秘伝賜ります

紫南

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第六章 秘伝と知己の集い

307 任せられるのは……

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突然半魔だの鬼だの、術者だのと言い出した高耶。当然だが全く事情を知らない満と嶺が立ち上がった高耶を見上げ、口を空けてポカンとする。

彰彦はワクワクと目を輝かせており、俊哉は少しムッとしていた。

これに気付き、高耶は自身の額に手をやる。そして、最も事情をよく知る俊哉へ声をかけた。

「……俊哉、ちょい様子見て来るから……」
「はあ……分かってるよ……夕食には間に合うんだろうな?」
「今回は様子見だけにするから大丈夫だ。彰彦達と先に戻ってくれ」
「いいけどさ……」

どこまでも不満そうだが、子どものように駄々をこねたりはしない。

俊哉としては、せっかく旅行に来て居るのだから、仕事を忘れて楽しんで欲しかったというのは高耶も分かっている。

だから、高耶も伝えておく。

「今回は旅行で来てるんだ。困ってる人達を保護して、後は後日ってことにするよ」
「……それなら、まあ……分かった」
「悪いな……」
「……おう」

頼りにしているというのが伝わったのだろう。納得もしてくれたようだ。

そして、一応当事者となる女性店員にも断っておく。

「さすがに、すぐに鬼をどうこうすることはできません。なので、あなた方を保護させていただき、里と土地神の方は改めて対応します。上とも相談しないといけませんので」
「わ、分かりました……ただその……保護というのは……」

彼女が不安に思っているのは、保護ということ。

自分たちの存在は術者達であっても、受け入れ難いものだと思っているため、どのような扱いを受けるのかと心配なのだろう。

「大陸より、こちらはまだ対応が優しいと分かっておられるから、ここに里を作られたのでしょう。そう心配されずとも、時代は変わっていますし、上も寛容な方です」
「っ……ですが……」

閉鎖的な暮らしをしていた者達にとっては、いつまで経っても迫害され、理解されないものと思っている。

だが、この国だけでなく、大陸の祓魔師エクソシスト達も、昔ほどその存在を否定したりはしない。それを知らないのだろう。

たがら、彼女は一番気掛かりなことを口にした。

「その……私は、悪魔の力を少し受け継いでいまして……」

俯く女性店員。悪魔と聞くだけで、悪い存在だと思われると思っているのだろう。しかし、高耶は苦笑しただけ。

「確かに、未だに悪魔が悪だと決め付ける祓魔師エクソシストは居ますが、最近はそれも緩くなっています。私にも悪魔の友人が居ますし……それに……【瑪瑙】」

この喚びかけに応えて、高耶のと女性の間に、その子どもは現れた。

《はいっ》

悪魔と天使から生まれた瑪瑙は、最近は優希達とも遊べるくらい、力の制御が上手くなった。よって、ここに呼んでも、結界の中の者達には気付かれないだろう。

紫がかった黒い大きな瞳。ほんのりと赤い頬。誰が見ても可愛らしい三歳児頃の幼児の姿だ。

瑪瑙には、悪魔と天使の魅了の力が混在しており、不安そうだった女性店員も少し興奮した様子になった。

「この子は悪魔と天使、両方の力を持っています」
「っ……こんな……っ、こんな子が……っ、この子はあなたと……?」
「契約しています。この子が生まれた時、あちらの祓魔師エクソシストも大勢居合わせました。だから……大丈夫ですよ」
「っ……本当に……っ」
「はい」
「っ、ああっ……ありがとうございますっ。お願いしますっ」
「はい」

涙を流す女性を高耶と瑪瑙で宥めながら、茶屋の奥へと向かう。

残された俊哉達は、それぞれ複雑そうな表情をしていた。

「……え?」
「え? 今の何?」
「あの子ども、どっから出て来た?」
「天使? 悪魔? 彰彦の影響か!?」

満と嶺が大混乱している。

「ふっ。さすがは、高耶だ。天使だけではないとはっ……最強ではないかっ」

こうして彰彦は興奮すると分かっているから、瑶迦の所にも連れて行くのを躊躇う。

「ったく、ホント、仕事人間なんだからさ~。有能なのも問題だよな~」

俊哉は不貞腐れながら、残りの団子を腹に納めていた。

すると、満と嶺が事情を知っていると見て、俊哉に詰め寄った。

「「俊哉! どういうことだ!?」」
「うおっ」

それから、俊哉は高耶の仕事のことをポツポツと話す。これにより、修学旅行になぜ高耶が来なかったのか、付き合いが悪かったのは何故かを知り、密かに二人で反省していた。

四人が山を降りる頃には、高耶は、焔泉に電話し、対応をお願いしていた。

そして、充雪に改めて調べてもらうことにしたのだ。









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読んでくださりありがとうございます◎
また来年もよろしくお願いします!
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