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第一章 秘伝のお仕事
050 お祭りって楽しいです
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玄関から優希と珀豪、綺翔を連れて出た先はお馴染みの公民館のドアだ。
「すごい、すごい。おウチの外じゃない!」
「内緒だからな?」
「うん!」
そんな元気一杯の優希と手を繋ぐのは珀豪だ。
《あまり、はしゃいで一人で歩いてはいかんぞ。今日は人が多いからな》
「はぁい」
珀豪の髪色は白に近い銀に見えるが、若い父と娘にしか見えない。高耶は苦笑しながら、表へと向かう。
「先ずは仕事仲間に挨拶してくる。優希も来るか?」
「いく!」
当然だろうと返事をする優希。その後ろには綺翔がそれとなく周りを気にしながらついてきている。この辺りはまだ人が少ないのだが、珀豪と綺翔は優希を守ろうと気合い十分だ。
「なら行くぞ。ただ、少しごたついているだろうから、あまり動き回らないようにな」
「ハクちゃんからはなれないよ」
それならばと高耶は公民館の中へ入った。これから昼食なのか、中にいた神楽部隊は、丁度休憩中だったらしい。
「おお、御当主」
「お疲れ様です。これ差し入れです」
「ありがとうございます! おや? そちらのお嬢様は?」
嬉しそうに手土産を受け取った、ここのまとめ役が優希に目を止める。
「妹の優希です。両親が出かけてしまったので、ここでお祭りを楽しもうかと」
「そうでしたか。はじめまして、お兄様にお世話になっております。この楽団を率いるイチョウと申します」
「はじめまして。ユウキです」
今日は機嫌が良いので、優希もはっきりと挨拶をした。隣に珀豪や綺翔がいるからかもしれない。
「これはまた元気で可愛らしい。さぁ、お茶でもどうですかな?」
「いえ、お邪魔になってもいけませんので。この後、屋台でお昼をと思っていますし」
何より、高耶がここに居座っては彼らもやり難いだろう。ただし、これは高耶の見解で、彼らは寧ろずっと見ていてもらっても良かった。それだけ高耶を尊敬し、慕っているのだ。
とはいえ、彼らは無理に引き止めたりしない。高耶の仕事はもう自分達に引き継がれているのだから。だが、彼らにも望みはある。
「そうですか。お腹が空いているでしょう。どうぞ楽しんできてください。それで……今晩の神楽は観ていただけるので?」
「はい。よろしくお願いします」
「お任せください。皆、御当主様も観てくださるそうだ。張り切っていこう!」
「「「はい!」」」
気合い十分な様子に、高耶は少々目を丸くする。しかし、すぐに笑みを見せた。
「楽しみにしています。では、失礼します」
「しつれいしますっ」
優希も一緒に頭を下げ、公民館を後にした。
町を歩いて行くと、神社に近づくにつれて屋台が増えていく。
「あっ、やきそばっ。やきそばたべたい!」
「そうだな。珀豪と綺翔もどうだ?」
《いただこう》
《……やきそば……?》
「ショウちゃん、やきそばたべたことないの?」
《……ない……》
そんな話をしている間にも高耶は焼きそばをふたパック手に入れる。
《我らは特に食事は必要ないからな》
「ふぅ~ん。でもいっしょにたべたいなぁ」
《うむ。食べよう。食べられないわけではないのでな》
「あっちに座れそうな場所がある。行くか」
「うん」
石段の端に腰掛け、やきそばを食べる。珀豪は優希が食べるのを助けながら一緒に食べていた。
「ほら、綺翔。半分残してくれ」
《……諾》
もそもそと食べはじめた綺翔。気に入ったのだろう。いつもより瞳が輝いていた。高耶はその様子に微笑むと、周りの屋台に目を向ける。
「優希、フランクフルトはどうだ?」
「たべる!!」
「待ってろ」
そうして、高耶達は屋台を十分に楽しんだのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「すごい、すごい。おウチの外じゃない!」
「内緒だからな?」
「うん!」
そんな元気一杯の優希と手を繋ぐのは珀豪だ。
《あまり、はしゃいで一人で歩いてはいかんぞ。今日は人が多いからな》
「はぁい」
珀豪の髪色は白に近い銀に見えるが、若い父と娘にしか見えない。高耶は苦笑しながら、表へと向かう。
「先ずは仕事仲間に挨拶してくる。優希も来るか?」
「いく!」
当然だろうと返事をする優希。その後ろには綺翔がそれとなく周りを気にしながらついてきている。この辺りはまだ人が少ないのだが、珀豪と綺翔は優希を守ろうと気合い十分だ。
「なら行くぞ。ただ、少しごたついているだろうから、あまり動き回らないようにな」
「ハクちゃんからはなれないよ」
それならばと高耶は公民館の中へ入った。これから昼食なのか、中にいた神楽部隊は、丁度休憩中だったらしい。
「おお、御当主」
「お疲れ様です。これ差し入れです」
「ありがとうございます! おや? そちらのお嬢様は?」
嬉しそうに手土産を受け取った、ここのまとめ役が優希に目を止める。
「妹の優希です。両親が出かけてしまったので、ここでお祭りを楽しもうかと」
「そうでしたか。はじめまして、お兄様にお世話になっております。この楽団を率いるイチョウと申します」
「はじめまして。ユウキです」
今日は機嫌が良いので、優希もはっきりと挨拶をした。隣に珀豪や綺翔がいるからかもしれない。
「これはまた元気で可愛らしい。さぁ、お茶でもどうですかな?」
「いえ、お邪魔になってもいけませんので。この後、屋台でお昼をと思っていますし」
何より、高耶がここに居座っては彼らもやり難いだろう。ただし、これは高耶の見解で、彼らは寧ろずっと見ていてもらっても良かった。それだけ高耶を尊敬し、慕っているのだ。
とはいえ、彼らは無理に引き止めたりしない。高耶の仕事はもう自分達に引き継がれているのだから。だが、彼らにも望みはある。
「そうですか。お腹が空いているでしょう。どうぞ楽しんできてください。それで……今晩の神楽は観ていただけるので?」
「はい。よろしくお願いします」
「お任せください。皆、御当主様も観てくださるそうだ。張り切っていこう!」
「「「はい!」」」
気合い十分な様子に、高耶は少々目を丸くする。しかし、すぐに笑みを見せた。
「楽しみにしています。では、失礼します」
「しつれいしますっ」
優希も一緒に頭を下げ、公民館を後にした。
町を歩いて行くと、神社に近づくにつれて屋台が増えていく。
「あっ、やきそばっ。やきそばたべたい!」
「そうだな。珀豪と綺翔もどうだ?」
《いただこう》
《……やきそば……?》
「ショウちゃん、やきそばたべたことないの?」
《……ない……》
そんな話をしている間にも高耶は焼きそばをふたパック手に入れる。
《我らは特に食事は必要ないからな》
「ふぅ~ん。でもいっしょにたべたいなぁ」
《うむ。食べよう。食べられないわけではないのでな》
「あっちに座れそうな場所がある。行くか」
「うん」
石段の端に腰掛け、やきそばを食べる。珀豪は優希が食べるのを助けながら一緒に食べていた。
「ほら、綺翔。半分残してくれ」
《……諾》
もそもそと食べはじめた綺翔。気に入ったのだろう。いつもより瞳が輝いていた。高耶はその様子に微笑むと、周りの屋台に目を向ける。
「優希、フランクフルトはどうだ?」
「たべる!!」
「待ってろ」
そうして、高耶達は屋台を十分に楽しんだのだ。
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