32 / 80
第三章 真実を知る家族
032 不安を抱えて
しおりを挟む
いつも通りの学校。だが昼休み、拓海と明良はソワソワと待ち合わせの渡り廊下へとやってきた。
「……理修は、まだか」
「おう……なぁ、今朝の……」
そう明良が話そうとした所で、理修が駆けてきた。
「ごめん。お待たせ。ついてきて」
来て早々、すぐに着いて来いと言う理修に、二人は大人しくついて行く。だが、理修が屋上へと向かう階段へと差し掛かった所で、拓海が声をかけた。
「理修?そっちは屋上だろ?」
「うん。だって、屋上に行くんだもの。大丈夫。鍵も開けられるから」
「…………」
何が大丈夫なのか分からない。そして理修は、鍵穴に何かを差し込む事なく、ドアノブを回しただけだった。
「え……」
「鍵、かかってないのか?」
「ん?かかってるよ?魔術は万能だからね」
「万能!? 万能過ぎだろ!?」
「ピッキングしてる奴らの方が正しいように思えてきそうだ……」
明良は目を丸くし、拓海は呆れ果てた。既に朝、ドラゴンという未知の生物と対面しているためか、魔術と聞いて驚きはしないが、理修が自然にそれを行っている事に違和感を感じる。
「お待たせ、司」
「おお……本当に連れてきたのか……」
「うん。お弁当、一緒に食べようと思って」
「そうか……」
屋上には、当たり前のようにその場所がある事に、拓海と明良は絶句する。
「屋上にこんな物が……」
拓海が思わず呟く。
「やっぱり、雨は防げた方が良いもの。風も防げるように、小屋にしようとも思ったんだけど、せっかく見晴らしが良いのに、もったいないでしょ?」
「え、あ、理修が作ったのか?」
明良が、まさかと言うように訊ねた。
「作ってないよ」
「だよな」
ほっとする二人に、理修は机にお弁当の重箱を出しながら付け加えた。
「持ってきただけ」
「そうか……作ってはいないんだな……」
「持ってきただけか……」
庭園にもありそうな、立派な東屋のような休憩所。骨組みもしっかりしている。何より広い。これをどうやって『持ってきた』のかは聞かない事に決めた二人だった。
しばらく食事を楽しんでいると、突然、その女は現れた。
「お待たせいたしましたリズリール様」
「ううん。約束の時間より早いよ」
拓海と明良は驚き過ぎて、とっさに声が出なかった。同時に思ったのは『忍者!?』という言葉だ。
片膝をつく女の出で立ちは、くノ一のソレだったのだ。
◆ ◆ ◆
『ダグスト王国』
その国教会。リュス教の神殿には、今、多くの信者や司教達が集まっていた。
「魔族だ。魔族がまた我々人を滅ぼそうと動き出したのだ」
「神よ。リュス神よ。どうか我らを救いたまえ」
「聖女様っ。お願い致します。勇者を……我らを救う神の使徒の召喚をっ」
「聖女様っ」
「聖女様」
「…………」
聖女は、白い幕の中にいた。絶えず聞こえてくる信者の願う声に、震えそうになる己れを必死で抑え、涙を堪えていた。
「助けて……」
それは、世界の平和を願う聖女としての願いではなかった。のしかかる期待の重圧に耐えかね、心が悲鳴を上げている。
「助けて……ツカサ様っ……」
それは、もう届かないと知ってなお願わずにはいられない。
「お願い……助けてください……っ」
神に願う事をやめた聖女の心からの願いは、今日もまだ届く事はない。
◆ ◆ ◆
「予想通り、ダグストがまた動き出したようです」
「そうか」
ウィルバートは、執務室で報告を受けていた。だが、どこか落ち着かない様子に、側近であるキュリアは内心首を傾げていた。
真面目過ぎる程真面目なウィルバートがこんな風になる理由は、一つしかなかった。
「リズ様に何かありましたか?」
「っ……あぁ……」
いつもの変わらない無表情の中に、どこか不安気なものが見えた。ウィルバートは、リズリールに関わる時にだけしかその表情を変えない。それを知っているからこその確信的な質問だった。
「エヴィの気配が消えた」
「き、消えたとは……?」
わからないと首を横に振るウィルバート。だが、死んだ訳ではないのだと説明されてキュリアはホッとする。リズリールの相棒であるエヴィスタは、次期竜王と言われる現竜王の息子。そんな存在が消えては、この国にとっても一大事だった。
「リズがあちらの世界で喚び出したのだろう。エヴィを召喚するなど、よっぽどの緊急事態だ」
「そんな……」
リズリールが危機的状況に陥るなど、キュリアには想像できなかった。リズリールはリュートリールの後継者であり、魔女だ。今、世界が崩壊したとしても、それをなかった事に出来る程の能力を有している。
「異世界とは、厄介なものだな……」
「はい……」
ただの友人としても世界の壁は遠いと感じるのだ。恋人であるならば尚更だろう。どんな仕事にも手を抜を抜かないウィルバートが、ずっとどこか落ち着かない様子なのだ。
ただ悪いことではない。寧ろ、ウィルバートにとっては良い傾向だ。
キュリアは、ウィルバートがこうして王位に着く前から傍にいる。それは、ウィルバートがリュートリールと出会う前であり、幼馴染と呼べる程であった。
魔族の中でも魔力が高かったウィルバートは、十歳になる頃には既に笑う事が殆どなかった。当時、部落長であった父親の隣りをついて回っている大人しい子どもだったのだ。
それが一転したのは、ウィルバートが二十歳になった時。人族との戦争が起こったのだ。
ウィルバートは、いわば兵器として戦場に立っていた。今とほとんど変わらない姿。その時、その圧倒的な力から『魔王』と呼ばれた。
結果的に魔族の圧勝。だが、このままで良いのかと危機感を覚えた。当時魔族は、広大な土地に集落を作って暮らしていた。その土地は人には不向きな土地柄であった。
遠い先祖達は、その魔力の高さに恐怖を覚えた者たちによって追い立てられ、この土地にやって来たのだ。魔力の高い魔獣や魔物が住んでいる土地。人にとっては絶望的な土地だ。
そして、落ち延びて来た者たちで寄り集まり、集落が出来た。だが、それも不安になってきた。
力のある『勇者』と呼ばれる者たちが、力試しとばかりに集落を襲うようになったのだ。これは、魔族として一つにまとまるべきではないのかと話し合われた。
だが、そこで思わぬ弊害が出た。魔族はその性質上、気が長い。王にと推薦した者が嫌だと言えば、ならば気が変わるまで待とうという考え方だ。しかし、本来ならばそんな悠長な事を言っていられない状況だった。
人形のように心を閉ざし、戦わせられるウィルバート。そこに現れたのがリュートリールだったのだ。
『私やお前のように力ある者は、力に責任を持たねばならんが、使うか使わないかは自分で決めれば良い。助けたければ助ければ良いし、助けたくなければ助ける必要はない。因みに私は、今世界が滅びるなら、友人達だけしか助けん』
ウィルバートに、ニヤリと笑って言い切ったあの時の言葉は忘れられない。恐らく、ウィルバートが変わったきっかけでもあった。無茶苦茶な人だったのだ。
そんな無茶苦茶な人の意思と力を受け継いだのがリズリール。そして、再びウィルバートを変えた娘だった。
「きっと大丈夫です。夜にはいつも通り笑って現れるかもしれませんよ。リズ様も、エヴィ殿を召喚する事で、あなたに心配をかけると分かっているはずですから」
「……そうだな……」
ウィルバートとリズリールが、お互いをずっと想い合っていることは、この国の者ならば皆知っている。
「今や、ベタ惚れですからね……」
リズリールに追いかけ回されていた頃のウィルバートを思い出し、笑いそうになったのは秘密だ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 8. 6
「……理修は、まだか」
「おう……なぁ、今朝の……」
そう明良が話そうとした所で、理修が駆けてきた。
「ごめん。お待たせ。ついてきて」
来て早々、すぐに着いて来いと言う理修に、二人は大人しくついて行く。だが、理修が屋上へと向かう階段へと差し掛かった所で、拓海が声をかけた。
「理修?そっちは屋上だろ?」
「うん。だって、屋上に行くんだもの。大丈夫。鍵も開けられるから」
「…………」
何が大丈夫なのか分からない。そして理修は、鍵穴に何かを差し込む事なく、ドアノブを回しただけだった。
「え……」
「鍵、かかってないのか?」
「ん?かかってるよ?魔術は万能だからね」
「万能!? 万能過ぎだろ!?」
「ピッキングしてる奴らの方が正しいように思えてきそうだ……」
明良は目を丸くし、拓海は呆れ果てた。既に朝、ドラゴンという未知の生物と対面しているためか、魔術と聞いて驚きはしないが、理修が自然にそれを行っている事に違和感を感じる。
「お待たせ、司」
「おお……本当に連れてきたのか……」
「うん。お弁当、一緒に食べようと思って」
「そうか……」
屋上には、当たり前のようにその場所がある事に、拓海と明良は絶句する。
「屋上にこんな物が……」
拓海が思わず呟く。
「やっぱり、雨は防げた方が良いもの。風も防げるように、小屋にしようとも思ったんだけど、せっかく見晴らしが良いのに、もったいないでしょ?」
「え、あ、理修が作ったのか?」
明良が、まさかと言うように訊ねた。
「作ってないよ」
「だよな」
ほっとする二人に、理修は机にお弁当の重箱を出しながら付け加えた。
「持ってきただけ」
「そうか……作ってはいないんだな……」
「持ってきただけか……」
庭園にもありそうな、立派な東屋のような休憩所。骨組みもしっかりしている。何より広い。これをどうやって『持ってきた』のかは聞かない事に決めた二人だった。
しばらく食事を楽しんでいると、突然、その女は現れた。
「お待たせいたしましたリズリール様」
「ううん。約束の時間より早いよ」
拓海と明良は驚き過ぎて、とっさに声が出なかった。同時に思ったのは『忍者!?』という言葉だ。
片膝をつく女の出で立ちは、くノ一のソレだったのだ。
◆ ◆ ◆
『ダグスト王国』
その国教会。リュス教の神殿には、今、多くの信者や司教達が集まっていた。
「魔族だ。魔族がまた我々人を滅ぼそうと動き出したのだ」
「神よ。リュス神よ。どうか我らを救いたまえ」
「聖女様っ。お願い致します。勇者を……我らを救う神の使徒の召喚をっ」
「聖女様っ」
「聖女様」
「…………」
聖女は、白い幕の中にいた。絶えず聞こえてくる信者の願う声に、震えそうになる己れを必死で抑え、涙を堪えていた。
「助けて……」
それは、世界の平和を願う聖女としての願いではなかった。のしかかる期待の重圧に耐えかね、心が悲鳴を上げている。
「助けて……ツカサ様っ……」
それは、もう届かないと知ってなお願わずにはいられない。
「お願い……助けてください……っ」
神に願う事をやめた聖女の心からの願いは、今日もまだ届く事はない。
◆ ◆ ◆
「予想通り、ダグストがまた動き出したようです」
「そうか」
ウィルバートは、執務室で報告を受けていた。だが、どこか落ち着かない様子に、側近であるキュリアは内心首を傾げていた。
真面目過ぎる程真面目なウィルバートがこんな風になる理由は、一つしかなかった。
「リズ様に何かありましたか?」
「っ……あぁ……」
いつもの変わらない無表情の中に、どこか不安気なものが見えた。ウィルバートは、リズリールに関わる時にだけしかその表情を変えない。それを知っているからこその確信的な質問だった。
「エヴィの気配が消えた」
「き、消えたとは……?」
わからないと首を横に振るウィルバート。だが、死んだ訳ではないのだと説明されてキュリアはホッとする。リズリールの相棒であるエヴィスタは、次期竜王と言われる現竜王の息子。そんな存在が消えては、この国にとっても一大事だった。
「リズがあちらの世界で喚び出したのだろう。エヴィを召喚するなど、よっぽどの緊急事態だ」
「そんな……」
リズリールが危機的状況に陥るなど、キュリアには想像できなかった。リズリールはリュートリールの後継者であり、魔女だ。今、世界が崩壊したとしても、それをなかった事に出来る程の能力を有している。
「異世界とは、厄介なものだな……」
「はい……」
ただの友人としても世界の壁は遠いと感じるのだ。恋人であるならば尚更だろう。どんな仕事にも手を抜を抜かないウィルバートが、ずっとどこか落ち着かない様子なのだ。
ただ悪いことではない。寧ろ、ウィルバートにとっては良い傾向だ。
キュリアは、ウィルバートがこうして王位に着く前から傍にいる。それは、ウィルバートがリュートリールと出会う前であり、幼馴染と呼べる程であった。
魔族の中でも魔力が高かったウィルバートは、十歳になる頃には既に笑う事が殆どなかった。当時、部落長であった父親の隣りをついて回っている大人しい子どもだったのだ。
それが一転したのは、ウィルバートが二十歳になった時。人族との戦争が起こったのだ。
ウィルバートは、いわば兵器として戦場に立っていた。今とほとんど変わらない姿。その時、その圧倒的な力から『魔王』と呼ばれた。
結果的に魔族の圧勝。だが、このままで良いのかと危機感を覚えた。当時魔族は、広大な土地に集落を作って暮らしていた。その土地は人には不向きな土地柄であった。
遠い先祖達は、その魔力の高さに恐怖を覚えた者たちによって追い立てられ、この土地にやって来たのだ。魔力の高い魔獣や魔物が住んでいる土地。人にとっては絶望的な土地だ。
そして、落ち延びて来た者たちで寄り集まり、集落が出来た。だが、それも不安になってきた。
力のある『勇者』と呼ばれる者たちが、力試しとばかりに集落を襲うようになったのだ。これは、魔族として一つにまとまるべきではないのかと話し合われた。
だが、そこで思わぬ弊害が出た。魔族はその性質上、気が長い。王にと推薦した者が嫌だと言えば、ならば気が変わるまで待とうという考え方だ。しかし、本来ならばそんな悠長な事を言っていられない状況だった。
人形のように心を閉ざし、戦わせられるウィルバート。そこに現れたのがリュートリールだったのだ。
『私やお前のように力ある者は、力に責任を持たねばならんが、使うか使わないかは自分で決めれば良い。助けたければ助ければ良いし、助けたくなければ助ける必要はない。因みに私は、今世界が滅びるなら、友人達だけしか助けん』
ウィルバートに、ニヤリと笑って言い切ったあの時の言葉は忘れられない。恐らく、ウィルバートが変わったきっかけでもあった。無茶苦茶な人だったのだ。
そんな無茶苦茶な人の意思と力を受け継いだのがリズリール。そして、再びウィルバートを変えた娘だった。
「きっと大丈夫です。夜にはいつも通り笑って現れるかもしれませんよ。リズ様も、エヴィ殿を召喚する事で、あなたに心配をかけると分かっているはずですから」
「……そうだな……」
ウィルバートとリズリールが、お互いをずっと想い合っていることは、この国の者ならば皆知っている。
「今や、ベタ惚れですからね……」
リズリールに追いかけ回されていた頃のウィルバートを思い出し、笑いそうになったのは秘密だ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 8. 6
23
お気に入りに追加
661
あなたにおすすめの小説
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる