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第一章 秘伝のお仕事
049 一緒に出かけましょう
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日曜日。今日は祭りの日だ。
「高耶君。今日はちょっと二人で出かけてくるから、優希と留守番してくれるかい?」
朝食を食べながら、そんなことを父が言った。どうやら、母と急遽デートをすることになったようだ。隣では優希が留守番と聞いて不満そうな顔をしていた。
その足下には、子猫の姿になった綺翔が丸くなっている。付かず離れずというのが、綺翔の距離感だ。
「おるすばん……」
箸も置いてしまった優希に、人型になった珀豪が、コップ一杯の牛乳を持ってきて苦笑する。
《我らはいるぞ》
「うぅ……そうだけど……」
エプロンまでして朝食の準備を手伝うのがここ最近の珀豪の日課だ。父性か何かに目覚めてしまったらしい。
今もよしよしと優希の頭を優しげな表情で撫でている。
《ならば、主よ。今日はあの町で祭りがあるはず。主も行かれるつもりであっただろう。一緒に出かけてはどうだ? もうあの場所に危険はあるまい》
「そうだなぁ……泉一郎さんのところの様子も見なきゃならんし……」
預けた狛犬達の様子も見る必要がある。そのため、祭りの本番は夜だが、昼ごろから行こうと思っていた。
「よし、優希行くか」
「うんっ」
どこかに出かけられると聞いて、一気に笑顔になる優希。珀豪もほっとしている。
「ハクちゃんとショウちゃんもいっしょだよ?」
「わ、わかった。けどそうだな……行くなら人型にするか。綺翔良いか?」
《諾》
これによって目を開け、立ち上がった綺翔は、机の下から出る。そこから少し離れると、いつも通り短い了承の答えを口にしてから人型になった。
現れたのは、白い袖なしの忍び装束のような服装を纏った二十頃の抽象的な容姿を持つ人物。少女のようにキレイではあるが、体つきは少年のようにも見える。
「わぁっ。キレイ……」
「えっ、女の子? 男の子?」
「うそ……」
優希は見惚れ、父母は驚愕の表情を浮かべる。
「神将には特に性別がないんだ。そう見えるだけであったり、性格とかで性別があるように見えてるだけだ。綺翔は本当にどっちでもないというか……どっちかというと女の子というか……」
《……》
金色の短い髪。色白で美しい光彩を見せる瞳。目は伏せがちで、表情があまり出ない上に、声もあまり出さないので、高耶自身もどっちという感覚が持てないでいた。
「おんなのこでも、おとこのこでもないの? すごぉい。だいじょうぶ。ショウちゃんってよぶからどっちでもいいよ?」
《諾……好きにしていいい……》
「……久し振りにちゃんと喋ったな」
珍しく是と諾と否以外の言葉をまともに聞いたなと高耶は感心する。必要のない言葉は極力喋らない性格なのだ。
「綺翔。その格好は目立つ。母さん、あとで服貸してもらっていいか?」
「え、ええ。この感じだと、カッコ良くピシッとキメた感じも良さそうね」
高耶の服では少し大きい。体格もそうだが、身長も高耶よりニ十センチ近く低いのだ。そうなると、母の服のほうが合うだろう。
朝食を終え、その後片付けを高耶と珀豪に任せた母は、優希と一緒に綺翔の着せ替えを楽しんだらしい。
満足げな母と優希と共に出てきた綺翔は、カジュアルな服装になっていた。薄いピンク色のブラウスに、少し短い紺のズボン。女性っぽく見えるが、可愛らしいというよりもカッコいい感じだ。
「どうよ。素敵でしょ?」
「良く似合ってる。一気に和から洋になってびっくりだけどな」
《……》
コクリと頷く綺翔。本人も悪くないらしい。
「それじゃぁ、行ってくるわね。夜も食べて来ていい?」
「いいよ。俺らも食べてくる」
「なら、あんまり遅くならないでね」
「分かってるよ」
確認と注意を口にしながら、母は慌ただしく父と出かけて行った。
「ねぇ、いついくの?」
優希も早く出かけたいらしい。
「昼かな。ご飯は……屋台で食べようか。それまでに出かける準備な」
「はぁいっ。ハクちゃん、てつだって」
《ああ。服ももう少し動きやすいものにした方がいいだろう》
珀豪が抜かりなく世話を焼いてくれるお陰で、高耶も準備ができる。今回こそは手土産を持って行こうと思っているのだ。
「綺翔。少しだけ出てくる。珀豪と留守番頼んだ」
《諾》
綺翔も優希の部屋へと向かった。
《やっぱ饅頭か?》
「いちご大福にしよう。優希も食べられるだろうしな。それと、神楽部隊用の差し入れもな」
《そっちは少し腹持ちの良いのが良いな》
「カステラ系にするか」
そんな話をしながら、高耶は急いで近くの美味しいと評判の銘菓店へ走るのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「高耶君。今日はちょっと二人で出かけてくるから、優希と留守番してくれるかい?」
朝食を食べながら、そんなことを父が言った。どうやら、母と急遽デートをすることになったようだ。隣では優希が留守番と聞いて不満そうな顔をしていた。
その足下には、子猫の姿になった綺翔が丸くなっている。付かず離れずというのが、綺翔の距離感だ。
「おるすばん……」
箸も置いてしまった優希に、人型になった珀豪が、コップ一杯の牛乳を持ってきて苦笑する。
《我らはいるぞ》
「うぅ……そうだけど……」
エプロンまでして朝食の準備を手伝うのがここ最近の珀豪の日課だ。父性か何かに目覚めてしまったらしい。
今もよしよしと優希の頭を優しげな表情で撫でている。
《ならば、主よ。今日はあの町で祭りがあるはず。主も行かれるつもりであっただろう。一緒に出かけてはどうだ? もうあの場所に危険はあるまい》
「そうだなぁ……泉一郎さんのところの様子も見なきゃならんし……」
預けた狛犬達の様子も見る必要がある。そのため、祭りの本番は夜だが、昼ごろから行こうと思っていた。
「よし、優希行くか」
「うんっ」
どこかに出かけられると聞いて、一気に笑顔になる優希。珀豪もほっとしている。
「ハクちゃんとショウちゃんもいっしょだよ?」
「わ、わかった。けどそうだな……行くなら人型にするか。綺翔良いか?」
《諾》
これによって目を開け、立ち上がった綺翔は、机の下から出る。そこから少し離れると、いつも通り短い了承の答えを口にしてから人型になった。
現れたのは、白い袖なしの忍び装束のような服装を纏った二十頃の抽象的な容姿を持つ人物。少女のようにキレイではあるが、体つきは少年のようにも見える。
「わぁっ。キレイ……」
「えっ、女の子? 男の子?」
「うそ……」
優希は見惚れ、父母は驚愕の表情を浮かべる。
「神将には特に性別がないんだ。そう見えるだけであったり、性格とかで性別があるように見えてるだけだ。綺翔は本当にどっちでもないというか……どっちかというと女の子というか……」
《……》
金色の短い髪。色白で美しい光彩を見せる瞳。目は伏せがちで、表情があまり出ない上に、声もあまり出さないので、高耶自身もどっちという感覚が持てないでいた。
「おんなのこでも、おとこのこでもないの? すごぉい。だいじょうぶ。ショウちゃんってよぶからどっちでもいいよ?」
《諾……好きにしていいい……》
「……久し振りにちゃんと喋ったな」
珍しく是と諾と否以外の言葉をまともに聞いたなと高耶は感心する。必要のない言葉は極力喋らない性格なのだ。
「綺翔。その格好は目立つ。母さん、あとで服貸してもらっていいか?」
「え、ええ。この感じだと、カッコ良くピシッとキメた感じも良さそうね」
高耶の服では少し大きい。体格もそうだが、身長も高耶よりニ十センチ近く低いのだ。そうなると、母の服のほうが合うだろう。
朝食を終え、その後片付けを高耶と珀豪に任せた母は、優希と一緒に綺翔の着せ替えを楽しんだらしい。
満足げな母と優希と共に出てきた綺翔は、カジュアルな服装になっていた。薄いピンク色のブラウスに、少し短い紺のズボン。女性っぽく見えるが、可愛らしいというよりもカッコいい感じだ。
「どうよ。素敵でしょ?」
「良く似合ってる。一気に和から洋になってびっくりだけどな」
《……》
コクリと頷く綺翔。本人も悪くないらしい。
「それじゃぁ、行ってくるわね。夜も食べて来ていい?」
「いいよ。俺らも食べてくる」
「なら、あんまり遅くならないでね」
「分かってるよ」
確認と注意を口にしながら、母は慌ただしく父と出かけて行った。
「ねぇ、いついくの?」
優希も早く出かけたいらしい。
「昼かな。ご飯は……屋台で食べようか。それまでに出かける準備な」
「はぁいっ。ハクちゃん、てつだって」
《ああ。服ももう少し動きやすいものにした方がいいだろう》
珀豪が抜かりなく世話を焼いてくれるお陰で、高耶も準備ができる。今回こそは手土産を持って行こうと思っているのだ。
「綺翔。少しだけ出てくる。珀豪と留守番頼んだ」
《諾》
綺翔も優希の部屋へと向かった。
《やっぱ饅頭か?》
「いちご大福にしよう。優希も食べられるだろうしな。それと、神楽部隊用の差し入れもな」
《そっちは少し腹持ちの良いのが良いな》
「カステラ系にするか」
そんな話をしながら、高耶は急いで近くの美味しいと評判の銘菓店へ走るのだった。
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