139 / 419
第三章 秘伝の弟子
139 笑えるように
しおりを挟む
賢也と久史が学校に行けない理由は二つ。一つは学校の教室で恐怖の感情を知ったためだ。彼らは足がすくんで動けないという経験をはじめてした。
その時はそれが恐怖であるとは思わなかっただろう。混乱もあったのだから。だが、一度家に帰って思い出してしまうと落ち着かなくなる。
学校自体が恐怖の対象になってしまったのだ。
ただでさえ、二人はコックリさんをやっていた。それに興味があったということは、学校の七不思議など、怪談も耳に入っていただろう。
そういったものも混ざり、夢で見るようになる。こういう場所を限定した怪談が基にあると、夢ではその場所から出られなくなることが多い。
出られないという焦りの感情は強く残り、更に学校に行ったら出られなくなるのではないかと思うようになる。
不思議な体験をした後なのだ。普通はあり得ないことも『もしかしたら』になってしまう。子どもはそれが特に大きくなる。
瑶迦の創り出した世界を見て、子どもらしく目を輝かせている二人を見る。
ここの印象に問題はないようだ。ただ、高耶は案内しながらも、建物の中ではやはり落ち着かないだろうと考えていた。そこに、人化した珀豪と天柳が迎えに来る。
「あっ、ハクちゃ~ん!」
「テンねえさまっ」
「ねえさまたち、ふたりでどっかいくの?」
三人娘が抱き着いて行った。天柳がいつの間にか『ねえさま』呼びになっていることを気にしながら目を向けると、優希を抱き上げた珀豪が答えた。
《主よ。草原にテントを張った。そちらへ案内しよう》
《この子達はお任せくださいな。先生方は良ければテントの側にバンガローを用意しましたから、そちらに》
優希達もいるのならば大丈夫だろう。
《既にバンガローの方には、統二達年長の子ども達が入っている。主は今夜の打ち合わせもあろう》
「そうだな……ん? 俊哉や伶と津もいるのか?」
珀豪が年長と言ったら俊哉も入るかもしれない。
《うむ。大人達はホテルだ。統二は連れて行かれるか?》
やはり、俊哉は大人には入らなかったらしい。とはいえ、高耶は口にはしないが、俊哉の面倒見の良さを知っている。子ども達だけでも、那津や時島の負担にはならないだろう。何よりも珀豪と天柳がいれば問題はない。
「せっかく拓真とも馴染んできているんだ。伶や津と付き合うのも良い経験だしな。置いて行く。大人ばかりの打ち合わせに参加は、居心地悪いだろうしな。珀豪と天柳はこのまま子ども達と先生を頼む」
《承知した》
《お任せくださいな》
そこで、賢也と久史がこちらを見つめているのに気付いた。
高耶は二人を安心させるように頭に手を乗せる。さすがに六年生の男の子だ。屈み込んで目を合わせる必要はない。
「ここに居れば何も心配することはない。先生達や、あの二人が守ってくれるからな。今日一日、めいっぱい遊んで、疲れたらその辺に転がって寝ても良い。きっと気持ちいいぞ」
「お兄さんは……?」
不安そうな賢也の言葉。久史も同じ気持ちらしい。
「昼過ぎまでには戻って来る。大事な仕事でな。二人がもう怖い夢を見なくても良いようにするお祓いの打ち合わせなんだ」
「っ……おはらい……おねがいします」
「おねがいします」
自分たちのためだと分かり、小さくだが、二人揃って頭を下げた。その頭を撫でて笑みを見せる。
「任された。賢也も久史もここでしっかり楽しんでくれよ? 楽しいって笑えたら、もう怖いものは寄って来ない。あいつらは楽しそうな笑い声が嫌いだからな。思いっきり遊んでおいで」
「楽しめばいいの?」
「そうだ」
賢也は目を丸くしていた。笑い声でもダメなものはいるが、そんな凶悪なものは寄って行かなければいいので今は口にしない。
「笑える……かな……」
一方、久史は笑い方を忘れてしまったというように不安そうだ。
「無理に笑わなくていい。久史、ここを見てどう思った?」
「キレイ……だと思った」
「なら、きっと笑える。景色が綺麗だと思ったらゆっくり深呼吸してみな。綺麗なものが体の中に染み込んでくる。代わりに悪いものが出て行くから」
それを聞いて、久史は景色を見てゆっくり深呼吸をした。目に見えて、肩の力が抜けたのがわかった。
「そうやって綺麗なものでいっぱいになったら声は出なくても、もう笑えるようになってるものだ。ほら、ちょっと笑えてる」
「っ……うん」
自覚できれば大丈夫だろう。
「料理が綺麗だと思ったらゆっくり味わうんだぞ。お姉さんが綺麗だと思ったら元気に挨拶だ。分かったか?」
「「っ、ふふっ」」
これを聞いて時島と那津が吹き出していた。それを見て、久史だけでなく賢也も笑う。
「うん。わかった」
「よし。なら、行っておいで」
皆を見送り、高耶は源龍に声をかけようと、一人ホテルへ戻る。
その道すがら、常盤が小鳥の姿から人化して空から降りてきた。
「何かあったか?」
《安倍の当主殿より連絡がありました。今夜の鎮魂の儀を任せて欲しいとのことです》
「珍しいな……瑶迦さんはこのこと知っているか?」
《はい。瑶姫が仰るには、あの地の水神に縁があるのではないかと》
「そうか……まあ、やってもらえるなら有り難いことだ」
連盟に関係のある神職に付く者に、こういった儀式は頼むことになっている。だが、焔泉がやってくれるというのならばそれはそれで、頼みに行く面倒がなくて良い。
「じいさんの方はどうなっている?」
《最後の調整がもうじきに終了となります》
「予定より早いな」
充雪はあの一件から学校の方に詰めている。落ち武者達が出てきた穴は塞いだとはいえ、一度空いた場所は薄くなる。それも違う土地と繋がったために、土地神の力がそれに反発して過剰になっていた。
弱らされていた神が、それに反発しようと力を一気に使う。それが負担となってまた弱らないよう、それらの調整役として充雪が当たっていた。
土地神が落ち着くまで力のバランスを取り、塞いだ穴を補強していく。そのための力は当然のように高耶から持って行っている。
《早く終えてこちらに来たいと仰っておりました》
「子どもの宿題か……まあいい。早いに越したことはない。不備はないな?」
《今のところは》
「最後の点検はお前に任せる」
《承知いたしました》
頭を下げ、常盤は再び小鳥になって飛んでいった。充雪のところへ向かったのだ。
どちらかといえば、かなり大雑把な充雪は、細かいところを見落としがちだ。だが、常盤ならば隅々まで目が届く。これで安心だ。
「もしかしたら、じいさんの方が早く帰ってくるかもな……」
楽しそうな子ども達の声が微かに響いてくる。今まで仕事に邁進することが当たり前だった高耶は、珍しく休息という誘惑に負けそうになっていた。これでは充雪のことは言えない。
修行は辛いものもあり、逃げ出したいと思うこともあった。それをぐっと堪えることも修行の一つだ。だから、怠けそうになる今の自分を知って、自嘲気味に笑った。
「甘くなったのか、余裕ができたのか……難しいところだな」
自身の変化に戸惑いながらも、仕事へと意識を切り替える高耶だった。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
その時はそれが恐怖であるとは思わなかっただろう。混乱もあったのだから。だが、一度家に帰って思い出してしまうと落ち着かなくなる。
学校自体が恐怖の対象になってしまったのだ。
ただでさえ、二人はコックリさんをやっていた。それに興味があったということは、学校の七不思議など、怪談も耳に入っていただろう。
そういったものも混ざり、夢で見るようになる。こういう場所を限定した怪談が基にあると、夢ではその場所から出られなくなることが多い。
出られないという焦りの感情は強く残り、更に学校に行ったら出られなくなるのではないかと思うようになる。
不思議な体験をした後なのだ。普通はあり得ないことも『もしかしたら』になってしまう。子どもはそれが特に大きくなる。
瑶迦の創り出した世界を見て、子どもらしく目を輝かせている二人を見る。
ここの印象に問題はないようだ。ただ、高耶は案内しながらも、建物の中ではやはり落ち着かないだろうと考えていた。そこに、人化した珀豪と天柳が迎えに来る。
「あっ、ハクちゃ~ん!」
「テンねえさまっ」
「ねえさまたち、ふたりでどっかいくの?」
三人娘が抱き着いて行った。天柳がいつの間にか『ねえさま』呼びになっていることを気にしながら目を向けると、優希を抱き上げた珀豪が答えた。
《主よ。草原にテントを張った。そちらへ案内しよう》
《この子達はお任せくださいな。先生方は良ければテントの側にバンガローを用意しましたから、そちらに》
優希達もいるのならば大丈夫だろう。
《既にバンガローの方には、統二達年長の子ども達が入っている。主は今夜の打ち合わせもあろう》
「そうだな……ん? 俊哉や伶と津もいるのか?」
珀豪が年長と言ったら俊哉も入るかもしれない。
《うむ。大人達はホテルだ。統二は連れて行かれるか?》
やはり、俊哉は大人には入らなかったらしい。とはいえ、高耶は口にはしないが、俊哉の面倒見の良さを知っている。子ども達だけでも、那津や時島の負担にはならないだろう。何よりも珀豪と天柳がいれば問題はない。
「せっかく拓真とも馴染んできているんだ。伶や津と付き合うのも良い経験だしな。置いて行く。大人ばかりの打ち合わせに参加は、居心地悪いだろうしな。珀豪と天柳はこのまま子ども達と先生を頼む」
《承知した》
《お任せくださいな》
そこで、賢也と久史がこちらを見つめているのに気付いた。
高耶は二人を安心させるように頭に手を乗せる。さすがに六年生の男の子だ。屈み込んで目を合わせる必要はない。
「ここに居れば何も心配することはない。先生達や、あの二人が守ってくれるからな。今日一日、めいっぱい遊んで、疲れたらその辺に転がって寝ても良い。きっと気持ちいいぞ」
「お兄さんは……?」
不安そうな賢也の言葉。久史も同じ気持ちらしい。
「昼過ぎまでには戻って来る。大事な仕事でな。二人がもう怖い夢を見なくても良いようにするお祓いの打ち合わせなんだ」
「っ……おはらい……おねがいします」
「おねがいします」
自分たちのためだと分かり、小さくだが、二人揃って頭を下げた。その頭を撫でて笑みを見せる。
「任された。賢也も久史もここでしっかり楽しんでくれよ? 楽しいって笑えたら、もう怖いものは寄って来ない。あいつらは楽しそうな笑い声が嫌いだからな。思いっきり遊んでおいで」
「楽しめばいいの?」
「そうだ」
賢也は目を丸くしていた。笑い声でもダメなものはいるが、そんな凶悪なものは寄って行かなければいいので今は口にしない。
「笑える……かな……」
一方、久史は笑い方を忘れてしまったというように不安そうだ。
「無理に笑わなくていい。久史、ここを見てどう思った?」
「キレイ……だと思った」
「なら、きっと笑える。景色が綺麗だと思ったらゆっくり深呼吸してみな。綺麗なものが体の中に染み込んでくる。代わりに悪いものが出て行くから」
それを聞いて、久史は景色を見てゆっくり深呼吸をした。目に見えて、肩の力が抜けたのがわかった。
「そうやって綺麗なものでいっぱいになったら声は出なくても、もう笑えるようになってるものだ。ほら、ちょっと笑えてる」
「っ……うん」
自覚できれば大丈夫だろう。
「料理が綺麗だと思ったらゆっくり味わうんだぞ。お姉さんが綺麗だと思ったら元気に挨拶だ。分かったか?」
「「っ、ふふっ」」
これを聞いて時島と那津が吹き出していた。それを見て、久史だけでなく賢也も笑う。
「うん。わかった」
「よし。なら、行っておいで」
皆を見送り、高耶は源龍に声をかけようと、一人ホテルへ戻る。
その道すがら、常盤が小鳥の姿から人化して空から降りてきた。
「何かあったか?」
《安倍の当主殿より連絡がありました。今夜の鎮魂の儀を任せて欲しいとのことです》
「珍しいな……瑶迦さんはこのこと知っているか?」
《はい。瑶姫が仰るには、あの地の水神に縁があるのではないかと》
「そうか……まあ、やってもらえるなら有り難いことだ」
連盟に関係のある神職に付く者に、こういった儀式は頼むことになっている。だが、焔泉がやってくれるというのならばそれはそれで、頼みに行く面倒がなくて良い。
「じいさんの方はどうなっている?」
《最後の調整がもうじきに終了となります》
「予定より早いな」
充雪はあの一件から学校の方に詰めている。落ち武者達が出てきた穴は塞いだとはいえ、一度空いた場所は薄くなる。それも違う土地と繋がったために、土地神の力がそれに反発して過剰になっていた。
弱らされていた神が、それに反発しようと力を一気に使う。それが負担となってまた弱らないよう、それらの調整役として充雪が当たっていた。
土地神が落ち着くまで力のバランスを取り、塞いだ穴を補強していく。そのための力は当然のように高耶から持って行っている。
《早く終えてこちらに来たいと仰っておりました》
「子どもの宿題か……まあいい。早いに越したことはない。不備はないな?」
《今のところは》
「最後の点検はお前に任せる」
《承知いたしました》
頭を下げ、常盤は再び小鳥になって飛んでいった。充雪のところへ向かったのだ。
どちらかといえば、かなり大雑把な充雪は、細かいところを見落としがちだ。だが、常盤ならば隅々まで目が届く。これで安心だ。
「もしかしたら、じいさんの方が早く帰ってくるかもな……」
楽しそうな子ども達の声が微かに響いてくる。今まで仕事に邁進することが当たり前だった高耶は、珍しく休息という誘惑に負けそうになっていた。これでは充雪のことは言えない。
修行は辛いものもあり、逃げ出したいと思うこともあった。それをぐっと堪えることも修行の一つだ。だから、怠けそうになる今の自分を知って、自嘲気味に笑った。
「甘くなったのか、余裕ができたのか……難しいところだな」
自身の変化に戸惑いながらも、仕事へと意識を切り替える高耶だった。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
175
お気に入りに追加
1,490
あなたにおすすめの小説

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる