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第七章 秘伝と任されたもの
390 タッグを組んでいた
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焔泉の手紙にあったのは、知りたくない事実だった。
「なんだ? あの姐さんから?」
「ああ……」
「なんて?」
俊哉に促され、読み上げる。
「……『清掃部隊から、秘伝家の書庫や倉庫に付喪神が異常発生していると聞いた。ならば、棲家として整えてやってはどうかと伝えたのだが、お主に癒しの空間を提供するのだと清掃部隊が張り切った結果がこれだ。想像以上に広く、快適空間を作り過ぎたらしい。そこでっ!』……」
「……ん? そこで? 続きは?」
焔泉の手紙は、どこか漢らしいものになる。言葉を直接聞けば、柔らかくなるのだが、なぜか方言が消えるので圧が強い。そして、不穏だ。
今回のものの中でも色々と気になる点があった。『付喪神が異常発生』とはどういうことか。『張り切った結果』と言うが、張り切り過ぎだ。他に何か言っているだろうと思わずにはいられない。
そして、小さな紙に書かれたもので、仕方がないが、言葉の切り方が不穏だ。
とにかく不穏だ。そして、これを想定していた。
「……多分、ここだ」
「んん? うわっ」
手紙を体に付けたり、咥えていたりする付喪神達が高耶の前に列を成していた。
「すげえ、並んでる……」
「可愛いっ、お利口さんに並んでいるなんてっ、可愛いわ!」
手の込んだイタズラだ。
高耶はかがみ込み、一つずつ手紙を外しては、撫でてやる。すると、付喪神達は嬉しそうにしながら、扉を通って戻って行ったり、自分のお気に入りの場所へ戻って行った。
「これは癒されるねえ。あ、付喪神って写真ちゃんと映るんだっけ?」
「どうでしたでしょうか……映らなくても、後で連盟の画像解析部? に送ると、きちんと映っている写真になると聞いたことが……」
「そうなの!? 勇一くんだっけ? よく知ってるねっ」
「あ、いえ……その、連盟のこともあまりよく知ろうとしていなかったなと反省しまして、それで色々と……」
勇一は、切実に高耶の力になりたくて、体を鍛えることだけでなく、色々と勉強もしているようだ。
そんな話を聞きながらも、高耶は手紙を開けていく。要約するとこうだ。
「他の家と、付喪神だけが行き来できるように扉を固定したらしい。それで、ここを交流の場にして、付喪神達に個人的な手紙のやり取りもお願いできるようになったと……」
「こいつら、ちゃんとこっちの言ってること分かってそうだしなあ。付喪神便? 可愛いから良し! 寧ろ俺の家にも来てほしい!」
「いや、お前、それは問題だろ……」
俊哉にとって、付喪神はもうペットか何かという認識らしい。
「あははっ。これは仕方ないよ。うんうん。うちにもその扉、繋げられないかなあ」
「まあっ。それが出来たら嬉しいですわっ」
あの姿が可愛いとか、あそこは撮るべきだと雛柏夫婦は仲良く写真を撮りまくっていた。
「動物園……いや、子どもの運動会か……?」
「ああっ、それがぴったりですね! 私も写真良いですか!?」
使用人の男は、最初の高耶への緊張気味な接見はなんだったのかというくらい、楽しそうだ。
「好きにすると良い……他の使用人達も数人ずつなら入ってもらってくれ。休憩時間や仕事がない時なら好きに出入りして良いから」
「っ、ありがとうございます!!」
さっそくと休憩中の使用人を呼んでくるらしい。
「うわあ、付喪神によって、これで映る子とそうでない子がいるね」
「あの子はちゃんと写りますわ」
「どれどれ。俺も撮ろっと。あ、けど、さあ、なんか扉を固定するのって難しいって言ってなかった? 結構扉の数ないか?」
「そういえば……」
その答えは、最後の手紙にあった。
「……どうやら、エルラントさんやイスティアさんとキルティスさん、それと瑤迦さんが手を組んだらしい……」
「「「あ~……」」」
「まあっ」
あの最強タッグの前では、誰もが無力だ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「なんだ? あの姐さんから?」
「ああ……」
「なんて?」
俊哉に促され、読み上げる。
「……『清掃部隊から、秘伝家の書庫や倉庫に付喪神が異常発生していると聞いた。ならば、棲家として整えてやってはどうかと伝えたのだが、お主に癒しの空間を提供するのだと清掃部隊が張り切った結果がこれだ。想像以上に広く、快適空間を作り過ぎたらしい。そこでっ!』……」
「……ん? そこで? 続きは?」
焔泉の手紙は、どこか漢らしいものになる。言葉を直接聞けば、柔らかくなるのだが、なぜか方言が消えるので圧が強い。そして、不穏だ。
今回のものの中でも色々と気になる点があった。『付喪神が異常発生』とはどういうことか。『張り切った結果』と言うが、張り切り過ぎだ。他に何か言っているだろうと思わずにはいられない。
そして、小さな紙に書かれたもので、仕方がないが、言葉の切り方が不穏だ。
とにかく不穏だ。そして、これを想定していた。
「……多分、ここだ」
「んん? うわっ」
手紙を体に付けたり、咥えていたりする付喪神達が高耶の前に列を成していた。
「すげえ、並んでる……」
「可愛いっ、お利口さんに並んでいるなんてっ、可愛いわ!」
手の込んだイタズラだ。
高耶はかがみ込み、一つずつ手紙を外しては、撫でてやる。すると、付喪神達は嬉しそうにしながら、扉を通って戻って行ったり、自分のお気に入りの場所へ戻って行った。
「これは癒されるねえ。あ、付喪神って写真ちゃんと映るんだっけ?」
「どうでしたでしょうか……映らなくても、後で連盟の画像解析部? に送ると、きちんと映っている写真になると聞いたことが……」
「そうなの!? 勇一くんだっけ? よく知ってるねっ」
「あ、いえ……その、連盟のこともあまりよく知ろうとしていなかったなと反省しまして、それで色々と……」
勇一は、切実に高耶の力になりたくて、体を鍛えることだけでなく、色々と勉強もしているようだ。
そんな話を聞きながらも、高耶は手紙を開けていく。要約するとこうだ。
「他の家と、付喪神だけが行き来できるように扉を固定したらしい。それで、ここを交流の場にして、付喪神達に個人的な手紙のやり取りもお願いできるようになったと……」
「こいつら、ちゃんとこっちの言ってること分かってそうだしなあ。付喪神便? 可愛いから良し! 寧ろ俺の家にも来てほしい!」
「いや、お前、それは問題だろ……」
俊哉にとって、付喪神はもうペットか何かという認識らしい。
「あははっ。これは仕方ないよ。うんうん。うちにもその扉、繋げられないかなあ」
「まあっ。それが出来たら嬉しいですわっ」
あの姿が可愛いとか、あそこは撮るべきだと雛柏夫婦は仲良く写真を撮りまくっていた。
「動物園……いや、子どもの運動会か……?」
「ああっ、それがぴったりですね! 私も写真良いですか!?」
使用人の男は、最初の高耶への緊張気味な接見はなんだったのかというくらい、楽しそうだ。
「好きにすると良い……他の使用人達も数人ずつなら入ってもらってくれ。休憩時間や仕事がない時なら好きに出入りして良いから」
「っ、ありがとうございます!!」
さっそくと休憩中の使用人を呼んでくるらしい。
「うわあ、付喪神によって、これで映る子とそうでない子がいるね」
「あの子はちゃんと写りますわ」
「どれどれ。俺も撮ろっと。あ、けど、さあ、なんか扉を固定するのって難しいって言ってなかった? 結構扉の数ないか?」
「そういえば……」
その答えは、最後の手紙にあった。
「……どうやら、エルラントさんやイスティアさんとキルティスさん、それと瑤迦さんが手を組んだらしい……」
「「「あ~……」」」
「まあっ」
あの最強タッグの前では、誰もが無力だ。
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