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星に願いを
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「赤城は?」
「庄次はここで眠ってる」
赤城の姿をした、赤城とは違う男が胸に手を当てる。
「赤城を出してくれ。俺はあいつと話がしたいんだ」
「話してどうなるのさ? 庄次の恋人になってくれんの?」
「そうじゃないだろ? 関係がどうのとかじゃなくて」
「ふうん」
男が近づいてくる。
蛍は後退した。
ベッドにぶつかり、顔をしかめる。
男は蛍の手からオルゴールを取り、机に置くとベッドに突き飛ばしてきた。
後頭部を壁で打ちつける。
「じゃあ、渋谷君は相手が友達でも、セックスできるんだ?」
男は壁に手をつけ、唇を伸ばした。
「庄次が死のうとした理由、聴きたいんだろ? 自由にさせてくれる間だけ、話してあげるよ」
ショルダーバックを外される。
「渋谷君と疎遠になってから、庄次は中野さんと生きようとしていた。彼女を好きになろうと努力したんだ。セックスもしようとした」
勃起しなかったみたいだけど、とシャツのボタンを外しにかかる。
汗が滲む素肌が直接外気に触れ、ひやりとした。
「中野さんもきつかったんだろうね。女の自分に反応しないってわかって。だから、朝立ちを狙って、庄次に跨ってきたんだけど、庄次、最中に、嘔吐しちゃったみたいで、彼女の悲壮感、半端ないの。でも、数分はそれらしいことしててさ、そこだけカットされていたら、普通のエロ動画だ」
赤城の歯が首筋に当たる。
肌を吸われ、舐められ、奥歯を噛んだ。
「そんときはまだ、監視カメラも、あんなに露骨じゃなくて、俺も、庄次も、あることすら知らなかった」
頬を引きつらせた蛍に、男は笑んだ。
「そう。河原に、中野さんの乱れた姿、撮られちゃったんだ」
男はなんでもないことのように言って、自分のシャツを床に落とした。
ベッドに寝かせられ、四つん這いになった男の腕に囲われる。
「高校に入ってバイトし出して、アパート借りて、すべて自分で賄うことで、河原から逃げきれたと思っていた。だけど、あいつは勝手に合鍵を作って、盗撮をし、中野さんの画像をネットで流されたくなかったら抱かせろって、ゆすってきた。それが、高三の冬。庄次が渋谷君に無言電話をかけ始めたきっかけ」
「どうして……。どうして、話してくれなかった?」
「だよなあ。俺も、どうしてって思う。どうして、盗撮や脅しのことを、独りで抱え込んじゃったんだろ? どうして、河原が中野さんの動画を消去したあとも、要求をのみ続けたんだろう? こんな不景気に」
男の目が細くなる。
「どうして、ろくに職場に顔を出さない大学生が、解雇されずに済んだんだろ?」
蛍はビクッと、背を浮かした。
男は満足げに笑んだ。
「庄次が死のうとしたのは、河原の手の届かないところへ行きたかったからだ。死にきれなかったのは、渋谷君が気にかかったからだ」
裸の胸が合わさり、唇が重なる。
彼の唇が自分のそれの上で動く。
「あとは、庄次と話したらいい。替わってあげるよ」
「庄次はここで眠ってる」
赤城の姿をした、赤城とは違う男が胸に手を当てる。
「赤城を出してくれ。俺はあいつと話がしたいんだ」
「話してどうなるのさ? 庄次の恋人になってくれんの?」
「そうじゃないだろ? 関係がどうのとかじゃなくて」
「ふうん」
男が近づいてくる。
蛍は後退した。
ベッドにぶつかり、顔をしかめる。
男は蛍の手からオルゴールを取り、机に置くとベッドに突き飛ばしてきた。
後頭部を壁で打ちつける。
「じゃあ、渋谷君は相手が友達でも、セックスできるんだ?」
男は壁に手をつけ、唇を伸ばした。
「庄次が死のうとした理由、聴きたいんだろ? 自由にさせてくれる間だけ、話してあげるよ」
ショルダーバックを外される。
「渋谷君と疎遠になってから、庄次は中野さんと生きようとしていた。彼女を好きになろうと努力したんだ。セックスもしようとした」
勃起しなかったみたいだけど、とシャツのボタンを外しにかかる。
汗が滲む素肌が直接外気に触れ、ひやりとした。
「中野さんもきつかったんだろうね。女の自分に反応しないってわかって。だから、朝立ちを狙って、庄次に跨ってきたんだけど、庄次、最中に、嘔吐しちゃったみたいで、彼女の悲壮感、半端ないの。でも、数分はそれらしいことしててさ、そこだけカットされていたら、普通のエロ動画だ」
赤城の歯が首筋に当たる。
肌を吸われ、舐められ、奥歯を噛んだ。
「そんときはまだ、監視カメラも、あんなに露骨じゃなくて、俺も、庄次も、あることすら知らなかった」
頬を引きつらせた蛍に、男は笑んだ。
「そう。河原に、中野さんの乱れた姿、撮られちゃったんだ」
男はなんでもないことのように言って、自分のシャツを床に落とした。
ベッドに寝かせられ、四つん這いになった男の腕に囲われる。
「高校に入ってバイトし出して、アパート借りて、すべて自分で賄うことで、河原から逃げきれたと思っていた。だけど、あいつは勝手に合鍵を作って、盗撮をし、中野さんの画像をネットで流されたくなかったら抱かせろって、ゆすってきた。それが、高三の冬。庄次が渋谷君に無言電話をかけ始めたきっかけ」
「どうして……。どうして、話してくれなかった?」
「だよなあ。俺も、どうしてって思う。どうして、盗撮や脅しのことを、独りで抱え込んじゃったんだろ? どうして、河原が中野さんの動画を消去したあとも、要求をのみ続けたんだろう? こんな不景気に」
男の目が細くなる。
「どうして、ろくに職場に顔を出さない大学生が、解雇されずに済んだんだろ?」
蛍はビクッと、背を浮かした。
男は満足げに笑んだ。
「庄次が死のうとしたのは、河原の手の届かないところへ行きたかったからだ。死にきれなかったのは、渋谷君が気にかかったからだ」
裸の胸が合わさり、唇が重なる。
彼の唇が自分のそれの上で動く。
「あとは、庄次と話したらいい。替わってあげるよ」
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