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第一章 冒険者の始まりと最初の出会い
023 釣られた獲物は大きいか?
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2018. 7. 6
**********
マティアスは、少し待ってくれと言ってから釣ったシャークホーンを小さく切り分ける作業を再開する。
それを見ていたシェリスは、苦笑しながらもそれを綺麗に、家に備え付けられていた食品を入れておくボックスに収納していく。
「ついでに買ったものも入れてしまいますか」
「なんだ? 何か買ってきたのか?」
「ええ……お土産です……」
「土産!? よっしゃ! 果物もあるか?」
「ありますよ」
「おおっ、ありがとなっ。シェリー!」
「た、大したものではありませんよ……っ」
満面の笑みで礼を言うマティアスを直視できなくなったシェリスの顔は、少し赤くなっていた。それを誤魔化すように、シェリスは収納を続ける。しばらくして平静に戻ると、ふと呟いた。
「それにしてもこの食料庫……どれだけ入るのでしょうね……」
このボックスは、希少な神属性の力を持った者が付与した空間魔術と時の魔術を融合させた貴重な一品であり、世間的に知られている鞄サイズのアイテムボックスと同じものだ。
ただし、その大きさや容量は確実に鞄サイズのものとは比べものにもならないくらい大きい。
入り口となる所に入る大きさならば生きている生き物以外は全て入り、取り出すことができる。そして、中に入っているものは時間の経過が止まるので、劣化しないという代物だ。
とはいえ、実は世に出回っているアイテムボックスの中身の保管期間は無期限ではない。ものによっては一週間から一年。それ以上のものも三年ほどが限度だと言われている。
しかし、おそらくこの家に置かれているものは、三年よりも長い時間の保管ができるのではないかと、感じる魔力からシェリスは見ている。
「う~ん……なぁ、この頭はやっぱこのままじゃ入らんか?」
マティアスはシャークホーンの残されたお頭部分を見つめていた。
相談されたシェリスは、扉の大きさと頭の大きさを見比べて答えを出す。
「そうですね。そのまま外で焼いて食べてしまいますか」
「頭良いな! シェリーっ」
「はいはい。まずは片付けますよ」
二人はすっかり、外で家の中の様子を伺っている数人の追跡者達の存在を忘れていた。
切り分けた全てを食料庫に収納し、汚した作業台を魔術を使って綺麗にする。
なお、食料庫の開いた扉についている大きな緑色の宝玉に魔力を流すと、中身が一覧となってそこに表示される。目的とするものの名前を意識しながら手を突っ込むと、それが出てくるようだ。
これは、おそらく家族単位で使用するための装置で、他の誰が何を入れたかがわかり、誰でも取り出せるようにとの仕様になっているのだ。
「さて、それじゃ、焚き火の準備……の前にそういえば客がいなかったか?」
「……忘れていました……」
ここでようやく思い出した。
「どうしましょうね」
マティアスに楽しんでもらおうと思って連れてきたのだが、マティアスはマティアスで充分楽しんでいたようなので、もう必要ないなとシェリスには思えた。
しかし、マティアスはシェリスの意図を察していたようだ。
「あいつら、私のために残してくれた獲物なんだろ?」
「え、ええ。隠密能力はそれなりに高いようですし、退屈していると思っていたので、遊び相手にどうかと連れて来たのですが……」
彼らは恐らく三人。探知能力の高いシェリスにはバレバレだったが、彼らの気配を読める者は限られるだろう。
それだけ能力は高い。更に、シェリスのスピードにも遅れずついて来られていた。それは、身体能力の高さをも証明している。
「なら、ちょい遊んでくるかっ」
「では、私はそれを焼いていましょうか」
「おう頼む」
マティアスは嬉しそうに外へ飛び出したのだった。
**********
舞台裏のお話。
襲撃者A「……嫌な予感がする……」
襲撃者B 「すごい血生臭い……」
襲撃者C「お前は鼻がいいからな」
襲撃者B「まあね。あっ、一気に風の魔術で散らせたみたい」
襲撃者A 「あのエルフならやるだろう。神経質な雰囲気があったからな」
襲撃者C 「……出てくる?」
襲撃者B 「えっ、なんかすごい……赤い髪!? 血じゃあんなふうにならないよね!?」
襲撃者A 「なるわけないだろ! ディストレア……そんなわけないよな……」
襲撃者C 「……なぁ、めっちゃこっち見てないか……」
襲撃者B 「み、見てるっ。ってか、すっごい笑顔なんだけどっ。怖いんだけど!?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
歓迎しているんです。
お土産、喜んでもらえてよかったですね。
次回、金曜13日0時です。
よろしくお願いします◎
**********
マティアスは、少し待ってくれと言ってから釣ったシャークホーンを小さく切り分ける作業を再開する。
それを見ていたシェリスは、苦笑しながらもそれを綺麗に、家に備え付けられていた食品を入れておくボックスに収納していく。
「ついでに買ったものも入れてしまいますか」
「なんだ? 何か買ってきたのか?」
「ええ……お土産です……」
「土産!? よっしゃ! 果物もあるか?」
「ありますよ」
「おおっ、ありがとなっ。シェリー!」
「た、大したものではありませんよ……っ」
満面の笑みで礼を言うマティアスを直視できなくなったシェリスの顔は、少し赤くなっていた。それを誤魔化すように、シェリスは収納を続ける。しばらくして平静に戻ると、ふと呟いた。
「それにしてもこの食料庫……どれだけ入るのでしょうね……」
このボックスは、希少な神属性の力を持った者が付与した空間魔術と時の魔術を融合させた貴重な一品であり、世間的に知られている鞄サイズのアイテムボックスと同じものだ。
ただし、その大きさや容量は確実に鞄サイズのものとは比べものにもならないくらい大きい。
入り口となる所に入る大きさならば生きている生き物以外は全て入り、取り出すことができる。そして、中に入っているものは時間の経過が止まるので、劣化しないという代物だ。
とはいえ、実は世に出回っているアイテムボックスの中身の保管期間は無期限ではない。ものによっては一週間から一年。それ以上のものも三年ほどが限度だと言われている。
しかし、おそらくこの家に置かれているものは、三年よりも長い時間の保管ができるのではないかと、感じる魔力からシェリスは見ている。
「う~ん……なぁ、この頭はやっぱこのままじゃ入らんか?」
マティアスはシャークホーンの残されたお頭部分を見つめていた。
相談されたシェリスは、扉の大きさと頭の大きさを見比べて答えを出す。
「そうですね。そのまま外で焼いて食べてしまいますか」
「頭良いな! シェリーっ」
「はいはい。まずは片付けますよ」
二人はすっかり、外で家の中の様子を伺っている数人の追跡者達の存在を忘れていた。
切り分けた全てを食料庫に収納し、汚した作業台を魔術を使って綺麗にする。
なお、食料庫の開いた扉についている大きな緑色の宝玉に魔力を流すと、中身が一覧となってそこに表示される。目的とするものの名前を意識しながら手を突っ込むと、それが出てくるようだ。
これは、おそらく家族単位で使用するための装置で、他の誰が何を入れたかがわかり、誰でも取り出せるようにとの仕様になっているのだ。
「さて、それじゃ、焚き火の準備……の前にそういえば客がいなかったか?」
「……忘れていました……」
ここでようやく思い出した。
「どうしましょうね」
マティアスに楽しんでもらおうと思って連れてきたのだが、マティアスはマティアスで充分楽しんでいたようなので、もう必要ないなとシェリスには思えた。
しかし、マティアスはシェリスの意図を察していたようだ。
「あいつら、私のために残してくれた獲物なんだろ?」
「え、ええ。隠密能力はそれなりに高いようですし、退屈していると思っていたので、遊び相手にどうかと連れて来たのですが……」
彼らは恐らく三人。探知能力の高いシェリスにはバレバレだったが、彼らの気配を読める者は限られるだろう。
それだけ能力は高い。更に、シェリスのスピードにも遅れずついて来られていた。それは、身体能力の高さをも証明している。
「なら、ちょい遊んでくるかっ」
「では、私はそれを焼いていましょうか」
「おう頼む」
マティアスは嬉しそうに外へ飛び出したのだった。
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舞台裏のお話。
襲撃者A「……嫌な予感がする……」
襲撃者B 「すごい血生臭い……」
襲撃者C「お前は鼻がいいからな」
襲撃者B「まあね。あっ、一気に風の魔術で散らせたみたい」
襲撃者A 「あのエルフならやるだろう。神経質な雰囲気があったからな」
襲撃者C 「……出てくる?」
襲撃者B 「えっ、なんかすごい……赤い髪!? 血じゃあんなふうにならないよね!?」
襲撃者A 「なるわけないだろ! ディストレア……そんなわけないよな……」
襲撃者C 「……なぁ、めっちゃこっち見てないか……」
襲撃者B 「み、見てるっ。ってか、すっごい笑顔なんだけどっ。怖いんだけど!?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
歓迎しているんです。
お土産、喜んでもらえてよかったですね。
次回、金曜13日0時です。
よろしくお願いします◎
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