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第五章 秘伝と天使と悪魔
243 あざとく行きます
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間違いなく、イスティアやキルティス達からすれば、今の祓魔師の若者達は『ただ視えるだけの一般人』と変わらないだろう。
だが、本当にはっきりと言ったものだ。彼らは今や、真っ青を通り越して、真っ白になっている。
二人の言葉は、実は最初から日本語ではない。彼らは、理解できる言語へ相互に変換できる魔術を自分に使っているのだ。
よって、二人の言葉は、聞き手に理解できる言語に変換され、逆に聞こえた言語は二人に理解できる言葉で聞こえる。
これはまだ幼かった高耶が初めて二人に会った時に、言った言葉がきっかけだった。
『転生とか転移とかの話で出てくる『言語理解』ってスキルを魔術で実現できたりしたら、面白いですよね』
この時、まだ小学生。魔術は高耶にしても魔法のように夢のあるものだった。そして、読書週間の折、俊哉に勧められたラノベを読んだ直後だったというのもある。ここでも俊哉の影響が出た。
高耶としては、魔術は何が可能で、何が不可能なのかを見極めないとなと考えている時でもあり、そんなことをコロっと呟いてしまったのだ。
これが二人に火をつけた。
そして、出来てしまった。これを高耶も会得しようと、海外での仕事で出向く折に使っていると、同時に言語の習得もできてしまった。どうやら、練習として使っていたのが良かったらしい。まだ中途半端な発動だったために、二重音声のように聞こえていたのだ。後は文法などの筆記学習でほとんど完璧になった。
この学習法をイスティアとキルティスが知り、また火がついたというのは、また別の話だ。
「これも時代の流れかしら」
「困るだろ。このまま衰退したら、俺らの仕事増えんじゃん」
「えっ、やだあ~。引きこもり生活したいぃ~」
「ったってよお。あんなまだ毛も生えてねえくらいのガキ共しか居なくなるのは、エルも困るよなあ」
「まあね。今のうちに、島でも見繕おうと思ってるくらいには」
「逃げる気かよ」
人が寄り付けない孤島を見つけて、そこで暮らすようにしようかと、少しばかり本気で考えているらしい。冗談半分で、数年前にそう話していたのを高耶は思い出した。
「あ、瑤迦さんが、よかったら移住してくれと言ってましたよ。城もできてますしね」
「そうだったねっ。私好みの城を建ててくれたんだった。もちろん、高耶くんの部屋もあるやつだよね!」
「あ、はい……ドアに名前を既に掘られていましたね……」
「部屋には名前が要るからねっ」
「……はい……」
ここが高耶の部屋ですと分かるようになっていたのだ。それは、瑤迦の作り出した世界に建てた城にあった。どこの王様の部屋だと思わず開いたドアを閉めてしまうほど、豪華な部屋だった。
「ええええっ。私っ、私は!?」
「俺も良いだろ!?」
「……お二人は自前のがあるでしょう……」
「それとコレとは別よ!」
「別荘はいくつあっても良いだろ!」
「……」
二人とも、瑤迦と同じように、異界を作ることが出来る。そこで彼らは引きこもっているのだ。彼らが認めなければ、誰も入れないのだから、逃げ場所は必要ないだろう。
「だって、高耶ちゃんが、最近は遊びに来てくれないしっ」
「前はじいちゃん凄いって、連絡する度に会いに来てくれて、褒めてくれてたのに、最近は全然だし」
「……」
これはアレだ。面倒臭いやつだ。このままではいけない。さっさと目の前の仕事を片付けようと高耶は頭を切り換える。そして、計算する。
導き出された答えがこれだ。とっても恥ずかしいが、これにした。
「お、俺もじいちゃんと、ばあちゃんに会えないのは寂しかったので……っ、その……この仕事を早く終えて、両親にも紹介したいなあ……なんて……それで一緒に夕食とか……っ」
ちょっとあざと過ぎるかとも思ったのだが、二人の目がギラリと光ったのが見えてしまった。孫バカ万歳。
「っ、さっさとやるわよ!! ひよっこどもは、邪魔だからもっとそっち集まんなさい! 邪魔したら魚の餌にしてやるからね!」
「うっしゃ! 結界張るぞ! ついでに霊穴と天穴の蓋もしてやるぜ! 余計な手出しさせねえようにな! おい! ひよっこども、さっさとあっちに行け! 団子になっとれ! 口も出すんじゃねえぞ! 喧しくしやがったら、畑の肥料にすんぞ!」
真っ青になった祓魔師達は、年配の者と連盟の者たちで、強引に引っ張っていく。彼らも必死だった。間違いなく二人は有言実行。魚の餌や畑の肥料にされる。
そして、次々にイスティアとキルティスは準備を整えて行った。
笑いを堪えながらも見守っているエルラントに、高耶は耳打ちする。
「あの……ここ、どうにかなりそうなので、土地神の方に行ってきます」
「ふふ。うん。ふふふっ。行っておいで。ここは大丈夫だよ。ふふふふっ」
「はい……」
高耶の言葉でコロコロと転がり出した二人の旧友の様子に、エルラントは笑いを堪えきれないらしい。
「あ、そうだ。私もご家族との顔合わせには参加させてね」
「……はい……」
「ふふふふっ」
仕事を遂行するためとはいえ、ちょっと早まったかなと高耶は肩を落とした。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
だが、本当にはっきりと言ったものだ。彼らは今や、真っ青を通り越して、真っ白になっている。
二人の言葉は、実は最初から日本語ではない。彼らは、理解できる言語へ相互に変換できる魔術を自分に使っているのだ。
よって、二人の言葉は、聞き手に理解できる言語に変換され、逆に聞こえた言語は二人に理解できる言葉で聞こえる。
これはまだ幼かった高耶が初めて二人に会った時に、言った言葉がきっかけだった。
『転生とか転移とかの話で出てくる『言語理解』ってスキルを魔術で実現できたりしたら、面白いですよね』
この時、まだ小学生。魔術は高耶にしても魔法のように夢のあるものだった。そして、読書週間の折、俊哉に勧められたラノベを読んだ直後だったというのもある。ここでも俊哉の影響が出た。
高耶としては、魔術は何が可能で、何が不可能なのかを見極めないとなと考えている時でもあり、そんなことをコロっと呟いてしまったのだ。
これが二人に火をつけた。
そして、出来てしまった。これを高耶も会得しようと、海外での仕事で出向く折に使っていると、同時に言語の習得もできてしまった。どうやら、練習として使っていたのが良かったらしい。まだ中途半端な発動だったために、二重音声のように聞こえていたのだ。後は文法などの筆記学習でほとんど完璧になった。
この学習法をイスティアとキルティスが知り、また火がついたというのは、また別の話だ。
「これも時代の流れかしら」
「困るだろ。このまま衰退したら、俺らの仕事増えんじゃん」
「えっ、やだあ~。引きこもり生活したいぃ~」
「ったってよお。あんなまだ毛も生えてねえくらいのガキ共しか居なくなるのは、エルも困るよなあ」
「まあね。今のうちに、島でも見繕おうと思ってるくらいには」
「逃げる気かよ」
人が寄り付けない孤島を見つけて、そこで暮らすようにしようかと、少しばかり本気で考えているらしい。冗談半分で、数年前にそう話していたのを高耶は思い出した。
「あ、瑤迦さんが、よかったら移住してくれと言ってましたよ。城もできてますしね」
「そうだったねっ。私好みの城を建ててくれたんだった。もちろん、高耶くんの部屋もあるやつだよね!」
「あ、はい……ドアに名前を既に掘られていましたね……」
「部屋には名前が要るからねっ」
「……はい……」
ここが高耶の部屋ですと分かるようになっていたのだ。それは、瑤迦の作り出した世界に建てた城にあった。どこの王様の部屋だと思わず開いたドアを閉めてしまうほど、豪華な部屋だった。
「ええええっ。私っ、私は!?」
「俺も良いだろ!?」
「……お二人は自前のがあるでしょう……」
「それとコレとは別よ!」
「別荘はいくつあっても良いだろ!」
「……」
二人とも、瑤迦と同じように、異界を作ることが出来る。そこで彼らは引きこもっているのだ。彼らが認めなければ、誰も入れないのだから、逃げ場所は必要ないだろう。
「だって、高耶ちゃんが、最近は遊びに来てくれないしっ」
「前はじいちゃん凄いって、連絡する度に会いに来てくれて、褒めてくれてたのに、最近は全然だし」
「……」
これはアレだ。面倒臭いやつだ。このままではいけない。さっさと目の前の仕事を片付けようと高耶は頭を切り換える。そして、計算する。
導き出された答えがこれだ。とっても恥ずかしいが、これにした。
「お、俺もじいちゃんと、ばあちゃんに会えないのは寂しかったので……っ、その……この仕事を早く終えて、両親にも紹介したいなあ……なんて……それで一緒に夕食とか……っ」
ちょっとあざと過ぎるかとも思ったのだが、二人の目がギラリと光ったのが見えてしまった。孫バカ万歳。
「っ、さっさとやるわよ!! ひよっこどもは、邪魔だからもっとそっち集まんなさい! 邪魔したら魚の餌にしてやるからね!」
「うっしゃ! 結界張るぞ! ついでに霊穴と天穴の蓋もしてやるぜ! 余計な手出しさせねえようにな! おい! ひよっこども、さっさとあっちに行け! 団子になっとれ! 口も出すんじゃねえぞ! 喧しくしやがったら、畑の肥料にすんぞ!」
真っ青になった祓魔師達は、年配の者と連盟の者たちで、強引に引っ張っていく。彼らも必死だった。間違いなく二人は有言実行。魚の餌や畑の肥料にされる。
そして、次々にイスティアとキルティスは準備を整えて行った。
笑いを堪えながらも見守っているエルラントに、高耶は耳打ちする。
「あの……ここ、どうにかなりそうなので、土地神の方に行ってきます」
「ふふ。うん。ふふふっ。行っておいで。ここは大丈夫だよ。ふふふふっ」
「はい……」
高耶の言葉でコロコロと転がり出した二人の旧友の様子に、エルラントは笑いを堪えきれないらしい。
「あ、そうだ。私もご家族との顔合わせには参加させてね」
「……はい……」
「ふふふふっ」
仕事を遂行するためとはいえ、ちょっと早まったかなと高耶は肩を落とした。
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