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第一章
031 反撃開始
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2018. 11. 5
**********
「樟嬰様をお連れしました」
影達に伴われ辿り着いた場所は、地下の暗い儀式場だった。
まるで闘技場のようにすり鉢型になった部屋には、おそらく当主選定の為に集まったであろう、一族に連なる者達がぎっしりとその場を埋めていた。
中央の広い儀式台に目を向ければ、一人の女性が、まるで犧餌の様に大きな敷布の上に座らされている。
「あれへ」
一人の老が指差した場所は、女性から少し離れた向かいにある赤い敷布だった。
「あちらにお願いします」
「うん。ご苦労様。後は皆の好きになさい」
「……っはい……」
影達にそう声をかけ、そのまま振り返る事なく素直に敷布に座って正面を見れば、今にも泣き出しそうな顔をした箕夜がこちらを見ていた。
「……どうしてっ……」
儚気に呟かれた言葉に、ただ優しく微笑んだ。
歳を取らない箕夜は、樟嬰よりも幼く感じられる。美しい長い黒髪だけが、唯一親子なのだと感じるほど良く似ていた。
「ショウエイ。お前に、我が一族の力が宿っているとの報告があった。真か……」
仰々しいその言葉と声は、かなり気にさわる。わけもない苛々感が満たしていくのだ。そんな心を知ってか知らずか、箕夜が見た目にそぐわぬ勢いで老達に訴えた。
「お待ちくださいませっ。この子が女でありながら本当に力を持っているとすれば、とうに命はつきておりましょう。何かの間違いですっ」
「だが、影達は確かに見たと……我らも、俄かには信じてはおらん。しかし、これが真実ならば我が一族は安泰。力によって一族を導く事が、その貴き力を宿す者の使命」
耳障りよく言っていても、彼らの本心は違う。樟嬰を自分達が富を享受するための道具としか思っていない。
「……真に貴いと思われるならば、その力を持った者も貴ぶべきではありませんかっ。あなた方は、沙稀を何処へやったのですっ。命が尽きかけたあの子を奥の間へ閉じ込めたのではありませんかっ」
ピリっと張り詰る感覚が満ちた。老達は一様に動揺を隠せずにいる。暗い中でも、それぞれの顔が引き攣っているのが分かった。
一方、この言葉に樟嬰は思考が停止する。
「……奥の間に……閉じ込めた……っ?」
そんな事は知らない。聞いていない。
混乱する中、箕夜は更に続けた。
「道具の様に弄び、不要になれば手も差し延べる事なく放置する事が貴い者へなさる事なのですかっ。あなた方は、子ども達を何だと思っているのですかっ」
そこには、母としての姿があった。
◆ ◆ ◆
「あなた方は、心を持ってはおらぬのですか。わたくしの子ども達は、道具ではありませんっ。わたくしも、道具ではない。何も知らぬと、考えぬとお思いかっ」
箕夜は、樟嬰を守りたい一心で、今まで溜めていた思いを心を奮い立たせて口にする。
「わたくしは、子ども達の死を知りません。いつ何処で最期を迎えたのか、それだけを影の者に聞くだけ。ですが、その言葉すらも今では疑わしく思うのです。沙稀は、あの子は、この奥の間に入って行ったっきり、出て来る事はなかった。そう確かな情報をいただいております。外に出る時は、必ず言葉を掛けていくあの子が、あの日は会いに来なかった。それが、妖魔の為に出掛けていない証拠です」
そうだと気付く。亡くなったとの報告を受けたのは突然だった。仕事で出て行く時は、青影桔石によって屋敷を出たと知れる。例え声を掛けなくてもわかるはずだ。だが、あの日。死を知った日、屋敷から出た形跡はなかった。魂が感じられなくなった事で、死を受け入れたが、何故疑問に思わなかったのだろう。
「あの子を本当に死に至らしめたのは、あなたがたなのではありませんかっ?」
誰一人、声を発する事なく固まってしまった。空気さえ動こうとはしないような重い沈黙。
「っ……沈黙が答えか……」
呟いた樟嬰の言葉は、静まり返った部屋に響いた。
「樟嬰……」
俯き、表情を誰も知ることはできない。
「ははっ。もう飽きたな」
「樟……っ」
「母上。動いては駄目ですよ」
そう言って嘘臭い笑みを向け立ち上がり、樟嬰は、背に隠していた赤い扇『三姫』を取り出した。
「大人しくするのも疲れた。参の姫【錦】!」
ふた回りほど大きくなった扇を振り抜き、勢い良く立場的に上だろうと当たりをつけた老達へと斬撃を繰り出した。生まれた光は、老達の頭上すれすれを抜け、湾曲して天井へと至った。
「「「っ……ッ……っっ」」」
驚きを隠せない様子の老達に、錦を肩に担ぎ、姫としての態度を改め、素のまま楽しそうに 堂々と宣言した。
「もう容赦しないから」
ふふんっと言い出しそうな生き生きとした表情。すぐに一変して、凶悪な顔つきになった。
「影達が出刃って来ない所を見ると、あんた達はすでに見捨てられたってことだな」
「っ、影ッ。わたしを守らんかっ」
それぞれ憤慨した様子の老達は、口々に誓約によって発動する命令を唱えている。
「往生際が悪いな」
これに、ニヤリと挑発的に笑った。
◆ ◆ ◆
「貴様ッ。血迷ったかっ」
「まさか。血迷っているというのならあなた方の方だと思うぞ? それに、私という人物を無能と蔑み、知ろうとしなかったのはそちらの手落ち。未だに大人しい人形だと思っていたのなら、とんだお笑い種だ」
「えぇいっ。影が来ぬならばっ。ヤナっ。我等を守り、この愚か者を捕らえよッ」
これを受けてすっと入り口付近の暗がりにどこからともなく現れた『ヤナ』と呼ばれた者は、冷たくはっきりと告げた。
「断る」
一瞬の沈黙が落ちる。
「っ、なっ、何だとッ。貴様ッ。我等への恩を忘れたかッ」
「恩だと……? 貴様等が汚した大地のせいで調子が狂ったんだ。介抱してくれたのは、そこの大姫だしな。貴様等の側にいたのは、穢の原因を探る為だ。更に言えば、実の妹に刃を向けるわけがない」
彼は長兄である柳だった。髪や瞳の色は変えており、黒に染まっている。背が高く、引き締まった体をした三十頃の落ち着いた男性だ。
「い……っ妹だと……っ」
混乱する老達をよそに、樟嬰は目を数回瞬いて声をかけた。
「ここにいらしたのですか柳兄様」
「……気付いてなかったのか……」
「ええ、全く」
存在を忘れられていたのかもしれないと思った柳は、本気で傷ついたようだ。あからさまに肩を落として見せた。
そんな兄の気も知らず、さてどうしたもかと、さっさと思考を切り替える。
「沙稀の死の真相を聞き出さないとな」
完全に無視された老達は、怒りをあらわにして、影の呼び出しにかかった。
「っおのれッ! 我等を馬鹿にしおってッッッ。【我と交わせし誓約を満たさせ】カクよ。命令だ。私を護れっ」
誓約の命を発動させ、呼び付けた影の一人は、姿を現す事はなかった。
「どういう事だ!?」
誓約の相手がいる老達は、口々に命を発動させるが、誰一人として影が現れる事はなかった。
「なぜだ! 何故誰一人として発動せんのだッ」
「この場の問題かっ」
「いや。先日は発動した」
「影が死んだかっ」
「おぉ。それならば……」
「ッ、全員かっ?」
「まさかッ、ショウエイっ。貴様が殺したのかッ」
かなり混乱しているようだ。お陰で樟嬰は逆に冷静になる。
「だったらさっき、私を連れて来たのは誰になるんだ?もっと言うなら、この場所も関係ないし、今も影達は生きて屋敷の中にいる。発動しないのは、単に術が無効になったってだけの話だ」
「……どう言う……っ」
これに答えを出したのは柳だ。
「わからんのか。樟嬰なら、あんな人間同士のにわか術。呪解するのは造作もない」
柳の面倒くさそうな言葉に、樟嬰以外は唖然とするしかなかった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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「樟嬰様をお連れしました」
影達に伴われ辿り着いた場所は、地下の暗い儀式場だった。
まるで闘技場のようにすり鉢型になった部屋には、おそらく当主選定の為に集まったであろう、一族に連なる者達がぎっしりとその場を埋めていた。
中央の広い儀式台に目を向ければ、一人の女性が、まるで犧餌の様に大きな敷布の上に座らされている。
「あれへ」
一人の老が指差した場所は、女性から少し離れた向かいにある赤い敷布だった。
「あちらにお願いします」
「うん。ご苦労様。後は皆の好きになさい」
「……っはい……」
影達にそう声をかけ、そのまま振り返る事なく素直に敷布に座って正面を見れば、今にも泣き出しそうな顔をした箕夜がこちらを見ていた。
「……どうしてっ……」
儚気に呟かれた言葉に、ただ優しく微笑んだ。
歳を取らない箕夜は、樟嬰よりも幼く感じられる。美しい長い黒髪だけが、唯一親子なのだと感じるほど良く似ていた。
「ショウエイ。お前に、我が一族の力が宿っているとの報告があった。真か……」
仰々しいその言葉と声は、かなり気にさわる。わけもない苛々感が満たしていくのだ。そんな心を知ってか知らずか、箕夜が見た目にそぐわぬ勢いで老達に訴えた。
「お待ちくださいませっ。この子が女でありながら本当に力を持っているとすれば、とうに命はつきておりましょう。何かの間違いですっ」
「だが、影達は確かに見たと……我らも、俄かには信じてはおらん。しかし、これが真実ならば我が一族は安泰。力によって一族を導く事が、その貴き力を宿す者の使命」
耳障りよく言っていても、彼らの本心は違う。樟嬰を自分達が富を享受するための道具としか思っていない。
「……真に貴いと思われるならば、その力を持った者も貴ぶべきではありませんかっ。あなた方は、沙稀を何処へやったのですっ。命が尽きかけたあの子を奥の間へ閉じ込めたのではありませんかっ」
ピリっと張り詰る感覚が満ちた。老達は一様に動揺を隠せずにいる。暗い中でも、それぞれの顔が引き攣っているのが分かった。
一方、この言葉に樟嬰は思考が停止する。
「……奥の間に……閉じ込めた……っ?」
そんな事は知らない。聞いていない。
混乱する中、箕夜は更に続けた。
「道具の様に弄び、不要になれば手も差し延べる事なく放置する事が貴い者へなさる事なのですかっ。あなた方は、子ども達を何だと思っているのですかっ」
そこには、母としての姿があった。
◆ ◆ ◆
「あなた方は、心を持ってはおらぬのですか。わたくしの子ども達は、道具ではありませんっ。わたくしも、道具ではない。何も知らぬと、考えぬとお思いかっ」
箕夜は、樟嬰を守りたい一心で、今まで溜めていた思いを心を奮い立たせて口にする。
「わたくしは、子ども達の死を知りません。いつ何処で最期を迎えたのか、それだけを影の者に聞くだけ。ですが、その言葉すらも今では疑わしく思うのです。沙稀は、あの子は、この奥の間に入って行ったっきり、出て来る事はなかった。そう確かな情報をいただいております。外に出る時は、必ず言葉を掛けていくあの子が、あの日は会いに来なかった。それが、妖魔の為に出掛けていない証拠です」
そうだと気付く。亡くなったとの報告を受けたのは突然だった。仕事で出て行く時は、青影桔石によって屋敷を出たと知れる。例え声を掛けなくてもわかるはずだ。だが、あの日。死を知った日、屋敷から出た形跡はなかった。魂が感じられなくなった事で、死を受け入れたが、何故疑問に思わなかったのだろう。
「あの子を本当に死に至らしめたのは、あなたがたなのではありませんかっ?」
誰一人、声を発する事なく固まってしまった。空気さえ動こうとはしないような重い沈黙。
「っ……沈黙が答えか……」
呟いた樟嬰の言葉は、静まり返った部屋に響いた。
「樟嬰……」
俯き、表情を誰も知ることはできない。
「ははっ。もう飽きたな」
「樟……っ」
「母上。動いては駄目ですよ」
そう言って嘘臭い笑みを向け立ち上がり、樟嬰は、背に隠していた赤い扇『三姫』を取り出した。
「大人しくするのも疲れた。参の姫【錦】!」
ふた回りほど大きくなった扇を振り抜き、勢い良く立場的に上だろうと当たりをつけた老達へと斬撃を繰り出した。生まれた光は、老達の頭上すれすれを抜け、湾曲して天井へと至った。
「「「っ……ッ……っっ」」」
驚きを隠せない様子の老達に、錦を肩に担ぎ、姫としての態度を改め、素のまま楽しそうに 堂々と宣言した。
「もう容赦しないから」
ふふんっと言い出しそうな生き生きとした表情。すぐに一変して、凶悪な顔つきになった。
「影達が出刃って来ない所を見ると、あんた達はすでに見捨てられたってことだな」
「っ、影ッ。わたしを守らんかっ」
それぞれ憤慨した様子の老達は、口々に誓約によって発動する命令を唱えている。
「往生際が悪いな」
これに、ニヤリと挑発的に笑った。
◆ ◆ ◆
「貴様ッ。血迷ったかっ」
「まさか。血迷っているというのならあなた方の方だと思うぞ? それに、私という人物を無能と蔑み、知ろうとしなかったのはそちらの手落ち。未だに大人しい人形だと思っていたのなら、とんだお笑い種だ」
「えぇいっ。影が来ぬならばっ。ヤナっ。我等を守り、この愚か者を捕らえよッ」
これを受けてすっと入り口付近の暗がりにどこからともなく現れた『ヤナ』と呼ばれた者は、冷たくはっきりと告げた。
「断る」
一瞬の沈黙が落ちる。
「っ、なっ、何だとッ。貴様ッ。我等への恩を忘れたかッ」
「恩だと……? 貴様等が汚した大地のせいで調子が狂ったんだ。介抱してくれたのは、そこの大姫だしな。貴様等の側にいたのは、穢の原因を探る為だ。更に言えば、実の妹に刃を向けるわけがない」
彼は長兄である柳だった。髪や瞳の色は変えており、黒に染まっている。背が高く、引き締まった体をした三十頃の落ち着いた男性だ。
「い……っ妹だと……っ」
混乱する老達をよそに、樟嬰は目を数回瞬いて声をかけた。
「ここにいらしたのですか柳兄様」
「……気付いてなかったのか……」
「ええ、全く」
存在を忘れられていたのかもしれないと思った柳は、本気で傷ついたようだ。あからさまに肩を落として見せた。
そんな兄の気も知らず、さてどうしたもかと、さっさと思考を切り替える。
「沙稀の死の真相を聞き出さないとな」
完全に無視された老達は、怒りをあらわにして、影の呼び出しにかかった。
「っおのれッ! 我等を馬鹿にしおってッッッ。【我と交わせし誓約を満たさせ】カクよ。命令だ。私を護れっ」
誓約の命を発動させ、呼び付けた影の一人は、姿を現す事はなかった。
「どういう事だ!?」
誓約の相手がいる老達は、口々に命を発動させるが、誰一人として影が現れる事はなかった。
「なぜだ! 何故誰一人として発動せんのだッ」
「この場の問題かっ」
「いや。先日は発動した」
「影が死んだかっ」
「おぉ。それならば……」
「ッ、全員かっ?」
「まさかッ、ショウエイっ。貴様が殺したのかッ」
かなり混乱しているようだ。お陰で樟嬰は逆に冷静になる。
「だったらさっき、私を連れて来たのは誰になるんだ?もっと言うなら、この場所も関係ないし、今も影達は生きて屋敷の中にいる。発動しないのは、単に術が無効になったってだけの話だ」
「……どう言う……っ」
これに答えを出したのは柳だ。
「わからんのか。樟嬰なら、あんな人間同士のにわか術。呪解するのは造作もない」
柳の面倒くさそうな言葉に、樟嬰以外は唖然とするしかなかった。
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