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第三章 秘伝の弟子
141 毒されました
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美しい湖の中心にあるレストランには、こちらに呼んだ者たち全員が集まっていた。
「高耶さん! お仕事、終わりまして?」
瑶迦が嬉しそうに声をかけてきた。
「はい。沢山ダメ出しをもらいましたが……」
「あら。そんなことありますの?」
苦笑しながら、瑶迦の側のテーブルに案内された高耶。その向かいに座った源龍が説明した。
「高耶君は、当主として受けるべき扱いを受けていなかったようなのです。本来ならば、本家の者に仕事を割り振り、対応すべきところも、高耶君が一人で行っていたようで……」
これが耳に入ったらしい統二は、弾かれたように顔を上げて立ち上がる。
「に、兄さんっ、無理してたってことっ?」
「いや……人に任せるとかよくわからなくてな……出来るからやってただけで……だいたい、俺が頼んだところで動かないだろ」
「……兄さん……父さんたちは脳筋なんだから、張り倒せば問題ないよ……でも、うん。待ってて、僕がやるから。夏休みまでに兄さんに土下座させてみせるよ!」
「……誰だ? 統二に何を吹き込んだ? 瑶迦さんじゃないですよね?」
何が起きたのか。もう少し自信を持てと言ったが、これは違う。脳筋要素が入っている。そこでハッとした。
「……おい、じいさん。統二に何を言った?」
そこには、久しぶりに戻ってきた充雪がいた。
《はっはっはっ。統二は腕力では敵わなくとも、陰陽術はかなりのものだ。それを使えば、あの本家の腑抜け共などぶっ倒せるわ!》
「親や兄相手に何をやらせるつもりだ!」
「兄さんっ。僕はあんな分からず屋の父や兄より、兄さんの方が大事だよ! 気になるなら縁切ってくる!」
本当に何があったのだろうか。酒でも飲んだかとテーブルを確認してしまった。
《おうっ、そうしろ、そうしろ!あいつらのところに帰るくらいなら、ここに居ろっ、色々教えてやる》
「ありがとうございます、充雪様! 僕、兄さんの力になれるよう、頑張ります!」
「……瑶迦さん、統二は今日何を?」
完全に洗脳されている。充雪は高耶が打ち合わせを始めた頃にこちらへ戻ってきたらしい。そこで、何かあったはずだ。
こちらの世界では、充雪の姿が見えるように瑶迦が調整している。そのため、この場でフヨフヨと時折宙に浮く充雪に誰もが驚くはずなのだ。だが、クスクスとそれを見て笑っているだけで、驚いてはいない。
霊に恐怖を覚えているはずの子ども達さえ、全く気にしていなかった。むしろ、食事に夢中だ。
「統二さんなら、充雪様に修行のお願いをしたらしいですわ。もう少し陰陽術だけでなく、体も動かせるようにするのだそうですよ」
「……なるほど……」
とはいえ、悪いことではない。それに、高耶のためと言っているのだ。嬉しいとも思う。
「高耶君のことをちゃんと知っていれば、ああなるよ。本家の人にも、高耶君の仕事ぶりとか見れるようにするといいかもね」
「……そんな余裕はないですよ……」
そうして、統二のやる気を十分に感じながら、高耶は今夜のことについて話した。
「儀式の様子を、こちらで見られるようにします。ライブ中継のようにはできませんが、全体像は見えるはずです」
子ども達のことも考えて、すぐに休めるよう、こちらへ映像として見えるようにすることにしたのだ。
「俺は現場の近くに行きますので、見終わったらちゃんと休んでください。次の日の朝は月曜日ですからね」
確認すれば、全員見たいと言う。こちらの準備を済ませ、夕方、高耶と源龍は現場へ向かった。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
「高耶さん! お仕事、終わりまして?」
瑶迦が嬉しそうに声をかけてきた。
「はい。沢山ダメ出しをもらいましたが……」
「あら。そんなことありますの?」
苦笑しながら、瑶迦の側のテーブルに案内された高耶。その向かいに座った源龍が説明した。
「高耶君は、当主として受けるべき扱いを受けていなかったようなのです。本来ならば、本家の者に仕事を割り振り、対応すべきところも、高耶君が一人で行っていたようで……」
これが耳に入ったらしい統二は、弾かれたように顔を上げて立ち上がる。
「に、兄さんっ、無理してたってことっ?」
「いや……人に任せるとかよくわからなくてな……出来るからやってただけで……だいたい、俺が頼んだところで動かないだろ」
「……兄さん……父さんたちは脳筋なんだから、張り倒せば問題ないよ……でも、うん。待ってて、僕がやるから。夏休みまでに兄さんに土下座させてみせるよ!」
「……誰だ? 統二に何を吹き込んだ? 瑶迦さんじゃないですよね?」
何が起きたのか。もう少し自信を持てと言ったが、これは違う。脳筋要素が入っている。そこでハッとした。
「……おい、じいさん。統二に何を言った?」
そこには、久しぶりに戻ってきた充雪がいた。
《はっはっはっ。統二は腕力では敵わなくとも、陰陽術はかなりのものだ。それを使えば、あの本家の腑抜け共などぶっ倒せるわ!》
「親や兄相手に何をやらせるつもりだ!」
「兄さんっ。僕はあんな分からず屋の父や兄より、兄さんの方が大事だよ! 気になるなら縁切ってくる!」
本当に何があったのだろうか。酒でも飲んだかとテーブルを確認してしまった。
《おうっ、そうしろ、そうしろ!あいつらのところに帰るくらいなら、ここに居ろっ、色々教えてやる》
「ありがとうございます、充雪様! 僕、兄さんの力になれるよう、頑張ります!」
「……瑶迦さん、統二は今日何を?」
完全に洗脳されている。充雪は高耶が打ち合わせを始めた頃にこちらへ戻ってきたらしい。そこで、何かあったはずだ。
こちらの世界では、充雪の姿が見えるように瑶迦が調整している。そのため、この場でフヨフヨと時折宙に浮く充雪に誰もが驚くはずなのだ。だが、クスクスとそれを見て笑っているだけで、驚いてはいない。
霊に恐怖を覚えているはずの子ども達さえ、全く気にしていなかった。むしろ、食事に夢中だ。
「統二さんなら、充雪様に修行のお願いをしたらしいですわ。もう少し陰陽術だけでなく、体も動かせるようにするのだそうですよ」
「……なるほど……」
とはいえ、悪いことではない。それに、高耶のためと言っているのだ。嬉しいとも思う。
「高耶君のことをちゃんと知っていれば、ああなるよ。本家の人にも、高耶君の仕事ぶりとか見れるようにするといいかもね」
「……そんな余裕はないですよ……」
そうして、統二のやる気を十分に感じながら、高耶は今夜のことについて話した。
「儀式の様子を、こちらで見られるようにします。ライブ中継のようにはできませんが、全体像は見えるはずです」
子ども達のことも考えて、すぐに休めるよう、こちらへ映像として見えるようにすることにしたのだ。
「俺は現場の近くに行きますので、見終わったらちゃんと休んでください。次の日の朝は月曜日ですからね」
確認すれば、全員見たいと言う。こちらの準備を済ませ、夕方、高耶と源龍は現場へ向かった。
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