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第二章

051 人さらいのようなもの

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2019. 3. 30

短くてすみません。
**********

樟嬰は、将軍となる者を国内で探っていた。

そう。葉月領内だけでなく、国内で見て探していたのだ。

何より、葉月領内で将軍となれるだけの実力と器を持った者がいなかったというのがある。

そんな中、一目惚れだった。

あれほどキレイな槍術を見たことがなかったのだ。

舞のようだと思った。死と背中合わせの状況であってもあれほど綺麗に舞えるのならば、普段はどうなのだろうと思った。

それとも、死が近かったからこそのものなのだろうか。

知りたいと思ったならば、近くに置くべきだ。

叉獅を将軍にと思い付いたのはその時だった。

「ふふ……我ながら業が深い」

叉獅には考えてくれと言っておいた。だが、その目には隠しきれない闘争心が宿っていた。それを見て、結果は見えたと笑うのを堪えたほどだ。

だが、一人になるとニヤけるのが分かる。

「もらったな」

もう勝ったも同然だった。

そうと決まれば、彼の部下を育てなくてはならない。

頭となる将軍は領内にはいないが、領を守ろうという志を持っている若者はそれなりにいる。

大抵は生まれた領で一生を過ごすのだ。だからこそ家族を守るため、大切な人を守るために軍に、戦える立場にと願う者は多い。

「さて、勧誘戦といこうか」

樟嬰は路地の裏へ入っていく。

そこにいるのは領への不満を燻らせる者たちだ。若さ故に、時には過ちを犯す。

「おいおい、嬢ちゃん。この辺は危ねえぜ? 俺らがお家まで送ってやろう」

ニヤニヤと笑いながら向かってくる男達。けれど、樟嬰も笑っていた。それが男たちを苛立たせる。かつて、同じような子どもと対した時は怯えて震えていたのだろう。

予想と反応が違うために少し戸惑いを見せていた。

「何を笑って……っ」
「いや。調教のし甲斐がありそうだと思ってな」
「なっ……!?」

そうして、樟嬰は先ず三人の男たちを確保した。

それから数日、町に噂が流れた。



『少女のような悪鬼が若者を狩っていく』



これにより、路地裏に巣食っていた不良達はいつの間にか一掃されていたのだ。

◆  ◆  ◆

葉月領内の片隅に、荒廃した土地があった。

かつて小さな村だった場所だ。だが、門が崩れ、妖魔によって滅ぼされてしまった。

門を直し、村を再建するのが領としては正しい対応だが、そのまま捨て置かれてしまったのだ。

再建にはお金がかかる。簡単にいえば、ケチったのだ。その上、その村の生き残りへの対応も悪かった。

いつの間にか誰もいなくなった土地。

しかし、少し前からそこに若者達が住み着いた。そうして、怯えながらも日々やってくる妖魔と戦い、ついでとばかりに村の再建も始めたのだ。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回10日の予定です。
よろしくお願いします◎
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