秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

393 新たな発見

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鬼に関するものの資料の整理と並行し、首領以外の者達、特に神職関係の家の者達にお願いして、宮司から預かった資料の精査を進めてもらった。

彼らは勤勉で、ほとんどが視ることしか出来ない者達だったが、その分、気になることはとことん調べたりするため、気付くことが多かった。

そこで奇妙な共通点が見つかったのだ。

「御当主様。こちらなのですが……」
「ん?」

秘伝家に雇われている使用人達の半数が、元は神職の家の者達で、今回の事にも手伝わせてほしいと名乗りをあげていた。そんな彼らは、真っ先に高耶へと声をかける。

「この妖退治をしたという記録を、地図上で確認したしたところ、こちら……最新の霊欠や霊障事案のあった場所を記したものと合致する所がかなりあることが分かりました」
「は? 見せてくれ」
「はい。もちろん、全てという訳ではありませんが、こちらを見るとかなり……」
「本当だな……」

その場所の多くが、見事に一致していたのだ。

「現在、別にグループを作り、更に内容を精査中です。何か他に共通点があるかもしれませんので」
「そうだな……頼む」
「はい! あ、こちらは控えとしてお待ちください」
「ああ。助かる」
「っ、はい!」

感動気味に目を潤ませて、一礼すると、駆け足で与えられたこの部屋でのスペースに向かって行った。

それを見送ってから、高耶は控えだと言って置いて行った地図を確認する。

そこに、少し休憩に出ていた焔泉と蓮次郎がやって来た。

「どないしたん? 難しい顔やなあ」
「何かあったの?」

この場所は、ホテルの千人規模でパーティが可能な大ホールだ。部屋の角を使って、パーテーションで区切っている。

高耶や焔泉達首領は、中央で情報の取りまとめをしていた。

「はい……この春から、新たな霊欠の発見が多く出ていましたよね?」
「うむ。未発見であったものが多数見つかったのお」
「冬までに、見直しを急がせているやつだよね」
「そうです。それが……もしかしたら、コレかもしれません」
「「ん?」」

二人に、先ほどの報告と、一致した場所を見せる。

「……盲点やったわ……」
「神職の人たちが関わった所って、僕ら避けるもんね……」

問題を避けるために、そうして、線引きをして来たのだ。それが、どうやらいけなかったらしい。

「ねえ……これって、この一致してない所……」
「確認した方がええやろうなあ……」
「うわぁ~、もうっ、振り回し過ぎで、下の子達に嫌われちゃうよぉ」
「……まだ嫌われておらんつもりやったん?」
「……どういう意味?」
「……」
「高耶君? 君も何か言いたいことあるの?」
「……いえ……大変ですね……」
「そこで目を逸さない!」

高耶には、何か言うつもりはなかった。間違いなく『無茶振り上司』と認識されていそうだなとは思っていたが、口には出さない。

「ふんっ。いいもんねっ。有象無象に気に入られないのなんて、気にならないからねっ」
「……」

そうですよねと高耶は小さく頷いた。

「そんで? いつ神職のものらと顔合わせすることになそうやの?」

焔泉の問いかけに、高耶は顔を上げる。

「ある程度、資料をまとめてからが良いかと思いまして、来週末になりました。場所は、エルラントさんの所有するホテルです。急遽となりますが、話し合いの後は懇親会の形で」
「なるほど……こちらに呼ぶのはさすがに無理やしなあ」
「はい。妖について、懐疑的な方も居るでしょうから、流石にこの世界には……」
「せやな。ほな、それで行こか」

エルラントは、幾つかの会社を経営している。会長としてであったり、社長として、名を変えてであったり、大体六十年周期で引退、復帰を繰り返して誤魔化している。

今回、借りたのは、街中にある大きなホテルの会場。公共交通機関を使っても移動しやすい場所にあるホテルだ。有名なところでもあるため、胡散臭い団体だと不安に思われていることを、少しは緩和できるだろう。

「ところで……鬼渡との面会なのですが……」
「……せやねえ……」

鬼渡薫が、目を覚ましたことは確かであると充雪が確認してきた。だから、高耶はより多くの鬼の情報を知るためにも、彼女と直接話しがしたいのだ。

しかし、それを焔泉達、他の首領達が渋っていた。理由は高耶には知らされていない。実は、鬼渡薫からも高耶に会いたいと言っているなど、大人達は話していなかったのだ。









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