秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

369 目の保養としてもらって

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那津達の所に、一人のメイドが唐突に現れる。

《失礼いたします》
「あら、エリーゼさん」
《みなさまのご案内をさせていただきます》
「ありがとう。けど、あそこよね……」
《はい》
「すごいわね」
《主人達と景観があまりにも合わないことに気付きまして、急遽用意いたしました》
「あ~……」
「あ~、まあ、な……」

那津だけでなく時島も、遠い目をしながら納得した。

《どうぞ》
「そうねっ。行きましょうっ」
「「「「「はい……」」」」」

無理やり正気に戻った那津がエリーゼに続く。それに来賓の者達がついていく。行くしかないのだから仕方がない。

「……近付くと、大きいですな……」
「ええ、本当に……」

邪魔にならないようにと、それは端の方にあった。

入り口の所には『関係者以外立ち入り禁止』との看板が掛かっている。一応の措置だろう。

《お入りください》
「あら~、ステキっ」

天井の部分は、赤い色の細い木が中央から放射状に幾つも並び、その間から光が入ってくるのが美しい。

中央には大きく立派な長テーブルがあり、一番奥の席には、主賓は既に座っていた。羽のようだが、髪のように見える淡く光る橙色や黄色、白が入り混じっている。そして、右目の辺り、顔の四分の一ほどが、白銀の面で覆われていた。

だが、その顔は美しく、優しげな男性のように見えた。服装は着物のような布の多いものだった。

「まあっ。土地神様? そのお姿は、はじめて見ますわ」
《うむ。慣れぬ者も多い。怖がらせてはと思ったのでな》
「ありがとうございますっ」

とても優しい神様だ。その気遣いが嬉しかった那津は、真っ先に紹介する。

「あの方が、先ほど体育館でお会いした鳥の姿をしておられた、ここの土地神様ですわ」
「「「「「っ……か、み……っ」」」」」
「ふふっ。神気は抑えられておりますから、近付いても大丈夫ですわよ?」

そう言ったのは、可愛らしい少女だ。百人中、百人が『姫だ』と認めそうになる。そんな誰もが思う姫という理想が体現したような姿。それが瑶迦だった。

「「「「「っ!」」」」」

呆っとする人達が面白かったのだろう。瑶迦は上品に笑いながら自己紹介をした。

「瑶迦と申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますわね」
「「「「「っ、はい……」」」」」

あまりにも美少女過ぎることと、滲み出る気品が、免疫のない彼らには刺激的なようだ。動揺しているのが目に見えてわかった。

それを見兼ねた高耶が、立ち上がって少し瑶迦達からは離れた席をすすめる。

「どうぞ、こちらの席に」
「え、あ、はい……っ」
「こらこら。ダメだって高耶」
「なんでだ?」
「お前も今日は当主モード入ってんだから、一般人にはキツいんだよ」
「……」

高耶としても、まあ土地神が傍に居ることもあり、引っ張られてはいるかもしれない。そう思って口を閉じた。

俊哉が来賓の者達へと声をかける。

「俺は普通の大学生だから気にしなくていいから。あっちの美男美女は目の保養的な感じで遠目に見てるだけが良いっしょ?」
「「「「「っ……」」」」」

うんと強く頷いていた。

そんな様子を、笑いを堪えて見ているのが、エルラントやキルティス、イスティア、修や樹と美咲だ。瑶迦や土地神の存在感が凄すぎて、珀豪達式神が集まっていても、そちらにはあまり目が向かないようだ。

とはいえ、落ち着けばここにいる者達の持つ空気というか、普通の人とは思えない雰囲気は感じており、珀豪達にも目が行っていた。しかし、目の保養として受け入れたため、声を掛けることはない。

そうして、昼食がようやく開始される。そんな中で、コックリさんの事件の話になった。それを聞いた来賓の者達は興味を惹かれて口を開いていた。

「今でもやるんですね……」
「懐かしいですなあ……」
「ブームがありましたねえ」

そんな言葉を聞き、全員の視線が集まったことで、再び動揺することになった。







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読んでくださりありがとうございます◎
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