秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

395 面会

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高耶に薫との面会許可が出たのは、神職関係者との顔合わせを兼ねた懇親会が開かれる二日前だった。

「話が出来そうなんですか?」

伝えにきたのは、蓮次郎だ。ここではまだ、資料整理が行われている。

「多少はね。どうも、口数が多い方じゃないみたいだし。ここ二日くらいは、常に安部家の者が付き添って聞き取りしてる」
「喋っているんですか」
「うん。鬼のことも大分出てきたかな。あと、今日は榊が会ってるよ」
「源龍さんと……」
「ようやくね」

彼らは、本来ならば双子の兄妹としてあったはずだ。しかし、本家の乗っ取りを考えたらしい叔父によって引き裂かれた。

「……そういえば、源龍さんの……叔父はどうなったのですか?」
「ああ。あの人も牢に入ってるよ。だって、主家の、当主夫婦を実際に殺しているからね。安部家の方で今は預かってる。同じ所には入れておけないからね」
「そうですね……え? 安部家の……?」

引っ掛かったのはそこ。高耶は目を丸くした。安部家の牢は特別だと聞いたことがあったからだ。

「うん。安部家の。地獄が見えるっていうあの牢ね」
「……本当なんですか……?」

これに答えたのは、充雪だった。

《本当だぜ? それも、かなりの下層な。彷徨ってるとこじゃなくて、仕分けされた後のとこ》
「仕分けって言うな……」
「仕分けっ、ぷふっ」

裁きの後、罰が与えられている場所らしい。

《その上、悲鳴が微かにずっと聞こえる》
「……囁かれる方がいいな……」
「やだよね~。それも断末魔的な悲鳴でしょ。うるさそうだよね」
《何されてそんな声が? って、最初の頃は怖いもの見たさで落ち着かねえって》
「……分かる気がする……」
「気になるっ」
《そんで、実際に確認しちまってからは、声が聞こえる度に目を閉じてても、夢の中でも、脳内再生? されんだよ》
「狂うな……」
「発狂ものだね~」
《いや~。アレはマジで滅入る》
「それで済まんだろ……」
「あっははははっ」

笑い事でもないが、最悪の場所に移送されているということはわかった。それだけの罪を犯したということでもあるだろう。

「それで、いつ行けば」
「うん? 今でも良いよ? その方が榊も良いんじゃない?」
「……分かりました。このまま行きます」
「じゃあ、行こう」

そうして、扉を使って本部にやってきた高耶と蓮次郎、充雪は、そのまま地下牢へと向かった。

その牢の前には、テーブルや椅子が並んでおり、そこに焔泉や達喜、源龍がいた。高耶と蓮次郎が姿を現すと、源龍が驚いたように立ち上がる。

「高耶君っ」
「こんにちは」
「っ、うん……久しぶりだね」
「はい。源龍さん……顔色が……」
「え、あ、そ、そう?」

それまであった雰囲気は、かなりトゲトゲとしていて、良い雰囲気ではなかった。話を聞くためにも、少し雰囲気を緩めた方が良いだろうと、高耶は感覚的に判断した。

「ここ、少し寒いですしね。温かいお茶でも淹れましょうか」
「おおっ。それはいいなっ。出してくれっ」

達喜が何よりも喜んで口を挟んできた。まあいいかと珀豪を喚ぶ。

「【珀豪】すまないが、お茶を出してくれるか?」
《うむ。この間見つけた美味い梅昆布茶はどうだろうか?》
「「「おおっ!!」」」

焔泉と達喜、蓮次郎の目が輝いた。

《お茶請けは、黒糖饅頭で良いか?》
「おおっ。この小さく丸っとした感じが良いっ」
「可愛らしゅうて、ええなあ」
「皮も美味しいやつだっ」

おじさん、おばさん達は大喜びだった。

《うむ。そちらにも渡そう。食べると良い》
「っ……あ、ありがとう……」

ここで、久し振りに薫の声を聞いた。自信満々で、鬼をけしかけていた時とは違う、力無い声だった。







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読んでくださりありがとうございます◎




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