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第七章 秘伝と任されたもの
364 確実に成長しています
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リハーサルはとてもスムーズに進んだ。
「先生達、舞台転換上手いですね……」
「すごいよね……プロ並み?」
高耶と修は目を丸くした。那津が誇らしげに告げる。
「ふふふっ。教えていただきましたからね」
「……勤勉ですね」
「良い先生達ですねえ」
「そうでしょう?」
そんな話をしながらも、子ども達の演奏をチェックする。
「別人のようですね……」
「頑張っていたからね」
今度は修が誇らしそうだ。
「知らない人達に聞かれると緊張するから、本番のためにも違う学年の先生達を呼んで、その前で演奏してみたりしていたんだよ」
「それ、子ども達が?」
「うん。ピアノをする子たちで集まってね。発表会みたいで面白かったよ」
「……そういえば、優希達が、先生達の前で弾いたって……」
「うん。緊張するっていうのを、初体験したって言ってる子もいたね」
「確かに、一度はちゃんと経験した方が良いですね。本番前にするのは正解ですね」
少人数ながらも、あまり関わりのない先生達も居る前で演奏するというのは、子ども達にとっては良い経験だっただろう。
那津が少し困った顔をした。
「子ども達がとても積極的になって……保護者の方の中には、学芸会のどこに意味があるのかと言われる方もおられるんですよ」
「あ~……授業も変更したりしますしね」
「同じように、その……音楽の時間ももっと減らしても良いんじゃないかという意見も聞きますの……芸術系の授業は、年々押され気味ですわ……」
書道や美術系の図工もあまり重要視されなくなっているようだ。
「それが今回、一番大事な生徒の自主性を養えるという事が証明できましたのよ。これほど嬉しいことはありませんわ」
「同じ役の子達で集まって、どうしたらそれらしく見えるか、どう見せるかと相談させましたの。そうしたら……これですわ」
セリフの言い方、抑揚の付け方まで考えたのだろう。そして、動きも統一感も出した素晴らしいものだった。
「……どこかの劇団だと言っても通りそうですね」
「そうでしょうっ? 他の学校の関係者も沢山呼んで、盛大に見せびらかす気、満々ですわっ」
「……まあ、良いと思います……」
確かに、見せびらかしたくなるのは分かる。なので、反対はしなかった。これで芸術系の授業を見直してくれれば良い。
《すごいなあっ。高耶もやったのか?》
将也は、高耶だけに見えるように呼び出しており、舞台の前に行ったりと、落ち着かなく動き回っていた。その目はキラキラと輝いている。
『やった……けど、俺もあんま覚えてないなあ』
《美咲は知ってるんだよな? 帰ったら聞いて……》
『喧嘩になるぞ』
《なんで?》
『今朝の事、もう忘れたのか?』
《あ……》
どうにも、危機感がない。怒られ慣れているとも言うかもしれない。
『口にする前に考えた方が良いぞ』
《……一番苦手なやつ……》
『分かるけどな……』
思い立ったらすぐ行動るすのが将也だ。反射で動くことも多い。悪気なく無神経なことを言ってしまうことも多々あった。
美咲はその度に指摘し、反省を促す。イライラしており、夫婦の危機かと思わなくもないが、美咲はそうして将也に文句を言うことでストレス解消になっていたらしい。なので、夫婦仲は悪くなかったと思う。
今朝の言い合いというか、美咲に一方的に言われていたが、楽しそうだった。二人ともだ。
『……Mっ気あるよな……母さんはS……』
《ん? なんだ? 高耶》
『いや。バランスって大事だなって』
《ふ~ん?》
内側でそんな会話をしながら、高耶は堂々とピアノを弾く生徒達を見ていた。
「楽しそうですね」
「それが一番だよね」
「ええ」
土地神も喜んでいるのが高耶には分かる。これが子ども達の親が来た時、喜び、緊張がまた演奏に変化をもたらすだろう。
《楽しみだ》
そんな神の声が聞こえてきた。それに高耶は頷き、子ども達の成長を見守った。次は本番だ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一度お休みさせていただきます!
よろしくお願いします。
「先生達、舞台転換上手いですね……」
「すごいよね……プロ並み?」
高耶と修は目を丸くした。那津が誇らしげに告げる。
「ふふふっ。教えていただきましたからね」
「……勤勉ですね」
「良い先生達ですねえ」
「そうでしょう?」
そんな話をしながらも、子ども達の演奏をチェックする。
「別人のようですね……」
「頑張っていたからね」
今度は修が誇らしそうだ。
「知らない人達に聞かれると緊張するから、本番のためにも違う学年の先生達を呼んで、その前で演奏してみたりしていたんだよ」
「それ、子ども達が?」
「うん。ピアノをする子たちで集まってね。発表会みたいで面白かったよ」
「……そういえば、優希達が、先生達の前で弾いたって……」
「うん。緊張するっていうのを、初体験したって言ってる子もいたね」
「確かに、一度はちゃんと経験した方が良いですね。本番前にするのは正解ですね」
少人数ながらも、あまり関わりのない先生達も居る前で演奏するというのは、子ども達にとっては良い経験だっただろう。
那津が少し困った顔をした。
「子ども達がとても積極的になって……保護者の方の中には、学芸会のどこに意味があるのかと言われる方もおられるんですよ」
「あ~……授業も変更したりしますしね」
「同じように、その……音楽の時間ももっと減らしても良いんじゃないかという意見も聞きますの……芸術系の授業は、年々押され気味ですわ……」
書道や美術系の図工もあまり重要視されなくなっているようだ。
「それが今回、一番大事な生徒の自主性を養えるという事が証明できましたのよ。これほど嬉しいことはありませんわ」
「同じ役の子達で集まって、どうしたらそれらしく見えるか、どう見せるかと相談させましたの。そうしたら……これですわ」
セリフの言い方、抑揚の付け方まで考えたのだろう。そして、動きも統一感も出した素晴らしいものだった。
「……どこかの劇団だと言っても通りそうですね」
「そうでしょうっ? 他の学校の関係者も沢山呼んで、盛大に見せびらかす気、満々ですわっ」
「……まあ、良いと思います……」
確かに、見せびらかしたくなるのは分かる。なので、反対はしなかった。これで芸術系の授業を見直してくれれば良い。
《すごいなあっ。高耶もやったのか?》
将也は、高耶だけに見えるように呼び出しており、舞台の前に行ったりと、落ち着かなく動き回っていた。その目はキラキラと輝いている。
『やった……けど、俺もあんま覚えてないなあ』
《美咲は知ってるんだよな? 帰ったら聞いて……》
『喧嘩になるぞ』
《なんで?》
『今朝の事、もう忘れたのか?』
《あ……》
どうにも、危機感がない。怒られ慣れているとも言うかもしれない。
『口にする前に考えた方が良いぞ』
《……一番苦手なやつ……》
『分かるけどな……』
思い立ったらすぐ行動るすのが将也だ。反射で動くことも多い。悪気なく無神経なことを言ってしまうことも多々あった。
美咲はその度に指摘し、反省を促す。イライラしており、夫婦の危機かと思わなくもないが、美咲はそうして将也に文句を言うことでストレス解消になっていたらしい。なので、夫婦仲は悪くなかったと思う。
今朝の言い合いというか、美咲に一方的に言われていたが、楽しそうだった。二人ともだ。
『……Mっ気あるよな……母さんはS……』
《ん? なんだ? 高耶》
『いや。バランスって大事だなって』
《ふ~ん?》
内側でそんな会話をしながら、高耶は堂々とピアノを弾く生徒達を見ていた。
「楽しそうですね」
「それが一番だよね」
「ええ」
土地神も喜んでいるのが高耶には分かる。これが子ども達の親が来た時、喜び、緊張がまた演奏に変化をもたらすだろう。
《楽しみだ》
そんな神の声が聞こえてきた。それに高耶は頷き、子ども達の成長を見守った。次は本番だ。
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