369 / 416
第七章 秘伝と任されたもの
369 目の保養としてもらって
しおりを挟む
那津達の所に、一人のメイドが唐突に現れる。
《失礼いたします》
「あら、エリーゼさん」
《みなさまのご案内をさせていただきます》
「ありがとう。けど、あそこよね……」
《はい》
「すごいわね」
《主人達と景観があまりにも合わないことに気付きまして、急遽用意いたしました》
「あ~……」
「あ~、まあ、な……」
那津だけでなく時島も、遠い目をしながら納得した。
《どうぞ》
「そうねっ。行きましょうっ」
「「「「「はい……」」」」」
無理やり正気に戻った那津がエリーゼに続く。それに来賓の者達がついていく。行くしかないのだから仕方がない。
「……近付くと、大きいですな……」
「ええ、本当に……」
邪魔にならないようにと、それは端の方にあった。
入り口の所には『関係者以外立ち入り禁止』との看板が掛かっている。一応の措置だろう。
《お入りください》
「あら~、ステキっ」
天井の部分は、赤い色の細い木が中央から放射状に幾つも並び、その間から光が入ってくるのが美しい。
中央には大きく立派な長テーブルがあり、一番奥の席には、主賓は既に座っていた。羽のようだが、髪のように見える淡く光る橙色や黄色、白が入り混じっている。そして、右目の辺り、顔の四分の一ほどが、白銀の面で覆われていた。
だが、その顔は美しく、優しげな男性のように見えた。服装は着物のような布の多いものだった。
「まあっ。土地神様? そのお姿は、はじめて見ますわ」
《うむ。慣れぬ者も多い。怖がらせてはと思ったのでな》
「ありがとうございますっ」
とても優しい神様だ。その気遣いが嬉しかった那津は、真っ先に紹介する。
「あの方が、先ほど体育館でお会いした鳥の姿をしておられた、ここの土地神様ですわ」
「「「「「っ……か、み……っ」」」」」
「ふふっ。神気は抑えられておりますから、近付いても大丈夫ですわよ?」
そう言ったのは、可愛らしい少女だ。百人中、百人が『姫だ』と認めそうになる。そんな誰もが思う姫という理想が体現したような姿。それが瑶迦だった。
「「「「「っ!」」」」」
呆っとする人達が面白かったのだろう。瑶迦は上品に笑いながら自己紹介をした。
「瑶迦と申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますわね」
「「「「「っ、はい……」」」」」
あまりにも美少女過ぎることと、滲み出る気品が、免疫のない彼らには刺激的なようだ。動揺しているのが目に見えてわかった。
それを見兼ねた高耶が、立ち上がって少し瑶迦達からは離れた席をすすめる。
「どうぞ、こちらの席に」
「え、あ、はい……っ」
「こらこら。ダメだって高耶」
「なんでだ?」
「お前も今日は当主モード入ってんだから、一般人にはキツいんだよ」
「……」
高耶としても、まあ土地神が傍に居ることもあり、引っ張られてはいるかもしれない。そう思って口を閉じた。
俊哉が来賓の者達へと声をかける。
「俺は普通の大学生だから気にしなくていいから。あっちの美男美女は目の保養的な感じで遠目に見てるだけが良いっしょ?」
「「「「「っ……」」」」」
うんと強く頷いていた。
そんな様子を、笑いを堪えて見ているのが、エルラントやキルティス、イスティア、修や樹と美咲だ。瑶迦や土地神の存在感が凄すぎて、珀豪達式神が集まっていても、そちらにはあまり目が向かないようだ。
とはいえ、落ち着けばここにいる者達の持つ空気というか、普通の人とは思えない雰囲気は感じており、珀豪達にも目が行っていた。しかし、目の保養として受け入れたため、声を掛けることはない。
そうして、昼食がようやく開始される。そんな中で、コックリさんの事件の話になった。それを聞いた来賓の者達は興味を惹かれて口を開いていた。
「今でもやるんですね……」
「懐かしいですなあ……」
「ブームがありましたねえ」
そんな言葉を聞き、全員の視線が集まったことで、再び動揺することになった。
*********
読んでくださりありがとうございます◎
《失礼いたします》
「あら、エリーゼさん」
《みなさまのご案内をさせていただきます》
「ありがとう。けど、あそこよね……」
《はい》
「すごいわね」
《主人達と景観があまりにも合わないことに気付きまして、急遽用意いたしました》
「あ~……」
「あ~、まあ、な……」
那津だけでなく時島も、遠い目をしながら納得した。
《どうぞ》
「そうねっ。行きましょうっ」
「「「「「はい……」」」」」
無理やり正気に戻った那津がエリーゼに続く。それに来賓の者達がついていく。行くしかないのだから仕方がない。
「……近付くと、大きいですな……」
「ええ、本当に……」
邪魔にならないようにと、それは端の方にあった。
入り口の所には『関係者以外立ち入り禁止』との看板が掛かっている。一応の措置だろう。
《お入りください》
「あら~、ステキっ」
天井の部分は、赤い色の細い木が中央から放射状に幾つも並び、その間から光が入ってくるのが美しい。
中央には大きく立派な長テーブルがあり、一番奥の席には、主賓は既に座っていた。羽のようだが、髪のように見える淡く光る橙色や黄色、白が入り混じっている。そして、右目の辺り、顔の四分の一ほどが、白銀の面で覆われていた。
だが、その顔は美しく、優しげな男性のように見えた。服装は着物のような布の多いものだった。
「まあっ。土地神様? そのお姿は、はじめて見ますわ」
《うむ。慣れぬ者も多い。怖がらせてはと思ったのでな》
「ありがとうございますっ」
とても優しい神様だ。その気遣いが嬉しかった那津は、真っ先に紹介する。
「あの方が、先ほど体育館でお会いした鳥の姿をしておられた、ここの土地神様ですわ」
「「「「「っ……か、み……っ」」」」」
「ふふっ。神気は抑えられておりますから、近付いても大丈夫ですわよ?」
そう言ったのは、可愛らしい少女だ。百人中、百人が『姫だ』と認めそうになる。そんな誰もが思う姫という理想が体現したような姿。それが瑶迦だった。
「「「「「っ!」」」」」
呆っとする人達が面白かったのだろう。瑶迦は上品に笑いながら自己紹介をした。
「瑶迦と申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますわね」
「「「「「っ、はい……」」」」」
あまりにも美少女過ぎることと、滲み出る気品が、免疫のない彼らには刺激的なようだ。動揺しているのが目に見えてわかった。
それを見兼ねた高耶が、立ち上がって少し瑶迦達からは離れた席をすすめる。
「どうぞ、こちらの席に」
「え、あ、はい……っ」
「こらこら。ダメだって高耶」
「なんでだ?」
「お前も今日は当主モード入ってんだから、一般人にはキツいんだよ」
「……」
高耶としても、まあ土地神が傍に居ることもあり、引っ張られてはいるかもしれない。そう思って口を閉じた。
俊哉が来賓の者達へと声をかける。
「俺は普通の大学生だから気にしなくていいから。あっちの美男美女は目の保養的な感じで遠目に見てるだけが良いっしょ?」
「「「「「っ……」」」」」
うんと強く頷いていた。
そんな様子を、笑いを堪えて見ているのが、エルラントやキルティス、イスティア、修や樹と美咲だ。瑶迦や土地神の存在感が凄すぎて、珀豪達式神が集まっていても、そちらにはあまり目が向かないようだ。
とはいえ、落ち着けばここにいる者達の持つ空気というか、普通の人とは思えない雰囲気は感じており、珀豪達にも目が行っていた。しかし、目の保養として受け入れたため、声を掛けることはない。
そうして、昼食がようやく開始される。そんな中で、コックリさんの事件の話になった。それを聞いた来賓の者達は興味を惹かれて口を開いていた。
「今でもやるんですね……」
「懐かしいですなあ……」
「ブームがありましたねえ」
そんな言葉を聞き、全員の視線が集まったことで、再び動揺することになった。
*********
読んでくださりありがとうございます◎
226
お気に入りに追加
1,452
あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる