秘伝賜ります

紫南

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第六章 秘伝と知己の集い

318 運命……ではないはず

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二日目の土曜日。

この日の夕方四時頃から同窓会が始まる。

軽く昼ごはんを食べ、もうじき二時になるという頃。

高耶と同室の片瀬かたせみつる新田にったれいは、二人の共通の友人が来るのをエントランスの端にある休憩所で待っていた。

「会うのは二年振りだよな~」
「そう……なるよな。高二の夏くらいからメールも来てねえし」

嶺は、スマホの最後のメールを確認していた。

「……妹ちゃん、まだ見つからねえのかな……」
「……もう五年だろ……そうだな……」

五年前、その友人の妹が、旅行先で行方不明になった。六つ歳の離れた妹は、とても活発で言い方を変えればとってもやんちゃだった。

旅行先は登山客も多い山の麓のキャンプ場。水遊びできる川もあるし、興味を引くものは多かっただろう。

父母は居なくなった妹のことばかりで、一時期はかなり荒れていた。それまでも、歳の離れた妹だ。両親はそちらばかり気にする。荒れるのも仕方がないだろう。

小学校の頃も、やさぐれていて友人といえば幼馴染だった満と嶺しか居なかった。

「ちょっと心配だけどな……」
「いや、だっておじさんやおばさんにもよろしくって頼まれたし……今は離れて暮らしてるから、さすがに落ち着いてるだろ」

二人は、今回の同窓会の話をもらって、すぐに気にしたのはその友人のこと。『あいつはどうするかな』と話し合っていた所に、その友人の母親から連絡があった。誘ってやってくれと。

「ヤバい所に出入りしてるってのは、大丈夫だと思うか?」
「……けど、行くって言ったし……普通、嫌がるだろ。そういう所出入りしてたらさ。先生達も居るし……」

いつまでも、教師には頭が上がらないものだ。だから、多少でも道を外していれば、気まずくてこういった集まりに顔を出そうなんて思わないだろう。

「……メールも素っ気ないしな……」
「いや、絵文字使ってきたら怖えよ……」
「それもそうか……」

二人は今更ながらに不安になって来ていた。そこに、高耶と俊哉がやって来る。

「部屋に居ねえからどこ行ったかと思った。何してんの?」

俊哉が問いかける。

「槇を待ってんだよ」
「もうそろそろ来るって言ってた時間なんだ」
「ん? マキ……ああっ、白木槇かっ。そういや、出席になってたわ……」

そうかそうかと納得した後、俊哉は静かになる。そして、俊哉は屈み込み、声を落として満と嶺に確認する。

「なあ……今も荒れてんの? 中学ん時すごかったじゃん。先生達には、一応注意して欲しいって女子達から言ってるっぽいけど、実際どうなのかな~って」

幹事として、出席者の確認もしている俊哉は、同窓会が台無しにならないかと心配はしていたようだ。

「……俺らもメールでさえ二年振りだったんだよ。高校は別だったし」
「それも、高校で退学になったってメールが最後」
「……お前らが来るから大丈夫だと思ってたんだけど……マジか……もっと確認するんだった……」

だからといって、素行調査をするものでもないだろう。不安げに気持ちを沈ませる三人。

黙っている高耶は、白木しらきまきという人物を必死で思い出そうとしていた。

その時、入り口辺りでざわざわと空気が変わった。

外を見ると、黒塗りの車が入り口に横付けされているのが見えた。そして、そこから奇抜な髪型をしたスーツ姿の若い男が降りて来る。

「「っ、槇っ!」」

満と嶺が声を上げながら立ち上がる。

明らかに普通とは違う雰囲気に、エントランスに居た同級生達が怯えていた。教師達も出て来る。

そこで、同じ車から厳つい顔をした壮年の男性が降りて来て、黒い旅行カバンを槇に押し付ける。

そんな様子を見ながら、誰も動こうとはしない。だが、その壮年の男性に高耶は見覚えがあった。

よって、そのまま自然に歩き出した。

「っ、ちょっ、高耶!?」

俊哉が慌てている。だが、気にしない。

外に出て何やら問答している槇と男性。

「ごちゃごちゃ言わず、行ってこいって言ってんだろ!」
「っ、迷惑になるに決まってるっ……」
「そんなもん、分からんだろうがっ」

言い合うのに夢中で高耶には気付かない。その男性へと声をかけようとしたのだが、それよりも先に運転席の窓が開いて、高耶より少し年上の男が笑顔で挨拶してきた。

「師範じゃねえっすかっ。また会うとか運命かっ。迅さんにメールしよ」
「優也……バイトか?」
「ウィッス。師範は……はっ、ちょっ、槇と同級生だったり? 同窓会!?」
「ああ……」
「ちょっ! 槇! 羨まし過ぎる! そんな嫌がるなら俺が代わるわ!」
「……相田先輩……?」

そして、ここで壮年の男性も高耶に気付いた。

「高耶君!? なに!? 槇と同級生だと!? 槇! このヤロウ! なんでそれ早く言わねえんだっ」
「……なんで俺……」

よく分からない事態になった。

そんな様子を誰もが遠巻きに眺めていた。








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