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第七章 秘伝と任されたもの
382 大事になる予感
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無事に大量の難解な資料の中から、目当ての学校の記録を見つけた。しかし、それを見て、どうにも嫌な予感がした。
「見つかったのは良かったが……これは……」
「さすがに、予想していませんでした……」
「……」
高耶は、律音と勇一で急遽、見つけた資料の裏を取るために、連盟の資料庫に入ったのだが、これにより、その予想が確かな事が確認できてしまったのだ。
そして、高耶は思い出した。
「……まさか、これを知っていて、あの神は……」
「どういう事ですか?」
律音が考え込んだ高耶に声をかける。
「言っていただろ『特に姿に拘りはないのだがな。さすがに奇抜な姿では、この者達に妖だと思われる可能性もあるだろう?』と」
「っ!! それって!」
律音は信じられないと目を見開き、勇一も愕然として言う。
「……妖と判断してしまった……土地神を?」
「そのようだな」
そう。あの場に封印されているのは、土地神だったのだ。
「恐らく、神木を切り倒されたことが原因だろうな。あの神木の配置は珍しいものだったし……」
三点に神木があるというのは、珍しい配置だった。敢えてそうあったならば、それを切り倒されてどうなるかは予想できないことではない。
勇一は不安げに口を開く。
「あの神が言っていましたね……『今後は目を閉じることなく、受け入れるべきことを正しく見定めていってくれ』と……あれは、警告の意味もあった?」
「だろうな。あの神は知っていたんだろう。だから、俺を理由にして、あえてあの場に出てきた」
「忠告するために……」
あれは、神職の者達への警告であり、忠告だった。神を妖として封じたことへの嫌味であり、神気にも気付かないことを恥じろという意味だったのだ。あの場では、高耶達にも読み取れなかったが、間違いないだろう。
今度は律音が考え込み、高耶へと確認する。
「師範……こうなると、場を整える奉納ライブより先に、土地神様をどうにかしなければいけませんよね?」
「ああ。どうにも、あの場所は土地神の加護が薄いと思ったが、まさか、封じられているとはな……」
「封じられた状態というのも問題ですが、おそらく……お怒りですよね?」
「間違いなくな……」
顔を顰める高耶を見て、勇一も何が問題なのかに気付いた。
「あ……神は祟る……?」
「そうだ。吹き虫が異常に多いのも、恐らく、寄せているんだろう。負の感情は連鎖しやすい。そのエネルギーを集めているんだろう」
「なんのために……」
勇一は、神と対峙した仕事などほぼない。だから、この例を知らなかった。
「土地に禍いをもたらすためだ」
「禍い……っ」
「土地を枯らし、加護を逆に向ける。そうして、更に狂っていく。最後に消滅する」
「っ、どうして……」
なぜそんなことになるのかと、勇一は目を丸くする。律音も悲痛な面持ちで高耶を見ていた。すると、その説明を引き継いだのは、この場にやって来た焔泉だった。
「神かて、悲しい想いや、裏切られたという想いをずっと持っていたくはないものだ。せやから、忘れようとして狂う。何も分からなくなれば、辛いと思うこともあらへんやろ? 神は原来不死……これが曲者や。終わりがあるから、救われることは多いんやで?」
焔泉は、いつものように微笑みながら、高耶の持っていた資料を手に取った。
「忘れられるゆうことも、救いや。けど、神にはそれが自然やない。守護する土地への想いも変わらん。その変わらんものと関連することは、まず忘れられんもんや。せやから、ずっと悲しみや辛さは消えへんのよ」
その恨みを忘れられたら良かった。だが、残念なことに、昇華できない想いは消えない。
「狂うんは、そのせいや。封印されたんは……ある意味良かったんかもしれへんなあ。みすみす神木を切らせ、あまつさえ土地神を妖と判断するような者が、その土地神を鎮められるとは思えん」
「はい……」
「場を用意するだけではあかんなあ」
「ええ……きちんとお祀りしなければいけません」
「神楽部隊の出番はその後やなあ」
「そうなりますね……」
正しく音を拾ったところで、今あるのは、狂った土地神の音だ。それでは意味がない。
「これは緊急性が高そうや。早急に会議やな」
「……お願いします」
「もちろん高坊もやでな?」
「……はい……」
かなり大事になりそうだった。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
「見つかったのは良かったが……これは……」
「さすがに、予想していませんでした……」
「……」
高耶は、律音と勇一で急遽、見つけた資料の裏を取るために、連盟の資料庫に入ったのだが、これにより、その予想が確かな事が確認できてしまったのだ。
そして、高耶は思い出した。
「……まさか、これを知っていて、あの神は……」
「どういう事ですか?」
律音が考え込んだ高耶に声をかける。
「言っていただろ『特に姿に拘りはないのだがな。さすがに奇抜な姿では、この者達に妖だと思われる可能性もあるだろう?』と」
「っ!! それって!」
律音は信じられないと目を見開き、勇一も愕然として言う。
「……妖と判断してしまった……土地神を?」
「そのようだな」
そう。あの場に封印されているのは、土地神だったのだ。
「恐らく、神木を切り倒されたことが原因だろうな。あの神木の配置は珍しいものだったし……」
三点に神木があるというのは、珍しい配置だった。敢えてそうあったならば、それを切り倒されてどうなるかは予想できないことではない。
勇一は不安げに口を開く。
「あの神が言っていましたね……『今後は目を閉じることなく、受け入れるべきことを正しく見定めていってくれ』と……あれは、警告の意味もあった?」
「だろうな。あの神は知っていたんだろう。だから、俺を理由にして、あえてあの場に出てきた」
「忠告するために……」
あれは、神職の者達への警告であり、忠告だった。神を妖として封じたことへの嫌味であり、神気にも気付かないことを恥じろという意味だったのだ。あの場では、高耶達にも読み取れなかったが、間違いないだろう。
今度は律音が考え込み、高耶へと確認する。
「師範……こうなると、場を整える奉納ライブより先に、土地神様をどうにかしなければいけませんよね?」
「ああ。どうにも、あの場所は土地神の加護が薄いと思ったが、まさか、封じられているとはな……」
「封じられた状態というのも問題ですが、おそらく……お怒りですよね?」
「間違いなくな……」
顔を顰める高耶を見て、勇一も何が問題なのかに気付いた。
「あ……神は祟る……?」
「そうだ。吹き虫が異常に多いのも、恐らく、寄せているんだろう。負の感情は連鎖しやすい。そのエネルギーを集めているんだろう」
「なんのために……」
勇一は、神と対峙した仕事などほぼない。だから、この例を知らなかった。
「土地に禍いをもたらすためだ」
「禍い……っ」
「土地を枯らし、加護を逆に向ける。そうして、更に狂っていく。最後に消滅する」
「っ、どうして……」
なぜそんなことになるのかと、勇一は目を丸くする。律音も悲痛な面持ちで高耶を見ていた。すると、その説明を引き継いだのは、この場にやって来た焔泉だった。
「神かて、悲しい想いや、裏切られたという想いをずっと持っていたくはないものだ。せやから、忘れようとして狂う。何も分からなくなれば、辛いと思うこともあらへんやろ? 神は原来不死……これが曲者や。終わりがあるから、救われることは多いんやで?」
焔泉は、いつものように微笑みながら、高耶の持っていた資料を手に取った。
「忘れられるゆうことも、救いや。けど、神にはそれが自然やない。守護する土地への想いも変わらん。その変わらんものと関連することは、まず忘れられんもんや。せやから、ずっと悲しみや辛さは消えへんのよ」
その恨みを忘れられたら良かった。だが、残念なことに、昇華できない想いは消えない。
「狂うんは、そのせいや。封印されたんは……ある意味良かったんかもしれへんなあ。みすみす神木を切らせ、あまつさえ土地神を妖と判断するような者が、その土地神を鎮められるとは思えん」
「はい……」
「場を用意するだけではあかんなあ」
「ええ……きちんとお祀りしなければいけません」
「神楽部隊の出番はその後やなあ」
「そうなりますね……」
正しく音を拾ったところで、今あるのは、狂った土地神の音だ。それでは意味がない。
「これは緊急性が高そうや。早急に会議やな」
「……お願いします」
「もちろん高坊もやでな?」
「……はい……」
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