秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

401 顔合わせの始まり

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会場である大ホールには、続々と人が集まっていた。

先ずは説明会のようなものが始まる。幻幽会、連盟についての詳しい話と、式神や神との付き合い方など、どうしているのかを説明するつもりだった。

集まった神職につく者達に対して、幻幽会のメンバーは首領九人に、神楽部隊など、主要な部隊を任せている代表と補佐達が揃っている。

マイクを持ったのは、時刃桂花だ。こうした場では、方言は使わないよう気をつけている。

「まずはこちらの自己紹介をさせていただきます。幻幽会の代表、現首領を務めるのが、わたくしを含め九名です。総代表は安倍焔泉」

順に名を呼ばれ、頷いていく。総代表は一番だが、順番としては、連盟に加入した家順になっている。昔はこれで一悶着あったらしく、それからはこうらしい。とはいえ、今の首領達は仲も悪くないので、どんな順で名を呼ばれたとしても、特に何か思うことはない。

「つづきまして、所属する主な部署、部隊の代表とその補佐です」

今回ここに出て来たのは、神楽部隊、御衛ごえい部隊、清掃部隊、行脚師あんぎゃし部隊、社殿しゃでん建築部隊だ。

「神楽部隊は、その名の通り、神楽を奉納することを、目的とした部隊です。恐らく、関わったことのある方もおられるでしょう。神楽は、その土地の土地神様が守護範囲に正しくお力を馴染ませるための、その土地に合った音を聞き取り、神楽として奉納します」
「っ、失礼します! それは、神によって違うものだということでしょうか?」

手を上げ、質問したのは、初老の男性。少し顔色が悪そうだ。

「その通りです」
「っ、そうだったのですね……っ、そのっ、以前、先代の時に、こちらに伝わる神楽とは全く違うものを奉納され、最後に追い出したことが……っ、申し訳ありません!」
「ああ、いえ、お気になさらず。よくあることです。継いできたものを否定されたように感じて、腹を立てることは、なにもおかしなことではありませんからね」
「っ、そんなっ、ですが……っ」

伊調が特に気にしていないという様子で告げるのを、何人かの神職の者達が顔色を悪くしながら聞いている。同じように、追い払った記憶があるのだろう。だが、伊調は当然のこと、神楽部隊は特にこうした理解してもらえないことに直面することは多く、もう慣れてしまっている。

逆に、対応に腹を立てる者は未熟者として、修行に戻すことさえする。伊調達は神に対して奉納しているのであって、周りの人から感謝されないからと怒る事はしない。神から謝意が返されれば、それでこれ以上ないほど満足だ。

「どうぞ、落ち着いてください。こうして理解していただくために、この場があるのですから」
「……っ、はい……」

肩を落とすその人を確認してから、伊調は続きを促すように桂花に顔を向ける。頷いて桂花は続けた。

「では次に、御衛部隊です。こちらは、主にその土地で事件が起きた場合、土地神様へのお伺いを立てる者達です。諸々の神への儀式なども請け負います。更には、管理者のいなくなった社の管理もしています」
「あの……引き継ぎが出来なくなったものの、ご連絡もしてくださっていますか?」

また別の男性が手を上げ、桂花にではなく、紹介された御衛部隊の者に目を向けて尋ねた。これに、御衛部隊の代表が答える。

「はい。可能な限り、お任せできる部分はお任せしたく。何よりも、受け継げる方が居るのでしたら、その方が良いと考えております」
「そうでしたか……いえ、ありがとうございます! 管理が行き届かず、ご迷惑をおかけいたしました。その……先日も対応が遅れまして、申し訳ありませんでした!」

何人かが立ち上がり、頭を下げていた。

「どうぞ、お座りください。わたし共は、何よりも神々のために動いております。何を言われようとも、何と思われようとも、気にしません」
「っ……」

これが、全てなのだ。良いも悪いも、大陸の方の術者も含め、連盟の者達は、人に期待していない。

嘘つきだと、詐欺師だと罵られる経験も一度や二度ではない。助けてやったなどという思いは、長くこの仕事をする者達ほど持っていない。この業界に足を踏み入れた者は、義務教育が終わる頃には、子どもだとて理解してもらいたいと思う気持ちを封じる。そして、成人を過ぎて十年もすれば、それはそのまま朽ち果てている。

そんな思いを、そうして生きてきたことを、神職の者達は、言葉には出来なくても感じたようだった。








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読んでくださりありがとうございます◎



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