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第一章 魔術師の日常
014 勇者を召喚することの意味
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理修は全ての下準備を終えると、謁見の間へと通された銀次を天井の張りの上から見守っていた。
各国の代表らしき十数人の人々が並んでいる手前で銀次は立ち止まり、彼らと正面から対峙する。
やがて、玉座に座った男が仰々しく口を開いた。
「よくぞ、我らの召喚に応えてくださった。歓迎しよう勇者よ」
何が『歓迎しよう』だ。無理矢理拐っておいてよく言う。
おそらく、銀次も同じ思いを抱いているのだろう。背中が、苛立った感情を映していた。勿論、理修も湧き起こりそうになる殺意を抑えていた。その事に当然、気付かない男は声を張り上げて訴える。
「魔族は脅威だ。かつて、我らの物だった東の大陸を占拠し、その大地の恩恵を奪っていった」
魔族と呼ばれる彼らは多くの技術を発明し、発展に努めた。長命な彼らは時間を使い、技術を惜しみなく磨いた。
それを人々は妬んだのだ。最初に争いの火を抱いたのは人。奪おうとしたのも、愚かな人だった。そして、抵抗する魔族達に敵わずに追い立てられて海を渡った。
「ようやくこの大陸全てが我らの物となり、平和を手に入れた。だが、不安なのだ。いつ魔族達が海を越え、我らを脅かすかと……」
この大陸にも魔族と呼ばれる者達は存在していた。それを人は、一方的に排斥した。だからこそ、その不安は仕方がない事。恨まれている事を自覚しているからこその、疑心暗鬼。自分達の行いを正当化する為の理由。
「勇者よ。我ら人の安寧の為、魔族を討ち滅ぼすのだ」
全ては、人の『業』が生み出した負の連鎖。欲しては退けられ、また欲する。手に入らない物をこそ、人は欲してしまう。その拙い想像力で、手に入れた時の己を輝かせて見せる。そして、決してその先には思いが至らない事に気付かない。愚かで、いつまでも稚拙な生き物。
「「ふざけんな」」
銀次と理修の呟きが重なった。
「……勇者よ……今なんと……」
「ふざけんなと言った。お前らの都合だけで、虐殺犯になってたまるかよっ」
「なっなっなっ……っ」
「っ、無礼なっ」
「貴殿は勇者だろうっ」
口々に言う代表者達に、銀次と理修は冷めた瞳を向ける。
「何が『無礼』だ。意味分かって言ってんのか? まぁ、ちゃんと理解してたら話の通じる相手を一方的に蹂躙しようなんて考えないよな?」
呆れたように銀次は、わざとらしく溜め息をついて見せる。
「残念だったな。こっちがなんにも知らないなんて思うんじゃねぇぞ? それとお前」
「なっなんだ……?」
「『勇者』ってのは、手前ぇらの都合で働く人形じゃねぇんだ。そっちがどう思ってんのか知らねぇが、俺も意思を持った一人の人間だ。それも、この世界の理屈や常識を知らない余所者だ。王だか代表だか知らねぇが、俺が『命令』を聞くのはお前らじゃねぇ。気を付けるんだな。お前らは、危険な者を召喚したんだ。『勇者』っていう、信念で生きる化け物をお前らは召喚した」
そう、『勇者』とは己の信念を曲げず、貫き通す生き物。
『勇気ある者』
『勇ましき者』
それらは、強い信念が呼び起こす姿。
「この世界に生まれた『勇者』ならお前らの意思に沿った信念を抱いたかもしれん。だが、俺は異世界の人間だ。俺が信じられるものは、この世界にはない」
『勇者』としての資質を持った銀次は、何度も召喚される。その術は信念の呼応。心から『勇者』の存在を求め、願う純粋無垢な想い。
『勇者』という存在を信じる想い。喚ぶ事を躊躇わない強い心。それに『勇者』は応えてしまう。
「俺は『勇者』だ。だが『魔王』にも『邪神』にも『災厄』にもなれる者だ。そんな者に頼み事をするなら、相応の覚悟を決めろ」
「っ、何を覚悟せよと……っ?」
「滅びる覚悟だよ」
「っ!?」
その問いに答えたのは理修だった。
「っ、何者だっ!?」
フワリと降り立った理修は、ゆったりとした歩みで進み、やがて銀次を庇うような位置で立ち止まった。これ以上、見ていられなかったのだ。
「理修……」
銀次の声を背に受けながら、真っ直ぐに玉座を見据えた。
「お前達には失望した」
「っなっ!?」
「貴様っ、ここがどこだかっ」
「口を開くな」
理修がそう言って指を鳴らすと、代表達が口元を手で覆い悶えはじめた。
「りっ、理修っ……息っ……」
「あぁ、つい……」
銀次の言葉で、口を塞いだだけでなく、ついでに息を止めてしまっていた事に気付いた理修は、もう一度指を鳴らして息をさせる。
「悪かったわね。殺す気はないのよ? ちょっと苛立ってはいるけど」
「「「…………っ」」」
悪びれずに言う理修に、代表達の瞳が恐怖の色に染まる。そう、見ていられなかったのは銀次の孤独な背中と醜い同族。
「お前達が魔族と呼ぶ者達の王に、私は会った。無為の争いを厭い、かつてのお前達の愚行を赦し、共存を望んでいた。それなのにお前達は……下らない生き物だな……これ以上の恥を晒す前に、滅ぼしてしまった方が良いのかもしれない……」
理修の中には、落胆しかない。その瞳には、侮蔑の色だけが浮かんでいる。
「理修……」
その時、銀次が後ろから理修の手を取った。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 7. 22
各国の代表らしき十数人の人々が並んでいる手前で銀次は立ち止まり、彼らと正面から対峙する。
やがて、玉座に座った男が仰々しく口を開いた。
「よくぞ、我らの召喚に応えてくださった。歓迎しよう勇者よ」
何が『歓迎しよう』だ。無理矢理拐っておいてよく言う。
おそらく、銀次も同じ思いを抱いているのだろう。背中が、苛立った感情を映していた。勿論、理修も湧き起こりそうになる殺意を抑えていた。その事に当然、気付かない男は声を張り上げて訴える。
「魔族は脅威だ。かつて、我らの物だった東の大陸を占拠し、その大地の恩恵を奪っていった」
魔族と呼ばれる彼らは多くの技術を発明し、発展に努めた。長命な彼らは時間を使い、技術を惜しみなく磨いた。
それを人々は妬んだのだ。最初に争いの火を抱いたのは人。奪おうとしたのも、愚かな人だった。そして、抵抗する魔族達に敵わずに追い立てられて海を渡った。
「ようやくこの大陸全てが我らの物となり、平和を手に入れた。だが、不安なのだ。いつ魔族達が海を越え、我らを脅かすかと……」
この大陸にも魔族と呼ばれる者達は存在していた。それを人は、一方的に排斥した。だからこそ、その不安は仕方がない事。恨まれている事を自覚しているからこその、疑心暗鬼。自分達の行いを正当化する為の理由。
「勇者よ。我ら人の安寧の為、魔族を討ち滅ぼすのだ」
全ては、人の『業』が生み出した負の連鎖。欲しては退けられ、また欲する。手に入らない物をこそ、人は欲してしまう。その拙い想像力で、手に入れた時の己を輝かせて見せる。そして、決してその先には思いが至らない事に気付かない。愚かで、いつまでも稚拙な生き物。
「「ふざけんな」」
銀次と理修の呟きが重なった。
「……勇者よ……今なんと……」
「ふざけんなと言った。お前らの都合だけで、虐殺犯になってたまるかよっ」
「なっなっなっ……っ」
「っ、無礼なっ」
「貴殿は勇者だろうっ」
口々に言う代表者達に、銀次と理修は冷めた瞳を向ける。
「何が『無礼』だ。意味分かって言ってんのか? まぁ、ちゃんと理解してたら話の通じる相手を一方的に蹂躙しようなんて考えないよな?」
呆れたように銀次は、わざとらしく溜め息をついて見せる。
「残念だったな。こっちがなんにも知らないなんて思うんじゃねぇぞ? それとお前」
「なっなんだ……?」
「『勇者』ってのは、手前ぇらの都合で働く人形じゃねぇんだ。そっちがどう思ってんのか知らねぇが、俺も意思を持った一人の人間だ。それも、この世界の理屈や常識を知らない余所者だ。王だか代表だか知らねぇが、俺が『命令』を聞くのはお前らじゃねぇ。気を付けるんだな。お前らは、危険な者を召喚したんだ。『勇者』っていう、信念で生きる化け物をお前らは召喚した」
そう、『勇者』とは己の信念を曲げず、貫き通す生き物。
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それらは、強い信念が呼び起こす姿。
「この世界に生まれた『勇者』ならお前らの意思に沿った信念を抱いたかもしれん。だが、俺は異世界の人間だ。俺が信じられるものは、この世界にはない」
『勇者』としての資質を持った銀次は、何度も召喚される。その術は信念の呼応。心から『勇者』の存在を求め、願う純粋無垢な想い。
『勇者』という存在を信じる想い。喚ぶ事を躊躇わない強い心。それに『勇者』は応えてしまう。
「俺は『勇者』だ。だが『魔王』にも『邪神』にも『災厄』にもなれる者だ。そんな者に頼み事をするなら、相応の覚悟を決めろ」
「っ、何を覚悟せよと……っ?」
「滅びる覚悟だよ」
「っ!?」
その問いに答えたのは理修だった。
「っ、何者だっ!?」
フワリと降り立った理修は、ゆったりとした歩みで進み、やがて銀次を庇うような位置で立ち止まった。これ以上、見ていられなかったのだ。
「理修……」
銀次の声を背に受けながら、真っ直ぐに玉座を見据えた。
「お前達には失望した」
「っなっ!?」
「貴様っ、ここがどこだかっ」
「口を開くな」
理修がそう言って指を鳴らすと、代表達が口元を手で覆い悶えはじめた。
「りっ、理修っ……息っ……」
「あぁ、つい……」
銀次の言葉で、口を塞いだだけでなく、ついでに息を止めてしまっていた事に気付いた理修は、もう一度指を鳴らして息をさせる。
「悪かったわね。殺す気はないのよ? ちょっと苛立ってはいるけど」
「「「…………っ」」」
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「お前達が魔族と呼ぶ者達の王に、私は会った。無為の争いを厭い、かつてのお前達の愚行を赦し、共存を望んでいた。それなのにお前達は……下らない生き物だな……これ以上の恥を晒す前に、滅ぼしてしまった方が良いのかもしれない……」
理修の中には、落胆しかない。その瞳には、侮蔑の色だけが浮かんでいる。
「理修……」
その時、銀次が後ろから理修の手を取った。
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