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第六章 秘伝と知己の集い
330 式たちはすごいのだと思う
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生でメイドというのは、まあ普通見ないだろう。
女性達が、少し眉根を寄せてエリーゼを改めて見る。不審に思っているのが分かる目だった。
「あの……そういう趣味? なの?」
「趣味……」
高耶は、微笑みながら美しく手を組んで立つエリーゼを振り返る。趣味と言われれば、確かにそうなのかもしれないと思ったのは間違いではない。
最初は間違いなく趣味だった気がする。しかし、エリーゼの場合は本当のメイドだ。
「本場で、検定や講習も受けて認められた本当のメイドだが?」
「えっ? 検定とかあるの?」
「……」
そこからかと高耶は少し困惑する。これに、エリーゼが口を開いた。
《ご主人様。よろしければ、こちらのお嬢様方に、わたくしからご説明いたします》
「ああ……頼む」
《はい。では。メイド検定は日本にもございます。受け応えなどのマナーはもちろんのこと、接客、掃除、料理、裁縫、洗濯なども講義、実習がございます。更には、メイドに関する歴史などの知識も必要となります。そして何よりも、ご主人様第一主義の精神を持つ事。それら全てを認められ、メイドとなるのです》
「……裁縫?……掃除や洗濯……すごい……本格的……」
「お手伝いさんとは違うのね……」
女性達は興味津々だ。そのまま任せようと、高耶は料理を楽しむ。
俊哉はエリーゼに注目し、更に集まってくる同級生達を眺めながら、同じように食事を進めていた。
「エリーゼちゃんって、エルさんとこでも指導をお願いしてたよな? 結局日本の検定も受けてみたんだ?」
エルラントの所にはメイドがいる。何百年と昔からメイドとして居る者で、ベテランの本物のメイドだ。
そんなメイドから、メイドとは何かという所から全て教えられ、今やエリーゼは完璧なメイドになったといえる。
「一応、どんなもんかって気になったらしい。飛び級できないやつで、三級からちゃんと受けてたな」
「へえ。それ、試験会場では目立ってたんじゃね?」
「それも気にせず、あの調子で受けたら、何人かファンがついたらしい」
「うわ~、ありそう」
メイド検定は、別にメイドになりたい人が受けるわけではないらしく、エリーゼの正に理想通りのメイドという姿を見たことで、本気でメイドを目指そうとする人が増えたようだ。
記念受験的な、三級だけ受けるという人達も、頑張って一級まで取ろうと本格的に勉強をしだした者が増えたという。
「一級に受かってからは、その試験会場で会った人達から、講習のお願いが来るって言ってたな」
「それは来るわ……エリーゼちゃんかわいいし」
「……」
あえて同意はしなかった。
だが、ここでもファンはついたようだ。
「ねっ、ねえっ。メールとかできない?」
「アドレス教えてっ」
「写真いい?」
女性達ばかりなので、問題はなさそうだ。
男性達が遠巻きに羨ましそうに見ているのも分かっているが、あまりにも完璧なメイドとして振る舞うエリーゼには近寄りがたいようだった。
「変な男も近寄れないとか、エリーゼちゃんすごいわ」
「努力を忘れないからな」
「高耶んとこの式さん達は全員そうじゃん」
「まあな……」
次に来た魚料理は、良く知っているものだった。
「うおっ。これっ! これはアレだ!」
俊哉が一口食べて騒ぐ。
「煩い」
「だってさあっ。これっ、あの時のムニエルじゃんっ!」
「ああ……珀豪だな……」
あの時の味をしっかり再現出来たようだ。
「っ、なんだコレっ! めちゃくちゃ美味っ」
「魚!? めちゃくちゃ美味いっ」
「このソースか? すげえっ! クソ美味いっ」
「美味しいっ!! うそっ! 本当に美味しいんだけどっ」
「すごい……本当に美味しい……っ」
「コレはあれだろ! コックを呼ぶ案件だろ!」
「「「「「それだ!」」」」」
大反響があるようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
女性達が、少し眉根を寄せてエリーゼを改めて見る。不審に思っているのが分かる目だった。
「あの……そういう趣味? なの?」
「趣味……」
高耶は、微笑みながら美しく手を組んで立つエリーゼを振り返る。趣味と言われれば、確かにそうなのかもしれないと思ったのは間違いではない。
最初は間違いなく趣味だった気がする。しかし、エリーゼの場合は本当のメイドだ。
「本場で、検定や講習も受けて認められた本当のメイドだが?」
「えっ? 検定とかあるの?」
「……」
そこからかと高耶は少し困惑する。これに、エリーゼが口を開いた。
《ご主人様。よろしければ、こちらのお嬢様方に、わたくしからご説明いたします》
「ああ……頼む」
《はい。では。メイド検定は日本にもございます。受け応えなどのマナーはもちろんのこと、接客、掃除、料理、裁縫、洗濯なども講義、実習がございます。更には、メイドに関する歴史などの知識も必要となります。そして何よりも、ご主人様第一主義の精神を持つ事。それら全てを認められ、メイドとなるのです》
「……裁縫?……掃除や洗濯……すごい……本格的……」
「お手伝いさんとは違うのね……」
女性達は興味津々だ。そのまま任せようと、高耶は料理を楽しむ。
俊哉はエリーゼに注目し、更に集まってくる同級生達を眺めながら、同じように食事を進めていた。
「エリーゼちゃんって、エルさんとこでも指導をお願いしてたよな? 結局日本の検定も受けてみたんだ?」
エルラントの所にはメイドがいる。何百年と昔からメイドとして居る者で、ベテランの本物のメイドだ。
そんなメイドから、メイドとは何かという所から全て教えられ、今やエリーゼは完璧なメイドになったといえる。
「一応、どんなもんかって気になったらしい。飛び級できないやつで、三級からちゃんと受けてたな」
「へえ。それ、試験会場では目立ってたんじゃね?」
「それも気にせず、あの調子で受けたら、何人かファンがついたらしい」
「うわ~、ありそう」
メイド検定は、別にメイドになりたい人が受けるわけではないらしく、エリーゼの正に理想通りのメイドという姿を見たことで、本気でメイドを目指そうとする人が増えたようだ。
記念受験的な、三級だけ受けるという人達も、頑張って一級まで取ろうと本格的に勉強をしだした者が増えたという。
「一級に受かってからは、その試験会場で会った人達から、講習のお願いが来るって言ってたな」
「それは来るわ……エリーゼちゃんかわいいし」
「……」
あえて同意はしなかった。
だが、ここでもファンはついたようだ。
「ねっ、ねえっ。メールとかできない?」
「アドレス教えてっ」
「写真いい?」
女性達ばかりなので、問題はなさそうだ。
男性達が遠巻きに羨ましそうに見ているのも分かっているが、あまりにも完璧なメイドとして振る舞うエリーゼには近寄りがたいようだった。
「変な男も近寄れないとか、エリーゼちゃんすごいわ」
「努力を忘れないからな」
「高耶んとこの式さん達は全員そうじゃん」
「まあな……」
次に来た魚料理は、良く知っているものだった。
「うおっ。これっ! これはアレだ!」
俊哉が一口食べて騒ぐ。
「煩い」
「だってさあっ。これっ、あの時のムニエルじゃんっ!」
「ああ……珀豪だな……」
あの時の味をしっかり再現出来たようだ。
「っ、なんだコレっ! めちゃくちゃ美味っ」
「魚!? めちゃくちゃ美味いっ」
「このソースか? すげえっ! クソ美味いっ」
「美味しいっ!! うそっ! 本当に美味しいんだけどっ」
「すごい……本当に美味しい……っ」
「コレはあれだろ! コックを呼ぶ案件だろ!」
「「「「「それだ!」」」」」
大反響があるようだ。
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