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第四章 秘伝と導く音色
186 奏者の心得
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当日。
庭は完全な演奏会場になっていた。
「……これは……っ」
修が絶句する。
「すみません……せっかくだからとなぜかこんな大事に……」
高耶は若干、目をそらした。気付いたのは昨日。どうですかと清掃部隊の面々が自信満々に会場を見せてくれたのだ。
そこはどこからどう見ても、野外ステージの立派な演奏会場だった。撤収するのがもったいなくなるほどの出来栄えに、思わず高耶は本心から感心して褒めた。
これに感激した清掃部隊は更に気合いを入れたらしい。照明もきっちり入っていた。
「あ、あのっ……あのピアノは……っ」
三日前には何もなかった場所が大きく様変わりしていたことに動揺していた修だが、唐突に舞台上のピアノに惹き寄せられた。
「特別に奉納用に用意したものです。一度弾いてみてもらえますか?」
「は、はい……っ」
黒いピアノは、一見なんの変哲もないピアノに見えるが、その黒がどこか光を放っているように見えた。
目の前まで来た修が立ち止まる。
「あ、あの……いいんでしょうか? なんだかとても神聖なもののように感じるのですが……」
高耶が蓋を開ける。真っ白な鍵盤は更に輝いているように見えたようだ。
「そうですねえ。形は変えてもらいましたが、れっきとした『神器』です。『神楽器』といいます。一緒に合わせるバイオリンもそうなんですよ」
「……そうなんですか……」
「はい。綺麗ですよね」
「……はい……畏れ多いです……」
心情的には高耶と修でかなり違う。だが、修もプロだ。この楽器の凄さを肌で感じ、畏れ多いが、それよりも触れてみたいと思ったようだ。
「っ……本当に弾いてみても?」
「はい。確認してください。タッチの感じとか調整もできますから」
修は大きく深呼吸してから、ピアノの前の椅子に座った。もう一度慎重に呼吸をしてから、そっと指で鍵盤に触れる。
「っ……」
「大丈夫です。いつもあなたが弾いているピアノだと思ってください」
「あ、はい……っ」
指が震えていた。修はここまで自身の指が震えることなど子どもの頃でもなかったのだ。しばらく経っても音を鳴らせなかった。
それを見て、高耶が修の背にそっと触れる。すると、ビクリと体が震えた。それに修は顔を赤らめ、手を離して両手を合わせると強く握った。
「っ、すみません……こんな……っ、緊張しているようです……っ」
「緊張? ああ。なるほど」
高耶は目を丸くしてから納得し、微笑む。
「プロの方は上手く緊張状態を使いますよね。もしかして、修さんは『緊張しないタイプ』ですか?」
「え、ええ……」
「実は俺もです。でも、全く緊張していないわけじゃないですよね」
「……そう思ってはいますが……」
いけないと思いつつも、もう舞台に慣れてしまって緊張状態になったとしても、すぐに平常心へ持っていけるようになっているのだ。
「賢さんが言っていました。『緊張は高揚に変わる。それが最高の演奏に繋がるのだから、決して、緊張する感覚を捨ててはならない』と」
「っ、そうです……私は子どもの頃から、演奏する時に緊張しませんでした……同じ子どもたちが、手が震えていつも通りに弾けなかったと泣くのを見て嘲笑った私に、父は怒りました」
自分は練習した通りに弾けた。それが誇らしくて、父にも褒めて欲しかった。けれどその時、賢は怒った。
「緊張もせずに弾けるような舞台など最低だと……私にとっては、どこであってもピアノを演奏することが『いつもの事』でした。だから緊張しない」
当たり前過ぎて、緊張するということが分からなかったのだ。
「緊張することで今までとは違う、最高の演奏が出来るという父の言葉の意味も今ならば分かります。それでも、本当に自分は緊張しているのかがわからない時が今でもあるんです……」
だから、今の状態に動揺する。
指先があり得ない程冷たくなっている。どうやっても震えが治らない。ソワソワとして落ち着けない。
これが『緊張する』ということならば、自分は今まで緊張していなかったのではないか。
『いつもの自分の演奏』しか、観客に聞かせられなかったのではないかと思ったら、怖くなった。
そんな自分が、神へ奉納する演奏をしても良いのかと。
「なら、これは良い機会だと思って、確認しましょう」
「え?」
「連弾、良いですか?」
「え? あ、はい」
高耶が舞台を見回すと、分かってますというように、清掃部隊の一人が笑顔で椅子を持ってきた。
「ご当主! 椅子をどうぞ!」
「ありがとうございます」
「はっ!」
間違いなくピアノ用の椅子だった。用意が良い。手作りな気がした。
椅子の場所を調整する。
「ハンガリー舞曲とかどうですか? この間、ゲストでやられたんですよね」
「っ、え、ええ。友人の演奏会で」
友情出演として、演奏会で披露していたというのを、エルラントに先日教えられたのだ。いつか、高耶と修の連弾も聞いてみたいと。
「では、それをお願いします。楽譜も確か書庫に……」
あったはずだから、式の誰かに取ってきてもらおうと思った時。その人がコツコツと靴音を鳴らしながらやってきた。
「お探しなのはコレかな?」
「っ、エルラントさん。どうしたんです?」
現れたのは、どこの企業家かと思うくらいに、シックに決めた男性。モデルも出来るだろう。サングラスが似合いそうで、スラリと足が長い。落ち着いた雰囲気の英国紳士だった。
「瑶姫に聞いてね。酷いじゃないか。私が楽しみにしている、最高の共演を内緒にするなんて」
「……一応、儀式ですから……」
「邪魔はしないよ。さあ、聴かせてくれるかな? ただとは言わないよ。譜めくりは任せてくれ」
「……譜めくり……」
自信満々に、お代は払うというように聞こえたはずが、なぜか譜めくり。謎だ。それだけエルラントも楽しみにしているのだろう。既にテンションが違う。
その証拠に、普段は青い目にしか見えない瞳は、興奮して本来の赤に変わろうとしていた。
「エルラントさん、落ち着いてください」
「おや……失礼」
目を瞑り元に戻すと、楽譜を差し出してくる。それを呆れながらも受け取った。
「少し慣らすだけなので、全部は弾きませんよ?」
「構わないよ。第一主題だけでも聴ければ、私はそれで満足さ」
「……だそうです。彼は後で紹介させてもらいますね。賢さんと修さんのファンなので」
「そ、そうなのですか。ありがとうございます」
ニコニコとご機嫌なエルラント。彼は気にせず、高耶は譜面台を立て、楽譜を開くと高音の方に座る。
「いきますよ」
「っ……」
弾き始めた修は驚いていた。先ほどは全く指が動かなくなってしまったのではないかというほど震えていたのに、今は叫び出したくて堪らないほど高揚している。
理解した。
緊張が高揚に変わることを。
そのまま結局、修と高耶は一曲弾き切った。
「っ、凄かった……」
「ええ……それで、分かったのではないですか?」
「あ……そう……うん。私は今までも、ちゃんと緊張していたみたいだ」
緊張してそれを昇華させる。あまりにも自然に出来ていたために、分からなくなっていたようだ。初心に戻れたようで、修は晴々しい気持ちだった。
「けど、それ以上に……こんな演奏があるんだって知って……っ、嬉しいよ! まだまだ、もっと先がある!」
引退を考えはじめていた修にとって、この演奏は衝撃だった。
「この楽器の力だと思うけど……でも、大地に響く感覚が……音が……感動した。いつか、ここまで響かせられるようになりたい」
音の響き方が違ったのだ。野外ステージで演奏した経験もある修は、その違いに感動した。大地に響かせるとはこういう音かと知った。
そこで、エルラントが笑う。
「いやいや、確かに『神楽器』はそういう力があるけれど、その効果が発揮されるのは、あくまで儀式の時だけだよ。普通に弾いている分には、音の響き方にそれほど影響は出ない。そこは、やはり楽器だからね。奏者の腕が試されるんだよ」
「え? なら……」
これを聞いて、修は目を丸くする。答えを求めるように高耶の方を向いた。
高耶ら頷いて見せる。
「間違いなく、修さんの腕ですよ。困りますよね。最高の演奏というのは……いつになったら満足できるんでしょうね」
「っ、ははっ、そうだね。うん。まったく……私たちは欲深いね」
修は満足気に笑った。
そして、儀式が始まる。観客は今回の騒動に関わった連盟の術者達。もちろん、神楽部隊や清掃部隊もいる。
エルラントも当たり前のような顔で焔泉の横に座っていた。
高耶がバイオリンを構えて修を見ると、嬉しそうに修が頷いた。
曲が流れる。
風に乗り、大地に響かせ、音楽が流れていく。まるで水が溢れて流れていくように、音の奔流が大地に染み込んでいった。
すると、大地がそれに呼応するように、淡い光を放った。
「っ、なんと……」
焔泉達は驚愕する。儀式でこんなことは初めてだ。浸透した神の力が喜びを伝えてくるのだ。
エルラントだけは満足気に微笑み、純粋に高耶と修の演奏に浸る。
「素晴らしい……」
これぞ、神楽器の力と奏者の力が最大限に発揮された光景。
その昔、神に見放された土地に新たな神を誕生させたという奇跡の力。
世界の破滅を願った荒ぶる神の思いさえ変えさせた音。
この演奏は限りなくそれに近いとエルラントは感じていた。
「高耶君ならいつか……」
そうして、エルラントはもう一度浸るように目を閉じたのだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、新章です!
庭は完全な演奏会場になっていた。
「……これは……っ」
修が絶句する。
「すみません……せっかくだからとなぜかこんな大事に……」
高耶は若干、目をそらした。気付いたのは昨日。どうですかと清掃部隊の面々が自信満々に会場を見せてくれたのだ。
そこはどこからどう見ても、野外ステージの立派な演奏会場だった。撤収するのがもったいなくなるほどの出来栄えに、思わず高耶は本心から感心して褒めた。
これに感激した清掃部隊は更に気合いを入れたらしい。照明もきっちり入っていた。
「あ、あのっ……あのピアノは……っ」
三日前には何もなかった場所が大きく様変わりしていたことに動揺していた修だが、唐突に舞台上のピアノに惹き寄せられた。
「特別に奉納用に用意したものです。一度弾いてみてもらえますか?」
「は、はい……っ」
黒いピアノは、一見なんの変哲もないピアノに見えるが、その黒がどこか光を放っているように見えた。
目の前まで来た修が立ち止まる。
「あ、あの……いいんでしょうか? なんだかとても神聖なもののように感じるのですが……」
高耶が蓋を開ける。真っ白な鍵盤は更に輝いているように見えたようだ。
「そうですねえ。形は変えてもらいましたが、れっきとした『神器』です。『神楽器』といいます。一緒に合わせるバイオリンもそうなんですよ」
「……そうなんですか……」
「はい。綺麗ですよね」
「……はい……畏れ多いです……」
心情的には高耶と修でかなり違う。だが、修もプロだ。この楽器の凄さを肌で感じ、畏れ多いが、それよりも触れてみたいと思ったようだ。
「っ……本当に弾いてみても?」
「はい。確認してください。タッチの感じとか調整もできますから」
修は大きく深呼吸してから、ピアノの前の椅子に座った。もう一度慎重に呼吸をしてから、そっと指で鍵盤に触れる。
「っ……」
「大丈夫です。いつもあなたが弾いているピアノだと思ってください」
「あ、はい……っ」
指が震えていた。修はここまで自身の指が震えることなど子どもの頃でもなかったのだ。しばらく経っても音を鳴らせなかった。
それを見て、高耶が修の背にそっと触れる。すると、ビクリと体が震えた。それに修は顔を赤らめ、手を離して両手を合わせると強く握った。
「っ、すみません……こんな……っ、緊張しているようです……っ」
「緊張? ああ。なるほど」
高耶は目を丸くしてから納得し、微笑む。
「プロの方は上手く緊張状態を使いますよね。もしかして、修さんは『緊張しないタイプ』ですか?」
「え、ええ……」
「実は俺もです。でも、全く緊張していないわけじゃないですよね」
「……そう思ってはいますが……」
いけないと思いつつも、もう舞台に慣れてしまって緊張状態になったとしても、すぐに平常心へ持っていけるようになっているのだ。
「賢さんが言っていました。『緊張は高揚に変わる。それが最高の演奏に繋がるのだから、決して、緊張する感覚を捨ててはならない』と」
「っ、そうです……私は子どもの頃から、演奏する時に緊張しませんでした……同じ子どもたちが、手が震えていつも通りに弾けなかったと泣くのを見て嘲笑った私に、父は怒りました」
自分は練習した通りに弾けた。それが誇らしくて、父にも褒めて欲しかった。けれどその時、賢は怒った。
「緊張もせずに弾けるような舞台など最低だと……私にとっては、どこであってもピアノを演奏することが『いつもの事』でした。だから緊張しない」
当たり前過ぎて、緊張するということが分からなかったのだ。
「緊張することで今までとは違う、最高の演奏が出来るという父の言葉の意味も今ならば分かります。それでも、本当に自分は緊張しているのかがわからない時が今でもあるんです……」
だから、今の状態に動揺する。
指先があり得ない程冷たくなっている。どうやっても震えが治らない。ソワソワとして落ち着けない。
これが『緊張する』ということならば、自分は今まで緊張していなかったのではないか。
『いつもの自分の演奏』しか、観客に聞かせられなかったのではないかと思ったら、怖くなった。
そんな自分が、神へ奉納する演奏をしても良いのかと。
「なら、これは良い機会だと思って、確認しましょう」
「え?」
「連弾、良いですか?」
「え? あ、はい」
高耶が舞台を見回すと、分かってますというように、清掃部隊の一人が笑顔で椅子を持ってきた。
「ご当主! 椅子をどうぞ!」
「ありがとうございます」
「はっ!」
間違いなくピアノ用の椅子だった。用意が良い。手作りな気がした。
椅子の場所を調整する。
「ハンガリー舞曲とかどうですか? この間、ゲストでやられたんですよね」
「っ、え、ええ。友人の演奏会で」
友情出演として、演奏会で披露していたというのを、エルラントに先日教えられたのだ。いつか、高耶と修の連弾も聞いてみたいと。
「では、それをお願いします。楽譜も確か書庫に……」
あったはずだから、式の誰かに取ってきてもらおうと思った時。その人がコツコツと靴音を鳴らしながらやってきた。
「お探しなのはコレかな?」
「っ、エルラントさん。どうしたんです?」
現れたのは、どこの企業家かと思うくらいに、シックに決めた男性。モデルも出来るだろう。サングラスが似合いそうで、スラリと足が長い。落ち着いた雰囲気の英国紳士だった。
「瑶姫に聞いてね。酷いじゃないか。私が楽しみにしている、最高の共演を内緒にするなんて」
「……一応、儀式ですから……」
「邪魔はしないよ。さあ、聴かせてくれるかな? ただとは言わないよ。譜めくりは任せてくれ」
「……譜めくり……」
自信満々に、お代は払うというように聞こえたはずが、なぜか譜めくり。謎だ。それだけエルラントも楽しみにしているのだろう。既にテンションが違う。
その証拠に、普段は青い目にしか見えない瞳は、興奮して本来の赤に変わろうとしていた。
「エルラントさん、落ち着いてください」
「おや……失礼」
目を瞑り元に戻すと、楽譜を差し出してくる。それを呆れながらも受け取った。
「少し慣らすだけなので、全部は弾きませんよ?」
「構わないよ。第一主題だけでも聴ければ、私はそれで満足さ」
「……だそうです。彼は後で紹介させてもらいますね。賢さんと修さんのファンなので」
「そ、そうなのですか。ありがとうございます」
ニコニコとご機嫌なエルラント。彼は気にせず、高耶は譜面台を立て、楽譜を開くと高音の方に座る。
「いきますよ」
「っ……」
弾き始めた修は驚いていた。先ほどは全く指が動かなくなってしまったのではないかというほど震えていたのに、今は叫び出したくて堪らないほど高揚している。
理解した。
緊張が高揚に変わることを。
そのまま結局、修と高耶は一曲弾き切った。
「っ、凄かった……」
「ええ……それで、分かったのではないですか?」
「あ……そう……うん。私は今までも、ちゃんと緊張していたみたいだ」
緊張してそれを昇華させる。あまりにも自然に出来ていたために、分からなくなっていたようだ。初心に戻れたようで、修は晴々しい気持ちだった。
「けど、それ以上に……こんな演奏があるんだって知って……っ、嬉しいよ! まだまだ、もっと先がある!」
引退を考えはじめていた修にとって、この演奏は衝撃だった。
「この楽器の力だと思うけど……でも、大地に響く感覚が……音が……感動した。いつか、ここまで響かせられるようになりたい」
音の響き方が違ったのだ。野外ステージで演奏した経験もある修は、その違いに感動した。大地に響かせるとはこういう音かと知った。
そこで、エルラントが笑う。
「いやいや、確かに『神楽器』はそういう力があるけれど、その効果が発揮されるのは、あくまで儀式の時だけだよ。普通に弾いている分には、音の響き方にそれほど影響は出ない。そこは、やはり楽器だからね。奏者の腕が試されるんだよ」
「え? なら……」
これを聞いて、修は目を丸くする。答えを求めるように高耶の方を向いた。
高耶ら頷いて見せる。
「間違いなく、修さんの腕ですよ。困りますよね。最高の演奏というのは……いつになったら満足できるんでしょうね」
「っ、ははっ、そうだね。うん。まったく……私たちは欲深いね」
修は満足気に笑った。
そして、儀式が始まる。観客は今回の騒動に関わった連盟の術者達。もちろん、神楽部隊や清掃部隊もいる。
エルラントも当たり前のような顔で焔泉の横に座っていた。
高耶がバイオリンを構えて修を見ると、嬉しそうに修が頷いた。
曲が流れる。
風に乗り、大地に響かせ、音楽が流れていく。まるで水が溢れて流れていくように、音の奔流が大地に染み込んでいった。
すると、大地がそれに呼応するように、淡い光を放った。
「っ、なんと……」
焔泉達は驚愕する。儀式でこんなことは初めてだ。浸透した神の力が喜びを伝えてくるのだ。
エルラントだけは満足気に微笑み、純粋に高耶と修の演奏に浸る。
「素晴らしい……」
これぞ、神楽器の力と奏者の力が最大限に発揮された光景。
その昔、神に見放された土地に新たな神を誕生させたという奇跡の力。
世界の破滅を願った荒ぶる神の思いさえ変えさせた音。
この演奏は限りなくそれに近いとエルラントは感じていた。
「高耶君ならいつか……」
そうして、エルラントはもう一度浸るように目を閉じたのだ。
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