30 / 403
第一章 秘伝のお仕事
030 繋がっているものです
しおりを挟む
旅行から帰ってきた高耶は、次の日当然のように大学へ行く。
朝一番に会ったのは、小学校が同じだった友人、和泉俊哉だ。
「おっす、なぁなぁ、高耶。お前さぁ、ちょい前に子どもを変態から助けなかったか?」
「……妹の友達が若い男にちょっかいかけられているところは助けたな」
えらく内容を簡潔に言うものだから、一瞬聞かなかったことにしようかと思ったほどだ。昔から、テンションを上げると面倒くさい所がある。その予感を今感じていたのだ。
「やっぱり! 俺のジィちゃんが『見守り隊』やっててさぁ! 危ないところを助けてくれた奴の事が気になるとかって。そんで、高耶と俺が小学校の時の写真見て、そうじゃないかって!」
この連休に母親の実家である祖父の家に行く機会があったらしい。そこで、俊哉に確認されたのだという。
「あのおじいさん……そうか、俊哉の」
「おうっ。ありがとな! ナイフ持ってたんだろ? 危なかったよな」
「まぁ……無事で良かったよ」
知り合いの祖父を助けられたというのは、素直に嬉しい。
「それにしても、最近の若者はキレやすいとかいうけど、マジなんだなぁ。ナイフを常備してるところもおかしいけどさぁ」
「ああいう物に強さを頼りがちなんだよ。自分に自信がないからな」
「あ~、そういや、高校の時に見せびらかしてるのいたなぁ……それも、仲間内で見せ合ってさ」
見せびらかすということは、アクセサリーか何かと勘違いしているのだろうか。欲しいと思ったこともないので、高耶には分からないものだ。
「俊哉はそういうのなさそうだな」
「ナイフがカッコイイとかも思ったことねぇからな。まぁ、災害時には必要かなとは思ってるけど」
「備えかよ……意外と真面目だな」
「意外ってなんだよ。俺は真面目な男だ」
「はいはい」
こいつは妖とも無縁だなと、呑気な友人に苦笑する高耶だった。
◆ ◆ ◆
高耶は大学が終わると、最近は寄り道をせずに真っ直ぐに自宅へ帰る。その理由は当然、優希だ。
「ただいま」
「おかえりなさぁい」
優希も先ほど帰ってきたらしく、リビングのテーブルには、まだ宿題の用意ができていなかった。
高耶が鞄を部屋に置き、戻ってくると、優希はそわそわと駆け寄ってきた。手には可愛らしいピンク色のキーホルダーとハンカチが握られている。
「あのねっ、きょうねっ、カナちゃんとミユちゃんが、おみやげくれたのっ」
「へぇ、あの子達か。可愛いじゃないか」
「うん!」
一時は大丈夫だろうかと思ったが、友達として良い関係が出来ているらしく、良かったとほっとする。
「きょうはカナちゃんのおかあさんが、おうちまできてくれたの」
「ん? もしかして、一緒に帰ってくれてるのか?」
「うん。ミユちゃんのおかあさんのときもあった」
「それは申し訳ないな……」
どうやら、あの青年の件があってから、近所の親達が持ち回りで家まで送ってくれていたようだ。
「おにいちゃんがかえってくるまであそぶ? っていわれたんだけど、しゅくだいやるからっていっておいたの」
「そうか。けど、遊びたいなら良いんだぞ? そうだなぁ……【珀豪】」
高耶は珀豪を呼び出す。すると、すかさず優希が珀豪に抱きつく。
「ハクちゃ~ん!」
《優希、危ないぞ》
「だいじょうぶ~」
その懐き様はかなりのものだ。
「珀豪。これから毎日、優希と留守番頼めるか?」
《構わない。こんな幼子を一人で居させるには、少々危険な世の中のようだからな。外で友人と遊ぶ時はついて行けば良いのだろう?》
「ああ。話が早くて助かるよ」
珀豪は、まだその実力を見せていないが、当然、その辺の人よりも遥かに強く頼りになる。
《では優希、主はこの後に仕事がある。我と留守番だ。まずは宿題をやるのだろう?》
「うん。おにいちゃん、いってらっしゃ~い」
「ああ……行ってくる」
本当に話が早い珀豪。そして、もう高耶よりも珀豪に夢中な優希。
少しばかり寂しいと思うのは仕方のないことだろう。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
朝一番に会ったのは、小学校が同じだった友人、和泉俊哉だ。
「おっす、なぁなぁ、高耶。お前さぁ、ちょい前に子どもを変態から助けなかったか?」
「……妹の友達が若い男にちょっかいかけられているところは助けたな」
えらく内容を簡潔に言うものだから、一瞬聞かなかったことにしようかと思ったほどだ。昔から、テンションを上げると面倒くさい所がある。その予感を今感じていたのだ。
「やっぱり! 俺のジィちゃんが『見守り隊』やっててさぁ! 危ないところを助けてくれた奴の事が気になるとかって。そんで、高耶と俺が小学校の時の写真見て、そうじゃないかって!」
この連休に母親の実家である祖父の家に行く機会があったらしい。そこで、俊哉に確認されたのだという。
「あのおじいさん……そうか、俊哉の」
「おうっ。ありがとな! ナイフ持ってたんだろ? 危なかったよな」
「まぁ……無事で良かったよ」
知り合いの祖父を助けられたというのは、素直に嬉しい。
「それにしても、最近の若者はキレやすいとかいうけど、マジなんだなぁ。ナイフを常備してるところもおかしいけどさぁ」
「ああいう物に強さを頼りがちなんだよ。自分に自信がないからな」
「あ~、そういや、高校の時に見せびらかしてるのいたなぁ……それも、仲間内で見せ合ってさ」
見せびらかすということは、アクセサリーか何かと勘違いしているのだろうか。欲しいと思ったこともないので、高耶には分からないものだ。
「俊哉はそういうのなさそうだな」
「ナイフがカッコイイとかも思ったことねぇからな。まぁ、災害時には必要かなとは思ってるけど」
「備えかよ……意外と真面目だな」
「意外ってなんだよ。俺は真面目な男だ」
「はいはい」
こいつは妖とも無縁だなと、呑気な友人に苦笑する高耶だった。
◆ ◆ ◆
高耶は大学が終わると、最近は寄り道をせずに真っ直ぐに自宅へ帰る。その理由は当然、優希だ。
「ただいま」
「おかえりなさぁい」
優希も先ほど帰ってきたらしく、リビングのテーブルには、まだ宿題の用意ができていなかった。
高耶が鞄を部屋に置き、戻ってくると、優希はそわそわと駆け寄ってきた。手には可愛らしいピンク色のキーホルダーとハンカチが握られている。
「あのねっ、きょうねっ、カナちゃんとミユちゃんが、おみやげくれたのっ」
「へぇ、あの子達か。可愛いじゃないか」
「うん!」
一時は大丈夫だろうかと思ったが、友達として良い関係が出来ているらしく、良かったとほっとする。
「きょうはカナちゃんのおかあさんが、おうちまできてくれたの」
「ん? もしかして、一緒に帰ってくれてるのか?」
「うん。ミユちゃんのおかあさんのときもあった」
「それは申し訳ないな……」
どうやら、あの青年の件があってから、近所の親達が持ち回りで家まで送ってくれていたようだ。
「おにいちゃんがかえってくるまであそぶ? っていわれたんだけど、しゅくだいやるからっていっておいたの」
「そうか。けど、遊びたいなら良いんだぞ? そうだなぁ……【珀豪】」
高耶は珀豪を呼び出す。すると、すかさず優希が珀豪に抱きつく。
「ハクちゃ~ん!」
《優希、危ないぞ》
「だいじょうぶ~」
その懐き様はかなりのものだ。
「珀豪。これから毎日、優希と留守番頼めるか?」
《構わない。こんな幼子を一人で居させるには、少々危険な世の中のようだからな。外で友人と遊ぶ時はついて行けば良いのだろう?》
「ああ。話が早くて助かるよ」
珀豪は、まだその実力を見せていないが、当然、その辺の人よりも遥かに強く頼りになる。
《では優希、主はこの後に仕事がある。我と留守番だ。まずは宿題をやるのだろう?》
「うん。おにいちゃん、いってらっしゃ~い」
「ああ……行ってくる」
本当に話が早い珀豪。そして、もう高耶よりも珀豪に夢中な優希。
少しばかり寂しいと思うのは仕方のないことだろう。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
91
お気に入りに追加
1,303
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】嫌われている...母様の命を奪った私を
紫宛
ファンタジー
※素人作品です。ご都合主義。R15は保険です※
3話構成、ネリス視点、父・兄視点、未亡人視点。
2話、おまけを追加します(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
いつも無言で、私に一切の興味が無いお父様。
いつも無言で、私に一切の興味が無いお兄様。
いつも暴言と暴力で、私を嫌っているお義母様
いつも暴言と暴力で、私の物を奪っていく義妹。
私は、血の繋がった父と兄に嫌われている……そう思っていたのに、違ったの?
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる