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第六章 秘伝と知己の集い
300 休暇?
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奉納ライブについて了承した日の後。高耶は相変わらず忙しく過ごしていた。
「歩き方も良くなったな」
「ありがとうございます!」
「いや。ただ、気を付けるのは、何度も言うが、これを癖にしないように」
「はい!」
ステルスモードの時の歩き方や動き方の訓練を主に、律音の呼びかけに応えた音一族の子ども達が稽古に来るようになっていた。
「では、次の稽古に移る」
「「「「「はい!」」」」」
可愛い系の子が多く、とっても爽やかな稽古の様子に、統二や一緒に稽古を受けることになった俊哉が慣れない雰囲気に少しばかり戸惑っているようだ。
「なんかさ……明らかに体育会系じゃないよな……」
「はい……でも、ガツガツ、ギラギラしてなくてこれはこれで良い雰囲気ですよね……違和感ありますけど……」
「だな……」
子どもの稽古とも違う。武術をと意識高めの者達の稽古とも違った。
「爽やかですね……」
「爽やかだな……何か、ずっと見ていられるわ……」
「分かります……」
そんな中で稽古に混じる統二と俊哉は、場違いだなと思っていた。
「秘伝の道場使えて良かったな」
「はい。これ、体育館とか借りてだとちょっと……野次馬が凄くなりそうです」
「あれだろ? 体育館使ってやってるやつ。高耶が教えるってだけで、結構近所から問い合わせがあったりするって」
「そうなんです……生徒が増える一方で……この前、曜日増やしてました」
「余計に忙しくなってんじゃん……」
益々忙しくなる高耶だ。
「ま、そんな高耶を今週末は休ませてやらんとなっ」
「同窓会でしたっけ。小学校のって凄いですよね」
「まあ、小学校でも中学校のメンバーとそう変わらんし」
「それもそうですね」
そうして、週末。
祝日を入れた金、土、日で、修学旅行のような同窓会が始まった。現地集合になるため、移動手段はそれぞれだ。
高耶は俊哉と共に、近くに仕事で出掛けるという源龍の家の車で旅館まで送ってもらった。
「ありがとうございます。源龍さん」
「いや。高耶君がこうやって出掛けるのって貴重だし、いつでも足に使ってくれていいからね」
「それはさすがに……」
「これで迅君に自慢もできるよっ」
「……」
源龍は、迅と『迅君』『龍ちゃん』と呼び合う仲になっている。そして、高耶の事で、自慢し合うのだそうだ。
「あははっ。じゃあ、俺も迅さんに自慢しねえとなっ。今日から高耶とお泊まりだって!」
「うん。それは私も羨ましいから」
「あははっ」
「……」
どういう顔をしたらいいのか分からない高耶だ。
「じゃあ、いってらっしゃい。楽しんできてね」
「ありがとうございます」
「あっ、帰りも何なら家から車出すよ。必要ならメールでも電話でも」
「そんな……いえ、分かりました。お願いするかもしれません」
断りかけて、源龍が期待するような顔をしていたため、そう答えておいた。すると、満足げな笑みを浮かべて手を振ってくれる。
「うんっ。待ってるよ。ではね」
「はい。ありがとうございました」
「どうも~」
黒い高級車を見送り、高耶と俊哉はそれぞれの旅行鞄を肩にかけて旅館に向かう。
「結構、しっかりしてる所じゃないか?」
「おう。けど、やっぱ旅館の経営って大変みたいだし」
「まあ、そうか……」
この旅館は、この同窓会を最後に閉めることになっているという。
旅館を見つめ、高耶は周囲の土地にも目を向ける。
「……」
「高耶? 何か感じるか?」
「……いや……だが……何でもない」
「ふ~ん……まあ、ここには休暇に来てんだからさ。あんま周り気にせずいこうぜ!」
「そうだな……嫌な感じはないから大丈夫だろう」
仕事を忘れて、楽しんでも良いだろうと、高耶は頷いた。
だが、そこで俊哉が声を上げる。
「あっ!」
「なんだ?」
「高耶! それ、御当主モードじゃん!」
「……」
源龍に会うからということもあり、普通に仕事の時のセットだ。寧ろ、こっちが普通なのだ。大学に行く時のオタクルックは毎朝作っている。
よって、休みの日はこの俊哉の言う御当主モードでいるのが普通だった。
「高耶! お前、一人になるなよ!」
「……おう……」
いつかと逆だ。
「よし! 気合い入った! 浮気とか不倫とかもダメだからな!」
「……ねえよ……」
何を心配しているのか。そうして、呆れた様子のまま、高耶は俊哉と並んで旅館に足を踏み入れたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「歩き方も良くなったな」
「ありがとうございます!」
「いや。ただ、気を付けるのは、何度も言うが、これを癖にしないように」
「はい!」
ステルスモードの時の歩き方や動き方の訓練を主に、律音の呼びかけに応えた音一族の子ども達が稽古に来るようになっていた。
「では、次の稽古に移る」
「「「「「はい!」」」」」
可愛い系の子が多く、とっても爽やかな稽古の様子に、統二や一緒に稽古を受けることになった俊哉が慣れない雰囲気に少しばかり戸惑っているようだ。
「なんかさ……明らかに体育会系じゃないよな……」
「はい……でも、ガツガツ、ギラギラしてなくてこれはこれで良い雰囲気ですよね……違和感ありますけど……」
「だな……」
子どもの稽古とも違う。武術をと意識高めの者達の稽古とも違った。
「爽やかですね……」
「爽やかだな……何か、ずっと見ていられるわ……」
「分かります……」
そんな中で稽古に混じる統二と俊哉は、場違いだなと思っていた。
「秘伝の道場使えて良かったな」
「はい。これ、体育館とか借りてだとちょっと……野次馬が凄くなりそうです」
「あれだろ? 体育館使ってやってるやつ。高耶が教えるってだけで、結構近所から問い合わせがあったりするって」
「そうなんです……生徒が増える一方で……この前、曜日増やしてました」
「余計に忙しくなってんじゃん……」
益々忙しくなる高耶だ。
「ま、そんな高耶を今週末は休ませてやらんとなっ」
「同窓会でしたっけ。小学校のって凄いですよね」
「まあ、小学校でも中学校のメンバーとそう変わらんし」
「それもそうですね」
そうして、週末。
祝日を入れた金、土、日で、修学旅行のような同窓会が始まった。現地集合になるため、移動手段はそれぞれだ。
高耶は俊哉と共に、近くに仕事で出掛けるという源龍の家の車で旅館まで送ってもらった。
「ありがとうございます。源龍さん」
「いや。高耶君がこうやって出掛けるのって貴重だし、いつでも足に使ってくれていいからね」
「それはさすがに……」
「これで迅君に自慢もできるよっ」
「……」
源龍は、迅と『迅君』『龍ちゃん』と呼び合う仲になっている。そして、高耶の事で、自慢し合うのだそうだ。
「あははっ。じゃあ、俺も迅さんに自慢しねえとなっ。今日から高耶とお泊まりだって!」
「うん。それは私も羨ましいから」
「あははっ」
「……」
どういう顔をしたらいいのか分からない高耶だ。
「じゃあ、いってらっしゃい。楽しんできてね」
「ありがとうございます」
「あっ、帰りも何なら家から車出すよ。必要ならメールでも電話でも」
「そんな……いえ、分かりました。お願いするかもしれません」
断りかけて、源龍が期待するような顔をしていたため、そう答えておいた。すると、満足げな笑みを浮かべて手を振ってくれる。
「うんっ。待ってるよ。ではね」
「はい。ありがとうございました」
「どうも~」
黒い高級車を見送り、高耶と俊哉はそれぞれの旅行鞄を肩にかけて旅館に向かう。
「結構、しっかりしてる所じゃないか?」
「おう。けど、やっぱ旅館の経営って大変みたいだし」
「まあ、そうか……」
この旅館は、この同窓会を最後に閉めることになっているという。
旅館を見つめ、高耶は周囲の土地にも目を向ける。
「……」
「高耶? 何か感じるか?」
「……いや……だが……何でもない」
「ふ~ん……まあ、ここには休暇に来てんだからさ。あんま周り気にせずいこうぜ!」
「そうだな……嫌な感じはないから大丈夫だろう」
仕事を忘れて、楽しんでも良いだろうと、高耶は頷いた。
だが、そこで俊哉が声を上げる。
「あっ!」
「なんだ?」
「高耶! それ、御当主モードじゃん!」
「……」
源龍に会うからということもあり、普通に仕事の時のセットだ。寧ろ、こっちが普通なのだ。大学に行く時のオタクルックは毎朝作っている。
よって、休みの日はこの俊哉の言う御当主モードでいるのが普通だった。
「高耶! お前、一人になるなよ!」
「……おう……」
いつかと逆だ。
「よし! 気合い入った! 浮気とか不倫とかもダメだからな!」
「……ねえよ……」
何を心配しているのか。そうして、呆れた様子のまま、高耶は俊哉と並んで旅館に足を踏み入れたのだ。
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