秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
上 下
58 / 409
第二章 秘伝の当主

058 霊界でも調査中です

しおりを挟む
2018. 6. 6

**********

雛柏教授から借り受けた資料の解読など、高耶はここ数日、ずっと屋内に閉じこもっていた。その成果もあり、ようやくその記述を見つけることができた。

ここまで資料を読んではそこに記載されている資料を探し、またそこに書かれた資料を探すという地味で気の遠くなるような作業を続けていたので、たった一つでも有力な情報を見つけられたことに満足していた。

「それで、じいさん。霊界の方で情報を得られたか?」

その記述を裏付けるために、充雪には霊界に行ってもらっていたのだ。

《いや、まだだ……霊界で口が利ける奴で、長生きしてんのはそうそう見つけられんくてな……》
「あ~……なるほど。簡単じゃなかったか」

そうそう上手くはいかないらしいと分かり、肩を落とす。

《けどよぉ。言われて思い出したんだが、霊界の中に封印された場所があるらしいんだ。そこが怪しいな》
「可能性としては高いな……そこが鬼の国か……」

資料から分かったのは、鬼が暮らす鬼だけの国が存在したということ。

その場所は、どこよりも美しい土地であり、夜が支配していたという。そして、鬼は愛らしい子どもの姿をしていたらしい。

「あの時解放された鬼は子どもの姿だった。あれが本来の姿ってことなのかもしれない」
《なら、どうやって国になるほど子どもを殖やしてたんだ?》
「鬼も妖だ。霊的な力が集まって自然発生するものってことだ」

特異な力の塊が生まれなければ鬼となることはないはずではあるが、人の中から生まれるような生まれ方はしない。

「資料の一つに『鬼は水晶から生まれる』というのがあった。それが一番、なんでか納得できた」

高耶は、幾度と見た夢の中で、クリスタルの輝く木を見た。だからかもしれない。とはいえ、ただの勘のようなもので、実際のところは分からない。

《ん? そんなら、鬼渡は?》

鬼渡家は鬼の血を引いている。

「恐らくだが……鬼の子どもを宿すクリスタル……水晶の代わりに女の体に宿ったんだろう。人の子が宿るように……そうして人と鬼が交わった。昔、霊界に異端者を追放する儀式があったらしくてな……多分、それだ」
《それは俺も知らねぇな……どんだけ昔だ?》
「少なくとも、秘伝家が参入する前だ」

これを知ってから、気になっている。鬼渡の目的とは何なのか。

異端者として霊界に送られたのなら、そうして送った相手は憎いだろう。もしかしたら、彼女達はこちら側の存在全てを憎んでいるかもしれない。

特に、彼女達が味方として鬼を封じている陰陽師達を憎むだろう。そして、鬼を殺し得る力を持つ高耶を知ったなら、真っ向から敵対するかもしれない。

「しばらくは鬼に手を出さないつもりだ。相手の事情も知らず、敵対するってのは、俺たちの主義に反する」
《だなっ。おっし、聞き込み行ってくらぁ》
「お、おい。門を開けなきゃならんだろうがっ」

充雪の空回りを止めながら、高耶も気合いを入れるのだった。

**********

読んでくださりありがとうございます◎


敵か味方かではなく
なぜ敵なのかまではっきりさせたいんです。


次回、水曜13日0時です。
よろしくお願いします◎
しおりを挟む
感想 539

あなたにおすすめの小説

聖人様は自重せずに人生を楽しみます!

紫南
ファンタジー
前世で多くの国々の王さえも頼りにし、慕われていた教皇だったキリアルートは、神として迎えられる前に、人としての最後の人生を与えられて転生した。 人生を楽しむためにも、少しでも楽に、その力を発揮するためにもと生まれる場所を神が選んだはずだったのだが、早々に送られたのは問題の絶えない辺境の地だった。これは神にも予想できなかったようだ。 そこで前世からの性か、周りが直面する問題を解決していく。 助けてくれるのは、情報通で特異技能を持つ霊達や従魔達だ。キリアルートの役に立とうと時に暴走する彼らに振り回されながらも楽しんだり、当たり前のように前世からの能力を使うキリアルートに、お供達が『ちょっと待て』と言いながら、世界を見聞する。 裏方として人々を支える生き方をしてきた聖人様は、今生では人々の先頭に立って駆け抜けて行く! 『好きに生きろと言われたからには目一杯今生を楽しみます!』 ちょっと腹黒なところもある元聖人様が、お供達と好き勝手にやって、周りを驚かせながらも世界を席巻していきます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜

紫南
ファンタジー
◇◇◇異世界冒険、ギルド職員から人生相談までなんでもござれ!◇◇◇ 『ふぁんたじーってやつか?』 定年し、仕事を退職してから十年と少し。 宗徳(むねのり)は妻、寿子(ひさこ)の提案でシルバー派遣の仕事をすると決めた。 しかし、その内容は怪しいものだった。 『かつての経験を生かし、異世界を救う仕事です!』 そんな胡散臭いチラシを見せられ、半信半疑で面接に向かう。 ファンタジーも知らない熟年夫婦が異世界で活躍!? ーー勇者じゃないけど、もしかして最強!? シルバー舐めんなよ!! 元気な老夫婦の異世界お仕事ファンタジー開幕!!

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

処理中です...