秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

376 珍しいメンバー

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今回の同行者は珍しいメンバーになった。参拝客に混じって、ゾロゾロと歩いていく。話はとある神社でということになったのだ。

「本当に良いんですか? 教授」
「もちろんっ。あっ、なるべく人は選んだからね? 連盟への敵視が弱い所」
「お気遣いありがとうございます」
「いいんだよ。僕もお堅い考えの人たちは嫌いだからねえ。けど、まあ、そういう人も紛れてるかもだけど」

紹介者ということで、雛柏教授が同行してくれることになったのだ。

そして、伊調とその補佐の女性と律音だ。

「それは仕方ありませんよ。神楽の奉納でも、懐疑的な目で見る方も多いですから」
「ああ……そういった交渉は大変そうですね」
「そこは、年齢で勝負するのですよ」
「ほお……年齢ですか」

伊調と雛柏教授は気が合ったらしい。雛柏教授は、各地に足を運び、土地の特色を見たり、文化、歴史を紐解く研究者。対して、伊調も各地で歴史を、音を聞き取り、神と交流する。興味のあることや、目の付け所が似ているようだった。

「律音も休みの日だが良かったのか?」
「はい。寧ろご一緒できて嬉しいです」
「なら良いんだが」

広い境内を歩きながら、そんな事を話していれば、勇一に話を聞かせていた達喜が後ろから声をかけてくる。

「おい。高耶。こいつ、人が変わりすぎじゃね?」
「散々話をしてそれですか……」
「いや、だって、以前までだったら、お前の話を出した途端に顔が歪んでやがったぜ?」
「……まさか、それをずっと試していたんですか?」
「おう。嫌味言い過ぎて橘のオヤジみたいな顔になってねえか?」
「大丈夫です……」
「は~、疲れたぜ。あのオヤジはなんで、ああもぽんぽんと嫌味を言えるんだか」
「……」

これは何も答えるべきではないだろうと、口を継ぐんだ。勇一には災難だった。

「それにしても、神職関係の封印かあ……盲点だったなあ」
「そうですね……」
「まだ各家の封印記録の確認も、半分しか出来てねえんだぜ?」
「はい……こうなると、本格的に交渉した方が良いかもしれません」
「だなあ。今日の感じでどうやって攻めるか決めるわ。俺はこういう交渉とか苦手なんだけどな~」
「……どうして今回は……」
「ん?」

達喜はどちらかといえば、現場に出たがる人だ。その前段階では、中々やりたがらない。それなのに、今回は焔泉や蓮次郎とも相談した結果、ここに出てきた。それが高耶には不思議だった。

「蓮次郎さんには、威圧した方が良いからとか言っていましたが」
「あの野郎……ほれ、俺は夢咲だからな。神職関係には、夢咲を特別視している所がある。付き合いもそれなりにあってな」
「あ……」

夢咲ゆめさき家は異能持ちの家だ。夢で未来を予知したり、重要な過去の出来事を視ることができる。きちんと狙ってその時を視えるのは、能力をきちんとコントロールできた歴代でも数人の人だけだったと言う。

だが、それでもほぼ夢は予知夢となる夢咲家の人間は、時代によっては神託を受ける巫女や神子として崇められたいたこともあったのだ。そのため、神職関係者にもその名が通っていたりする。

「お前、忘れてたろ」
「すみません……」
「いや、俺も夢の内容とかは、報告するだけだからな。実戦の方が好きだしよ」

達喜の見た目は、立派な武闘家と言っても過言ではないものだ。予知夢を視る人というイメージからはかけ離れているように思われがちだった。

連盟の中でも、武闘派に見えるため夢咲家の名よりも『ああ、達喜さんのところの……』と思われるので、家の能力などは忘れられていたりする。

そんな話をしていると、社務所に着いた。







**********
読んでくださりありがとうございます◎




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