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第三章 秘伝の弟子
088 懐かしい場所
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2019. 1. 2
**********
高耶はきっちり昼からの講義を終えた後、優希の小学校へ来ていた。これにはなぜか、いい笑顔を浮かべた俊哉もついてきている。
「小学校とか懐かしー」
「……不審者に間違えられるからキョロキョロすんな」
下校時間前だ。門はまだ開いていない。そこで親でもない若い男が学校の中を覗き込んだりしているのだから、怪しまれるのは目に見えていた。
「だってさぁ、小学校に来るなんて機会、もうねぇじゃん」
「まあな……」
ここで子どもが出来たらなんて言葉は口にすべきではないとグッと我慢した。しかし、既に気づいていたらしい。
「そうかっ、キショウさんと子どもをっ……」
「その顔危ねぇよ」
完全に夢見ている目だ。こんな小学校の門の前でしてくれるなと頭を叩いておいた。
「だってよぉ、こんなん初恋以来なんだぜ~
……すっげぇ幸せだ」
「……」
「あっ、高耶もしかして、初恋もまだとか言わねぇ?」
「悪いかよ。俺は仕事に生きてんだ」
「マジで仕事に生きてる奴の言葉って重いのな……」
若干引いているように思えるが、どうやら落ち着いてくれたらしい。
高耶は門から離れ、校舎のある北の方へ歩く。感覚を研ぎ澄ませ、異常がないかを確認していく。
ピタリと足を止めて見つめる先は校舎の裏の角。そこに小さな社があった。
高耶は小さな声で呟く。
「こちらから失礼いたします」
それだけで声が届いた。
《構……な……っ、じゅ……師か》
ノイズが混じるように声が途切れるのは、神の力が落ちている証拠だ。術師かと問われ頷く。
「はい。若輩者ですが、何かお力になれればと……穴が開いていますね……」
《そう、っ……まだ……、者はいな……が、影響……けてい……よう……っ》
まだ捕まる者はいないが、影響は受けているということらしい。高耶は聞こえる声と受ける力の感覚から正確に言葉を理解できていた。
「私の式達が入ること、許していただけますか」
《い……だろ……。たの……》
「ありがとうございます」
頼むとの了承は取れた。
「なぁ、高耶? 何してんの?」
「……仕事だって言っただろ」
「そうだっけ?」
「……」
そうだ。こいつは今、色ボケ中だったんだと改めて理解する。
「それよりさぁ、俺思い出したんだけど、ここの学校に俺らが小学校の時に担任だった、時……時なんだっけ、小学校の教師にしては凶悪顔の」
「……時島先生か?」
「それそれっ、じいちゃんが新聞で異動のを見たって聞いたんだよ」
時島先生には、俊哉と同じクラスになった時に一度、別になった時に一度担任になり、小学校で高耶は二年世話になった。
「確か学年主任っぽかったよな……」
「そうそう。中学校の生徒指導でもできそうな凶悪な感じなのになっ。そんで、今ここの教頭だってよ」
「へぇ……」
確か、二度目の担任の時がちょうど十才になる年だ。父を亡くした時に担任だったのが時島だった。
当主になるのに必死で、あまり記憶がない。今になって思えば、かなり心配させていたと思う。
「なぁなぁ高耶っ」
「……なんだよ」
唐突に袖を引っ張る俊哉を、邪険に眉を寄せて振り払いながら目を向ければ指を差していた。
そして、その先に時島がいたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
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高耶はきっちり昼からの講義を終えた後、優希の小学校へ来ていた。これにはなぜか、いい笑顔を浮かべた俊哉もついてきている。
「小学校とか懐かしー」
「……不審者に間違えられるからキョロキョロすんな」
下校時間前だ。門はまだ開いていない。そこで親でもない若い男が学校の中を覗き込んだりしているのだから、怪しまれるのは目に見えていた。
「だってさぁ、小学校に来るなんて機会、もうねぇじゃん」
「まあな……」
ここで子どもが出来たらなんて言葉は口にすべきではないとグッと我慢した。しかし、既に気づいていたらしい。
「そうかっ、キショウさんと子どもをっ……」
「その顔危ねぇよ」
完全に夢見ている目だ。こんな小学校の門の前でしてくれるなと頭を叩いておいた。
「だってよぉ、こんなん初恋以来なんだぜ~
……すっげぇ幸せだ」
「……」
「あっ、高耶もしかして、初恋もまだとか言わねぇ?」
「悪いかよ。俺は仕事に生きてんだ」
「マジで仕事に生きてる奴の言葉って重いのな……」
若干引いているように思えるが、どうやら落ち着いてくれたらしい。
高耶は門から離れ、校舎のある北の方へ歩く。感覚を研ぎ澄ませ、異常がないかを確認していく。
ピタリと足を止めて見つめる先は校舎の裏の角。そこに小さな社があった。
高耶は小さな声で呟く。
「こちらから失礼いたします」
それだけで声が届いた。
《構……な……っ、じゅ……師か》
ノイズが混じるように声が途切れるのは、神の力が落ちている証拠だ。術師かと問われ頷く。
「はい。若輩者ですが、何かお力になれればと……穴が開いていますね……」
《そう、っ……まだ……、者はいな……が、影響……けてい……よう……っ》
まだ捕まる者はいないが、影響は受けているということらしい。高耶は聞こえる声と受ける力の感覚から正確に言葉を理解できていた。
「私の式達が入ること、許していただけますか」
《い……だろ……。たの……》
「ありがとうございます」
頼むとの了承は取れた。
「なぁ、高耶? 何してんの?」
「……仕事だって言っただろ」
「そうだっけ?」
「……」
そうだ。こいつは今、色ボケ中だったんだと改めて理解する。
「それよりさぁ、俺思い出したんだけど、ここの学校に俺らが小学校の時に担任だった、時……時なんだっけ、小学校の教師にしては凶悪顔の」
「……時島先生か?」
「それそれっ、じいちゃんが新聞で異動のを見たって聞いたんだよ」
時島先生には、俊哉と同じクラスになった時に一度、別になった時に一度担任になり、小学校で高耶は二年世話になった。
「確か学年主任っぽかったよな……」
「そうそう。中学校の生徒指導でもできそうな凶悪な感じなのになっ。そんで、今ここの教頭だってよ」
「へぇ……」
確か、二度目の担任の時がちょうど十才になる年だ。父を亡くした時に担任だったのが時島だった。
当主になるのに必死で、あまり記憶がない。今になって思えば、かなり心配させていたと思う。
「なぁなぁ高耶っ」
「……なんだよ」
唐突に袖を引っ張る俊哉を、邪険に眉を寄せて振り払いながら目を向ければ指を差していた。
そして、その先に時島がいたのだ。
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