が利かなければ人がいることすら気付けないかもしれない。
見たところかなり弱っている者もいるらしく、硬い床に寝転んだまま動かない者も数名いる。
マティアスは、唯一の出入り口らしき場所へ近付く。幾重にも鎖によって絡め、塞いでいるその鉄の扉を思いっきり引っ張って外し取った。
鎖と鍵が弾け飛び、カシャンっと音が響く。
すると、それを狙っていたのだろう。ギラギラと光る瞳には気付いていた。入り口が開いたと同時に、数人が飛びかかってきたのだ。
「おいおい、別に敵じゃなっ……」
敵じゃないんだけどなと呟きながら、マティアスは彼らを迎撃する。
「お? なんか手応えが……」
少し寝てもらおうと下ろした手の感覚が、少し違う。それを不思議に思っていれば、反撃が来た。
「おおっ」
頑丈なのだろうかと首を傾げる。そこで向かってきている者たちが人族でないことに気づく。
「なぁるほど。獣人族か」
人族よりも、身体能力が高い彼らならば、確かに頑丈だ。ならば手加減無用だとマティアスは笑みを深めて構え直した。
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よろしくお願いします◎
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